■インスパイア・ファイル13
 「ワールド・ウォーズ」
 ●原典:「スター・ウォーズ」

『スター・ウォーズ』 (Star Wars) シリーズは、ジョージ・ルーカスが温めていた構想を元に映画化された、スペースオペラの代表作である。

 ストーリー
遠い昔、遥か彼方の銀河系において、銀河共和国という巨大な共同国家体が存在した。
しかし、時が経つにつれ政治の腐敗が生じ、統治秩序は崩壊、共和国も存亡の危機を迎えた。こうした状況の中、古より銀河共和国を陰で支えてきたジェダイと呼ばれる賢者の集団が、共和国の秩序を回復させるために奮闘する。だが、彼らの前に、数千年も前に滅びたといわれる恐怖の信奉者シスが現れる。彼らの理想は恐怖で人々を支配する国家の樹立とジェダイの排除。そんな中、ある辺境の惑星で一人の少年がジェダイとして導かれ、銀河共和国・ジェダイ・シスの運命に関わっていく事となる。この少年と後のその子供達、ジェダイとシスの攻防、そして、銀河共和国から銀河帝国へ、そして、再び銀河共和国へと復活を遂げる変遷を描いた壮大な物語である。

 シリーズ構成
本シリーズは、6部構成からなるサーガの形式をとっている。製作順第一作にあたるエピソード4が成功したのち、9部作として発表されたが、現在の公式見解では、6部作ということになっている。エピソード7以降はルーカス公認の、数々のスピンオフ作品が小説として発表されている。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

●インスパイアへ

 世界で最もポピュラーなスペースオペラ、というよりスペース・ファンタジーと表現した方がよいだろうか。一部では、北米神話とも言われているらしい(笑)
 今更この作品の解説をしていってもしかたないので、インスパイアについてのみ項目を挙げて見てみよう。
 だたし、なるべく北米大陸を舞台としなければ、根底面でのインスパイアは難しいだろう。

 銀河共和国:
長きにわたり存続してきた、巨大な連邦国家もしくは国家連合。国家として末期症状にあり、衆愚政治と化し経済力も大きく低下。
国家形態は、アメリカ合衆国か今日の欧州連合(EU)のような国家連合になる。
20世紀前半に成立させるには、一部民主政治を復活させたナポレオン帝国を長らく存続させるのが良いだろうか。
それとも、北米全土を保持したままブッチギリで世界帝国と化した英連合王国が良いかもしれない。ただし、架空戦記のお約束タイムである20世紀半ばの時点で、巨大な民主国家を疲弊した段階まで持っていくのは文明進歩の過程からかなり難しい。
 銀河帝国:
銀河共和国を乗っ取った独裁者とそれを操る旧敵対勢力による急造の帝国。恐怖と力、軍事力によって成立。人種差別も横行。
インスパイアは、恐らくはモチーフとされたであろうファシズム帝国でよいだろう。なお、ファシズムといっても別にナチス・ドイツである必要性はない。極端に宗教が絡まない国粋主義や民族主義ならなんでも良いだろう。
 ジェダイ:自由と正義の守護者。
インスパイアするなら、より責任感にあふれた英国貴族のような存在だろうか。しかし、共和国を守る騎士というのは成立しうるのか? ドイツのユンカーや日本の武士でも難しいだろう。
 シス:世界の旧敵対勢力。
歴史に悪名を残す、もしくは残す可能性のある人物や勢力なら誰でも、なんでもよいだろう。

 反乱同盟軍(Rebel Alliance):共和国再建を画策する同盟組織の軍隊。
インスパイアを強めるなら、最後に勝利するという点において、やや劣勢な状態のアメリカ合衆国を中心に据えるべきだろう。ただしこの場合、欧州列強のどこかの国の抑圧に立ち向かうという図式を作らねばならないか。
 通商連合:銀河共和国内の敵対勢力。
銀河共和国内の反対組織となると、その他の欧州諸国になるだろうか。
 ナブー:皇帝パルパティーンや女王アミダラの故国。
精神的権威の高い王家を持つ国とすればよいだろうか。ただし、宗教と絡めるのは避けた方がよいだろう。となると、英王室や日皇室あたりが適当になるだろう。争わず棲み分けている異民族があればなおベターか。

 戦争(=史実で時系列順の例)
ナブーの戦い(エピソード1)=日露戦争orボーア戦争
クローン大戦(エピソード2〜3)=第一次世界大戦
ヤヴィンの戦い(エピソード4)=第二次世界大戦初戦
ホスの戦い(エピソード5)=第二次世界大戦中盤
エンドアの戦い(エピソード6)=第二次世界大戦終盤

 以上、歴史や国家のみを見れば、意外に簡単に図式を作ることができそうだ。
 なお、ルーカス監督がモチーフとしたものからインスパイアしていくと日本を出しやすい。何しろ、「ジェダイ=時代劇」であり、オビ・ワンには最初三船敏郎がコールされたと言うからだ。ジェダイのライトセイバー捌きなど、まるっきり時代劇の殺陣だ。他にも随所に日本からモチーフを受けた点が見受けられる。この点から攻めれば、日本を出すことはできるだろう。もちろん、ジェダイをサムライに置き換えることすら可能な筈だ。
 また、原典内の描写から、帝国軍はナチス・ドイツへのインスパイアが色濃く見えており、これを逆に利用することも容易だろう。
 しかし、ナチ=帝国というストレートなインスパイアをしても面白くないし、だいいち欧州だけが舞台となりかねない。そうなっては日本の出番がない。また、アメリカ作品なのに日本を中心に置きすぎるのも考え物だ。
 そこで今回は、少し違った道のりを考えてみよう。

●プロット

 遠い昔、人がまだ宇宙へ進出する少し前のこと、地球という惑星には、英連合王国という巨大な共同国家体が存在した。
 この巨大国家の功罪については諸説あるが、近代において人類社会統合に最も近づいた政治組織であった事は疑いないだろう。
 そして、巨大国家がアーシアン・レベルにまで成長した原因は、大きく二つあるとされている。
 一つは、北米大陸全土を自らの手で長らく統治し続けた事。もう一つは、世界最古の王家を持つ地域を、自らの勢力に飲み込んだ事だ。この二つにより、巨大国家は実質と精神的権威において、真に地球を統治する権利を獲得した言われており、彼らの後継者が以後数世紀にわたり世界に影響を与え続ける大きな要因にもなっている。
 そこでまずは、この巨大国家の大きな転機に発生した戦乱について語るよりも、英連合王国膨脹の過程から少し見ていこう。

 18世紀半ば、その頃世界はイングランドとフランスが欧州の、いや世界の覇権を賭けて熾烈な競争を繰り広げていた。だが、海洋戦略が巧みなイングランドの優位が次第にハッキリし、それは北米での勢力争いでイングランドが勝利した事で決定づけられた。
 しかもイングランドは、戦後戦費の回収を発展した植民地地域から搾取することを可能な限り避け、北米に対しては自らの影響を広く深く浸透させることに腐心した。
 せっかく手に入れた果実を、自ら手放すことになっては元も子もない為の措置だったが、これがイングランドの優位を決定的なものとする。
 かくして広大な英領ノース・アメリカは、英王室を形式上の君主とする準国家として英国の傘下に留まり続け、他の英領と連携してイングランドを大英帝国、巨大な立憲君主国家連合としてのし挙げていく原動力となる。
 その後の世界も、英国一国による相対的優位で進む。一時、ナポレオン・ボナパルトの手によるフランスの隆盛があったが、圧倒的な工業力を持つイングランドの優位は結局動かず、天才戦略家による帝国は四半世紀を長らえることはなかった。
 そして天才が世界の舞台から去って後の世は、まさにイングランドによる巨大帝国である英連合王国のものだった。
 もっとも、イングランドにより成立した巨大帝国は、国家の物理的な肥大により王室の権威は象徴権力としての側面を強め、議会制民主主義と連合国家としての体裁を強める方向性が強くなった。このため「英連合王国」と呼ばれるも、実質においては議会・議員の力が強い立憲君主国であった。そして、立憲君主国という、この世界で最も進み安定した政体を持つからこそ、英連合王国の発展があったといえるだろう。(以下、イングランド、英連合王国=「連合」とする。)
 ナポレオン戦争の総決算となったウィーン会議後、「連合」の勢いは増すばかりだった。理由の一つに、ナポレオン戦争によって欧州中央部が戦場となって荒廃した事、敗戦国となったフランスの国威、国力が大きく低下した事がある。だがしかし、「連合」そのものの巨大な国力が本格的に回転し始めたからこその「連合」の隆盛といえただろう。
 もちろん、出る杭は打たれるという東洋の格言にあるように、ウィーン会議後の欧州世界は英vsその他という図式がであがった。だが、その他の勢力が全て糾合しても相対的に「連合」より弱体だったため、「連合」の繁栄はより大きなものとなる。
 これは、「パックス・アトランティカ」という言葉によって代表され、英本土、北米での無軌道な産業と国力拡大は、資源地帯、市場を求めて「連合」の膨脹は加速させる。
 まさに、惑星規模でのローマの再現だ。
 しかし、「連合」による世界の一極支配と膨脹こそが、「連合」の内部腐敗と空洞化を凄まじい勢いで加速させてしまう。これもまたローマの再現といえただろう。

 「連合」が欧州と北米大陸での覇権を確立させつつある頃、インドを中心としてアジアの進出を強化していた。だが、極めて限定的な交易しか行わない中華帝国に対する交易で「連合」は、著しい輸入超過により巨大な赤字を積み上げていた。
 その紆余曲折の結果が、1840年の「阿片戦争」だ。
 戦争そのものは、圧倒的軍事力をもつ「連合」が圧倒的優位だったが、中華という世界は人によって作られた底なし沼のようなもの。その肉体に槍を突き込んだところで、まったく倒れる気配がなかった。そこで「連合」は、国家の頭脳たる場所を突く、もしくは人質に取ることで戦争に決定打を放とうとした。
 その時注目されたのが、当時江戸幕府による限定的な鎖国の中で平和を謳歌していた日本列島だ。
 日本列島はユーラシア大陸東部、太平洋の北東部の要衝に位置しており、「連合」が北米から軍事力を派遣する時、またとない拠点としての位置にあった。通商上の価値については言うまでもない。
 そこで、ノース・アメリカからの派遣艦隊は日本列島に寄港して、彼の国を強引に開国させてしまう。
 そして「連合」は江戸幕府を強引に開国させた後、大陸に対する橋頭堡として、またアジア・太平洋全体の拠点として日本の傀儡化もしくは衛星国化を一気に押し進める。
 「連合」が日本の衛星国化に際して用いた手法は、抽象的権威を持つ天皇家の利用だ。当時、形式上の権力しかなかった古代王朝の末裔を強く援助して日本国内に混乱を引き起こし、常に天皇家の側に付く姿勢を示して天皇家そのものを自らの中に取り込み、間接的に日本を支配しようとしたのだ。
 この「連合」の策謀は、現政権だった江戸幕府のあまりの無力な外交能力もあって成功し、アヘン戦争翌年の開国から10年を待たずして、日本王国という国を成立させる。その際、英王室と天皇家は婚姻関係を結び、「連合」はアジア・太平洋に強固な橋頭堡を持つことに成功する。
 もっとも、日本を衛星国化したとは言っても、インドなどのように搾取するのではなく、中華大陸進出のための拠点としての活用であった。そして最大の目的が、太平洋への進出を強めているロシアに対する防波堤としての利用だった。
 このため、英国主導での日本近代化は、日本人自身の努力もあって急速に進展し、新国家成立から半世紀を待たずして近代国家として成立するに至る。

 もっとも、北米や日本を中心とした太平洋地域が発展しつつある中、英本国の空洞化は本格化していた。
 理由の多くは、「連合」が世界各地で戦争を引き起こして、国力を疲弊させているからだ。また、巨大な国家故に、新陳代謝や成長が鈍化。内部腐敗が進むのも早ったのが原因だ。
 英本土、北米、日本という三大拠点を用いて世界中の富を搾取して、ロンドンは表面上の繁栄を謳歌していたが、それは晩年のローマ帝国と同じく、見せかけの富の上に立つ斜陽の繁栄だったのだ。
 特に斜陽の繁栄は、「連合」の経済の中心が英本土から北米東岸へ実質的に移動していた事で現れているだろう。そして、発展した植民地に支配階級たるジェントリーの姿はごく僅かで、そこは市民による世界だった。本国や未開の植民地においては、「連合」の精神的支柱であるジェントリーは強い力を持っていたが、「連合」の他の地域では単なる支配の代行者であり、彼らが世界的に見て高潔な支配者であったとしても、現地の人々にとって受け入れがたいのは当然のことと言えた。
 そうした「連合」が急速な斜陽を迎えようとする頃、欧州中原では他の列強による欧州通商連合が成立し、「連合」への挑戦を強めていた。中でも、復権を賭けるフランスと新興国のドイツ、そして太平洋帝国を目指しているロシアの膨脹は、「連合」にとって受け入れがたいものだった。

・初まりの戦い
 20世紀初頭。「連合」は、19世紀中頃より自らの手により頻発させていた戦乱のおかげで、見えないところで大きく疲弊していた。特に南アフリカにアングロ系以外の白人が立てた国に対する戦争では、実質的に全力で戦争に当たらねばならなかったため、一時的な疲弊も大きかった。
 戦争の結果、本国では棺桶に入れられて帰国する若者が増え、物価の高騰が起こった。当然だが、世界の他の地域で戦乱が起きても本国軍を派遣する事は適わず、「連合」は自らに属する国々の自治権と軍備を強めることで対応した。特に、膨脹著しいロシアの矢面に立つ日本の軍事力強化に躍起になった。
 また、戦乱を避けるべく日本人達も奔走し、ロシアも属する欧州通商連合の妨害の前に、苦心の末本国の議会に訴えるも、遠く彼方の事として真剣に受け入れられなかった。
 当然だが、英国の斜陽は列強に付け入るスキを与え、貪欲なロシアは、アジア・太平洋を飲み込むべく、その手を振り下ろす。結果、「連合」の楯となった日本とロシアの間に戦争が勃発する。
これが日露戦争だ。
 戦争は、日本人達の決死の努力と日本人に与えられた「連合」の偉大な科学力、ノース・アメリカなどからの義勇軍によって相対的に優位に進む。途中何度も窮地に追い込まれることもあったが、ポートアーサーの陥落と、その後ほぼ同時に発生した奉天会戦と日本海海戦、そしてロシア帝都での革命運動によって決着した。
 決戦と呼びうる二つの戦いにおいては、陸海どちらかが敗北しても日本の降伏は確実で、それは「連合」の国威を大きく損なうことになっただろう。だが「連合」からの手助けも受けた日本は海では歴史上空前の完勝をし、陸でも現地馬賊の協力もあって勝利を掴んだ。
 結果、巨大なロシアを派手に退けたとして、日本王国は一躍世界に有名になる。中でも、先年崩御した帝の後を引き継いで戦争を指導した若き女帝(ビクトリア女王のひ孫にもあたる)と、宰相補佐官として日本に赴任していたウィンストン・チャーチルの名は、一気に全「連合」および全世界に知れ渡った。
 しかし、この戦争と勝利こそが「連合」暗転の引き金となっていく。

・「帝国」成立
 日本政府補佐官として日本の勝利に大きく貢献したチャーチルは、戦後英本国へ政治進出。自らの血統と血縁関係もあって代議士として急速に頭角を現した。
 特にチャーチルは、自らの議員グループを率いて若くして大臣に昇格すると、腐敗した英国の再編に辣腕を振るい、逼塞感に喘いでいた本国の大衆が迎合した。迎合は、本国並に発展していたノース・アメリカやオセアニア、そしてチャーチルに恩義を感じる日本にも波及し、チャーチルは自らの政治基盤を急速に固めていく事になる。
 そしてチャーチルは、英連合の市民階級の支持を受けて、ジェントリーの既得権益や政治的権限をどんどん削いでいく。
 だが、英国のそうした内政改革を英国の弱体とみた他の列強は、軍備増強と植民地争奪戦を加速する。
 「連合」も大陸脅威論で世論を煽って、自らも未曾有の軍拡を開始。軍拡競争が終末点に差し掛かる直前に、偶発的事件と呼ばれる事件や各国の動きによって、、未曾有の大戦争へと雪崩れ込んだ。
 第一次世界大戦の勃発である。
 戦争は、必然と偶然から「連合」vsその他の欧州列強(欧州通商連合)という図式になり、海峡一つを挟んで大陸勢力と対峙しなければならない「連合」本国は一時窮地に陥る。特に、初戦の海上決戦の戦術的敗退や、首都空襲を受けるなど、開戦当初は準備不足もあって大いに苦戦した。アジアでも、日本が再びロシア軍と対峙し、オセアニアやノース・アメリカからの援軍と共に満州を舞台に苦しい戦いを繰り広げていた。
 しかし、北米での軍需生産が軌道に乗った時点で、「連合」は大規模な反抗を開始する。
 初戦の苦戦の中、チャーチルによって組閣された挙国一致内閣は、その権限を大きく強化した。いっぽうジェントリーたちは、自らの義務感に従い挙って戦争の第一線に向かい倒れていったため、結果として勢力を著しく減退させ、英国の政治地図は戦争の最中に大きく描き変わっていく。
 また、「連合」vs(欧州)世界という図式の戦争に、本国では国粋主義が台頭。歪んだアングロ一極主義が広まっていく。

 開戦から2年、大戦の転機が訪れる。
 戦争が始まってより、西欧中心に位置するベネルクス三国は中立を堅持していた。だが、初戦の優勢が失われつつある欧州通商連合は、武力を用いてすら参戦に傾かせようとした。
 これを「連合」が利用しする。
 自らの側に秘密参戦したオランダに北米製の大上陸軍を送り込んだ「連合」は、戦線の穴を突く形で戦線を拡大。一気にライン川一帯を制圧。仏独の分断に成功する。
 しかし、この一撃を以てしても戦争に決着はつかず、戦争はむしろ無制限戦争の勢いで拡大していく。
 そうした中にあって「連合」宰相のチャーチルは、戦争を無制限に拡大しているのは前線で実質的に軍を率いているジェントリー達だとして非難。市民勢力もこれに迎合して、チャーチルは国内の権力を次々に掌握していく。そしてチャーチルは、遂に首相職を非常時に限り無期限にすることを議会で通過させる。
 これに対するジェントリーは、無制限戦争を遂行するための戦費捻出のための増税で自らの財を消耗し、明日を担う若きジェントリー達を戦争で失って、その勢力を日一日と衰退させていった。

 けっきょく第一次世界大戦は、世界中のシーレーンと資源を我が物とし、世界中の衛星国から大軍と軍需物資を注ぎ込んだ英国の勝利に終わる。
 敵対した各国は、フランス、ベルギーは「連合」に本土の全てを占領されて降伏。ドイツ帝国は市民革命で帝政が崩壊、未熟な民主主義により不安定に民主化。ロシアは革命で帝政が倒れるも、偶然の積み重なりにより社会主義革命も失敗。「連合」が何かをする前に、勝手に内乱に突入していた。イタリアは途中で「連合」側に立って参戦するも、国力の問題から戦後は停滞。「連合」の影響力はむしろ強まっていた。
 こうした「連合」の一人勝ちにより、占領地のベルサイユで開催された講和会議が進む。
 だが、「連合」は敗戦国対して可能な限り寛容な姿勢を示した。
 欧州各国の民族自決こそ強引に推進するも、領土割譲や戦時賠償は形だけのものとするなどして世界から賞賛された。そして世界から賞賛を一身に受けたのが、宰相として戦争を主導したチャーチルだった。
 しかもチャーチルは、国内の固定資産税と累進課税制度を徹底的に強化する事で戦費返済を行い、低所得の市民たちからも大いに歓迎され、それまで特権を享受してきたジェントリーはほぼ息の根を止められる事になる。
 かくして戦後は、「連合」の一極支配が強まった「ベルサイユ体制」が形成される。これは、本当の意味での大英帝国の成立であり、強大な軍事力、経済力を前に世界がひれ伏すことになる。
 しかも、市民からの圧倒的支持によって、チャーチルは戦後も宰相の座にあった。そのうえ、議会での圧倒的多数の票を集めて、戦後不景気を乗り切るためとして挙国一致内閣を継続。
 最終的にチャーチルは、憲法を改定して自らを永世宰相とし、彼による独裁体制が確立する。それは有史上最大規模の国家が、新たに個人を頂く帝国となった瞬間だった。
 そのため心ある人々は、それまで「連合」と呼んでいた英連合王国を「帝国」と呼び慣わし、チャーチルの事を「皇帝」と揶揄するようになる。

・次なる戦いに向けて
 ベルサイユ体制確立後、「帝国」による世界の一極支配傾向はますます強まった。「帝国」だけが世界の海洋をコントロールし、資源地帯や消費市場の過半数を抑えている事が原因していた。しかも、それまで「帝国」と強く対立していた欧州の列強は、ほとんどが一時的であれ牙を抜かれており、とてもではないが10年や20年で劣勢を覆せる状況ではなかった。
 そんな自らの圧倒的優位を確信した「皇帝」チャーチルは、自らの権力と英本国を中心とする支配をより強めていく。
 その象徴が、戦中に育ったアングロ至上主義を強め、アングロ系を重用し、それ以外の民族を抑圧・弾圧した事にある。結果、かつては「連合」に属して共に戦い、今は「帝国」の支配下に甘んじている各国間で格差が開き、不満の温床となった。
 だが「皇帝」はそうした不満すら利用し、宰相直属の警備組織を設立して各地の反抗に対応させる。この組織が正式名称で呼ばれることは滅多になく、黒衣と白衣を着たトルーパーズの群は「皇帝」親衛隊と影で呼ばれ、「帝国」中の民から忌み嫌われた。

 なお、第一次世界大戦後、戦場となった欧州の低迷と自らの経済発展により、太平洋方面の国々は抑圧の中にあっても大きく発展した。特に発展したのは、形式上は独立国となっていた北米大陸の各地と豪州、そして特別に独自の王家を立てることを許されていた日本だった。
 「帝国」本国も、戦争中の「連合」各地の協力によって自らの勝利が得られたため最初は強く出ることができず、これが太平洋地域の発展をさらに促進した。
 だが、無軌道な経済発展はいずれ頭打ちとなり、北米東岸を発祥とする大規模な恐慌を機に「帝国」による各地の支配は一気に強化される。
 最初「帝国」による支配強化は、要するに本国に貢ぎ物を寄越せという経済上のものだけだった。だがすぐにエスカレートしていき、反抗する小国には躊躇無く「皇帝」親衛隊が派遣され、直接支配領にある軍事拠点の強化へと発展した。それが示威行動であるのは明白だった。
・そんな「帝国」の動きに、太平洋各地の反発は日に日に強くなっていった。特に、長年の支配に苦しんできたノース・アメリカ各地が、先の大戦から約20年後、遂に行われた独立宣言とによって「帝国」に反旗を翻す。
 同時に、北米各地は強く結束して「同盟軍」を結成。英国の他の遠隔地の国々も次々に参加。瞬く間に「帝国」は本国を中心とする勢力と、北米を中心とする「同盟軍」に分裂した。
 第二次世界大戦の勃発である。
 もっとも今回の戦争は規模の大きさにも関わらず、どちらも「内戦」に過ぎないと強弁する事が多く、「世界内戦」と皮肉って呼ばれる事もある。

・最後の戦い
 第二次世界大戦は、当初大西洋を挟んで行われた。大西洋各地で海戦と上陸戦が頻発し、一進一退の攻防となった。
 急造の空母部隊による機動部隊戦術など極秘の戦争準備が功を奏して、初戦は戦争を優位に進めた「同盟軍」だったが、世界の過半を支配する「帝国」の優位は動かなかった。しかも「帝国」は、「同盟軍」の事を「反乱軍」と呼んで不気味に反抗の準備を整えつつあった。
 いっぽう政治的劣勢を抱える「同盟軍」は、自らが「反乱軍」と呼ばれないため、政治的正当性をうち立てるべく英王室の血も入っていた日本王国を同盟に引き込み、戦乱はアジアにも波及する。
 そして日本王国では、当時病床にあった現国王に変わり、継承権第一位にあった王女が「同盟軍」の形式上の盟主に祭り上げられ、日本も「同盟軍」の一員として「帝国」の矢面に立つ事になる。
 この「同盟軍」の動きに対して「帝国」が先制。アジア・太平洋へ電撃的に侵攻し、現地の「同盟軍」を一蹴して「南洋要塞」と呼ばれる巨大な軍事拠点を建設。南洋要塞は、同盟軍の対インド洋出撃拠点となっていた豪州南西岸を、巨人爆撃機の大集団で粉砕してしまう。
 その後「同盟軍」は反撃に転じて南方要塞を辛うじて殲滅し、戦線は膠着する。
 だが、初戦の劣勢から体制を立て直した「帝国」の逆襲は凄まじく、「同盟軍」は各地で敗退。最大の拠点となっていた北米東岸地域も蹂躙されてしまう。
 開戦から2年で、今や頼みとなるのは辛うじて維持されている太平洋方面だけとなった。
 そうした中「同盟軍」は、戦争を逆転に導く新兵器の開発に成功する。

 開戦4年目、「帝国」の攻勢を何とか防ぎきった「同盟軍」は、太平洋地域で体制を立て直そうとしていたが、またも「帝国」が機先を制する。
 「帝国」は、南米を迂回して太平洋の要衝ハワイ王国に電撃的に侵攻し、ここに巨大要塞建設を開始。太平洋各地を拠点とする「同盟軍」を分断しようとした。
 しかも「皇帝」は大艦隊を派遣すると共に、自らも閲兵のため同地に足を向ける。
 むろんこれは罠であり、再建されつつある「同盟軍」の機動戦力を要塞と自らの肉体を用いておびき寄せ、伏在させていた大艦隊と要塞を用いて一気に粉砕するのが目的だった。
 また、「同盟軍」が開発に成功した革新的な新兵器は「帝国」も既に有しており、これを相手に先に使わせる事で「同盟軍」の悪逆非道さを政治利用し、政治的な勝利をも演出しようとした。
 そして、罠であることを知りつつも奪回せねばならない「同盟軍」は、再建されたばかりの艦隊をハワイ諸島に向け、決戦の火蓋はまさに切って落とされようとしていた。
 しかし、「帝国」に予期せぬ大いなる誤算があった。
 決戦の直前、必然と偶然からハワイ諸島に入り込んでいた「同盟軍」が先住民たちを取り込み、地の利を得る事に成功したのだ。
 今ここに、長きに渡った戦いがクライマックスを迎える・・・。
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 事前の状況想定にまで持ち込むだけでは文章的に短いと思い、戦争の概容にまで踏み込んでみたが蛇足だったような気がする。
 あと、日本を中心に出すのは無理矢理すぎただろうか。いちおう、ジョージ・ルーカス監督が、日本(映画)に作品内の多くのモチーフを得たとしている点から取り入れてみたのだが…。
 今少し深く練り込めばよかったように思える。

 なお、このプロットの顛末は、北米(U.S.A)を中心とする巨大な太平洋連合、太平洋全体に広がる巨大民主国家の成立であり、日本王家の皇室復帰宣言による巨大な立憲君主国の誕生という事になるだろう。
 つまり、アメリカ製民主主義+世界一古い王家による象徴君主によるアメリカ合衆国成立(この場合ユナイテッド・キングダム・オブ・パシフィック(U.K.P)か?)という、おそらくはアメリカ人があこがれる国の現出と言えるのではないだろうか(苦笑)

 ああ、そう言えばジャバ様を登場させるの忘れてたなあ。ルークやアナキンも、どこで何してるんだろ(笑)

 備考:
銀河共和国:連邦国家化が進んだ英連合王国
銀河帝国:独裁化した英連合帝国
ナブー:日本列島(今回は大日本帝国ではない)
通商連合:他の列強(フランス、ドイツ、ロシアなど)
反乱同盟軍:本土より離反した北米を中心とする太平洋連合軍
エンドア:太平洋最大の戦略要衝のハワイ諸島
ジェダイ:ジェントリー