●あとがきのようなもの
この度も、おつき合いいただきありがとうございました。 今回は如何だったでしょうか。取りあえず、江戸幕府に可能な限り対外戦争を行わせない事を目標として、比較的のんびりした大航海時代と帝国主義時代を歩んでもらいました。 全てを要約すれば、徳川太平三百年をかけた文明開化と国民国家への道のりだったのかもしれません。 また20世紀が幕開けした時点で幕としましたが、続けようと思えば続けることもできたと思います。ただ、江戸幕府があるだけで、どうにもありきたりな道筋がちらついていたので、20世紀が幕開けしてちょうど将軍様のいなくなった辺りで終えることにしました。本当は19世紀中頃で終わらせたかったぐらいです。 けど、個人的な未練もあるので「現代まで江戸幕府が存続していたら」を目指した第二部を出来たらと思っています。まあ20世紀の暴れん坊将軍なんかは、間違っても出現しないでしょうけどね(笑)
なお今回の観測では、徳川家康を開祖とする江戸幕府を20世紀まで存続させる事を大前提としました。 このため、19世紀後半以後の舵取りはかなり作為的に動かしました。ゴールド・ラッシュでの膨大な黄金に溺れた後に侵略を受けて滅亡一直線という道も当然あったし、清朝のようにグダグダしている間に発展することを放棄してヨーロピアンに飲み込まれてしまう状況の方が、可能性としては高かったと思います。少なくとも、グダグダしたままだと北米、ユーラシアは簡単に喪失していたでしょう。当時のヨーロピアンは、ホントに凶暴ですからね。 ですが、コンテンツ自体は多少はエンターテイメントを求めるべきだと思ったので、鬱展開は避けることにしました。いつもの事だと言ってしまえばそれまでなのですが、鬱な展開をわざわざ望まれる加虐的な方はごく少数派なのではと、私自身が勝手に思っているからだとお思いください。 一方で、海外に進出しすぎているというお声があるかもしれませんが、移動手段を持っている上で規制が無ければ、こんなもんだと思います。欲望に忠実なのは人の業苦です。19世紀半ばぐらいに入るまでは、この世界の日本が進出した地域に白人はほとんど居ません。比較的便利な移動手段があれば、外に出かけていくのも必然です。 また日本人が展開する場所が毎度ありきたりだとお思いかもしれませんが、地理的状況、帆船の動力となる海と風の流れ、各地の特産品や資源から、どうしても道筋は限られます。今回は、商業や経済にやや重点を向けたので、そうした事が少しでもご理解いただけたら成功だったのかもと思います。
また、アメリカの動き(侵略)が甘いとお考えの方もありますが、広大な大陸中原を越えるには、鉄道がないと物理的に太平洋の向こう側に成立した文明化された「異世界」を併合するのはかなりしんどいです。我々の世界でのメキシコの不甲斐なさから簡単に考えられがちかもしれませんが、当時のメキシコは今とは比較にならないぐらい人口が少なく体制も軍隊も極めて貧弱でした。 同程度の文明が激しく抵抗してきたら、当時のアメリカではかなりの確率で侵略は難しいでしょう。20世紀を越えたら侵略も十分可能となりますが、後は世界大戦のような大戦争まで逃げ切れるかがキーになるでしょう。 とはいえ、いつもアメリカが太平洋岸まで分捕ってしまうというう流れ事態が気にくわなかったので、今回に関しては幾分消極的なアメリカを演出してみました。でも、イエロー・プレジデントが出現するかもという将来的な情景は、東海岸に住んでいるアングロ系の人たちにとって、悪夢に近い脅威なんじゃないですかね(苦笑) とはいえ、この後日本とアメリカが新日本を巡って全面戦争する可能性は、第一次世界大戦もしくはそれに類する大戦が起きるまで常に高い筈です。 そして勝者は、ほぼ確実にアメリカです。時期としては、第一次世界大戦までにしてしまわないと領土を併合できる帝国主義がまかり通らないのですが、果たしてどうなるでしょうか。また世界大戦になった場合、日本はかなりの確率で連合軍になるので、アメリカが敢えて同盟軍になって新日本を攻めて、その後ドイツが負けた後に居直ってしまうという情景も容易に見えてくる気がします。 まあ、20世紀以後の事に関しては、次を期待しつつ気長に待っていただければと思います。
なお、今回は江戸幕府がありながら、史実通りの幕末、維新は起こしませんでした。起きる可能性の方が少なかったので、起こさなかっただけです。代わりに、英明だけど臣下に薄情だと言われる慶喜公に色々としてもらいました。 結局、外圧がないとドラスティックに動けないんですよね、日本人って。
それでは、また別の並行世界で会いましょう。
文責:扶桑かつみ