■戦時賠償艦艇と新生日本海軍

・海軍縮小規定
 日本は、残存大型艦艇の三分の一を戦時賠償として連合国各国に譲渡。
 なお、その中には最新鋭の戦艦、空母、巡洋艦を一隻づつ含める事。分配については連合国各国間で協議。
 また日本は、前記を行った上で以下の条件を満たす事。

 ・建造三〇年以上の旧式主要艦艇の破棄する。(一部例外あり)
 ・建造途中の大型艦の半数の解体する。
 ・以上を行った上の協議で総合的な艦艇保有量(数)を連合国との協議で決定する。
 ・駆逐艦以下の艦艇についても協議の上三年以内に決定
 ・条約期間は条約発効より一〇年間有効。
 ・一〇年後新たに日本と連合国の間で協議する。

 ・艦艇のその後

 ・戦艦
(※どの国も賠償に「大和型」を一度求めるが、アメリカ以外は認められず。また各国も、ドックやコストなどの関係で運用不可能のため諦める。
 「長門」も日本国民の感情面を考慮して対象から外される)

大和 停戦時小破 日本海軍残留
武蔵 停戦時中破 日本海軍残留
信濃 停戦時大破修理中 アメリカに戦時賠償として譲渡後に「モンタナ」として在籍。1995年日本に返還
長門 停戦時稼働状態 日本海軍残留
陸奥 ガダルカナル島沖で沈没。比較的浅いため戦後に調査実施。一部部品が日本に持ち帰られる。
伊勢 停戦時稼働状態 中華民国に戦時賠償として譲渡 「定遠」として在籍
日向 停戦時稼働状態 中華民国に戦時賠償として譲渡 「鎮遠」として在籍
扶桑 停戦時稼働状態 アメリカに戦時賠償として譲渡後、原爆実験艦として使用される。
山城 停戦時小破 イギリスに戦時賠償として譲渡後、屑鉄として処分。売却益を賠償に充当。

金剛 停戦時大破 そのまま解体。ただし部品の多くは残る同型艦用に保存。マストは後に大阪港に保存。
比叡 停戦時中破 練習艦として日本海軍残留
榛名 停戦時中破 練習艦として日本海軍残留
霧島 ガダルカナル島浅瀬で大破着底。その後沈没判定で破棄。戦後日米合同で調査が実施され、一部装備が日本に持ち帰られる。

 ※伊勢(定遠)、日向(鎮遠)は、中華民国に施設がないので日本での定期的なドック入り(主に整備)を行う。

 ・空母
(※戦後一時期は、ほとんどが復員船としての任務に従事。※運用が難しい事から、屑鉄として以外に欲しがる国は少ない)

 大型・中型空母
赤城 停戦時稼働状態 日本海軍残留
瑞鶴 停戦時稼働状態 アメリカの研究接収の後、日本に返還 日本海軍復帰
飛龍 停戦時大破修理中 日本海軍残留
葛城 停戦時稼働状態 日本海軍残留
笠置 停戦時中破 フランスに戦時賠償として譲渡。修理・改装後「ガスコーニュ」として在籍

 建造中空母
阿蘇 建造八二% 一九五二年就役
生駒 建造六八% 解体

 軽空母
隼鷹 停戦時中破 復員船従事後、民間に払い下げられる。民間船として再就役。
瑞鳳 停戦時稼働状態 日本海軍残留
千歳 停戦時稼働状態 イギリスに戦時賠償として譲渡、さらにインド海軍に払い下げられる。
瑞穂 停戦時稼働状態 オランダに戦時賠償として譲渡

神鷹 停戦時大破 そのまま解体
海鷹 停戦時大破 そのまま解体 
鳳祥 停戦時稼働状態 復員船従事後、解体

 ・巡洋艦
(※戦後一時期は、一部が復員船として任務に従事。※各国から要求が集中)

青葉 停戦時稼働状態 日本海軍残留
古鷹 停戦時大破 そのまま解体 
加古 ガダルカナル島で大破かく座。戦後日米合同で調査後に廃棄。一部部品が日本に持ち帰られる。
妙高 停戦時中破 中華民国に戦時賠償として譲渡「来遠」として在籍
足柄 停戦時稼働状態 イギリスに戦時賠償として譲渡後、オーストラリア海軍に移籍して「ブリズベーン」として在籍
羽黒 停戦時中破 日本海軍残留
高雄 停戦時大破 日本回航の後に部品を取り、そのまま解体
鳥海 停戦時中破 日本海軍残留
摩耶 停戦時中破 日本海軍残留
最上 停戦時中破 フランスに戦時賠償として譲渡され、「サン・ペリーヌ」として在籍
熊野 停戦時稼働状態 オランダに戦時賠償として譲渡され、「ドールマン」として在籍
利根 停戦時稼働状態 日本海軍残留

伊吹 停戦時稼働状態 アメリカに戦時賠償として譲渡、研究の後日本に返還。
大淀 停戦時中破 日本海軍残留
能代 終戦時大破修理中 戦後解体
矢矧 停戦時稼働状態 日本海軍残留
酒匂 停戦時稼働状態 アメリカに戦時賠償として譲渡後、原爆実験艦として使用される。

(賠償枠外)
香取 停戦時稼働状態 日本海軍残留
鹿島 停戦時稼働状態 日本海軍残留

※1 五五〇〇t型で残存した五隻(木曾、北上、五十鈴、鬼怒、阿武隈)は、旧式のため残すかどうかは日本海軍に任される。
※2 日本海軍に残留した巡洋艦は、一九六六年までに日本海軍で多くが退役となると、アルゼンチン、チリ、トルコ、インド、パキスタンが譲渡を申込み。各一隻ずつ格安価格で予備部品ごと譲渡され、その後長らく各国海軍の象徴として運用されている。その他多くの艦艇も、退役後はアジア各国に譲渡、もしくは払い下げされている。

 ・駆逐艦
(※賠償対象外。一部が研究のため接収されるに止まる。後の条約で三十二隻、六万トンまで保有)
睦月型以前の残存艦はすべて退役・解体。
吹雪型(各種) 二隻残存 予備艦に格下げ
初春型 一隻残存 予備艦に格下げ
白露型 一隻残存 予備艦に格下げ
朝潮型 一隻残存 一隻残留
陽炎型 四隻残存 三隻残留
夕雲型 四隻残存 三隻残留
島風型 一隻残存 一隻残留
秋月型 六隻残存(三隻建造中) 六隻残留
松型  一九隻残存(八隻建造中) 一六隻残留

 ・潜水艦
(※一部を除き賠償対象外。後の条約で二〇隻、三万トンまで保有。特型を始め潜水空母は、すべて米軍に賠償として引き渡される)
各種 二〇隻残留

■一九五〇年六月 日本軍編成表

 ・海軍
 海軍は連合国に賠償として大量の艦艇が連合国に接収されたが、残存した艦艇と一部新たに就役した艦艇、返還された艦艇により日本独自で再建されている。
 海軍実戦部隊の組織そのものには、大きな変更は行われていない。
 ただし、搭載装備の多くは、アメリカ軍から輸入されて更新している。

第一戦隊(戦艦)   :
 「大和」「武蔵」「長門」
第二戦隊(防空巡洋艦):
 「鳥海」「摩耶」「羽黒」
第三戦隊(防空巡洋艦):
 「利根」「伊吹」「青葉」

第一航空戦隊:
 「瑞鶴」「赤城」(搭載機:一二〇機)
第二航空戦隊:
 「飛龍」「葛城」(搭載機:一〇〇機)

第一水雷戦隊:「大淀」
防空駆逐艦:四隻 艦隊駆逐艦:四隻
第二水雷戦隊:「矢矧」
防空駆逐艦:二隻 艦隊駆逐艦:六隻

第一護衛戦隊:「北上」 護衛駆逐艦:八隻
第二護衛戦隊:「五十鈴」 護衛駆逐艦:八隻

第一潜水戦隊:母船一隻 潜水艦九隻
第二潜水戦隊:母船一隻 潜水艦九隻

対潜航空隊:四個航空隊(大隊)
     (定数約二〇〇機)

軍直轄:
練習空母:「瑞鳳」
練習艦 :「比叡」「榛名」
練習巡洋艦 :「香取」「鹿島」
練習潜水艦:潜水艦二隻

※その他:
 小型の対潜艦艇部隊や掃海部隊、支援艦艇や補給艦など多数が所属。
 工作艦「明石」は、アメリカ軍の強い要求で退役、解体。工作機械などは工廠に移転。

予備役状態
 主要大型艦艇はなし。駆逐艦、海防艦など多数を保有。その後予算増額で一部が現役復帰。

※1 編成上はかなりの規模だが、予算不足から実働戦力は6割程度に過ぎない。
※2 艦艇はそのほとんどが旧来の日本製だが、装備の多くがアメリカから輸入されており、対空、対潜装備の過半は米英の中古品で更新している。
※3 航空機はほとんどがレシプロ機で、ジェット機は試験的にごく少数が実験部隊にある程度。

 ・陸軍
 ※軍縮時の縮小規定など
・関東軍、朝鮮軍その他海外駐留軍の全廃
・実戦部隊としての近衛部隊は廃止
・陸軍は国防に最低限必要な十二個師団に縮小
・うち機甲、空挺師団は一個師団のみとする
・師団の半数は予備師団(戦時動員師団)として、人員は最低限度とする
・外地での活動よりも国内活動に重点を置いた編成・装備とする
・侵攻能力は有しない
・今後連合国各国との共同行動を考え、可能な限り装備・編成の共通化を計る

 ※これ以外に、組織は徹底的に改変が強いられ、特に士官・将校育成の制度はアメリカとほぼ同じものとされている。

・日本陸軍編成(一九五〇年時)
 ・南樺太(第二方面軍)
第七機甲師団
第二機械化師団、第十一機械化師団
 飛行連隊:二隊(直協隊、偵察隊)
 ・北海道・千島(第五方面軍)
第九機械化師団、第五師団、第十師団
 飛行連隊:一隊(直協隊、偵察隊)
 ・本土(第一・四方面軍)
第一空挺師団、第四師団、
第八師団、第十二師団、富士教導旅団
 飛行連隊:二隊(直協隊、偵察隊)
 ・台湾・沖縄(第三方面軍)
第三師団、第六師団
 飛行連隊:一隊(直協隊、偵察隊)

総数二十八万人(実数二十三万名)

 ※各編成規模
 機甲師団(定数一万八千名)
戦車大隊:6    機械化歩兵大隊:3 
機械化捜索大隊:1 自走砲兵大隊:4
 機械化師団(定数二万名)
戦車大隊:3    機械化歩兵大隊:6 
機械化捜索大隊:1 自走砲兵大隊:4
 師団(山岳師団)(定数一万六千名)
戦車大隊:1 歩兵大隊:9 砲兵大隊:3
(※予備師団は3分の1が兵員なし)
 空挺師団(定数八千名)
戦車大隊:1 歩兵大隊:6 砲兵大隊:3
 富士教導旅団(定数六千名)
戦車大隊:2    機械化歩兵大隊:2 
機械化捜索大隊:1 砲兵大隊:3

※1 陸軍装備の80%が米軍が使用していた中古兵器で再武装されている。全体的装備は、米英より5年程度遅れている。
※2 新規装備についても、装備体系の大幅な変更から米軍装備を優先せざるをえなくなっている。
※2 紙上の戦力はともかく、充足率は人員で7割後半、装備は6割にも達していない。
※3 兵員充足については、中華動乱と冷戦構造の激化による徴兵制復活まで改善されない。

 ・空軍
 陸軍航空隊と海軍基地航空隊を統合・再編成して、全く新規に設立。米軍などの動きに合わせて、新たな軍として新設された。設立は憲法改定に従い、「兵部省」正式発足と同じ一九四七年四月一日。
 なお、装備はアメリカから中古兵器が多数輸入されている。特に、発動機に関してはライセンス生産を除いて国産のものは、練習機など一部にしか残されていない。

四個航空集団(八個航空団+八個高射旅団)
 北方航空集団(三個航空団+二個高射旅団)
 東方航空集団(一個航空団+二個高射旅団)
 西方航空集団(二個航空団+二個高射旅団)
 南方航空集団(二個航空団+二個高射旅団)

十六個航空隊(大隊)(定数約一〇〇〇機)
 制空(一〇個航空隊)
 爆撃(六個航空隊)
 輸送(二個航空隊)

 ※一個航空隊
  制空=定数四八機+予備一六機
  爆撃=定数三六機+予備一二機
 ※航空団=二個航空隊

※1 その他偵察部隊など直轄部隊多数と練習飛行隊がある
※2 充足率は概ね7割程度。エンジンをアメリカ製に替えた「疾風」、「飛竜」、「銀河」が主力。輸入は、「F4U」、「B29」、「P80」など。