■インスパイア・ファイル02「第08MS戦隊 魔の要塞」
 ●原典:「機動戦士ガンダム 第08MS小隊」

 『機動戦士ガンダム第08MS小隊』(きどうせんしガンダム だいぜろはちエムエスしょうたい)は、ガンダムシリーズのOVA(オリジナルビデオアニメ)で、1996年から1999年にかけて全11話が制作されたほか、後日談という形でスペシャルエピソード「ラスト・リゾート」が制作された。

 物語
 連邦軍パイロットのシロー・アマダは地球上のアジア戦線に配属されることになったが、そこへ向かう途中に敵と遭遇し交戦、敵パイロット共々遭難してしまう。その敵(アイナ・サハリン)と協力して生還することで彼女との間に交流が生まれるのだが、いざ配属されたアジア戦線ではアイナと敵同士として対峙することになる。そこに至ってシローは、人間性として当然の倫理を否定する戦場においても敵と愛し合うことも可能だと叫び、それを証明すべく戦うのだった。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

●インスパイアへ

 背景世界のプロットはファイル01プロットの延長線上。
 原作同様、局地戦の再現のみを目指す。その他は状況の再現のみに重点を置く。
 舞台はもちろんアジア。原典を知って入れば、他は多く語ることもないだろう。

(※なお、プレ版からの変化はないに等しいです。一度組み上げてしまうと、いじりようがありませんでした。)

●プロット

 日系アメリカ将校の某少佐は、45年夏に新型駆逐艦を率いるべく、日本との激しい戦闘が続く東南アジアに派遣される。
 彼らの乗艦は、日本海軍が戦争中盤で大量投入した乙、丙型駆逐艦を凌駕すべく建造されたスーパー・デストロイヤー。排水量は4000トンに達し、新型5インチ速射砲、新型魚雷、ヘッジホック、音響爆雷、強力な電子装備を搭載した重駆逐艦。簡単に沈まないよう軽巡洋艦並の装甲を持ち、通常の駆逐艦に倍する能力が与えられた艦艇だった。このタイプの駆逐艦が属する部隊は、マイティー・シップ、「MS戦隊」と呼ばれた。
 就役後の主な任務は、強硬偵察と敵シーレーンへの奇襲。
 彼の率いる第08MS戦隊と呼称され、南方に位置する独立艦隊に所属。南方資源地帯の防衛とシーレーン保護に固執する帝国軍との死闘を繰り広げることになる。

 日々の戦いに追われる少佐に一つの辞令が下る。
 いわく、敵の新兵器開発を調査せよ。
 前線勤務の彼らがその辞令を受けたのは、とある事件が関係していた。
 日本本土攻撃も間近と言われた45年暮れ、シンガポールから日本本土に連なる地域で封鎖任務に就いていた第08MS戦隊は、深い霧の中未知の大型艦と遭遇。これを取り逃がしてしまう。
 幸いにして敵は艤装半ばの艦艇らしく、部隊に大きな損害は無かった。だが上層部は目撃証言を重視。その後さらに第08MS戦隊に前線での偵察を命令したのだ。
 そして数ヶ月。
 連合軍の反抗作戦により、1946年初頭マリアナ諸島が陥落。
 日本政府は、マリアナ陥落と原爆の本土投下を以て連合軍との降伏に調印したのだが、これを良しとしない日本軍の一部が日本本土から満州、極東各地に亡命。
 日本本土の封鎖任務に当たっていた第08MS戦隊は、再び謎の巨大戦艦に遭遇する。
 ちょうど九州を迂回して満州に逃げ込もうとしていた巨大兵器は、戦隊の警戒水域を通過。激しい戦闘となったのだ。
 この時の戦闘で部隊は半壊。敵巨大戦艦も取り逃がし、全ての艦艇は修理のため後方に下がらざるを得なくなる。

 謎の巨大戦艦の亡命先は旅順。軍事的にはポート・アーサーと呼ばれる場所だ。
 実際目にしたことのある人物が必要との判断から、彼が現地での調査を志願。彼は東洋系なので調査には打ってつけのため、上層部も彼の志願を了承する。
 だが彼が志願した理由は別のところにあった。
 先の戦闘で敵艦に接近したおり、敵艦ブリッジにある人物を認めたからだ。彼は、彼の見知った人がいる訳を知りたかった。

 それは彼がMS戦隊に配属される前の事。
 北太平洋の辺鄙な場所で魚雷艇の艇長だった彼は、アリューシャン列島でロシア海軍の新型高速警戒艇と遭遇。戦闘に発展。
 敵を撃破するも彼の艇も大破炎上。艇を何とか脱出した彼は、部下ともはぐれすぐ側の無人島での遭難を余儀なくされる。その時彼は、難破した貨物船を発見。しばしの避難先にしようとする。
 しかし、撃破した相手もその島にたどり着いていた。
 必然的に敵の生き残りと交戦。だが、アリューシャン諸島は極寒の地。今は戦うよりお互い生き延びることが最優先と休戦を提案。
 そこで出会ったのが、ロシア貴族の軍服を身につけた妙齢の女性だったのだ。
 サハリン島を新たな本拠とする彼女の一族は、辺境に新たな本拠を求めねばならないほどの没落貴族で、女性でも帝国に尽くさねば中央から忘れ去られるような存在だった。
 二人だけの休戦の間、人としての交流を温めたが、一市民に過ぎない彼にとって彼女は高嶺の花。そればかりか敵国の女。救難無線に互いを捜索する友軍からの連絡が入り、お互い何も見なかったことにして分かれるより他無かった。

 そのような経緯もあって、彼は降伏で混乱する日本本土を経由して大連に潜入。
 ホテルに潜伏しつつ、ついに旅順を見下ろすことの出来る高地からの撮影に成功した。
 そこで彼が見たものは、排水量十万トンに迫ろうかという巨大戦艦だった。残念ながら装備は遮蔽物やデッキに張られたキャンバスなどにより不明だが、これがロシア帝国の手に渡ればどうなるかは明らかだった。
 成すべき事を終えた彼は、急ぎ旅順を後にしようとする。
 しかし、立ち去る間際旅順から単身車で出てくる、かの女性を発見。居ても立ってもいられず尾行を開始する。
 その後彼女は、ホテルを出ると山間部の山小屋に至る。そこは人里離れた温泉別荘地。
 彼女の入ったロッジまで追ったところで相手に気付かれ、再びお互い銃を向け会っての対面となる。
 辺り一面は、まだまだ冬真っ盛りの吹雪。
 辺鄙な別荘で、周囲は人の気配すらなし。
 ここで戦う必要はないと、しばし再会を喜び合う。しかし彼は、人同士としての二人、敵同士としての二人という関係に、強い違和感を覚える。
 だが運命は皮肉なもの。彼の軽口が彼女との関係を引き裂く。
 そう、今が敵同士である事に変わりはない。
 会話の経緯から、彼女が優れた砲術関連の技術者もしくは軍人である事を知る。ごく普通の娘なら、彼の軽口に反応するはずもないのだ。
 そうして彼らは、敵同士としての別れをするより他無かった。

 その後ベースに戻った少佐だったが、大連で任務を一時放棄して女性を追いかけたため、スパイ容疑で軍法会議にかけられる。
 いちおうは機密奪取成功もあって不問に伏されるが、帰投後の最前線配備は明らかな懲罰人事。
 皮肉にも彼の新たな戦場は、旅順の封鎖任務だった。
 旅順に巨大戦艦がいる以上、それをウラジオに行かせるわけにはいかない。いや、まだ未完成なら旅順から出すことすらしてはいけない。それが上層部に決定だった。
 いっぽうの彼女は、連合軍将校との邂逅を兄でもある要塞司令がもみ消したため、組織としての詮索はなかった。だが、彼との再開から、ひとつの気持ちを強く持つようになる。その思いを兄に告げるが、妹を道具としか思っていない兄は一笑に伏す。
 しかしその思いは彼も同じ。
 だが戦争は続き、日々は無為に過ぎていく。

 さらに数ヶ月がたった。
 連合軍は、ほぼ無傷のまま降伏した日本本土を策源地として、朝鮮半島、華北地方に進駐同然で侵攻。圧倒的戦力で、満州へと攻め込む。
 そして大連と旅順の軍事力を迂回しつつ満州平原を包囲。
 その頃ロシア帝国軍は、極東戦線を自国領土のみの防衛に限定しており、遼東半島には逃げ遅れた者達だけが取り残されていた。
 だが連合軍は、旅順攻撃を躊躇していた。
 核兵器を使わない限り破壊できない旅順要塞。だが帝国軍もすでに核兵器を持つ以上、安易に使うことはできない。
 しかしそこには、謎の超巨大戦艦が潜んでいて無視はできない。橋頭堡としての大連も魅力的だ。そんな理由から、歴史上何度目かの旅順攻略戦が陸路から開始される。
 戦況は、当初一進一退。
 大連が無防備都市宣言をして、旅順が袋の鼠となった時からが本当の地獄の始まりだった。

 当初旅順要塞司令官は、新兵器による敵艦隊撃破と旅順脱出を本国に提案。しかしこの作戦案は、ロシア本土は危険として中止を命令。未完成の新兵器については、戦後の引き渡しに賭けるため眠らせることを強く求める。
 だがこの新兵器の開発も担当した要塞指揮官、つまりサハリン島にある貴族当主はこれを黙殺。
 しかも要塞指揮官にとって脱出は口実。
 自らが開発に関わった新兵器の破壊力を見たかったに過ぎない。

 いっぽう手詰まりとなった連合軍は、旅順破壊を戦艦による艦砲射撃に委ねる。
 戦艦が動員されたのは、巡洋艦以下の艦艇が要塞近辺に近寄れば、要塞砲で粉砕されるのが関の山で、遠距離からの攻撃が是非とも必要。かといって狭い軍港内に対しての精密爆撃は難しく、陸路からの侵攻では時機を逸する恐れがあったというのが戦術的判断だった。
 これに対して、戦闘を決意した旅順要塞司令官に従うロシア帝国軍の部下達だったが、彼女の提案で戦闘前に傷病兵や非戦闘員を病院船で脱出させることも決まる。脱出のための船は、戦闘力をほぼ無くした巡洋艦。いちおう病院船じたての塗装と仕様を行ったが、これを連合軍が受け入れるかは微妙。赤十字を通じて連合軍に病院船の事を伝えたが、最前線ではどうなるかも分からなかった。
 しかも連合軍は、病院船の脱出より早く旧式戦艦による艦砲射撃作戦を発動。
 要塞艦隊を預かる提督は、自ら弱体な旅順艦隊を率いて出撃を決意。もちろん目的は、艦砲射撃阻止のためだ。そうしなければ、艦砲射撃で病院船も失われてしまう。
 そして要塞からバレージ・ジャミングを仕掛け、もうもうたる煙幕を打ちかけた後、出撃。
 第08MS戦隊が護衛する旧式戦艦3隻を、自らの命と引き替えに仕留める。

 そしてその翌朝。
 包囲する連合軍に向けてた要塞からの放送及び通信が、双方の全ての暴力を止めてしまう。
 妙齢の女性と分かる声は、傷病兵を乗せた臨時病院船を脱出させるための休戦を呼びかけたものだったからだ。
 これに対して連合軍包囲司令官は、12時間の停戦と臨検後の病院船のウラジオストク脱出を許可する。
 かくして奇妙な沈黙の中、奇妙な姿の病院船が永遠に続くかのような旅順の煙幕の中から姿を現す。
 しかしその静寂を、未曾有の巨砲の轟きが突き破る!
 巨砲の正体は、日独露の砲製造技術、冶金技術の粋を結集して生み出された、50口径56センチ砲。未知の巨大戦艦は、満載10万トンの巨体に、これを連装3基6門搭載していたのだ。
 日本名「播磨」。連合軍コードネーム「アプサラス」。水の妖精の名を冠するには余りにも凶悪な海の魔獣。彼女の牙に破壊できないものは存在しなかった。

 煙幕けむる巣穴から這い出した魔獣が猛威を振るった。
 空間を突き破り放たれる巨弾!
 奔騰する水柱!
 瞬時に阿鼻叫喚と化す海!
 かくして旅順は、血に覆わてしまうのか!
 それとも!

 刮目して待て、以下次号!!
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 ロシア美人とほっこり温泉は、さずがに難しい(笑)
 けど、意外に普通の話しになりそう。
 小説にするなら、読者にどこまでインスパイアかを気付かせないのがミソかも(笑)