雷が鳴る 雨が降る 風が吹く
台風が近づいてきているある7月のある日
少女は教会で目覚めた。
寂れた教会で、少女は目を覚ました。
少女は椅子から降りると 辺りを見回した。
何の変哲もない教会。ふつうの教会。
少女は床に膝をつけ、中腰になると
祈りを捧げた。
その姿は、まるで聖母マリアのようだった。
すべての始まり
第一話 教会で目覚めた少女
「昨日の嵐が嘘みたいだね。お姉ちゃん。」
黄土色をした、短めの髪を揺らしながら少女・・・千尋は言った。
幼く、あどけなさが残る顔に、満面の笑みを浮かべながら
後ろにいた少女に問いかける
「そうね・・・。」
対して少女・・・春姫は興味もなさそうな表情で料理雑誌を眺める。
千尋は面白くなさそうにに頬をプクッとふくらませると
「もぅっ!! 相変わらず感動が薄いんだから!お姉ちゃんは!」
そう言った。
春姫は、ため息を一つ吐くと、千尋の方を向いて
「千尋、何でそんなに楽しそうなの?」
そう聞いた。
千尋は 笑顔のまま
「だって、今日はみんながうちに泊まりに来る日じゃん!」
そう、今日は千尋の両親の友達の子供たち(ややこし・・・。)が泊まりに来る日なのだ。
春樹たちの両親は昨日から仕事のため、家を一ヶ月ほど空けている
しかし、年頃の娘二人だけを家に残していくのもと思い
友人の子供たちを、家に泊まらせることにしたのだ。
みんないろいろと学校が忙しかったり、習い事・部活・・・その他諸々
一番忙しい時期である高校生はなかなかあえないことが多く、
学校でも軽く挨拶を交わすくらいだ。
そのため千尋は、上機嫌なのだ。
「そんなに焦らなくても、あいつらは逃げないよ・・・。」
対して春姫は、特にいつもと変わらない状態でそんな千尋をたしなめる。
「そっか・・・そうだよね。
みんなが来るんで、ちょっと浮かれちゃったv」
そう言って軽く舌を出すいもうとを春姫は
(あれでちょっとか・・・?)
と思いつつ見ていた。
「ねぇ、千尋。」
春姫は、上機嫌の千尋に
「今日のお昼ご飯・・・なにがいい?
何でも好きな者作ってあげるわよ。」
そう聞いた。
千尋は、しばらく考えるような仕草をした後
「オムライス!」
元気よく答えた。
春姫は、千尋の答えにほほえみながら
「オムライス・・・ね・・・。」
そうつぶやいた。
そして、近くの椅子にかけてあったエプロンを着ると
「あいつらが来るの、昼頃になりそうだから、お昼ご飯を作っておこうと思ってね。」
そう言いながら台所に入っていった。
春姫の料理は、父親並みに上手なので、
かなりおいしい物ができるだろうな・・・と思いながらみんなが来るのを待った。
ちょうどできあがった頃、
玄関のチャイムが鳴った。
千尋がうれしそうに、玄関に書けていく姿を、春樹は優しげな目で見ていた。
歯車は回り出した。
もう、誰に求められない。
始まりの時は・・・近い・・・。