●あとがきのようなもの


 要するに、日本人に少し足かせがついた「ドラえもん」を与えてみたわけですが、どうだったでしょうか。それとも「彼ら」側から見た場合、シヴィラゼーション系のゲームのような感じだったかもしれません。というより、幕末から現代に渡る全域での『日本無双』なだけでしたね(笑) 
 「『日本マンセー』ウゼーっ!」という天の邪鬼な方がけっこういらっしゃるようなので、当てつけのようなつもりも込めて作ってみました。鼻白むほどのレベルを目指してみたつもりです。
 けど、馬鹿馬鹿しくて、それなりに楽しかったです(笑)
 なお、異星人の超先進技術を拾ったりした場合どれぐらのタイムスパンを必要とするのかを、ある程度時間面で再現したかったというのが私個人の目的の一つでした。
 普通に考えたら、短期間で高度文明を吸収したり謎の秘密組織が技術を再構築したりなど、余程の事がない限り私たちが暮らす相対性理論の世界だと物理的な可能性は相当低い筈なんですよね。夢のない話ですけど。
 でもまあ、流石に幕末からでは遠すぎました(苦笑)

 なお、内容の一部が、主にアメリカなどで執筆されたSF小説やなどと似通った事は、科学技術を扱う以上避けて通れなかったとは言え、もう少しひねり具合があってもよかったのではと、反省することしきりです。
 また一部に幕末からの発展は他からのアイデア借用ではないかというご指摘を受けましたが、単に誰もが考がちなネタ(アイデア)なだけだと私自身は考えています。それに、架空戦記で「お題」が同じなのは半ば当然の事の筈ですしね。

 さて今回は完全なSFであり、既に架空戦記どころか歴史改変でもないのですが、タイムスリップネタを使うのが個人的に気にいらなかったので、今回は見目麗しい異星人の皆様に登場してきただきました。タイムスリップした地球人類じゃないので人類特有の禁忌(タブー)はなく、無茶苦茶してくれるとも思ったからです。(おかげでパイ投げ合戦(核戦争)を二度ほどしてもらいました。)
 また、人類と異星人をかつて同じ種族だと最初に設定したのは、知的生命体が人間と同じ形態であるどころか炭素系の生命体である可能性自体が、確率的に低いんじゃないかと考えたからです。特に同じような時間内だと、なお難しいでしょう。スターウォーズみたいな多種属の宇宙人が存在する世界って、自然発生上での確率論的には恐らくあり得ないです。だから元が同じじゃないと、ほぼ確実に同じ形態の知的生命体にはなり得ないでしょう。
 知的生命体が発祥する様々な自然環境上で、適切な形態なんて千差万別でしょうからね。
 それと、科学技術差が懸絶した戦闘を日本と他国との間に頻発させたのは、タイムスリップを小道具に使う作品群に対して、多少なりとも皮肉を込めたかったからに過ぎません。

 なお地球人類とご先祖様が同じな美しい異星人達は、無限の記憶容量を誇る量子電算機に地球人類より恐らくは数千年(一万年以上かも)ばかり進んだ文明のライブラリーを持っています。でもまあ、生命の種としての大本が同じですから、これぐらいの文明の差は誤差修正範囲内でしょう。
 そして難破した状況を何とかするために、時代時代に応じて様々な手段で自分たちの持つ高度文明を日本人を窓口として順番に紐解いてくれます。
 また、初期の段階以外では、船に搭載された高性能な核融合炉を細工して原子レベルでの資源回収ができるようになれば、地球という材料からどんな原子インゴットでも作り出せるようになります。なんだか、ほとんど錬金術の話みたいですね。
 反物質を量産できるぐらいの文明ならば、極論原子核の変換なしでも、単なる採集作業だけで海水から全ての元素物質を揃えることが可能な筈です。
 自前で設備を何とか作ってからは、金銀や鉄、様々なレアメタルなんかを日本にせっせと提供します。だから、どこかで金なんかは暴落するかもしれません。何しろ日本列島から湧いてくるようなもんですからね(笑)
 他にも、ナノマシンっていう便利な代物が自由自在に使えれば、同じ事がもっと簡単に可能になる筈です。
 未来科学って卑怯ですよね。
 真空からエネルギーが取り出せる技術を手にすれば、物理的に出来ないことはほぼなくなるでしょう。

 まあ何から何まで日本に渡していては異星人の存在を欧米各国にあからさまに知られてしまうので、資源の多くは日本人がどっかから分捕ってくるでしょうけど。
 そして150年もすると、日本自身がより大規模に同じ事をするようになります。
 超物質文明によるユートピアの実現。
 それが今回のゴールでもありました。この世界が一定段階まで行き着いてしまうと、領土や資源、そして富を目的とした戦争は理屈の上ではあり得ません。争いは無用な上に価値がないからです。
 当然ですが、未来兵器やロボット兵器のファンタジーも不要です。搾取や貧富の差も基本的にはゼロです。物質面での貧富の差という価値観そのものが、ゆくゆくは限りなく無価値なものとなるでしょう。つまり戦争する理由が、物質面ではゼロとなってしまうのです(※別の価値観による格差や差別は発生するでしょうが)。
 ユートピア論にたった未来世界だと、恐らくはそうなる筈です。まあ、それが本当に理想社会なのかどうかは分かりませんけどね。

 なお、この世界の1960年代後半に出た脳味噌にお花畑が咲きそうな未来技術に関しては、科学技術庁の付属研究機関(1988 年設置)の「科学技術政策研究所」が1999年に発表した、「21世紀科学技術の展望」から多くを拝借しました。
 明るい未来っていいもんですね(いや、マジで)

 それではまた違う並行世界で会いましょう。

文責:扶桑かつみ