■解説もしくは補修授業「其の七」

 さて、架空戦記の鬼門ソロモンを何とか切り抜けた聯合艦隊ですが、果たしてそれ以上の進撃は可能でしょうか??
 史実の作戦目標では、「FS作戦」作戦完遂後に、「HI作戦」(布哇攻略)が控えており、どれだけダダ甘に見ても一九四三年春までに布哇を占領しないと日本軍には手の出せないところとなります。「FS作戦」をするなら、年内にしておかなくてはなりません。
 では、ここでの前提となる双方の戦力を少し見てみましょう。
 まずは先行となる日本側ですが、ガ島での寄り道は最低限で済んでいます。ミッドウェー、モレスビーからは日本基地機部隊が連合国の最重要拠点を圧迫し続けています。反対に日本側の一大拠点となるラバウルは安定化し、止めに日本側の母艦航空戦力の損失は最低限に止められています。
 いっぽう防戦するアメリカ軍側は、機動戦力を完全に撃滅されセイラーも激減し、水上艦隊も旧式戦艦以外は再編成が必要なほど消耗しています。さらには米海兵隊一個師団も壊滅しています。要するに、アメリカ軍の機動戦力はガタガタです。
 またこの少しあと(一九四三年春頃)に太平洋の連合国は、約一〇〇〇機の作戦機を太平洋全域で運用していました。ですが、ここでは北豪、布哇に戦力が吸収されるため、南太平洋に振り向けられる戦力は、多く見ても三分の一程度、しかもニューヘブリデス、フィジー、サモア、ニューカレドニアと分散して配置しなければなりません。各地には一〇〇機程度の基地機が展開する、という程度になってしまいます。
 つまり、一見したところ聯合艦隊の「FS作戦」実行を阻む敵は存在しない、とすら極論できてしまいます。

 駄菓子菓子、日本軍は攻勢をしかける事はできません。行きたくとも油がないのです。何しろもともと日本海軍は、油が欲しくて戦争初めてしまったんですからね。史実でもこの頃から燃料問題が表面化しています。
 そして、開戦以来の力の原動力だった空母機動部隊も、小さな消耗が積み重なっているので往年の力は既にありません。総量も開戦時の8〜9割を維持するの精一杯でしょうから、この戦力でハワイやニューカレドニアに殴りかかるのは、勇気以上のものが必要かと思います。職を賭してもどうにもなりません。
 また軍団単位の兵力を侵攻させる大作戦を連続して行えるほどの輸送船舶も、日本には存在しません。その後の維持を考えなければ、FS作戦もHI作戦も可能でしょうが、戦争とはそう言うものではないでしょう。架空戦記とは言え、大戦略(ゲーム)のようなお気楽な戦争をするワケにはまいりません。
 そして、燃料状況だけでも改善されるには、一通り輸送船団が行き来する一九四三年初頭ぐらいまで待たねばなりません。またそれまで無茶し続けた艦艇の整備などを思うと、一九四三年初頭の攻勢再開が妥当なラインです。
 ですが、それだけの時間を与えてしまうと、その間にアメリカ軍は物量に任せて基地部隊が態勢を立て直してしまいます。
 以上の事が、楽観的に見た場合であっても逃れられない現実なのです。

■フェイズ八「第二ラウンド開始」