●当サークル発行の「銀河全史」の71ページから75ページにかけて、
 編集ミスにより文章が途中で途切れてしまっている箇所が各所にあるため、
 関連する文章についてここに掲載致します。

 当同人誌を購入くださった方には、ご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした。

●コラム3「ラインハルト時代の戦闘艦艇」

 銀河帝国と自由惑星同盟は、約150年の長きに渡って戦い続け、その間に兵器は洗練されていった。そのため、停滞していた人類社会全体の技術進歩もある程度促され、それがさらに強力な戦闘艦艇を産み出した。
 ここでは、ラインハルト時代の代表的な艦艇について少し見ていきたい。

 ・両国の戦闘艇

 宇宙空間での最小サイズの戦闘兵器で、主に近接戦闘、格闘戦に使用される。
 一般の艦艇同様に亜光速での移動は可能だが、ワープ能力は有していない。また全て1人乗りで、搭乗員は人工知能の支援を受けながらも、全てを一人で行わなくてはならない。ただし加速が必然となる兵器のため、慣性制御装置は必ず搭載されている。でなければ、搭乗員が簡単機動でも即死してしまうからだ。
 優れた加速性、機動性を有しており、一般の艦艇とは比較にならないほど俊敏に活動できる。このため「戦闘艇」の「艇」を略して言う事の方が多い。
 しかし帝国軍と同盟軍で、能力、性能にかなりの違いが存在していた。

 帝国軍は格闘戦性能を高めた戦闘艇「ワルキューレ」を配備した。機動性確保のため小型で、超近接戦でなければ特に大型艦艇に対して打撃を与えることは難しかった。しかし帝国軍は大型の戦闘艇とも言える雷撃艇を配備して、近接戦時の火力を補っている。「ドラケン」と名付けられた機種は、前方に近接戦用電磁砲を多数装備する事で、大型戦艦に対してすら十分な打撃力を発揮できた。反面、格闘戦はほとんど無理のため、「ワルキューレ」の護衛を必要としている。このため帝国軍では、制空戦用と護衛用に「ワルキューレ」を必要とするため、艦隊全体での戦闘艇搭載数が同盟軍よりも多くなっている。
 同盟軍の戦闘艇「スパルタニアン」は、帝国軍の「ワルキューレ」戦闘艇より大型だが、対艦打撃力に優れている。雷撃艇ほどの打撃力はないが、艦隊同士が接近した際に大きな戦果が期待できた。
 しかし性能面で見ると、より格闘戦に特化した「ワルキューレ」の方が優れている。特に機体の半分を大きく回転できる斬新な構造は、「ワルキューレ」の運動性能を一歩濡勤惰させている。
 しかし「ワルキューレ」の方は雷撃艇の護衛も行うため、艦隊全体での搭載数を増やしても、戦場での制空能力は同盟軍と同程度にならざるを得なかった。
 しかし、銀河帝国内で門閥貴族が力を無くしてローエングラム体制(王朝成立前)が確立されることになると、帝国軍にも大型空母が登場する。艦艇数で大きな優勢を得るようになったため、艦隊単位で大型艦、贅沢な艦艇の数を増やせるようになった影響だった。これにより「ワルキューレ」、雷撃艇の数が共に増えて、同盟軍に対してより優位に戦闘ができるようになった。しかし新たな体制が作られた頃には、戦場はイゼルローン回廊だけに限られてしまい、狭い戦場では投入できる艦艇、艦載機数に限界があり、明確な効果を確認するまでには至っていない。

・旗艦用戦艦:

 旗艦用戦艦は、正確な分類呼称は両軍共に大型戦艦とされている。通常の戦艦などでも、旗艦に用いられる事があるためだ。しかし帝国のように多彩な旗艦専門艦艇を建造している場合、直接防御力を下げて機動性を充実させた超巡洋艦と言えるような艦も存在するため、「旗艦用戦闘艦」という分類が正しいだろう。
 特徴は、旗艦としての機能を備えているという点に尽きる。大規模な司令部施設、高度な演算装置、連絡用の豊富な艦載艇、司令部要員用の区画、といったものが一般的には備え付けられている。どれもかなりの区画を必要とするため、艦の規模が大きくなりやすい。
 また、簡単に沈んではいけないので、1隻の艦艇としての能力も高く設定されている。これも艦の大型化に拍車をかけている。特に重視されるのが防御力で、1対1の戦闘であるならば、近接戦や不意打ちでもない限り、標準的な戦艦複数から攻撃を受けても防ぐことができる。
 動力炉の出力が高く、それを攻撃より防御に回すため中性子融和磁場などの間接的防御に多くのエネルギーを回せるためだ。
 ブリュンヒルトに代表される銀河帝国の一部の艦艇は、艦の被弾を下げる船体構造を持ったり、特殊な装甲素材を使うなどの技術的挑戦が行われているが、1万隻規模の艦艇がぶつかり合う状況では、「ないよりまし」と言う程度の効果しかないのが実状だ。この点同盟軍はある種開き直り、通常の戦艦の8倍〜20倍もの火力を艦首方向に集中装備している。
 
・戦艦:

 艦隊戦の重要な部署に配置される、艦隊の防御の要となる艦艇。
 全ての面で高い能力が与えられているが、特に防御力が重視されている。旗艦用戦艦ほどではないが高い防御力を有し、戦艦群で艦列を作ることで「壁」を作り上げることができる。これは戦場で戦線を形成する上で重要であり、戦艦の配置が戦場を決する場合があるほどだ。一方で攻撃力も手抜きはされておらず、格下の艦艇相手に1対1で撃ち負けることはまずあり得ない。
 また、防御に優れていて艦も大型のため、中規模以下の艦隊の旗艦として用いられる事が多い。特に「分艦隊」や「戦隊」旗艦として重宝されている。旗艦用戦艦ほどの通信指揮能力はないが、中には小規模な改造で1000隻程度の艦隊ならば指揮できる艦も存在している。
 艦隊全体の10%〜15%を構成し、最も目立つ場所に配備されている事が多いので、公開映像などでは多くの姿を目にすることができる。
 また、簡単に沈まないので、艦隊全体ではなく戦艦の減少を損害の目安とする指揮官も少なくない。

・高速戦艦:

 銀河帝国軍しか保有しない艦艇で、通常の戦艦よりも機動性が高いが、反面防御力が若干低い。
 同盟軍に同種の艦艇が存在しないのは、一見すると軍事原則に反しているように見える。しかし同盟軍には必要ない種類の艦艇である事の証明でもある。
 と言うのも、帝国軍の高速戦艦の建造コンセプトが「自分たちの技術で同盟軍と同様の艦艇を作る」という点にあるからだ。これは同盟軍の戦艦が、帝国軍の戦艦よりも機動性とビーム火力に優れ、反面防御力が若干低いためだ。
 しかし広範な技術面では帝国の方が同盟よりも優れているため、帝国軍の高速戦艦の方が同盟軍の戦艦よりも高性能に仕上がっている。見た目も流麗に仕上げられており、精鋭部隊として配備されたり、分艦隊の旗艦とする指揮官も少なくない。特に攻勢を好む指揮官には愛用されている。特にビッテンフェルト元帥が指揮する「黒色槍騎兵」は、高速戦艦で固められており、「高速戦艦=騎兵=速い」という認識がされている。
 しかし通常の戦艦よりも若干割高な上に、帝国軍が好む汎用性には劣るため全軍に配備される事は無かった。

・空母:

 もともとは同盟軍しかなかった艦艇。
 多数の戦闘艇を搭載して、集中運用する事で制空権を得ることを目的としていた。
 また、同盟軍の戦闘艇が大きいため、戦艦、巡航艦の搭載数だと帝国軍に大きく劣るため、戦闘的の数を補うために導入された。
 大型の戦闘艇を多数搭載するため、艦の規模自体も非常に大きく、中型の旗艦用戦艦に匹敵する規模となっている。また多数のパイロット、整備兵、管制員などが必要なため、多数の乗組員を必要とした。
 しかし歴史上今まで存在してきた空母、宇宙空母と違って、艦隊の中核や主力艦艇ではなかった。目的はあくまで艦隊同士の接近戦の補助であり、自らも戦闘に加わることを前提とした装備が施されている。しかし同盟軍の戦闘艇は大きい上に、搭載方法が半露天状態で釣り下げるため、超近接戦を挑まれると非常に脆い艦艇となってしまった。通常砲戦距離なら、戦艦を上回る中性子融和磁場などで防御できるが、接近戦ではその効果も薄くなり、近接戦で沈められる艦艇も多いという矛盾も抱えている。

 帝国軍の空母は、ローエングラム体制に移行してから登場した。これは単純に建造施設と予算の問題が絡んでおり、今まで貴族が持っていた資産と装備、建造施設を流用することで比較的安価に、強力な空母を多数整備できるようになった。
 今までも雷撃艇は若干防御力を高めた輸送船で戦場の近くまで運ばれていたが、後方でも護衛艦艇を必要とする上に母艦とした船自体が脆いため、若干航続距離の長い雷撃艇の母艦として運用された。しかし、「ワルキューレ」の母艦としては運用されてこなかった。
 だが、主に貴族用の大型戦艦または旗艦用戦艦を建造していた施設を流用することで、短期間で戦闘艇、雷撃艇双方の母艦を作り出すことができた。
 もとが大型戦艦なので大きな動力炉を搭載しているため、防御力と火力は申し分なく、船体規模も破格といえるほど大きいため多数が搭載できた。あまりにも強力な艦艇のため、登場当初同盟軍では小さくないショックを受けたほどだった。
 なお、元とした大型戦艦は過剰と言えるほどの防御力を有したが、本クラスは最前線に出ることは基本的に想定していないため、装甲など防御力を減らして機動性を確保している。このため、見た目ほ鈍重ではない。

・雷撃艇母艦:

 帝国軍の雷撃艇母艦は、空母と同時期に登場した。
 基本的な違いは、艦上部の格納庫だけだが、雷撃艇を最前線で運用できる効果は非常に大きく、接近戦で大きな威力を発揮できた。しかし雷撃艇自体がかなり大きいため、一定数(戦闘単位)分を搭載しようとした結果、格納庫が非常に大型化してしまった。このため空母よりも機動性に劣っている。
 なお、登場時期が遅いため、同時代で最も近接戦闘に長けていたと言われる同盟に亡命したメルカッツ提督が運用していれば、という話しが良く出てくる艦種でもある。

・巡航艦:

 巡航艦は艦隊の主力であり、どの戦場でも見ることができる。軍人達が「軍馬」や「軍の屋台骨」などと言うほどだ。
 必要十分な装備を平均的に搭載した艦艇で、その名の通り長期間の航海が可能なのが最大の特徴といえる。遠征は巡航艦抜きでは語ることができないほどで、場合によっては戦艦と巡航艦だけで艦隊を編成することもある。

 同じ巡航艦でも、帝国軍と同盟軍では様々な点で違いがでている。
 帝国軍はもともとが領内の治安維持を第一の任務としていたため、宇宙空間の艦隊戦だけでなく、惑星に降下して陸戦部隊を展開するなどの能力も有している。このため惑星大気に効果できる能力に加えて、多くの装備、物資の積載能力を有している。
 一方の同盟軍は、基本的には宇宙空間での対艦戦闘、艦隊戦しか想定していないため、能力を削れる限り削っている。大気圏降下能力はなく、またビーム砲戦能力を重視することで艦の大幅な小型化に成功している。それでいて艦隊戦で帝国軍の巡航艦とほぼ同等の戦闘力が発揮できる上に、艦が小型で軽量なため機動性も若干勝っている。
 ただし、艦隊戦時に重要な要素となる前方投射面積は大きな違いがないため、同盟軍の巡航艦の方が若干不利だと言われている。

・ミサイル艦:

 同盟軍にしかない艦艇。
 同盟軍の巡航艦は能力をビーム砲戦に特化しているため、様々な点が省略されていたり、性能が限定されている。ミサイル搭載量もその一つで、発射装置はともかく搭載数が限られている。さらに艦隊戦に特化している上に戦場での不利を補うため、極低周波弾頭なども少ない場合が多い。
 このため、戦場ではミサイル不足が言われる事が多かった。そうした現場の声を受けて整備されたのが、巡航艦を改造した本クラスになる。
 本クラスは中性子ビーム砲区画にミサイルランチャーと格納庫を据え付けただけの簡単な改造型だが、任務に特化しているため非常に使い勝手が良かった。この艦艇を好んで運用した指揮官もいるほどで、帝国軍でも一時期専門艦艇を整備する話しが持ち上がっていたほどだった。

・駆逐艦:

 艦隊の約半数を構成する、数の上での主力艦艇。
 帝国軍と同盟軍では、コンセプトが大きく違うが、本クラスが無ければ広大な戦場で戦線を形成することはできない。このため「宇宙の歩兵」と言われるほどだ。
 艦隊の半数を占めるほど多数が配備されており、さらに長い航続距離を必要としない沿岸防衛、近距離航路警備、後方での船団護衛など、多くの任務に投入されている。
 基本的に小型で、短時間での火力を集中する能力に長けているが、防御力には欠けている。また乗組員が他の艦艇比べて非常に少ないのも大きな特徴となっている。時代は違ってもおおむね20名前後で運用されており、中尉から少佐が艦長として指揮を執る。乗組員が少ないため、居住区画や物資倉庫が小さくても、通常の航海では大きな支障が出ることはない。
 欠点は、すぐに「弾切れ」を起こしてしまう事にある。このため帝国軍の駆逐艦のように一見攻撃力が高そうに見えても、実際に全ての火力を一度に発揮することは皆無ではないにしても珍しい。
 そして欠点を補うためには補給が欠かせず、また乗組員が少ないため居住性も良好とは言えないため、休養時の施設、移動中の場合は母艦の存在が必要不可欠である。