■自衛隊(日本軍)

 日本の軍事組織については、作品内でかなり詳しく紹介されている。
 まずは21世紀初頭の軍備を、作中から概要の抜粋をしてみよう。

・陸海軍が解体され自衛隊が組織されている。
・軍の官庁は、新たに兵部省が組織されている。
・国防予算はGDP(GNP)2%。
・核兵器は保有していない。(北日本除く)
・第二次二・二六事件(1967年)時点では大隊が存在。
 (※史実では1962年にペントミック編成を採用して、大隊編成を廃止。)

 ・陸上自衛隊
・陸上自衛隊全体で見ると全30個師団
・うち即応展開部隊:5個師団
・うち旧北日本軍:6個師団
・近衛師団が存続している(帝都は近衛と第一師団が防衛)
・90式戦車500両、74式戦車800両を保有
・旧北日本軍兵士による、PMCを介した実質的な外人部隊が大量に存在(数万人の規模)
・日本本土の兵力規模は史実の180%程度?

 ・海上自衛隊
・本土近海防衛の他に二個機動部隊を編成できる艦艇数を保有。
・佐世保を母港とする米国機動部隊が存在。
・21世紀初頭の大型空母保有数は4隻。
・『しょうかく』『ずいかく』『そうりゅう』『ひりゅう』の四隻で各空母の搭載機数はおよそ60機程度。
・湾岸戦争の頃は『やまと』が現役。
・21世紀初頭でも記念艦『やまと』が実戦任務に従事。

 ・航空自衛隊
・主力は12個の航空団。
・北日本軍から接収した戦略ロケット軍を指揮下(管理下?)に置く。
・国産航空機と米国ライセンス生産機を保有。

・戦略ロケット軍は樺太のサイロにICBM8発、移動式IRBMが50発配備。
・米国との協定でこれらの廃棄を決定。

 
 見ての通り、史実の自衛隊と比べるとかなり規模が大きい。史実の自衛隊のおおよそ二倍と触れられている。
 著者が半ばお遊びとした上で懸念している通り、果たして史実の二倍の予算で賄えるだろうか。
 また、史実の戦後日本のように、自衛官(軍人)を志願制で維持できるだろうか。
 
 自衛官の定数は、史実では約25万人(※冷戦時代はもう一割ほど多い。)。この世界の自衛隊の規模は、史実の180%〜200%程度。
 陸自の実戦部隊の180%をそのまま当てはめると45万人。
 充足率90%としても、日本本土だけで約40万人の自衛官(軍人)が必要となる。
 防衛大学も、史実の二倍の規模だと一学年で1000人になってしまう。
 これに旧北日本軍が加わるが、陸軍6個師団に空軍、海軍はほぼ解体と考えると10万人程度だろう。
 崩壊前から海外に大量に傭兵に出たり、PMCに万単位の雇用をしている事から考えると、北日本崩壊前は20万人程度いたのだろうか。

 だがはやり、予算より人員(兵員)の確保がネックだ。
 自衛隊自体は、史実と違い国も軍隊も一時的な解体がなく、日本人全体の心理面の史実との違いから、兵士への志願率は史実より高い状態が維持されやすいだろう。
 志願制だったとしても、高度経済成長するまでは食い扶持を得るためという理由になるだろうが、自衛官(軍人)のなり手はそれなりに居たはずだ。
 それでも、史実に近い戦後日本社会だという前提に立つと、志願だけでこの数を賄うのは厳しい。恐らく、いや、ほぼ確実に徴兵制(恐らく選抜徴兵制)が採用されているだろう。
 南北統一後は、北日本人の志願者が幾らでもいるだろうし、今後この世界でも史実同様に自衛隊自体の規模縮小はされるだろうから、21世紀初頭では既に志願制に移行している可能性は高いかもしれない。

 また、階級の呼び方はどうなるのか。
 陸海軍がまだ存在している段階で自衛隊(の前身)が発足されているので、階級も史実と同じ流れになるのだろうか。
 個人的には史実自衛隊の階級(数字の階級)も良いと思っているが、当時の陸海軍の人の反発は強いだろう。
 しかし統帥権など政治の問題が軍の再編に影響しているので、階級は史実自衛隊に沿っている可能性が高そうだ。
 
 
 防衛予算については、GDP(GNP)2%で足りるのか?
 作中の紹介は一種のお遊びで、著者も無理だろうと見ている節がある。

 1990年代からだと、額にして年間8〜10兆円。金額にすると相当大きな数字だ。ソ連崩壊後は、世界第二位の軍事費を使う国になる。
 軍備の金食い虫は、核軍備、空母(機動部隊)、第4世代以後の戦闘機の開発になるだろうか。
 あと史実自衛隊の場合、志願制軍隊だから人件費もバカにならない。
 そしてこの世界の自衛隊は核兵器は保有していないが、金食い虫の空母(機動部隊)を4つも保持している。各部隊の規模も、史実自衛隊のほぼ二倍だ。
 だが逆に二倍の規模が必要だろうか?

 では、この世界の日本軍に必要な軍事力はどの程度かを考えてみたい。
 ごく簡単に丼勘定すれば、史実の自衛隊+在日米軍+満州救援用の兵力が必要となる。
 ただし地域覇権国家としての戦力も必要なので、遠隔地に行ける戦力が追加で必要となる。
 そうなると空母は必須だ。

 常時1隻の空母を戦闘可能状態で洋上(しかも遠隔地)に配備するには、4隻保有するのが理想だ。
 もちろんだが、空母を護衛する艦艇も含めて必要になる。しかもこの護衛には、原子力潜水艦が必要不可欠だ。
 原子力潜水艦も機動部隊の重要な随伴艦艇で、激しく動く艦隊には通常型潜水艦では速度や水中行動力、航続距離の点で随伴が難しいからだ。

 また、5個師団の即応展開部隊をすぐに動かす為には、大量の輸送艦船が必要だ。しかも出来るだけ短い準備時間で動かなければならないので、冷戦時代のアメリカ軍のように、事前に補給物資や車両を積み込んだまま港で待機している事前集積船が多数必要になる。(※これらは、史実の米軍のように湾岸戦争で威力を発揮しただろう。)
 もちろんだが、強襲揚陸艦、ドック型揚陸艦など大型の揚陸艦もかなりの数が必要になる。

 このままでは海上自衛隊に関することばかりになりそうなので、陸海空それぞれを見ておこう。

 ●各詳細

 ・兵部省

 「兵部」とは大蔵と同じく平安時代の役所名。現代風に言えば国防省もしくは防衛省に当たる。
 この世界では統帥権問題の解消の為、自衛隊(警察予備隊など)発足と共に文官組織として組織されたと考えられる。
 なお、軍隊(自衛隊)の文官組織だが、戦前は陸軍省、海軍省と分かれていて軍人が務めていた。時代によっては大臣までが軍人出身で、こいつが軍部の権力拡大に直結していた。
 シビリアンコントロール(文民統制)上で、総理の下に置かれる兵部省(防衛省)は必須の組織だ。

 一方で、自衛隊自体の予算規模が史実の二倍、隊員(兵員)規模も同様となると、史実の防衛省より規模の大きな組織になるのは間違いない。
 史実の防衛省が2万人程度なので、最大で4万人、少なくとも3万人程度の規模になるだろう。
 もちろん、自衛官(軍人)を除いた数だ。
 これは他の官庁と比べると人員規模はかなり大きく、予算規模の大きさも重なってかなりの勢力を持っている事になるだろう。

 そして史実同様に市ヶ谷に本拠を構えているようだから、陸海軍の諸々の組織も多くが戦前の場所を追い出されていると考えられる。
 将校の養成も、史実同様に防衛大学で統合されているのだろう。

 ・核軍備

 南北統合後に北日本の核軍備を廃棄すると記載されているくらいだから、日本自体は核兵器を保有していない筈だ。
 それに第二次世界大戦は連合軍の敵だったので、アメリカが安易に保有を認めるとは考えられない。
 ベトナム戦争くらいまでは、自衛隊(日本軍)そのものを政府も含め、アメリカは厳しく監視していただろう。

 ただし、作中にも書かれているように、日本が自ら地域覇権国家であろうとするなら、出来る限り核兵器は保有するべきだ。
 国際外交上でのプレゼンス、政治の上で、色々と都合がよいからだ。
 誰かの核の傘の下での地域覇権国家など、何かの悪いジョークにも思える。(ドイツ(統一後)の例も有るので、一概には言えないのだが。)
 それに抑止力としての核兵器保有は、相応の覇権国家を目指すならば安上がりの兵器でもある。
 大型空母(機動部隊)を持つ方が余程大変だ。
 この世界の日本は、核兵器を持てない代わりに大型空母(機動部隊)を有しているのだろう。

 一方北日本だが、アメリカが一番警戒する大陸間弾道弾(ICBM)まで保有している。大陸間弾道弾は衛星軌道に至れるロケットと同じなので、人工衛星も保有している可能性も高い。
 そのうえ核兵器だ。
 しかし作中を見ると、作中後半に書かれた内容からはソ連が樺太のどこかに核サイロを建設して、それを北日本が冷戦崩壊で接収したような描写が見られる。
 だが、政治的、軍事的に考えると少しおかしい。
 樺太は敵の鼻面に突きつけられた短剣で、配備するなら射程距離の長い大陸間弾道弾は相応しくない。射程の限られている中距離弾道弾か準中距離弾道弾で十分だし、距離に対する即応性を考えると大規模な兵器は不適当ですらある。
 それにサイロ設置型だと、かなり古いものの可能性まである。
 時代が進めば、車両式、鉄道式で移動型になるからだ。

 それ以前の問題として、政治的にも北日本によるソ連の核兵器接収は普通に考えればあり得ない。ソ連を構成していた15の共和国の動きを見ても明らかだ。ましてや北日本は、属国状態とはいえ別の主権国家だ。
 もし仮に、北日本亡命の手土産だったとしたら、やらかしたヤツは闇に葬られるくらいで済まない。
 経緯は不明だが、核兵器自体は北日本がソ連からの技術援助を受けて開発した形でないと色々不味い。

 それにソ連のものを南の日本が分捕った事にもなり、さらにはアメリカも好き勝手に見ることになると、ロシアととしては看過できない事態だ。
 自分の手の内を見られてしまうのだから、簡単に南の日本による北日本の併合を許す筈がない。最低でも、核の回収を行わないといけなくなる。
 そうなれば、別に一悶着ある事だろう。
 やはり北日本の核とミサイルは、ソ連の援助はあったとしても自力で開発したと考えるべきだろう。

 なお弾道弾は、スカッド程度ならノープロブレム。それ以上になると問題で、一番の問題は大陸間弾道弾。これも核関連技術と並んで、ソ連が友好国にこっそり技術をあげて良いものではない。秘中の秘だ。
 だからこちらも、ある程度北日本が自力で頑張っていないと話しが通らない。
 ただそうなると、南樺太のどこかにロケット打ち上げ施設が存在している事になる。

 南北統合後には多くが不要になるが、日本自体が核兵器を持たせてもらえないのだから、その代替として宇宙開発には史実より熱心な可能性は高いだろう。
 やはり沖縄の嘉手納辺りに、大きな宇宙基地を持っているのだろうか。
 往還機はオーパーツ過ぎるが、自力での有人ロケットくらいは実現して欲しいところだ。

 ・遠距離攻撃手段

 この世界の自衛隊は、核兵器は保有していない。北日本から手に入れたものも解体、廃棄する。
 恐らく弾道弾兵器も保有していないだろう。
 だが、遠距離攻撃手段は攻撃空母だけだろうか。
 恐らくだが、巡航ミサイルは保有するだろう。
 しかしアメリカが、簡単に「トマホーク」を供与、輸出してくれる可能性は低い。

 この世界の日本は国産兵器も史実以上に開発、装備、さらには輸出までするだろうから、国産ミサイルを装備しているのではないだろうか。
 勿論、性能はアメリカのものより劣るだろう。
 しかし核と弾道弾を保有する北日本への対抗の為、敵地の攻撃手段の開発には熱心になる可能性が高い。

 ・軍需産業

 作品が経済中心の話しなのに、軍需産業には意外に触れられていない。GDP2%も毎年国費をつぎ込むので、かなりの市場になる。その上、PMCを含めて輸出や商売も熱心だから、日本経済全体で見てもかなりの規模になる筈だ。
 もっとも、軍需産業は国と密接に繋がっていて、安定している割に苦労が多く儲けが少ない場合が多いので、作品内で触れないのも仕方ないだろう。
 特に兵器開発は技術や経験の蓄積も重要なので、「俄」が首を突っ込むのが難しい。
 一方で日本全体としては、PMCが国内で非難されていない点などを考えると、武器輸出や軍需に忌避感情は少ないと見るべきだろう。
 武器産業も国内で相応に大きいので、輸出も積極的にしている可能性も高い。

 ・陸上自衛隊

 全30個師団という数は、かなり多く感じる。
 史実では最大で13個で、しかも1個師団当たりの規模が小さい所謂ペントミック編成だ。
 この世界は、北日本軍6個師団を抜いても24個師団で、師団がペントミック編成としても史実の陸自の2倍近い。
(※ペントミック:核戦争に対応した編成。自衛隊のものは亜種。アメリカ発祥で、フランスと日本だけが持つ変則的な編成。大規模な通常戦には向かない。)

 30個師団の内訳は、九州北部を中心に駐留する即応部隊が5個、統合前の北海道配備が6個、他が13個(うち近衛が1個)という配分だ。
 最前線になる千島列島には、1個師団が配備されるだろう。また1個師団は帝都防衛の近衛師団だ。(ホントどうやって生き残ったんだ?)
 それでも旧北日本軍を抜いた24個師団は多い。
 空挺団がヘリ団と併せて空挺師団化されていたり、空挺師団、空中突撃師団(ヘリ師団)をそれぞれ別個に持っているのかもしれない。
(※ベトナム戦争に大挙参戦していれば、ヘリコプター機動する大規模な部隊を編成する可能性が高い。)
 富士教導団も、陸自自体の規模が大きい影響で師団編成なのではないだろうか。
 また、戦車師団と機械化師団以外の師団が3個歩兵連隊編成(史実の乙編成)なら、もう少し頭数を減らせられる。
 諸々シェイプさせれば、師団の根幹となる歩兵連隊数が70個くらいで済み、史実陸自の5〜6割増し程度にできそうだ。
(※史実は13個師団。甲編成7、乙編成5、機甲師団1、混成団2。歩兵連隊総数は46個が基本。甲は歩兵連隊4個、乙は歩兵連隊3個が基幹。)

 戦車師団(機甲師団)は、北海道と九州北部の即応部隊に1個ずつだろうか。機甲師団の紹介がされていないので何とも言えないが、機械化師団が機甲師団の可能性もある。
 機械化師団は、作中では北に合わせて3個いると紹介されているが、即応部隊の5個師団のうち2つくらいも機械化師団だろう。援軍が弱くては話しにならない。
 しかし、史実だと機械化師団(機械化歩兵師団)と呼べるのは第二師団くらいで、機甲師団(戦車師団)は第七師団だけだった。
 そこから考えると、編成面でも史実より重装備になる。

 一方で、各師団の所属地域(特に連隊本部)は、戦前の陸軍と基本的には同じになるだろう。
 実際の配備場所は違っている場合が多いだろうが、陸軍を自衛隊に変化させるにしても、史実のように一度完全に解体して数年が経過したという状態ではないので、史実のように変更するのは手間がかかりすぎる。
 それに在郷部隊を支える地域や軍人会を考えると、変更したら反発が強すぎるだろう。
 また部隊を作る時は連隊が基本なので、連隊が戦略単位の基本となるペントミック編成は都合がよい。

 一方、この世界の陸自は、戦車装備率(数ではない)が史実より低いかもしれない。
 史実自衛隊は、冷戦最盛時には定数約18万人、13個師団で戦車を1200両保有していた。
 そのまま二倍にすると、この世界は戦車を2000両以上保有する必要がある。
 一方で90式の保有数は、2003年時点で史実総数の約340両に対して500両と少し多めだ。
 冷戦時代は、部隊規模に対して予算がない為、更新が遅れていた61式に当たる戦車を大量に保有していて、冷戦崩壊後に一斉退役させたなどの影響なのかもしれない。
 それとも、74式も早々に退役させているのかもしれない。74式が90式と同程度の比率で生産されていれば、1200両以上生産されているかもしれない。
 もしくは、2010年代に世界各国で登場した装輪式の機動戦闘車を、既に大量に装備しているのかもしれない。
 北海道の師団と即応部隊の師団は90式が好ましいが、即応師団の一部は展開能力を上げるために軽量の機動戦闘車の方が相応しい場合もある。

 なお30個師団という数字は、冷戦崩壊のままの可能性が高いので、21世紀に入っていくと史実同様に大幅に削減されていく可能性が高いだろう。
 仮想敵の北日本を併合したのだから尚更だ。
 周辺に仮想敵が多いので史実ドイツ軍ほど酷くはないだろうが、北海道に大軍を置く必要もなくなったし、北日本(樺太)ももう少し減らすだろう。内地も過剰だ。
 恐らく、
 即応部隊をそのままとしても、もと北日本軍と併せて20個師団程度で構わないだろう。

 ・海上自衛隊

 空母が4隻もいる。
 しかもデカイヤツが。
 60機搭載と紹介されているが、これが冷戦崩壊前の定数か崩壊後の定数かで大きさが変化する。
 冷戦時代のアメリカ軍の空母だと90機近く搭載しているが、21世紀になると60機代に減っている。
 冷戦時代に60機ならアメリカの攻撃空母より一回り小さいが、21世紀に60機だと同じ規模を有している事になる。

 また攻撃空母を有し、それを本土近海以外にも展開するのなら、原子力潜水艦の保有が必須だ。
 この世界の日本は、核兵器や原子力への忌避感情は低いだろうし、海自(海軍)も大型で高速な潜水艦は大好きなので持ちたがるだろう。
 ただ原潜はお高く付く。
 しかも空母数に対応して整備しないといけない(何しろ機動部隊の随伴艦艇だ)。
 潜水艦については、ソ連海軍の監視などのために静粛性に優れた通常型も一定数欲しいところだ。
 冷戦時代だと、最低数で原潜15、通常型8隻くらい。潜水艦こそが現代戦の主力艦艇なので、しっかり保有したいところだ。
 21世紀になれば、世界的な静粛性の向上と原潜の高いソナー能力を考えると全て原潜でも構わない。(※原潜は持ち前の大電力を利用して、高性能ソナーが装備できる。)
 水上艦艇は、空母の護衛として防空用艦艇を最低でも史実の倍は欲しい。出来れば4倍。逆に対潜艦艇は、史実通りなら十分以上ある。
 そうなると、地方隊込みで50〜60隻と言ったところだろうか。
 アメリカ海軍のように機動部隊の随伴を全部イージス艦にすればかなり数を減らせられるが、イージス艦のお値段を考えると無理だろう。

 加えて、全体のところでも書いたが、即応部隊用に多数の揚陸艦艇と輸送艦、事前集積船が必要となる。
 特に輸送艦、事前集積船が多数必要だ。
 無骨な貨物船や巨大なカーフェリーのような鼠色の艦船が、九州北部や呉の辺りに喫水を下げたまま群れでたむろしている事だろう。

 また、攻撃空母を保有するのだから、航空隊(海自航空隊?)も大規模になる。
 対潜哨戒機も手抜きできないだろうから、史実+空母4隻、強襲揚陸艦用の航空隊という事になる。
 大型空母と同じ数だけの空母航空団、強襲揚陸艦搭載のヘリを中心とした航空隊、加えて史実海上自衛隊と同規模の航空隊が必要なので、もはや「もう一つの空軍」と呼べる規模になる。
 空母航空団には、別に練習航空団まで必要になる(可能なら練習空母も)。
 航空隊の事まで考えると、空母は現役が3隻、予備役か練習空母で1隻くらいにしないと、お財布事情的に厳しい可能性が高そうだ。

 なお、余談に近いが、軍艦(護衛艦?)の名前は漢字とひらがなどちらだろうか? 作品内には『大和』の名が登場していた。
 個人的にはひらがな表記で良いと思うが、旧軍からすぐに自衛隊になっているので漢字のままかもしれない。
 また、湾岸戦争どころかソマリア紛争まで頑張っている『大和』は、史実のアイオワみたいな簡易改装なのか、それとも『征途』のオマージュとしてイージス艦に徹底改装されているのだろうか。
 どうでも良い事なのだが、個人的には知りたいところだ。

 ・航空自衛隊

 12個航空団保有していて、ベトナム戦争頃に組織を拡大したとあるので、この12個は全て実戦部隊だろう。
 そう考えると史実の二倍近い規模になる。
(※史実の冷戦時代は6個航空団+1個飛行隊)

 史実の編成に加えて史実在日米軍の2個航空団、千島防衛に1個航空団、加えて即応部隊用に2個航空団程度は必要だろう。
 合わせると11・5個航空団なので、丁度良い数と言える。
 なお、ごく単純に1個航空団で50機程度保有するので、約600機の戦闘機、戦闘攻撃機を保有している事になる。

 ただし、他も史実の二倍の可能性は少ない。
 高射群(防空部隊)とレーダーサイトは、北日本併合までだと千島列島の分が史実より多いくらいだろう。
 北日本併合後は、北日本の分を追加(吸収・更新)するだけで十分対応できる。
 逆に輸送機部隊は、海外での各種軍事活動や即応部隊の輸送や支援もあるので、史実の二倍以上保有している可能性が高い。しかも長距離機、大型機が増えるだろう。
 ただし、作中では戦車を輸送できるほどの巨大輸送機は保有していない描写がされている。(ロシアからレンタルしていた。)
 その他偵察、教育など様々な支援組織も規模相応の規模になるだろう。

 一方で、どの程度国産機を飛ばしているのが気になるところだ。
 海軍航空隊も含めると、相当な数と種類の戦闘機、戦闘攻撃機を配備しなければならない。
 種類はともかく頭数だけで、史実の三倍近く必要だ。
 世界的に見ても、かなり大きな武器市場となる。

 国内の飛行機メーカーも史実より多く規模も大きい筈なので、この点からも国産機は多い筈だ。
 また、戦後から継続して海空共に国産機の開発は行うだろうから、全時代を通じて国産機の種類はかなり豊富になる可能性が高い。
 また史実自衛隊と違って、攻撃機は普通に保有するだろうから、その点でも保有機種は増えている筈だ。
 政府、自衛隊(兵部省)も、自前での国防の為、メーカーを維持する為にも国産機開発を押すだろう。
 それでも、F-15など優秀すぎるアメリカ製があるし、バブルがあるくらいだから日米貿易摩擦も避けれないとなると、やはり半分程度はアメリカ製になる可能性が高いだろう。
 また時代が進むにつれて新型機の開発コストが跳ね上がっていくので、新型機の種類は減るだろうし、開発する企業も減るのは確実だ。

(この世界に北崎重工は存在するんだろうか・・・。)