■インスパイア・ファイル01
 「機動戦艦ヤマト 巡りあい海」
 ●原典:「機動戦士ガンダム」(通称:ファーストガンダム)

 『機動戦士ガンダム』(きどうせんしガンダム、MOBILE SUIT GUNDAM)は、名古屋テレビをキー局として、テレビ朝日系にて1979年4月7日から1980年1月26日にかけて、全43話が放送されたテレビアニメ。ロボットアニメの変革の先駆けとなり、後に「リアルロボット」と称される大きな潮流を作った記念碑的作品である。一連のガンダムシリーズの第一作。

 物語
 スペースコロニーへの宇宙移民開始を紀元とした未来世界、宇宙世紀0079年が舞台である。月軌道の周辺にスペースコロニー群(作中ではサイドと呼ばれる)が浮かぶ中で最も遠い、サイド3にあるジオン公国は宇宙移民であるスペースノイドの独立を求め、人型機動兵器モビルスーツの開発成功を機に、地球連邦に独立戦争を挑んでいた。
 そんな中、サイド7に住む少年、アムロ・レイは連邦軍が開発した最新モビルスーツ、「ガンダム」の調査のため侵入したジオン軍との戦闘に巻き込まれ、偶然ガンダムのパイロットになってしまう。

 作品ではガンダムの母艦である最新鋭戦艦ホワイトベースに乗り込むことになった少年少女たちが、宿敵シャア・アズナブルをはじめとする様々な人々との出会い、そして別れを経て数々の困難を乗り越え、成長していく姿を描く。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

●インスパイアへ

 原典が、有名すぎる作品なので、あまり細かいところまで触れる必要はないだろう。設定面の最小限だけ見て、インスパイアに入りたい。

 アースノイドとスペースノイドの対立は、史実同様植民地を持つ持たないという対立に置き換える。これは簡単だ。おそらく原典も、全く逆のパターンで歴史をオマージュしたと思われる。
 あとは「ザビ家」、「ジオンvs連邦」、この二つのファクターがあれば対立構造のインスパイアとしては成立するだろう。
 「ジオンvs連邦」の図式も簡単だ。史実の第二次世界大戦後露存在した枢軸と連合、もしくはよく似た陣営に分けてやればよい。もともとは、史実のインスパイアなのだ。
 難問は、実はザビ家。
 ジオン軍がナチスドイツのインスパイアのくせに、国の理念を作った偉人を抹殺した成り上がりの王家のような連中が国家を私物化している(国名も「公国」だ)。その下にも、実質的に貴族化した連中までいる。人類の総人口の9%を有する勢力(国家)にも関わらず、軍隊も事実上の私物化。これらを何とかインスパイアいけない。かといって、ドイツ第二帝国では成り上がりの独裁者という図式が作りづらい。
 また架空戦記である以上、日本をどこかで出さなくてはならない。できれば目立つ位置で。これも難問だ。
 なにしろ原典では、ジオン、連邦双方にチラホラと日本人(日系人)がウロウロしているだけ。政治勢力、独立勢力として存在していないからだ。
 そこで今回は、ドイツ、日本を結びつける強固な独裁勢力として、あえて帝政ロシアを利用したいと思う。

 いっぽう戦術面でのインスパイアだが、核の使用、コロニー落としなど破滅的な戦闘を再現しようと思えば、核の全面使用しかない。しかも人類が半減するぐらいに大量用意する必要がある。
 同じだけの殺戮劇を行うのなら、史実と同じタイムスケジュールから推察するとキューバ危機から数年前ぐらいが妥当な時代設定となるだろう。この時代なら、限定的な総力戦も不可能ではないし、輸送力の発展から迅速な戦争展開も可能だ。そのうえ、ジオン風のかなり逝ってよしな兵器も数多存在した。
 しかし、破滅的な核戦争にしてしまうと、昨今ありがちな架空戦記とは言い難くなる。むしろ単なるSFに近い。地上だけが舞台なので安全地帯もないから、中立勢力も安易には作れない。
 他にも理由はあるが、今回は戦術面の再現は物理的な破壊は避けオマージュに絞り込んで、少し違った第二次世界大戦としたい。

 なお、劇中に出てきた1/30の国力差という言葉は、おおむね無視する。1/30という差は、百分率で3.3%。ランチェスター計算の後と想定しても、逆算した国力差は5.6倍。史実の日本の二倍とアメリカ全力ぐらいの差がある。ハッキリ言って、これではケンカにもならない。それが理由だ。
 
 では、そろそろ始めよう。
 インスパイアへの道のりは、日露戦争から始まる。

●プロット

 日露戦争は、ロシアの勝利を以て終わった。
 日本は、旅順こそ落とすも陸戦で惨敗。戦争は皮肉にも旅順降伏の翌日に実質的に終結。バルチック艦隊も道半ばにして帰国。戦争は中途半端ながらも、ロシアの判定勝利で終わる。
 日本に奇蹟は起きなかったが、当事者を含めて「まあ、こんなもんだろう」と思わせる結末となった。
 講和会議で日本は、千島列島全てをロシアに割譲。朝鮮半島の宗主権もロシアに委ねざるを得なくなる。
 戦後日本は、国家安全保障のため日英同盟に傾倒すると同時に、ロシアの影響国というアンビバレンツな状態で、その後しばらくの歴史を歩まなくてはならなかった。
 幸いにして保持された制海権と英国との同盟が、ロシア人が土足で日本本土に踏み込むことを拒否したとはいえ、それが他のロシア近隣諸国同様苦難の歴史であることに違いはなかった。

 次の転機は、「1920年代初頭」に発生した第一次世界大戦だった。
 「戦争を終わらせるための戦争」と騒がれた戦争は、ドイツを中心とする同盟国の敗北で幕を閉じた。
 日本は、日英同盟とロシアの要請に従い、連合国として欧州の東西両戦線に戦力を派遣。列強としての地位をようやく確立。戦争特需もあって国力も大きく増大していた。
 対するロシアは、大戦までの間に新たに得た満州、朝鮮半島から際限のない搾取を続け、さらにイギリス・アメリカと対立しつつ華北地方も飲み込んでしまう。
 搾取によって得た新たな富とアジアでの勝利により国威を回復。共産主義者を徹底的に弾圧すると共に、国内の民族自治に対しては寛容な姿勢を示し内憂も軽減。いっぽうで、日露戦争の勝利によりしばらく東方重視に傾く。
 以上のようなロシアの行動が、第一次世界大戦を5年遅らせたと言われた。
 そして第一次世界大戦でのロシアは、万全の態勢を敷いて後背からドイツに襲いかかり、3年で大戦を終結に導く。
 ベルリンを落としたロシアは、姻戚関係にあるドイツ皇帝(皇室)をそのままとして、ドイツを立憲国家へと改変。同時にドイツ国内にあった共産主義者も軍政を敷いている間に殲滅。戦争を政治的にも終幕に導くだけでなく、戦争の原因の一つすら取り除いてしまう。
 しかしこれは、ドイツが政治的にロシアに屈服した事も現していた。
 かくして、ドイツから東欧市場ばかりかドイツそのものすら飲み込んだロシアは、大戦や戦後ドイツでの行いのように、新たな指導者アレクセイ皇太子の即位と共にドラスティックな政策と積極的な外交を展開する。
 だが病帝アレクセイは、傀儡に過ぎなかった。

 ニコライ二世の急死(暗殺と言われた)を受けて戴冠した新たなツァーリは、子供の頃より病弱だった。成人しても大きな変化はない。このためロシアの舵取りをしていたのが、第一次大戦頃からニコライ二世の娘婿となった者達だった。
 第一次大戦での勝利も、実質的には彼らの指導によりもたらされたと言っても過言ではなかった。事実、ドイツの宿将ヒンデンブルグの罠を食い破ったのは、ロマノフの娘婿率いる軍団だった。
 彼らは有能な政治家、軍人たちだった。彼らは1910年代初頭に忽然と姿を現し、実質的にロマノフ王家、引いてはロシア帝国そのものを乗っ取ると、それまでのロシア的泥臭さとは無縁の政策を開始する。
 出自に不明なこと多い娘婿たちは、新興の貴族というのが通説だった。口さがない者からは、成金の成り上がり者と影で揶揄したと言われた。初期においては貴族を中心に政敵も多く、世界中もロシアが混沌に陥るのではと危惧したほどだ。
 だが彼ら4人は、実力で帝国内の権力を確かなものとしていく。

 長女オルガの夫は、天才的弁舌に優れた政治家。次女タチアナの夫は、女性のような細面な外見の稀代の経済通。三女マリアの夫は、身の丈二メートルを超える巨漢にして極めて勇敢で有能な軍人。四女アナスタシアの夫は、凡庸な男と言われるも容姿端麗な貴公子。ロシア国内ばかりか、欧州各国の宮廷に対して優れたカリスマ性を発揮していた。国民からの人気も絶大だ。
 そしていつしか、彼らはロマノフ四義兄弟、通称「四義兄弟(フォーブラザーズ)」と呼ばれるようになる。

 彼らフォーブラザーズの活躍は、第一次戦後も続いた。
 まずは、ベルサイユ講和会議で活躍。会議上で世界に彼らの存在を印象づけた。
 パリ郊外ベルサイユに現れたフォーブラザーズは長女と四女の夫だったが、一人は弁舌で、一人は天性のカリスマで世界中の政治家、王侯貴族を論破もしくは虜にしてしまった。
 ロシアが同会議の主導権を完全に握ったのは、彼らの活躍あったればこそと世界中が認めたほどだ。
 その外交手腕は、その後の各種平和会議、軍縮会議でも発揮され、英米二つのアングロ国家の一人勝ちを全く許さなかった。
 いっぽう、戦後の国内政策も際だっていた。
 影響下においたドイツやチェコの先進工業国から、技術や制度を大幅に導入。国内で足りない労働力は、シナからいくらでも連れてきた。そして効率的に採掘された資源を武器に、英米など先進国から大量に工作機械や工場をまるごと購入。ロシア帝国を真の近代国家へと昇華させる。
 多民族国家としての内憂に対しては、地方自治の拡大によってまずは緩和。その後、国民全てに軍事以外の面での一等国ロシアを目指させる事で国内の団結を強める成功を収めた。
 さらに、20世紀に入る頃から蔓延り始めていた共産主義の脅威に対しては、三女の夫が中心となってまずは徹底弾圧。さらには、民族主義者と共産主義者を自治緩和の政策を用いて政治的に分断。その後に、飴とムチを使い無力化してしまう。
 だがこの頃に、義兄弟それぞれの派閥、軍閥が形成されるようになり、これが彼らの首を絞めるのは後の話しだ。

 いっぽう、善隣外交を積極的に展開。ドイツの技術、シナからの安価(ただ同然)な労働力で大量に採掘された資源や豊富な農作物を武器に、中東欧、東アジアでの信用を勝ち取る。工業技術導入後に生み出された、安価で堅牢が取り柄の工業製品も世界に浸透していった。
 計画的な公共投資による大規模なインフラ整備、経済特区を設けるなど先進的な経済政策も行い、大量の外貨もロシア国内に呼び込んだ。
 また、民衆からの圧倒的支持を武器に、貴族の特権の緩和、特に免税制度を改革を示唆。最終的には裏で貴族達と取引して、彼らの大量の資産を用いてアメリカ、イギリスなどに対して強力な金融攻勢も仕掛けた。次女の夫が主にこれらの経済政策を推し進めたと言われ、彼こそが1929年の大恐慌の影の立て役者だとすら業界では言われたほどだ。
 そして、彼らにとっての転機も大恐慌だった。

 大戦不況に続くアメリカを策源地とする世界規模での大恐慌を前に、新たなロシア帝国の舵取りを英米に対する挑戦という方向に傾ける。それは、「植民地帝国主義の解体」と「ブロック経済の打破」を歌いあげる事で結実。植民地主義に反する国々からも、それなりの期待と賞賛を受けた。
 対外的信用を取り付けるために、自国内の自治地域の名目上の独立なども行い自らの新たな外交姿勢をアピール。
 そうしたロシアの積極外交を前に、シナでの自らの横暴から国際的に孤立し、第一次大戦後解消された日英同盟後の安全保障を求めていた日本が近隣外交から同調。ドイツ立憲帝国も、英米の偏執的な経済外交姿勢のため経済が低調で、結果的にロシアに従属。
 特にこれら二国に対しては、ロシアの持つ豊富な資源がものを言った。その他、東欧、北東アジアの衛星国、保護国の全てもロシアに従い、ロシアの勢力はユーラシアの半分を覆うほど膨脹。
 そして1936年、日露独三国軍事同盟、英米側の通称「帝国軍」が成立する。
 彼らが主に敵対者から「帝国軍」と呼ばれたのは、主要な役割を果たす三国が全て皇帝を元首に戴く国家だったからだ。
 しかし、一つの団結は多くの反発を生む。
 共産党勢力の浸透が進むフランス、経済の低迷から抜け出せないアメリカが反発。スローガンの方向性から英国も強く同調。その他植民地を持つ西欧諸国も続いた。また、ドイツ、ロシア、黄色人種という西欧諸国にとって敵として認識しやすい勢力が相手だけに、民衆も簡単に迎合していく。
 新たな二大勢力による対立は次第にエスカレートし、東欧問題、中東問題、支那問題から関係は悪化。
 圧倒的な金融力、石油を始めとする資源、そして世界の半数以上を持つ海運力を持つ連合が、経済のブロック化を強化。市場開放を求める帝国側との関係は修復不可能にまで進む。
 かくして、数度にわたる外交のつまづきを経て、次なる戦いの幕が上がった。

 1940年5月、まずは帝国軍側の独露が英仏など西欧の過半の国に対して、英仏が自らの強硬な帝国主義的主張を取り下げないとして、突如宣戦を布告。
 独露二ヶ国を中心とする圧倒的な陸軍は、瞬く間にイギリス本土を除く欧州全土を席巻。ここで大活躍したのが、独露が保有する快速戦車と戦車・装甲車・その他自動車両を効率的にまとめあげた機甲部隊と機甲部隊を支援する戦術任務に特化した空軍の存在だった。
 独露の革新的な軍備・戦術は、大いなる軍事ショックとして世界を激震。戦争が新たなステージへ昇華したことを知らしめた。
 初戦での帝国軍唯一の失敗は、英本土航空決戦に敗北、英本土上陸作戦を断念した事ぐらいだった。
 しかし、英本土上陸を断念したように、独露は海軍力が貧弱。今以上の革新的な戦線拡大は難しい。何しろ英国海軍は世界最強、その後ろに控えるアメリカは潜在的には英国以上。フランスを下したとはいえ、海軍力の半数近くに逃亡され、残りも政治的理由から活用は難しい。有力な海軍を持つイタリアは、ファッショ政権と王国派の争いで腰が定まらず、連合にも帝国にも加わる事はない。
 もう一つの帝国軍、日本の出番だった。

 同盟国の大勝利に気をよくした日本は、独露からの技術と資源の大規模な援助もあって英米との戦争を決意。
 第一次大戦後から続く、同盟国価格で無尽蔵に流れ込むロシアの資源、30年代から大量に流入するようになったドイツ製の工作機械、施設もあって、工業力も大幅に拡大。あれ程アメリカを恐れていた海軍力も、信じられないほど強化されつつあった。
 しかも日本の増強に応じるように、ロシアも極東艦隊を増強。アジア・太平洋の軍事バランスは、1930年代末には大きく変化していた。
 かくして、日露合同軍がアジアへの侵略を開始する。
 日本の軍事力は、欧州での独露と同じように圧倒的だった。
 アメリカ太平洋艦隊、英東洋艦隊が、日本の誇る革新的な軍備、空母機動部隊の前に文字通り殲滅。絶対的とも言える制海権を得た帝国軍は、日本の海軍力とロシアの陸戦兵器を尖兵として、濡れ手に粟でアジアを次々に軍門に下していった。
 しかも帝国軍の進撃は続く。
 西からはドイツが、北からはロシアが、東からは日本が、インドにむけて進撃を続けるのだから当然だろう。
 ついには北アフリカ、コーカサス、インド洋の三方から帝国軍が握手する事に成功した。これにより、全ユーラシア大陸を帝国軍が制覇した事になる。同時に、三大洋の半分も彼らの軍門に下ったに等しい。
 帝国軍の誰もが勝利は目前と思った程だ。
 事実、交戦国に対して停戦勧告という名の勝利宣言が行われた。

 開戦から3年。世界の過半を失い窮地に追い込まれた米英アングロ同盟(連合軍)。しかし、巻き返しは以外に早かった。
 理由は色々ある。
 帝国軍が二正面戦争を避けようとするあまり戦線を広げすぎた事。帝国軍全体として指揮系統が一本化できなかった事。北米大陸に侵攻するだけの軍事力がなかった事。そしてアメリカの生産力を侮っていた事が主な原因と言われた。
 43年頃より世界の半分の生産力を占めるアメリカの戦時生産がフル稼働を開始。巨大な軍事力が雨後の竹の子のように出現。44年頃より、連合軍は本格的な反撃を開始する。
 連合軍の反撃開始よりしばらくは勢力が拮抗するが、国力の差が徐々に戦局に影響を与える。
 戦争は1946年夏まで続くが、帝国軍の無理な攻勢による相次ぐ敗北で戦勢が変化。

 戦争は以下の経緯で進む。
 (※原典中の出来事=この世界での出来事)

 ジオン側の初戦の奇襲=対欧州作戦(欧州崩壊)
 コロニー落とし失敗=バトル・オブ・ブリテン〜英本土上陸作戦中止
 ムウル戦役=日露軍のアジア侵攻。阻止に現れた米太平洋艦隊を日本の空母機動部隊が殲滅
 南極条約=連合国との講和失敗
 地球侵攻=東西双方からのユーラシア大陸全土の解放(占領)
 V作戦=新兵器の開発・量産(木馬はどうなる?)
 ガルマ戦死=山本五十六戦死の流れをロシア指導者死亡にオマージュか?
 オデッサ作戦=中東〜地中海の攻防
 ジャブロー攻撃=日露軍の西海岸強襲(ジャブロー=米本土)
 星一号作戦=東西での連合軍の総反抗
 ソロモンの戦い=日本のマリアナ戦(決め手はやはり新兵器の原爆。ビグ・ザムは日本の超超弩級戦艦か?)
 ソーラ・レイ=露軍の原爆使用
 ア・バオア・クー戦=連合軍の欧州大陸反抗

 戦争終盤、帝国軍側の相次ぐ決定的敗北と連動する日本、ドイツの相次ぐ降伏により、帝国軍の敗北が決定的となる。
 だが連合軍は、未だロシア本土には寸度にも触れていない。ロシアに落ち延びた日独の軍事力や技術者、生産施設、広大なロシアの大地を思えば、戦争はさらに2年は続くものと思われた。
 事実、欧州や極東の一部で続く戦いは、これからも続く長期の戦争を裏付ける激しさだった。
 ロシア軍の某参謀が嘯いた、「後十年は戦える」という言葉は夢物語でないと連合側も認識するほどだった。
 しかし結末は呆気なかった。
 ロマノフ四義兄弟の相次ぐ頓死によりロシア本国で政変。
 ロシア中央部で大規模な宮廷クーデターにより保守派が政権を奪取。
 連合国軍による本格的なロシア本土侵攻直前というところで、戦いは終幕を迎える。
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 なんか、大和もガンダムも関係薄くなったけど、プロットをもう少し組み直せば普通に架空戦記にできるかも。
 ロシア帝国が中心てのは、ある意味斬新(笑)
 たぶん、もっと帝国側に有利な戦争が展開されるはず。きっと、「ギレンの野望」ゲーム盤のような展開が見られる・・・かも。

・追記:架空戦記としての視点
 実は、今回の想定のようにロシアを資本主義国として強大化し、膨大な資源によってドイツ、東欧、日本、北東アジアをご都合主義的に発展させてしまうと、国力が史実より大きくなる可能性がかなり高い。
 最大概算で、英米の8割の国力に達する。
 ドイツの技術力でロシアの資源を有効活用するのは、当時ならそれほど大きなメリットが生まれる。しかも、これら三国の総人口は、影響圏を含めると3億人。うち半分が教育程度の高い。そんな連中が、後方の安全を確保したうえで、必要十分な補給を受け、まともな武器で立ち向かってくるのだ。
 ロシアと日独が強くタッグを組むという事に、民族的、地政学的問題は多々あるのだが、敵にとっては悪夢でしかないだろう。
 つまり戦争は、帝国側がよほどのミスを犯さない限り千日手。
 これほど勢力が拮抗してしまうと、ノルマンディー上陸作戦はほぼ不可能。ドイツや西欧に対する戦略爆撃も、工場が疎開されてしまえば効果は低下。連合国の爆撃できない場所(ロシア奥地)に油田や資源地帯があるので、史実の枢軸国のような息切れもなし。
 その上、帝国軍がインド洋も落としてしまえば、二正面戦争を強いられるのは帝国ではなく連合側。
 いっぽう日本が与しやすいと思えるが、これすら難しい。
 何しろ南方資源が限られていても、シベリアからいくらでも資源も物資も補給される。日本海軍に燃料という足かせがないのは、実に興味深いファクターだ。しかも、ロシア海軍が日本の側面を固めている。そんな想定はなかなか見られない。
 日独露の技術交換もあるだろうから、ヘタレな兵器で戦わざるを得ない日本軍というのも大いに是正されているだろう。特にロシア製、ドイツ製供与武器で戦う帝国陸軍など、アメリカ軍将兵にとって悪夢でしかない筈だ。
 また、連合にとってシベリアに攻め込むなど悪夢に過ぎないのに、ロシアと国境の接するアラスカ防衛などのため、戦力分散を余儀なくされる。
 そう言ったファクターを合わせていくと、連合の方が戦略的に不利とすら言える。

 そして、革新的な資本主義国ロシア主導の架空戦記が成立する事すら稀なので、これを真面目に考証する事の価値はかなりあるのではと思える。
 もちろん、いかにしてロシアに有能な独裁者(もしくは政府)を出現させるのか、という最大の問題は横たわったままだ。
 いっそのこと、ドイツ第二帝国が第一次世界大戦で勝利して、ロシア帝国を衛星国にしてしまうぐらいがよかったのかもしれない。

・閑話休題1
 書いている途中ふと思った。
 「機動戦士ガンダム」という作品世界そのものの中で、架空戦記が数多存在する事を。
 各種発表されているゲームがその象徴だ。架空世界の作品のゲーム化こそ、「イフの中のイフ」と表現できるのではないだろうか。
 バンプレストから発売された「ギレンの野望」などは、戦争の行く末そのものを変えることができる、ガンダム世界の架空戦記の代表だろう。架空戦記好きにしてガンダムスキーな人なら遊んだ方も多いだろう。私自身もその一人だ。他にも、ガンダム世界も含めた「スーパーロボット大戦」シリーズは、ロボット界の架空戦記の最たる存在だ。
 またゲーム以外にも、歴史の隙間を埋めるような冒険戦記的なものも数多存在する。アニメ化作品されたいくつかもそうだ。「0080ポケットの中の戦争」などは、その名の通り歴史の片隅の出来事を扱っている。
 これらは架空の世界だからこそ許される歴史の隙間を埋める作品作りだが、これも見方をかえれば架空戦記だろう。
 そう、世の中架空戦記で満ち溢れているのだ(笑)

・閑話休題2
 なお、私の中でのザビ家のネーミング解釈(笑)

 できん・ザビ(お山の大将。他者の提案もすぐ否定する)
 きれる・ザビ(自分の思い通りにならないと、すぐ切れる)
 しきりや・ザビ(何でも自分で仕切りたがる)
 どーする・ザビ(常に他者の意見を求める)
 かるま・ザビ(勝手に業を背負って自己陶酔する)

 変な妖怪の名前のようだが、富野監督がこの程度のレベルで名前を付けたのではと思えてならない(笑)
(同種の人間は、多人数参加型の戦争ゲームにもよく見かける気もするが……)