■全体の概略


 「現代社会で乙女ゲームの悪役令嬢をするのはちょっと大変」、通称(愛称?)「拓銀令嬢」の背景世界は、一見私たちの世界と同じに見えて色々なところが少しずつ違っています。
 歴史、地理、政治、軍事その他多くの点が、一見同じに見えて違っています。
 その際たる存在が「北日本」です。
 ではまずは、私たちの世界と違う点を大ざっぱに挙げていきましょう。

 ・第二次世界大戦中

・第二次世界大戦の経緯が少し異なる
・日本で1944年6月に首相暗殺。その後政変
・日本は1944年10月に連合軍に「無条件降伏」ではなく「降伏」
・日本は1944年10月から連合軍に参加し、欧州に大軍派兵
・ドイツは史実より善戦
・ソ連の攻勢は約1年遅れで、連合軍はノルマンディー上陸作戦失敗
・ドイツは連合軍に原爆を3発投下され、クーデターにより総統が死亡して連合軍に「降伏」(※恐らく「無条件降伏」ではない)

 ・未発フラグ
・フィリピン(レイテ)、沖縄、硫黄島の各戦い
・本土無差別爆撃(殆どされていない)
・シーレーンの完全途絶
・日本に原爆投下
・ソ連の対日参戦
・「ポツダム宣言」受諾

 ・第二次世界大戦後

・日本本土はGHQ(=連合軍)の占領統治を受けていない
・極東軍事裁判がない
・華族、財閥が存続
・連合軍の軍事裁判を警戒して、華族には不逮捕特権が追加されている
・枢密院は拡大する形で残るが、貴族院は参議院に変化
・国家神道は、連合軍の手によって廃止
・「統帥権」問題は、陸海軍を解体して、新たに設立した自衛隊を内閣の下に組み込む事でクリア(恐らく憲法も改定されている)
・陸海軍は1950年頃に解体。別に自衛隊が設立されて合流。
 さらに兵部省が新たに設立
・内務省が解体
・警察(警察庁)は内閣府管轄
・戦前の日本が領有していた場所のその後が大きく異なる
・1953年、樺太島に北日本民主主義人民共和国(=北日本)が誕生し、そして1994年に崩壊して日本に併合
・旧満州国に中華民国が存在

 大きくはこんなところだろうと思いますが、日本は1970年代にほぼ我々の世界(=史実)と似た世界もしくは社会になっていると考えられます。
 作品内での表面上の史実との違いは、「華族」と「財閥」が存続していて「北日本」という民族分断国家があって、そして併合しているという点に集約されています。
 また、国民党が満州に逃げ込んで中国が分断国家の一つになっています。
 しかし、少しでも深く見ていくと、史実の第二次世界大戦の終幕となった「ポツダム宣言」がなく、日本はGHQによる占領統治もないので、恐らくかなり違った状態が各所で成立している筈です。

 作品内でも少し触れられていますが、「憲法九条」は存在しません。それ以前に、「大日本帝国憲法」が残されている可能性が高いでしょう。
 枢密院が拡大されているほどなので、占領軍憲法(=新日本国憲法)の成立する余地がありません。
 連動して「教育勅語」も、現代語訳化と若干の改訂程度で残されている筈です。
 しかし、国家神道が解体されているので、連合軍にかなり言われて、どちらも改訂度合いが大きい可能性も十分あるでしょう。

 また、日本周辺、特に旧領土もしくは植民地に目を向けると、「台湾島」の事が一度も触れられていません。
 「朝鮮半島」も「敗戦による朝鮮半島からの邦人引き揚げ」、と言う程度でしか触れられていません。
 中華地域についての記述も、満州に国民党(中華民国)が存続しているという以外は深く触れられていません。
 本編に関係が薄く影響も低いという理由もあると考えられますが、敢えて避けたのでしょう。(理由は敢えて言いませんが。)

 ただし、日本の総人口という形で、周辺状況に一つの答えが提示されています。
 日本本土で1億2000万人、北日本が2200万人(※ただし、日本人、日系人人口は約半数)という数字です。
 これに対して当時の史実は、日本が1億2700万人、台湾が2300万人程度。
 つまり台湾を足してしまうと、日本の人口が1億5000万人を越えてしまいます。ですから台湾は、日本以外の勢力の領土もしくは自立していると考えられます。

 満州も敗戦で手放したと書かれています。
 しかし「満州戦争」前に、アメリカと日本が帰順で揉めているので、1950年時点では日本人のテリトリーと言えます。
 ですが「満州戦争」で、かなりの数の日本人が攻め込んできたソ連軍の捕虜となって「北日本」に送り込まれているという内容があります。
 邦人引き揚げや領土の受け渡しなどは、「満州戦争」のとその後すぐに行われた事が示唆されています。
 しかしこれ以上は、本格的考察となるので後述したいと思います。