■1巻
昭和17年6月5日、聯合艦隊は「MI作戦」を発動。そして作戦は途中までは比較的順調だった。しかし、米空母三隻を撃沈して勝利に酔う攻撃隊の無線機に、巨大氷山空母発見の報が飛び込む。
氷山空母「ハボクック」。パイクリートと呼ばれる特殊な氷を材料としたその氷山空母は、基準排水量859万9500トン、全長1700メートル、搭載機約1000機、人類が作り上げた史上最大の移動兵器だった。
幸いにして米軍側の戦力不足により、全ての力を発揮出来る状態になかったが、無敵を誇った南雲艦隊は壊滅、護衛の米戦艦を易々と撃破した新鋭戦艦の主砲もまるで役には立たなかった。
■2巻
昭和17年8月、米軍の急襲で窮地に陥ったガダルカナル島の日本軍を救うべく、日本海軍は第八艦隊による殴り込みを決行した。米軍の油断もあり奇襲は見事成功するが、作戦成功の直前、その前にまたしても氷山空母「ハボクック」が立ち塞がる。
「氷山空母 ガ島に現わる!」の報に、山本五十六はついに「大和」出撃を決意。総力を結集してガダルカナル島奪回に向け驀進を開始する。
日本軍の奮闘、幸運と気象条件のおかげで、「ハボクック」の撃退に成功するも、米軍は2隻目の氷山空母「ユナイテッド・ステーツ」を投入、米軍が戦いを挽回したかと思われたが、アキレス腱のスクリューを損傷した「ユナイテッド・ステーツ」は立ち往生してしまい、日本軍に捕獲される。
■3巻
ソロモンで敗退した米軍は、その後海軍の機動戦力が不足する事もあって、ジリジリと押し上げる以外大きな動きにでなかったが、「ハボクック」を中心とした艦隊で一気にマリアナ諸島に襲来する。
ここで日本軍は、それまでの作戦で成功した手をさらに洗練させて氷山空母との戦いに挑むが、それを上回る差配をする米軍指揮官の手腕と氷山空母の圧倒的な戦力差もあって、日本機動部隊は壊滅する。
その後ゆっくりと東京に向かう米艦隊、しかし日本側にもソロモン海域で鹵獲した元米軍の氷山空母「富嶽」があり、そしてその指揮官はそれまで謎のルートから作戦案を指示してきた阿合捷一郎。
日米の戦争の天才と、氷山空母同士という未曾有の戦いが、日本列島の北方海域で行われ、ここで日本側の予期せぬ戦術によりアメリカ側が敗退。
一気に海上機動戦力を失ったアメリカは、日本との講和を行うしかなく、ここに太平洋戦争は呆気なく幕を閉じる。
批評・考察?
さて、アッサリ目にあらすじを追いましたが、この架空戦記は、最初に言った通り架空戦記と言うよりも戦前の空想科学小説に非常に近い構図を持っています。
現代版「動く飛行島」と言ったところでしょうか。
ここを間違ってはいけません。でないと、この小説に正しい評価を下すことはできないでしょう。
ここから視点を外してしまうと、粗製濫造されたトンデモ系作品にしか見えません。
もっとも、このコンテンツではそんな点を追いかけるものではなく、理不尽な物体が存在する世界を可能か限り解体していきたいと思います。
・・・がやはりこの化け物について触れておきましょうか。でないと採り上げた意味も半減しますし、何より寂しいですからね(w
さて、お立ち会い。
「氷山空母」。表題の通りこの世界の最重要キーワードは、冗談のような巨体を持った人工氷山による洋上移動要塞の存在です。
氷山空母「ハボクック」は、パイクリートと呼ばれる特殊な氷を材料としたその氷山空母は、基準排水量859万9500トン、全長1700メートル(幅は500メートルか?)、搭載機約1000機を誇るそうです。で、この常軌を逸した物体の建設の為にアメリカは「エセックス級」空母12隻分の建造予算を突っ込んだそうで、小説を見る限り「エセックス級」空母そのものの建造計画も消滅しているようです。
しかもこれだけではなく、この実験艦のような位置に「ユナイテッド・ステーツ」と言う、「ハボクック」の1/4サイズの氷山空母も建造されており、そのどちらもが1942年半ばには稼働状態に入ってるようです。
ちなみに、この世界の「ユナイテッド・ステーツ」は、史実でナサニエル・パイクにより考案され、英国のマウントバッテン卿が「ハボクック」として計画を推し進めた氷山空母と同じもので、私達の世界でも模型実験まで行われました。
そしてこの世界が狂っているのは、この独活の大木(うどのたいぼく)のために、アメリカ海軍の艦艇建造計画そのものが大きな変更を余儀なくされ、「アイオワ級」高速戦艦の建造はされずに「モンタナ級」重戦艦が建造されたり、巡洋艦改造の高速軽空母も少数建造しかされていないようです。恐らく、これら以外にも方々に不健全な影響を与えている事でしょう。
まあ、常識的に考えると、正直にかつ上品に申し上げて、「オンドレ何考えとんねん? アホちゃうか?!」とアメリカ様に突っ込みたくなるのが正直な感想かと思います。そう、常識的な架空戦記と思えば戦略的整合性はどこにもなく、まさしくトンデモの至り、総統閣下もポルシェ博士も紺碧の会も石原完爾も裸足で逃げ出すような莫迦莫迦しい事態です。何事もなく受け入れるのは、転生した諸葛孔明とタイムスリップしたミスター・ジャイアンツぐらいでしょう。
ですが、この世界ではこの氷山空母を米軍が太平洋戦争に投入して、日本軍を踏みつぶそうとするのが現実であり、その目的になります。
また、日米(+独)の航空機の開発状況もかなり変化しており、不遇だった機体や奇天烈なデザインを持った航空機の幾つかが実戦投入されて活躍していますが、この氷山空母を前にしては全て許せてしまうのではと思います。
正直言って、「激!! スーパー・ドレッドノード大戦!」とか言う某ロボットパロディゲームのような作品を架空戦記世界で作り上げれば、ラスボス間違いなしでしょう。私ならこれに「ドーラ」以下ナチの秘密兵器を満載して戦いに挑みますね(w
ただ、これをどうやって作ったのだろうかと言う疑問が、どうしても頭をもたげてきます。
単に氷の塊と判断すると、水上に出ているのは文字通り氷山の一角であり、大半の氷塊が水面下に存在します。そう思うとこれを人様の言う通り動かせるのか、という疑問も強くもたげてきますが、まあ少し「ホンモノ」を見てましょう。
ハボクックを分かりやすく見ると、イギリスが計画した対ドイツ戦用の超巨大対潜水艦用航空母艦であり、他にも荒唐無稽なプランを生んだジオフリィ・ナサニエル・パイクによって提案された「ハボクック」は排水量2,200,000t、全長600m+α、全幅は91m、深さ61メートルのサイズを誇ります。要するに、超巨大ジープ空母、もしくは洋上航空基地ですね。
そして、他者を圧倒する巨体を実現(結局、1/35のミニサイズの実験船が造られたのみ)する為のトリックが、氷でできた船体の構造となります。
また、この氷は、「パイクリート」と呼ばれるパルプを混入して凍らせた特殊な氷で、その強度はコンクリート並に堅いらしく、パルプを4ないし14%混入したパイクリートは摂氏15℃までは融けないということで、これをを積み上げることで船体を形作るそうで、摂氏15℃で大丈夫なら北大西洋での運用はほぼ問題ないでしょう。
そしてパイクの提案では、船体はパイクリートを積み上げて形成、船体を10のブロックに分割して「建造し、1つのブロックは幅約91m、間仕切りの厚さが6mで、舷側及び船底は12〜15mという厚さでした。ちなみに、幅約91mというサイズ決定は、海洋(太平洋)が生み出す波の影響を受けないサイズがここにあるからで、金田中佐の50万トン戦艦のコンセプトもここに立脚しているそうです。だからサイズが似通っているんですね。
そしてこの船の形をした巨大な氷の塊の中央下部に冷却システムを設置し、船尾に合計13基のモーターを備え自走可能とする構造になります。
なお、乗員数は1,590人、200機のスピットファイア、100機のモスキートを搭載予定と、通常の空母機動部隊一つに匹敵します。
まさに、空想科学の産物、科学の勝利と言えるでしょう。机の上ではね・・・。
そう、1/35の実験船の段階で問題を生じたんです。
カナダでの実験では、理論通りパイクリートはそう簡単には融けませんでしたが、しかしそれを積み上げた船体は自重で沈むということがわかり、計画も頓挫したそうです。ま、重い氷を積み上げればどうなるか自明の理と言うことしょうか。
ハイ、夢のない話で申し訳ありません。
で、我らの「ハボクック」はこの4倍のスケールですので、これを額面通り受け取ると長さ約1700×幅約300×高さ(水面下含む)約60メートルの氷塊となってしまいます。
まさに海に浮かべる機動要塞と言えるでしょう。
こいつの前には金田中佐の50万トン戦艦、史実世界最大の巨大タンカーですら霞んでしまいます。これに勝てるのは、佐藤大輔氏が「遙かなる星」で出現させた「トラック宇宙港」だけでしょう(w
もっとも、作者自身が「イロモノ」と断言しているので、全ては意図して作品が構成されており、戦闘展開はオチ以外はむしろ真面目で、日本軍が苦心惨憺して氷山空母を撃退する様が描かれているので、単なる娯楽作としてではなく、架空戦記としても巧くまとまっているかと思います。
では、氷山の事はしばらく忘れて、この世界について見てみましょうか。
と言っても、小説内で世界情勢についてほとんど説明らしい説明を見ることはできません。ここから私達の世界と同じ、という前提条件が成り立ちます。航空機の開発状況の変更や氷山空母誕生と言うイレギュラーの存在はありますが、実際はそれです。
つまり、反日サヨクが言い立てる「15年戦争」の終末期にむけて日本は驀進している、と言うことになります。そして、それを否定するソースはどこにもありません。ドイツとの同盟、満州、支那、仏印進出は言うに及ばず、史実と同じ経路をたどって大東亜共栄圏を手にした段階で小説は始まっているからです。
そして、この世界のザ・デイ・アフターを伝えるソースとして、1944年晩秋からのサンフランシスコでの日米講和会議と1950年頃の朝鮮地方での共産主義勢力を牽制すべくアメリカが氷山空母が再就役するというニュースが紹介されている点です。
また、この世界ではアメリカの氷山空母は完全に作戦不能に追い込まれ、場合によっては撃沈されているかもしれず、どちらにせよ米軍の洋上機動戦力の枯渇により1944年秋には日米は停戦に至っています。
そして史実での情報とこれらのソースから考えられる事は、史実より少しマシな日本敗北、と言う結論にしか至りません。
残念ですが、氷山空母を撃破したぐらいで日本のお財布状況が、日本の戦略的勝利を許してくれないからです。
軍事面から見た場合、日本が戦術的にも戦略的にも勝利したのに、なぜ日本敗北なのか疑問に思われる方もいると思うので、少し考えてみましょう。
まず日米の潜在的な国力差ですが、戦争に関わる全ての要素を計算して1940年頃の時点で10対1程度です。しかもこれには数字のトリック(と言うほどでもないが)があり、日本の人口は1億総特攻とか言われたように、内地を含めた全ての日本領(台湾、朝鮮半島含む)を併せると総人口は約1億人ありましたが、アメリカのこの頃の人口は1億4000万人程度です。
この人的資源の差が、日米の格差を若干狭めているんですね。
また、正面戦力の差もこれに深く影響しており、それらをさっ引いて一人当たりGDPや工業生産力、資源の有無など物理的にどうにもできない数字を比較するとその差はさらに2倍に開く数字も見えてきます。つまり、日米の国力差は20対1ぐらいあります。
もっとも、この頃日米だけの戦争ではなく、枢軸vs連合という構図で、連合国の戦争リソースの過半は枢軸の盟主たるドイツに向かっており、戦前の連合国側の予測より頑張ったとは言え、金額的には連合国にとって日本とは片手間で戦争しているようなものです。
前線の兵士や表面上の戦況からは考えられませんが、実際投下されている国家予算の9割以上が欧州、ドイツに注がれていました。
ソ連や英国は言うに及ばず、アメリカもその国力の過半をドイツに向けていたのです。一生懸命日本と戦っていたのは、支那各勢力ぐらいなものでしょう。
そして、日本は1937年秋から支那での全面戦争に雪崩れ込み、1940年には工業国としては貧弱な生産態勢のまま工業生産はピークに達し、その翌年にはGDPがマイナス成長に転じています。1937年統計で経済が大きく上向きだった筈の日本経済は、支那の泥沼に首まで浸かった結果がこれです。
それに引替アメリカの生産力がピークに達するのは1943年夏以降で、この頃には欧州での結末(ドイツの敗北)も見えたので、余剰リソースが太平洋に向かい始め、1944年には日本にとってどうにもできない程の圧力が加えられ、その1年半後に日本列島は焼け野原となります。
これは日米が史実と同じ歴史を歩んだ場合、決して逃れられない差であり、統計数字の差だけを考えれば日本勝利の可能性は、1枚の宝くじを買ただけで2億円を当てるよりも難しくなります。もしくは、某人型決戦兵器のパイロット適正率よりも確率が低いと言えば、分かりやすいでしょうか(w
さて、この小説内では、このあたりをどう解釈すべきでしょうか。
単純に考えれば、「エセックス級」1ダースの建造費がかかった「ハボクック」が予想外に予算を食い、日本に向けられたリソースの多くが消耗されて、米軍が史実ほどの力が発揮できなかったと解釈するのが自然でしょうか。しかも、1/4サイズとは言え、さらにもう1隻の氷山空母も建造されており、単純に見てこれも「エセックス級」3隻分の予算を食っている事になり、しかも日本に奪われているという体たらくです。
また、移動力が極端に低く燃費の悪い氷山空母は、アメリカの戦術・戦略双方を縛る結果になり、南方での米機動戦力の展開は極めて低調になって、戦術目的が日本海軍の撃滅にすり替えられ、戦略目的も投機性の高い日本本土空襲を選択せざるを得なくなっています。
そして、戦略目的の達成に失敗したアメリカは、氷山空母に頼らない洋上機動戦力を再建するか、日本との戦争を手打ちにするかを迫られ、日本との講和を選んだとされています。
ここから考えると、欧州での戦況にまでこの氷山空母の悪影響が出て、連合国にとって極めて好ましくない状況で戦争が推移していると判断するしか、世界戦略レベルで日米講和が成立する余地は少なくなってしまいます。
そして、その前提の上に立ったとしても、日本の内情は史実とさほど変化ありません。
なぜなら、先にも採り上げた通り、日本経済は日支事変により1940年には崩壊が始まっており、史実では1944年に日本の国富を上回る浪費が行われているからに他なりません。
もちろん、史実ほどひどい状況にありませんから、私達の世界の日本を襲った数々の悲劇の多くが回避されている事になりますが、日本帝国自体と日本経済自体の傷は、既に致命的な段階を迎えています。
つまり日米講和が穏便に決着し、日本が第一次世界大戦後ぐらいの勢力圏を保持でき、アメリカ以下連合国との関係が健全化したとしても、貨幣価値の著しい下落を意図的に行わなければ、膨大な戦時国際により日本の国家財政が破綻するので、日本国内を未曾有のインフレが襲う事になり、この経済危機を補完するためにアメリカ資本の大幅導入と、アメリカからの大規模借款や援助を受けるしかなく、最終的に日本は一度アメリカの経済植民地となるしかないからです。
そして、そうでなければ日本に対して戦略的優位にあるアメリカが、戦争を手打ちにする理由が低く、小説内でも朝鮮半島情勢にアメリカが積極介入すると言う記述でアメリカのアジア進出が端的にそれが示されています。
そう、ファンタジーを排除してしまうと、結局見えてくる光景は日本の戦略的敗北なのです。
では、ここでこの世界の日米講和条約締結時の地図や世界情勢、統計数字上の日本を見てみましょう。
時期としては1945年で、日米の講和会議ですが、太平洋に利権を持っている英国、フランス、オランダ、中華民国も会議に参加し、場合によってはタイなどごく少数の弱小独立国が会議に参加しているかもしれません。アメリカの戦争の正義の確立を思えば、可能性としては高いでしょう(逆にソ連は参加しない可能性が高い)。
そして講和会議であるから、日本の判定敗北が大東亜戦争での総合評価であり、日本としてはボクシングの最終ラウンドで渾身のパンチを決め、ダブルKOで何とか試合をドローにしたと言える状況です。
このため、日本占領地域での日本の主権は生きたままでの講和会議で、日本は全ての国に対して対等の立場になります。これが史実と決定的に違う状況です。
ですから、「三国人」などという不可解な存在は誕生する事はなく、半島の中の人も「日本人」としてそのまま過ごすしかない状況です。
そして、アメリカとしては日本(貧しい半島などは経済的にはアウトオブ眼中)などより支那の経済利権を手にできれば戦争目的の多くは達成できるのですから、日本に対しては1937年9月以降の占拠地域からの無条件撤退と主権の返還、三国同盟からの脱退、日本軍の縮小、日本市場の開放、満州国の連合国への移管、日本の海外領土での国民投票による帰属の決定ぐらいの条件を叩きつけてくるでしょうか。
場合によってはハル・ノートよりも苛酷な条件ですが、絶望的な国力差と青息吐息の国内状況を考え、さらにはソ連や共産中華との対立を思えば英米との関係回復は死活問題ですから、ほぼこの条件を呑まざるを得ず、その代償として日本としては、アメリカに対して貿易最恩恵待遇と大規模なドル借款、技術援助などを受け入れさせるのが関の山でしょう。
で、早ければ会議をしている間にナチは滅ぼされ、米ソによる冷戦構造に突入し、そうでなくてもこの頃にナチの敗北は確定になる戦況でしょうから、アメリカ様としては次なる敵に対処するため、日本とその周辺地域の戦略的重要性を考えざるを得ず、それは彼らが勇躍満州にやって来た時点で思い知る事になるでしょう。ソ連の圧迫を実体験できる上に、すでに支那本土の4割は紅く染まってますからね。
そしてアメリカは自らの中華利権(満州利権)をローコストで維持するために日本をアテにしなくてはならず、ここに反共を旗印にした日米の蜜月時代が幕を開けるという、史実とさして変わらない政治的環境が誕生してしまいます。
これは、日本がどうこうよりも、アメリカが世界大戦に首を突っ込み、欧州でナチが滅ぼされ、英国が没落し、ソ連が隆盛するならほぼ間違いなく訪れる政治的状況で、アメリカの都合により日本の新たなレールは敷かれてしまう事になります。
もちろん、史実との大きな違いもあります。
まず第一は、日本の領土がほとんど攻撃を受けていない点です。戦費も史実より低く済んでます。また同時に日本人の死者の数は特に民間人において非常に少なく済んでます。
日本の軍事力も辛うじて残っています。
露助も日本へ戦争を吹っかけていません。
ヤンキーも日本海軍と遊ぶばかりで、マリアナ諸島にすら上陸していません。
そう言えば、マッカーサーは何をしていたんでしょうか?
など、色々史実より楽観的なファクターが見えてきます。単純に日本人の戦死者・死者の数だけでも三分の一程度に低く抑えられている計算が成り立ちます(本土、沖縄、満州、フィリピン、中部太平洋での戦いがないし、戦争も1年短い)。
軍事力も上記の戦いがないので陸軍主力は健在で、海軍も主力空母以外の多くが生き残っており、軍縮してもなお、軍を再建する背骨となる部分は残される事になります。
また、日本の領土も史実戦後に本土とされた地域以外に、南樺太、千島列島、台湾、南洋諸島は確実に日本の手に残るでしょうし、朝鮮半島、満州での利権も全て失うという事はないでしょう。支那利権についても東西対立と欧米とのパワーバランスの上から、ある程度残る筈です。
市販の架空戦記では、日本の判定負け以上の条件の場合、ステレオタイプに史実アメリカが押し付けた条件のほとんどが採用されている場合が殆どですが、日米「講和」であり、戦争条件が違う以上アメリカが提示する条件も自ずと変化する筈で、私個人としては、この小説の想定内から以上のような光景が見えてくるのではと考えます。
ただ、小説の最後に朝鮮半島の一部が共産化されたような記述が見られますので、この小説の戦後もステレオタイプの史実と似た状況とされているようです。
つまり作者は娯楽作として氷山空母の戦いを書いただけであり、それ以外の事象は全く考慮の外にあったと解釈できるかと思います。
そして小説の性格上からくるソースの少なさから、世界観の解体が非常に難しい、もしくは史実ほとんど同じだよと言ってしまえば済むものと結論せざるを得ません。
まあ、作者にしてみれば、こんな視点から見ることなど全く想像の埒外、むしろ下品だよと言うところでしょうから、これ以上深く詮索するのはよしたいと思います。
では、次の作品で会いましょう。