■解説もしくは補修授業「其の拾八」

 少しは詳細に追いかけてみようと思って始めたら、思わず文章が増えてしまいました。
 ここで語るべき事は、極論してしまうとこの程度です(笑)

 もちろん、史実のマリアナ沖海戦前ぐらいの戦力を維持した連合艦隊(+基地航空隊)と、開戦以来連合艦隊にやられ続けて史実よりも規模の小さい米太平洋艦隊によるレイテでのガチンコ勝負こそがここでのテーマになります。ですが、派手な以外特に特に何もなく、数多ある火葬戦記同様に「こうなったらよかったのになぁ・・・」という無念の気持ちを具現化したという点において、それ以上でもそれ以下でもありません。だから、どこかで見たような展開を多く採用してみました。
 戦艦《信濃》が完成していたり、この世界では沈んでいない《比叡》が参戦していたり(ついでだが《最上級》も欠損無しだ)、防空戦艦や防空巡洋艦が史実より多数いたり、殴り込み艦隊にエアカバーがあったり、天候も砲雷撃戦には都合の良い状態だったり、その他諸々の小さな変化の積み重なりがあります。しかし、すべては少しでも殴り込み成功のために、戦力的な観点からのリアルさを加え、戦いに華を添えるという以上の気持ちはありません。

 そして、ここでの史実の違いの一つが、アメリカ側の台湾沖航空撃滅戦が不十分な結果に終わっており、日本側の台湾、ルソン島周辺の航空隊が米機動部隊の圧力減少によって史実よりも活発な活動が可能な事です。
 この点は、劇中にほとんど出しませんでしたが、米機動部隊が史実の7割程度の規模で、日本側が倍近い戦力を抱えてこのステージに臨んでいるからこそ現出した状態で、ここにもアメリカ側の拙攻が悪い形で出てきています。
 この時期のアメリカ軍に不利になってもらうには、どうしてもアメリカ側の準備不足、態勢の弱体が必須ですからね。

 そしてここで重要な点は、ヘタレのマッカーサーが尻尾を巻いてフィリピンから逃げ出した点です。アメリカ軍全部に逃げ出してもらうためにマッカーサーには生き残ってもらったので、制空権の有無もあって日本の南洋航路は今しばらく維持されます。
 これがないと、その後日本が戦い続けることができませんからね。
 あと、台湾沖航空戦の実状は日本中に知れ渡りますが、レイテで未曾有の勝利をするので、その後日本陸軍は反撃に動き出すでしょう。しかし、マッカーサーが逃げ出すので、これもなし崩しにキャンセルされ、フィリピンで移動中に無為に失われる陸海軍の損失もないものとします。

 また、史実と全く同じ状況だったら・・・という想定を思うと、栗田提督のポジションに西村提督がいれば連合艦隊が任務を何らかの形で完遂するも、この時点で水上艦隊が全滅して海軍が史実よりも早く終戦に傾きやすくなったり、アメリカ軍が大打撃を受けた事でこの後の硫黄島、沖縄での戦いが数ヶ月遅れてしまったり、もしかしたらマッカーサー将軍も戦死して、終戦した頃にはソ連が大挙攻め込んできたり・・・などという架空戦記界のお約束的状況も大いに考察したいところなのですが、ここでは西村提督だけを艦隊司令に据えさせていただきました。
 また、角田提督がこっちに来てしまっているのは、中でも書いている通り日本がマリアナでの戦いで勝利した事で彼が生き残り、その後の単なる人事異動で艦隊司令に返り咲いたという実に日本らしい状況なのです。けど、殴り込みに行く以上、こういった方がいる方が盛り上がりますよね。皆さんもそう思いませんか。

 あ、もちろん角田提督の横には、聯合艦隊司令部から無理矢理やって来た神大佐が、チョビ髭を潮風に晒しながら引きつった笑いを張り付かせているに違いありませんよ(笑)


■フェイズ十九「デスペレート・フロント」