■解説もしくは補修授業「其の弐拾」

 B29による日本本土爆撃とシーレーン途絶がここでのテーマです。
 時期と物量の差を考えると、どうしてもここにたどり着いてしまいますね。

 史実では四四年七月にサイパンが陥落し、十一月から同地域からの爆撃が始まり、四五年二月ぐらいからアメリカ軍の爆撃戦術が明らかに変化します。その半年後には日本の大都市すべては灰燼に帰して、膨大な数の人命と国富・一般財産が失われます。ですがこの平行世界では、四五年春を越えても日本がマリアナ諸島、フィリピン主要部を保持したままです。そこで、支那奥地からの力業としか思えない爆撃が続けられると同時に、サイパンの代換地として日本本土から少し遠方で規模も限られるパラオに基地を構えてもらいました。
 よって、日本本土に対する負担ははるかに小さく、反対にアメリカの負担は大きくなります。
 また、南方からの爆撃開始が史実より半年以上遅れているので、日本本土に対する偵察などを考えると、本格的な爆撃が出来る態勢が整うのは、早く見ても四五年六月以降になります。
 そして大量の機数を一度に送り出せる基地が確保できないので、カーペット・ボミングが日常化する事はありません。日本本土に対する攻撃は、一部軍事施設と軍需工場以外は機雷投下だけとなります。しかし、日本の主要港湾に機雷がばらまかれた時点で、日本の生命線はシャットアウトして、後は手を挙げるより他なくなります。こればかりはどうにもなりません。日本は連合国の磁気機雷など機械式機雷の処理ができませんでしたからね。

 いっぽう日本本土と南方を結ぶシーレーンですが、開戦以来の日本側の連戦連勝によって最初で大きなつまづきをしたため、守勢防御から攻勢防御に移るのが半年近く遅れています。このためアメリカ軍のニューギニアでの作戦が基本的に最低で三ヶ月遅れて動いているうえに、マリアナ侵攻、フィリピン侵攻も大失敗します。さらに凶悪なはずの空母機動部隊はたびたび日本軍に叩かれ、常に史実の三分の二程度の打撃力しかないうえに、航空隊の再編成や損傷して後方に下がっている艦艇の復帰を待たねばならないので史実より活動は不活発になります。加えて日本側の空母部隊は、四五年春の段階でもいまだかなりが健在だとアメリカ軍に誤解してもらっているので、なおさら活動は低調になっています。
 だから四五年春の段階でも、米機動部隊はほとんど日本本土には近寄っていませんし、南方航路にもほとんど現れていません。
 そしてこれらのファクターにより南方航路の状況は、潜水艦による破壊活動以外は史実での約半年近く遅れて推移しており、完全に途絶されるにはフィリピンが攻略されるか、台湾、沖縄に連合国が侵攻するであろう四五年秋から冬を待たねばなりません。
 また、日本側によるフィリピン決戦もアメリカ軍撤退により流れているので、史実のここでの輸送作戦に投入された艦艇が南方輸送にかり出されています。損害も小さなものしかないでしょう。
 しかし、どれだけ楽観的かつご都合主義的に物事を運んでもこれが限界・・・いや、すでに限界を越えてますね。
 ファースト・ガンダムで言えば、ソロモン、ア・バオア・クー戦を痛み分けでジオンが勝利したような状態です(笑)
 と言うわけで、お次は「サイパンよ私は帰ってきた!」です(爆)

■フェイズ二一「ラストバトル」