■解説もしくは補修授業「其の弐拾参」

 派手な硫黄島での戦い。それ以上でもそれ以下でもありません。
 戦力的にアメリカ軍の洋上支援兵力が小さく、日本側がより重武装化され、さらに陣地を強化している以外大きな変化はありません。あと変化があるとするなら日本側に時間的・物的余裕が史実より存在するので、その分硫黄島の防御力が向上しており、栗林兵団全体の抵抗力も強くなっているという事ぐらいでしょう。でないと戦闘開始十日目で日本側の反撃などできません。
 あと部隊配置以外で出しませんでしたが、海軍歩兵少将と言われる太田実少将をこの島に送り込む事で、史実の硫黄島での海軍部隊の先走りを防ぎ、アメリカ軍により一層損害を積み重ねていただくこととしました。恐らく、途中までは擂鉢山で奮闘している事でしょう。

 なお、第一次サイパン戦、パラオ戦、レイテ戦、第二次サイパン戦、テニアン戦、そしてこの硫黄島での戦い、これらすべてを合計するとアメリカ軍の死傷者数は海軍を併せると二十七万人以上、うち戦死者の数はレイテと第二次サイパン戦が効いていて十八万人近くにも達します。
 これは史実の太平洋戦線での戦死者の数倍(※史実は約四万人)の規模になり、欧州戦線の損害で血に馴れたアメリカ政府にとっても、さすがに許容できる人的損害ではないでしょう。
 当然この日本軍の必死の抵抗は、肉を切らせて骨を絶つという形での休戦に向けての布石であり、また同時に日本本土を焼き払わせないための手段になります。
 本土が本格的に焼き払われたら、停戦や休戦どころではありませんからね。
 国が立ちゆかなくなっちゃいますよ。

 あと、日本陸軍の強力な装甲戦闘車両がかなり前倒しで多数出現していますが、日本の工業力・海上交通線が半年長く常態が維持されていると考えれば、ある程度許容できるイフではないかと思います。もちろん先代のハトハトを装備した四式戦車など妄想に近い存在ですが、これぐらいしないと寂しいですからご容赦あれ。
 なお、硫黄島の「ティーゲル」の存在は、プロイセン貴族のようだと言われたバロン西伝説に添えるためのネタであり、「ハッピータイガー」(原作)に対するオマージュのようなもので、これを活躍させるための重戦車部隊だとお思いください。
 きっとハンスもバートルも、無理矢理乗り込んできたバロン西に迷惑しながらも、硫黄島でシャーマンを潰して回っている事でしょう(笑)

■フェイズ二四「停戦」