■インスパイア・ファイル07
 「世界英雄伝説」
 ●原典:「銀河英雄伝説」

 『銀河英雄伝説』(ぎんがえいゆうでんせつ)は、田中芳樹によるSF小説。また、それを原作とするアニメ、道原かつみの手による漫画、コンピューターゲーム等の関連作品もある。略称は『銀英伝』(ぎんえいでん)。
 内容は銀河系を舞台にしたスペースオペラで、銀河帝国と自由惑星同盟、およびフェザーンの攻防、権謀術策を二人の主人公ラインハルト・フォン・ローエングラムとヤン・ウェンリーを軸に描く。

あらすじ
 遥かな未来、宇宙に進出した人類は銀河帝国と自由惑星同盟の二つの勢力に分かれ150年にわたる断続的な戦争を続けてきた。この戦いが永遠に続くかと思われていた時、2人の英雄の出現により、人類の歴史は大きく転換し始めた。
 銀河帝国の下級貴族出身のラインハルト・フォン・ミューゼルは、姉アンネローゼが後宮に納められた時、帝国の体制を憎み、「宇宙を手に入れる」という野望を抱く。やがて親友のジークフリード・キルヒアイスとともにその軍事的才能を生かして武勲を立てて軍内部での地位を高め、ローエングラム伯爵家の家名を継ぎ、ラインハルト・フォン・ローエングラムと改名、さらに武勲を重ね元帥に昇進する。「常勝の英雄」と呼ばれた彼の元には若い才能が集まり、帝国内での勢力を確立する。
 一方、自由惑星同盟では、本来は歴史家志望であったものの方便として軍人になったヤン・ウェンリーが、退役を望む意志とは裏腹に武勲を重ねて提督に抜擢され、難攻不落と称された銀河帝国のイゼルローン要塞を攻略して名声を高めていった。「不敗の魔術師」と評されたヤンは、母国の政治体制の腐敗を嘆き、戦争そのものへの嫌悪を抱きながらも民主主義体制下の軍人の職分を守り、さまざまな作戦に携わる。
 やがて銀河帝国の門閥貴族勢力を駆逐したラインハルトは帝国の実権を握り、宇宙の残り半分を手にするために自由惑星同盟への大規模な侵攻作戦を開始した。ここに「常勝の天才」と「不敗の魔術師」の直接対決が始まり、銀河の歴史は大きく動き出す。

 銀河の歴史が、また1ページ……

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

 
●インスパイアへ
 人物関係の再現よりも、スペースオペラ三国志の近代版の政治的状況の再現を目指す。

・置き換え
 銀河帝国vs自由惑星同盟
 =
 超ドイツ帝国vs民主主義国家連合

銀河帝国=超ドイツ帝国(欧州帝国?)
自由惑星同盟=民主主義国家連合(やはりアメリカ?)
フェザーン=立場的にはイタリアの都市国家群がそれっぽいが、地名的にはアラブ地域の経済大国か?(フェニキアは無理すぎるし)
フェザーン回廊 =スエズ運河? マラッカ海峡?
イゼルローン回廊=パナマ運河orカリブ海? それとも…

ルドルフ大帝=
 彼をインスパイアせずして、金髪の小僧が打倒すべき銀河帝国は作り上げられないだろう。そこで今回の役回りは、タイムスケジュール的にスウェーデンの英雄王グスタフ・アドルフとする。(もしくは、プロイセンのフリードリヒ大帝でもいいかも)
 そして、原作冒頭の状況に持ち込むまでをインスパイアしてみる。それ以後の二人の英雄による戦いは、各自で脳内補完してもらえれば幸いだ(笑)

ラインハルト、ヤンその他の登場人物=
 基本的に、原作の前提条件へのインスパイアを目指すので、個々の登場人物については触れないものとする。

・問題点:
 このままの図式では、大和や聯合艦隊どころか日本の介在する余地がとても少ない。あったとしても、民主主義国家連合(自由惑星同盟)の一員程度になるだろう。
 なんとかせねば(笑)

●プロット

 時は、1606年の「ロシア動乱」にまで遡る。
 イワン雷帝なきロシアは、ポーランドを中心としたカトリック勢力の陰謀によって国家存亡の危機にあった。ツァーリ不在の時期が二年もあったと言えば、危機の度合いも分かるだろう。
 窮したロシア皇帝は、宗教改革に端を発する宗教問題からポーランドと対立するスウェーデンに救援を依頼する。スウェーデンがプロテスタント国だったから実現した外交だった。
 若きグスタフ・アドルフは、1608年、若干12才ながらスウェーデン王太子としてロシアの大地に出陣し、見事な軍事的手腕でロシアの混乱を収拾する。
 アドルフは、ポーランドの圧力をたくみに利用してロシア国民を懐柔。ロシアの大地にスウェーデの勢力を拡大する。1609年にスウェーデン王となったアドルフは、1610年には形式的に過ぎないがロシアの帝位すら獲得してしまう。
 その後、1618年にロシア人自身の努力もあってモスクワを中心とする混乱を収拾したが、どんな形であれツァーリとなったアドルフの影響力を最後まで排除する事ができず、最終的にロシアに新たに王室が立つ事はなく、アドルフによるスウェーデン=ロシア同君連合が正式に発足する。大バルト帝国誕生の瞬間だ。
 この時アドルフは若干22才。この若さため、人々は彼のことをアレキサンダーの再来とすら騒いだ。
(※アドルフ・グスタフがツァーリになる以外の多くは史実に準拠しています。)

 アドルフにとって次の転機は「ドイツ二十年戦争」だった。
 1630年、北欧の覇者となった英雄王グスタフ・アドルフが、ついに重い腰を上げて欧州中原に出現したのだ。
 彼の欧州中原登場が遅れたのは、同君連合となったロシアの安定化に手間取ったのが原因だが、それだけに巨大な国力を背景とした欧州中央の出現となった。
 進出当初ドイツ諸侯の全てから疎まれたアドルフだったが、追いつめられたプロテスタント側が同じプロテスタント派として彼を受け入れたのが転機となった。彼は、自らがドイツで必要となる時をじっと待っていたのだ。
 補給線を確保した彼は、自ら育て上げた先進的な軍隊を自ら率いてドイツ各地で連戦連勝を重ね、追いつめられたた皇帝側は一度は追放した戦争の天才ワレンシュタインを表舞台に引き戻す。
 しかしワレンシュタインを以てしても、北欧の英雄王アドルフの進撃を止めるには至らなかった。
 1632年に行われた「リュッツェンの戦い」で、神聖ローマ帝国側の傭兵ワレンシュタインにアドルフは大勝利。もちろん彼は五体満足だ。
 アドルフの大勝利は、ロシアから間に合った新編成の大騎兵部隊がもたらしたと言われた。ワレンシュタインは、アドルフのロシア騎兵を恐れ早期に決戦に及んだのだが、アドルフ軍の圧倒的な弾幕射撃によって前進を阻まれ、戦場に間に合ったロシア騎兵部隊の突撃によって壮絶な戦死を遂げている。
 なお、アドルフを警護する近衛兵の決死のガードが彼を守った点も無視できないとされた。それ程彼は、常に最前線に我が身を置く勇者であったからだ。そして鉄砲・大砲を多用した先進的な三兵戦術とこれ以後の経歴もあって、アドルフは「鉄の巨人」と呼ばれるようになる。

 ドイツ中原での勝利を掴んだアドルフは、勝利の後も精強なスウェーデン軍を率いて戦う。そして強運と才覚、優れた家臣達の活躍によって、雑多な集まりの皇帝軍、旧教連合軍に連戦連勝。名実共にプロテスタントの英雄となる。
 最後には、スペイン、オーストリア、ポーランドなど列強全ての挑戦、干渉をはね除け、新たにプロテスタント帝国をバルト海を中心とした北欧、東欧、中欧に成立させてしまう。結果、神聖ローマ帝国は実質的に崩壊し、アドルフの手腕によりドイツの戦乱は急速に終息を迎える。
 なお、ドイツを中心とした戦乱を、好意的な者は統一戦争、否定的な者は20年戦争と呼ぶようになる。
 しかしアドルフの戦いは、まだ序章に過ぎなかった。

 ドイツ北部に確固たる足場を築き、拡大バルト帝国とでも呼ぶべき国家へと急成長させたアドルフは、その後も自らの正義に基づいて戦争を継続した。
 カトリックを主敵とする事で自らの帝国をまとめあげると、プロテスタントの守護者としてドイツ(神聖ローマ帝国)の過半を飲み込み、ついには仇敵ハプスブルグ家の牙城ウィーンすら攻略した。
 そしてウィーンでの和睦によって、スカンジナビア、ドイツ、東欧北部、そして欧州ロシアにまで広がる広大な白色帝国へと拡大させてしまう。東欧で覇を唱えていたポーランドも戦乱の最中に衰退し、その後百年ほどで滅亡を余儀なくされるほどアドルフの作り上げた威は大きかった。
 なお彼は、ドイツと北欧を結びつける存在として、まだまだ否定的な事も多いキリスト教各派を政治勢力として重視せず、古代から伝わる北欧神話も利用。大ゲルマンの復活を掲げて、新たな首都と定めた東欧の首都足るべき場所も北欧神話の主神の名を冠して「オーディン」と命名したほどだ。

 その後もアドルフの帝国は侵略と膨脹を続ける。
 欧州全土を巻き込んだ戦乱は1648年まで及んだが、ついにはカトリック最大の大国スペインも軍事的に屈服させてしまった。スペインの敗北は、早くからアドルフ側に付いたネーデルランドが原因と言われたが、後にネーデルランドもアドルフに飲み込まれたのだから、因果応報というべきだろう。
 そして欧州世界で何とかアドルフの直接支配を逃れたのは、島国イングランドを例外とすれば、アドルフの帝国での経済的特権の独占を約束させたイタリア北部の都市国家群と、宗教的和解を図ったローマ、そして戦争当初ハプスブルグ家に対抗するためスウェーデンに荷担したフランスだけだった。
 それらの国々、地域にしてもアドルフを無視することはできずに間接的支配は干渉が当然となり、ここに欧州はローマ以来1000年ぶりに統合されたと言ってよいだろう。
 そしてアドルフは、強大な欧州帝国を作り上げた晩年、それまでの清廉な政治から一転して徹底した絶対王制に移行。
 強権の上に、本当の意味での白色帝国を作り上げる。
 外に対しては、強大な軍事力で周辺地域の侵略・併合を続けつつ、内に対しては強大な権力で敵対者弾圧を強化。
 さらには自らの帝国全土をドイツ風の大帝国への転化を行う。
 国名は、「神聖欧州帝国」。ローマばかりかコンスタンチンの後継たるキリスト教の意を受けた新時代の皇帝となった瞬間だった。

 しかし、そのような独裁国家を全ての人々が受け入れるはずなかった。
 欧州各地の清教徒(旧教徒)を中心に、新大陸への脱出が大量発生。何とかグスタフの直接支配を免れたイングランドやスペイン、イタリアを足がかりとして新大陸を目指した。
 いっぽう、欧州ロシアを追われた一部のロシア正教徒達はさらなる東進を行い、一路未開の大地シベリアを目指す。
 それら二つのエグゾダスは、歴史的に「ロンゲスト・マーチ」と呼ばれた……。

 アドルフの時代から、100年の歳月が流れた。
 ピレネー山脈からウラル山脈、北極海から地中海までを従えた神聖欧州帝国は、早期に配下にしたロシア人を使ってシベリアも征服。ついに太平洋へと至る。また、圧倒的国力でイギリス、スペイン、フランス、イタリア地域も完全に政治的影響下に置くことに成功し、名実共に欧州帝国としての地位を確立していた。もちろん、ハプスブルグなどという血縁外交を重視する一族の勢力は、極めて小さな存在へ転落させていた。
 彼らこそが欧州の覇者であり、まさに新たなローマ帝国の誕生と言っても過言ではないだろう。
 オスマン朝との戦争を年中行事しつつも、地中海、アフリカへと浸透。その膨脹は止まるところがなかった。
 だが、膨大な地域を抱え込んだ事で、自然と海外進出はおろそかなものとなった。特に遠隔地の調査、植民地化、植民地経営は停滞していた。中華帝国化した大陸国家がよく陥る状態だ。
 しかし彼らは世界帝国だった。18世紀初頭には、国が支援する大規模な調査船団が北米大陸に向けて出発。そこで、100年前欧州を捨てた者達から手痛い反撃を受け、船団は全滅。
 初めて北米大陸に自分たちに逆らう国が存在する事を突き止める。
 大西洋百年戦争の始まりだった。

 百年戦争までに、北米東岸では欧州から逃げ延びた人々によって、自由と平等を謳う民主主義国家が成立していた。しかも国家成立から半世紀の時間が過ぎており、欧州から亡命してきた人々と文物、そして欧州帝国に服従している国々からの影の支援により、その頃までには独自の軍隊を編成するまでに至っていた。
 国名は、「自由欧州同盟」。ネイティブを追い出した北米東岸にそれぞれ新たな拠点を構えた、各人種やコミュニティーごとに成立した民主主義を掲げる政府群による一大連邦国家だった。
 両者の戦争は、必然的に制海権を得るものとなり、大西洋、カリブ海各地で海戦が頻発した。
 主な戦場は、北米大陸近在の北大西洋。もしくは、それぞれが進出を強化している大西洋の制海権を左右するカリブ海。稀に、北米側の反撃により欧州近海で戦闘が発生する事もあった。
 だが、距離の問題、双方の抱える政治的問題もあって、どちらも決定打を放つ事ができない。戦争は百年を経ても何ら解決の糸口はなかった。
 そしてその頃、アジアでは別の動きが起こっていた。

 アジアの僻地日本という島国では、17世紀初頭に150年続いた戦国時代を勝ち抜いた統一政権が出現。完成度の高い封建国家が成立していた。
 徳川幕府もしくは江戸幕府と自ら呼ぶ彼らは、建国当初の開国路線からなぜか徐々に閉鎖的傾向を強くし、ついには限定的鎖国へ移行しようとしていた。
 だが、欧州の激変が大きな変化をもたらす。
 1632年、アドルフ大帝の栄光の始まりとなった「リュッツェンの戦い」での勝利。アドルフ最大のライバルだったワレンシュタインの死。それが引き金だった。
 欧州での情勢激変は、様々な人々をアジアの僻地の国へ走らせ、その後四半世紀を待たずしてグスタフに飲み込まれたネーデルランドが画策していた日本の鎖国を中止させてしまう。
 一転、鎖国を取りやめた日本は、反動から膨脹外交に転向。さらには近隣の中華地域での大規模な争乱に自ら介入。大規模な出兵と平行して、海外進出を強化する姿勢を示す。
 そして、日本の海外膨脹に時を合わせるかのように、シベリアの大地からグスタフの意を受けて、逃亡した正教徒達を追ってきたロシアンコサックの大軍が出現。
 アジアでの新たな争乱の発見を、キリスト教世界拡大のチャンスと判断したアドルフは、逃亡する正教徒達と妥協。大規模な応援を送り込むと同時にアジアでの尖兵に仕立て上げる。
 そして明に対して圧倒的優勢だった清(金華)の中華統一を、東西二つのファクターが阻止してしまう。

 17世紀半ばのアジアでの争乱により、数十年後に中華中央は清、後明の二つに分裂。中央アジア東部には、アドルフの支援によって草原の英雄ガルダーンのジュンガル帝国が出現。モンゴルやチベット共々欧州世界と中華世界と白人世界の緩衝地帯となる。また大陸に大規模な遠征を行った日本も、揚子江沿岸に大規模な橋頭堡となる独立地域をでっち上げてしまう。これが、現在上海と呼ばれる大都市を中心とする蓬莱連邦の始まりだ。
 そしてこれ以後の日本は、海外交易をアジア全域に広げ、宗主国を失った欧州の植民地や未開地域を併呑しつつ膨脹。新旧二つの欧州が激突する頃には、欧州帝国との国交を開きつつ北米西岸にも進出。自由欧州同盟とも接触を持つようになっていた。
 世界の三極構造の出現だった。

 19世紀に入っても、大西洋での戦いに出口はなかった。
 そればかりか、自由欧州同盟は南北アメリカ大陸に勢力を広げて国力を拡大。徐々に力で欧州帝国に拮抗し始めていた。大国化による慢心からくる政治腐敗が深刻になりつつあったが、一部を除き硬直化しつつある自らの祖国よりも、帝国との戦争にのめり込んでいた。
 いっぽうの欧州帝国は、アフリカ大陸の沿岸部の多くを植民地化しインド進出を強化するも、莫大な維持費の必要な植民地経営では成長は頭打ち。完全な停滞期に入っていた。数百年も続いた帝国の特権階級は既得権に寄生するだけの害悪となっており、絶対王制から変化できない帝国は国力に見合うだけの力を発揮できなくなっていた。
 そしてこの二つの白人勢力の争いの間隙を縫って、日本の勢力が太平洋からインド洋にかけて広がり、巨大な交易帝国へと成長しつつあった。
 気が付いたら日本の通貨クーバン(小判)は、世界通貨として通用するようになっていた。自らの国土から産する豊富な金銀に加え、欧州での混乱と自らの進出でシベリアや太平洋各地の金、メキシコの銀を押さえた日本の経済力は圧倒的なものとなりつつあった。もちろん、アジア・太平洋の交易を牛耳っている効果も大きい。自由と独立独歩を旨とする日本の交易商人達は全世界を駆けめぐり、列島に莫大な富をもたらしていた。
 まさにジパングの出現だ。
 だが、二つの欧州勢力に対して距離という最大の防壁を持つ日本は、経済発展に力を入れるばかり。二つの白色大国に対して、海賊対策の海上警備と重要海外拠点防衛以外の軍備はおざなり。日本本土は、自らの経済的繁栄におぼれている状態だった。

 この頃の主戦場は、欧州帝国が大要塞地帯を築きあげたカリブ要塞群。欧州帝国側通称「イゼルローン」要塞群になっていた。カリブ海のど真ん中に欧州帝国側の一大拠点がある限り、自由欧州同盟は欧州に打って出るどころか、自国の防衛すら危ういものとなる。海と風の二つの要素を覆さない限り、動くことのない現実だった。
 この要塞を中心にカリブ海で熾烈な戦いが行われるが、帝国側の圧倒的軍事力を前に同盟は無為に死山血河を作るだけだった。おかげで戦場の多くはカリブ海に限定され、双方は無意味な流血を年中行事とするようになる。
 いっぽう、東アジアの玄関口マラッカ海峡とそのすぐ南西にある一大拠点「出島(シンガポール島)」は日本の軍門に下っていた。ここは日本の許し無く通過は叶わず、もちろん太平洋へ押し出すことはできなかった。
 当然だが、マラッカ海峡より東に広がる太平洋を押さえることは、新旧二つの欧州帝国にとって後背を襲われない事も現しており、日本の安全保障の一助ともなっていた。
 その上、断絶する二つの欧州世界の仲介を日本が担っている事から、日本の首都エドは世界交易の都として大いに繁栄していた。
 そうした三つどもえの世界に変化が訪れる。

 世界を覆い尽くす混沌の淵の中から、二人の若き英雄が帝国同盟双方から登場したのだ。
 ・
 ・
 ・
 まあ、原作冒頭に至る歴史的インスパイアはこんなもんだろう。
 これなら日本も登場できるぞ。中華系の英雄だって、きっとノー・プロブレム。しかも原作通りなら、人類史上最大の帝国の都も日本列島に現出だ。
 もっとも原作通りなら、途中から日本は道化役だけどな!(笑)

 しかも原作通りなら、ある意味悪夢の現出だ。
 何しろエンディングが、改革されたとは言え独裁国家による地球統合。架空戦記においてすら、普通ならあり得ないエンディングだろう。
 なお、時代をお約束の第二次大戦後露ではなく、19世紀、本格的工業化の前に設定したのは、原作が「スペースオペラ」であり、ロマンの許される戦いを現出させるため。また、若い人間をトントン拍子で出世させることの出来る最後の時代もこの辺りだろう。
 いっぽう、距離や地の利の要素が大きい戦いを、古いタイプの戦闘で演出しやすいとうのも見逃せない。嵐や海流など自然災害で壊滅する大艦隊とかもできる。反対に、風を無視できる動力船が跋扈してしまうと、進撃ルートが多岐にわたり、限られたルートや地域、拠点を巡る攻防というのが難しくなるのも、動力船を否定した理由になる。(ワルキューレとスパルタニアンを出せないのは痛い。装甲兵はむしろ大丈夫か……)
 なお、艦隊決戦で歴史の全てを決するためにも、それぞれの首都は沿岸部にある必要性があるだろう。オーディンがバルト海沿岸、ハイネセンが北米東岸、フェザーンが日本列島沿岸の役回りで問題ない筈だ。問題は、内陸部での戦いが主力となりそうな、帝国、同盟双方の内戦だろうか。

 また文明の発展速度は、欧州中央での統一政権の成立で停滞。四半世紀程度遅れているものとする。産業革命していない停滞した文明内でこそ、銀英伝の人間ドラマは映えるというものだ。
 それに19世紀といえば、クラシック音楽全盛時代。オペラの時代でもある。
 当然だが、登場する軍艦全て、ブリュンヒルトもヒューペリオンも優雅さを持つガレオン戦艦だ。

 なお、ここまでしても架空戦記としての問題点が残っている。
 原作通りなら、日本は欧州帝国に手もなく併合され、新たな世界首都になってしまうだけだからだ。戦艦大和の不登場どころか、オタ好みの架空戦記にすらならない(笑)
 だからといって日本が軍事的にも強大化しすぎると、最初に双方からタコ殴りに合うだけになる。
 まあ、インスパイアだから気にすることもないだろう(笑)

 閑話休題:
 こんなインスパイアするよりも、どうせこの大河ドラマを作り直すなら、原作の完全な二次創作の方が良いかもしれない。
 もちろん、原作の主要人物が全く死なない、少年ジャンプ的なハッピーエンド世界だ。
 最も簡単な手段は、どこでも論じられていた通り、原作二巻のキルヒアイスの死因となった場面の前にラインハルトに謝らせてしまえばよい。それで後の事は万事解決だ。ついでにラインハルトとヤン双方にとっての共通の敵が突如出てくれば言うことないだろう。(取りあえずトリューニヒト、フェザーン、地球教、貴族連合残党を早期にまとめあげるあたりが適当か?)
 少年漫画的展開なら、これこそが王道だ。
(たしか、同人誌でそんな作品があった筈。完結したのかなあ)

 あとは無事生き延びたキルヒアイスが、帝国内の不和を全て片づけ、勝手に金髪の小僧と同盟のイレギュラーズとの仲立ちをして、諸悪の根元を駆逐し、万事めでたしめでたし間違いなし。
 私には、これを実現できるゲーム(某ギレンの野望のような形式になるか?)が登場していないのが不思議でならない(笑)

(嗚呼、冷徹な義眼の視線が痛い痛い)