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ざ・でぃ・あふたー?

 まずは我らが大日本帝国ですが、日支事変がないのでその分の国力の浪費はなく、1936年〜37年にかけての日ソ戦争も10万人単位の戦死者が出ている割には、戦争そのものは実質的に半年程度の限定戦争に過ぎず、この点数年後の日米戦争もほぼ同様で、数年にわたる二度目の欧州大戦も一部の艦隊以外は兵力を派遣してません。しかもどの戦争でも日本の動員能力の低さと陸戦主体の戦争が少ない事から本格的な動員を行ってなく、あまつさえ総力戦と呼びうる戦争にまで事態が深刻化する前に戦争そのものが終わってしまい、結局のところ日本は戦争にあまりお金を使っていない事になります(史実の大東亜戦争、日支事変と比較してだが)。
 もちろん、満州を喪失してそこで甚大な損害を受けていますが、1936年だと現地の日本人の数は私達の世界で1945年にいた数よりはるかに少なく、そこに投下された日本資産もその分小さくなり、しかも戦後も満州の日本資産はある程度日本人の手の中に残り、現地で「日僑」として商売に勤しんでいるようです。
 またこの世界では、日ソ戦争の後日本国内に資本投下が進んだ結果、オリンピック景気が発生して一種の内需拡大が発生、国力の回復に成功しているとの事ですから、満州での物的損害は補完されている事になります。人的被害も、史実の日ソ戦争よりマシな戦闘展開なので、国境近辺以外は逃げるゆとりぐらいはあったでしょうし、ここでは関東州は陥落していませんから、難民化すれど民間人の死者の数はそれ程大きくならない筈です。それに、抑留者はない筈ですし、粛正前のソ連軍が相手なので、イデオロギー問題を原因とする虐殺も少ないと考えられます。

 また、海軍は史実よりも肥大化しましたが、陸軍は日露戦争直前よりも小さな規模にまで縮小され(3単位制の10個師団基幹?)、戦争が終わってしまえば軍全体の出費も程度問題に落ち着き、ソ連と政治的に手打ちになった以上、しばらくの間近隣で戦争が発生する可能性が激減しています。
 要するに、今後10年程はある程度の国家の順調な発展が継続される、と言う事になります。
 しかも、西欧列強との関係は比較的良好で、1941年からのアメリカとの戦争も、双方の常備戦力同士がぶつかっただけの局地紛争程度で手打ちになっている以上その後もアカ以外敵はなく、アカ以外の全ての列強は反共で一致していて、全面戦争でも発生しない限り地理的要因もあり日本の国際的地位は安泰です。
 しかも、アカどもは支那大陸で人の泥沼に勝手にはまり込んで国力を消耗するのに、日本は近隣の武器供給地としてガッポガッポ稼げてウハウハです。
 となると、日本人の所得水準は上がる一方で、産業の発展は農村の余剰労働人口を吸収し、国民の政府に対する不満はおおむね消えてなくなり、アカどもが日本で共産主義革命を画策しようにも、その土壌がなくなっています。
 しかも、日本政府が史実以上に反共主義的な政策を採る可能性は極めて高く、日本国内の理想に燃える共産主義者は完全に殲滅されるか、そうでなくても満州に亡命している事は間違いなく(史実でも監獄内以外では一掃されていたが)、日ソ戦後に満州に渡った軍人さんたちも、満州や支那で骨を埋めることになる可能性は非常に高いと言えます。

 そして、外国(特にアメリカ)からのイチャモンがつかなければ、朝鮮半島と台湾、そしてその他の海外領土がそのまま長く日本領である事は確実で(架空戦記としても実に珍しい状況だ)、史実のように世界中で植民地解放、民族自決が図られるであろう1960年頃までそれらの地域で「日本化」が進めば、時代の流れに乗って同地域が日本からわざわざ離れて独立しようと考えるかと言うと、当時の信頼できそうな資料を見る限りそのファクターは低いと判断でき、少なくとも日本統治以前の人間が人口学的に消滅している台湾は、完全に日本化されている事でしょう。民意としては沖縄と大差ないかと思います。
 朝鮮半島も、半世紀も日本化が進められてしまえば、せいぜい自治国や連邦化による半独立といったぐらいで、何らかの形で彼ら自身が日本に止まろうとする可能性が高く、日本としても反共防波堤最後の砦として朝鮮半島を強く維持しようとするでしょうし、また関東州も反共の最前線として、グアンタナモのごとく保持し続けられる事でしょう。旅順も謎の秘密基地として、同地でその存在を誇示しているに違いありません(w
 そして、全てを楽観的に考えれば、アジアの発展の始まる1980年代、日本帝国は何と人口2億人(台湾と半島その他を含む)を擁する大国としてアジアにふんぞり返っている事になり、北は南樺太から南は赤道、西はスプラトリー諸島から東は日付変更線に至るまでが「国内」という事になり、全ての地域で日本語が通用するという実に痛快な事態になっている可能性が高いと思われます。
 まあ、国内はロクに資源はありませんし、近隣に問題は山積みですが、動乱の続く東アジアで血まみれの大国として君臨する事は間違いないでしょう。支那大陸で対立状態が継続する限り、日本の発展も約束されたようなものです。
 そして21世紀以降は、世界有数の海洋面積を誇りますので、そこでの資源開発から日本がさらに飛躍している姿すら見えてきます。

 ただし、日本人以外の民族(コリアとチャイナ沿岸部移民)を多数抱えることになるので、時代が進んで人の行き来が自由化される頃には、人種の混濁化により日本国全体の治安状況が悪化するのは避けられず、警察力がかなり強化されたものになるのではとも予測できます。警視庁よりも強力な日本連邦警察や重武装警察のような組織も順次整備される事でしょう。それとも憲兵がそのような組織になっているのかも知れませんね。
 あと、満州にいった陸軍の方々には、あまり明るい未来はないでしょうね。このお話の時点ではBT戦車(97式戦車)の満州での共同開発・生産などして仲良しの日ソですが、日本の赤化が難しいと分かった時点でソ連も満州浪人たちを切り捨てるでしょうから、彼らは祖国への帰還も適わず共産満州で生き残るのが関の山で、その共産満州はまず支那大陸に目をむけばならないので、支那人相手の不毛な争いの中で身を磨り減らして朽ち果てていく事でしょう。それとも、傭兵として活躍するなどと言う事があるかもしれませんね。
 また、日本とソ連の満州での水面下の協調姿勢(?)は、日本の赤化の可能性が低くなれば自然と冷却化するでしょうが、日本がアメリカや西欧諸国と一定の距離を置く姿勢を保てば、国際政治力学により何となく関係が維持されるという状況も容易に予測できます。

 で、日ソが活発に暗躍するであろう支那大陸ですが、ここが一番大変です。
 もちろん、ソ連の支援を受けた毛沢東が全てを支配するワケではありません。
 1943年5月に欧州での戦争が終われば、ソ連の兵力の多くが再び支那大陸に戻ってくるのは確実で、私個人が聞いた話では、ロシア人や共産主義者が日本人ほど甘いとは寡聞にして聞いたことはなく、業を煮やしたグルジアの髭親父が壮絶な殺戮戦や焦土戦を指示するのではと思えてなりません。しかも、1940年代なら時代がそれを肯定する暴力的な時代で、いくら何でもそんな事されれば支那大陸の人々も反共的にならざるを得ず、この世界で早々にソ連と仲違いした毛沢東が生き残れたとしても、ただの国粋主義者への転向を余儀なくされ、支那大陸は長江を挟んでの分裂というところでしょうか。
 ただ、長江河口には資本主義列強の牙城である上海があるので、ここをあからさまにソ連が手を付けるとは思えず、上海を治外法権の中立地区とでもなれば面白いですね。
 そして、長江以南の地域に中華民国が成立し、華北を中心に中華民主主義人民共和国連邦(社会のテストで書きたくねー)というような国家が成立して、それまでソ連が手にしている中華世界の全てを連邦国家(モンゴル、内モンゴル、ウイグル、満州も含めるソ連のコピー国家)にひとまとめにして、場合によってはチベットなんかもくっついた赤い人工国家が誕生しているのではと妄想できます。
 で、南支那に広がる中華民国は、蒋介石率いる国民党と毛沢東率いる中華共産党(社会党か何かに変わっているでしょう)による二大政党制の国家が無理からに作られ、西欧と日本の支援を受けつつ何とか存続するという流れが成立するのではないでしょうか。
 ここまで妄想すると、ネタとして面白そうな世界ですね。
 で、それ以外のアジア地域ですが、意外に史実とあまり変わりないのではと思います。
 インドいい加減英国から独立できるでしょうし、インドシナは史実とあまり変わりない苦難の歴史を歩むでしょうし、インドネシアもオランダが一度崩壊している以上、日本が少し後ろから支援すれば、数年のタイムラグこそあるが独立できるでしょうし、他の地域も似たり寄ったりの筈です。
 なぜなら、日本(と英国)としてはコミュニストどもに赤い国を作られる前に、自分たちに都合の良い独立国になってもらわないと非常に困ってしまうからで、フランスなどのようにダダをこねて腕力を振り回さない限りこれを否定する要因は少ないと思います。
 ただしナム戦をするのは、日本の役割になりますけどね。

 そして、世界中に赤い毒電波と殺戮の嵐をばらまく悪の帝国ソ連ですが、史実と同じように見えて実はかなり違っています。
 それは、史実で彼らの言うところの祖国解放戦争がなく、この世界の彼らの戦争は全て海外への侵略戦争で、しかも全てに成功を収めているからです。
 まあ、支那大陸で人の泥沼にはまり込んで、身動きは取りづらいでしょうが、ロシア地域の物的、人的損害がないといのは大きなファクターです。
 恐らくは、史実以上に革命輸出外交を展開し、近隣に対しては軍事力を用いた恫喝外交を展開する事でしょう。
 欧州正面も英仏(+西独)だけでは力不足で、極東も日本だけでは抑えるのが精一杯でしょう。
 そしてここで、我らがヒーローの登場です。

 さて、我らが米帝は、プロレタリアートとブルジョワのどちらの味方につくのでしょうか?
 と言っても、日米戦争での敗戦とその後のゴタゴタで、アメリカ国内はルーズベルト時代の親ソ傾向なくなり、その反動でむしろ反共姿勢が強くなっているのが自然な流れです。
 また、常に市場を欲する我が儘なアメリカ様としては、共産主義のこれ以上の拡大は何があっても阻止しなければならず、一緒にアカどもに立ち向かうからと何とか資本主義諸国と仲直りして、彼らの市場に食い込むしかありません。何しろ、訳の分からない冒険的な戦争では一度失敗していますからね。
 ただ、工業力は史実より少し小さなぐらいですが、資本力はかなり小さなものでしかなく(依然英仏が強い影響力を持っている)、史実のような軍事的行動をしていない点から見ても軍隊の権力も軍産複合体の力も弱くなり、それまでの彼らの行動から国際的な政治影響力も低いので、私達の世界ほどの存在感をアメリカが示す可能性は低くなります。
 そして第二次世界大戦以後の資本主義社会は、英仏以下の頑固な西欧諸国、アジアを抱え込むようになった無定見な日本、そしてスタンドプレー大好きなアメリカの三人四脚で進む事になり、戦後10年ほどは第一次世界大戦後とあんまり変わらない外交状況が続くのではと予測できます。
 要するにアカが広がっただけで、自分たちの縄張り内はたいして変わっていない、と言うことですね。

 ま、アメリカが強大化しない世界なら、それまでとさほど変わらない状態が自然です。

 で、これ以上アカが広がったら大変なのが、国家分断の憂き目を見た国々です。もっとも支那大陸の人々は、アカだろうが何だろうが関係ないし、内戦は伝統行事みたいなもんですので、大変なのは周りの目を気にして何とか生き残らねばならないのドイツです。特にソ連の傀儡となった東ドイツではなく、国家として自立したまま反共態勢の最前線に立たされた西ドイツこそが大変です。
 そしてここは、我らが総統ことヒトラー大統領率いるナチス党が政権を担っており、欧米からの覚えもめでたく資本主義陣営に属して最前線で奮闘中です。
 で、共産主義こそ生涯の敵としてチョビ髭の伍長が頑張ってそうですが、結局のところ史実とあまり変化はないかと思います。
 もちろん違いもあります。戦略爆撃と徹底した蹂躙がされていないので、ドイツの破壊程度と死者の数が桁が違うぐらい低く、西ドイツは政府が存続したまますぐにも次なる対立時代に突入でき、しかも1920年代の最初の赤化で人の出入りも一段落していて、帝都ベルリンは全て東ドイツのものになってます。また、ライン連邦から発展したドイツ連邦共和国(西ドイツ)は、主権を維持したまま西側陣営に属し続けるので、史実のような敗戦での様々な負のファクターもユダヤからの虐めもありません。むしろヒトラーは、ユダヤの救世主として世界史にその名を留める事でしょう。
 まあ結果として、史実よりも力を持ったままのソ連の当面の抑えとしては、丁度良いぐらいというところでしょうか。
 これ以後も我らがババリアの伍長殿は、共産主義の戦いに生涯を捧げてくださり、熱烈な反共主義者としてこの世界の歴史にその名を刻むに違いありませんし、チャーチルに対抗して「マイン・カンプフ・ツヴァイ」とか書いているかも知れませんね(w

 さて、これでだいたい全部見れたでしょうか?
 いや、国連の事とか世界全般のパワーバランスは見ておかねばなりませんね。
 え、イタリアですか? だからいつも言っているではありませんか。マカロニ野郎は論外だって。もちろんカエル野郎も同列ですよ(w

 さて再びお立ち会い。
 同じエルベの握手のパロディで幕を閉じたこの世界ですが、私達の世界と比べると列強のパワーバランスは大きく食い違っています。
 史実では第二次世界大戦直後のパワーバランスは、アメリカが世界の60%ぐらいを占め、それ以外はたとえ戦勝国の英ソでも息も絶えの状態で、しばらくは何も出来ないほどでした。トルーマンがそのままソ連に殴りかかってくれていればと、悔やまれてならない状況です。
 ところがこの世界では、私達の世界のような戦略爆撃や徹底した焦土戦は全然なされていません。
 それどころか第二次世界大戦は、実質2年しかされておらず、欧州列強も本気で殴り合ったのは史実とは少し違った東西ドイツぐらいで、日米戦争に至っては1年未満しかなく、日本やアメリカはまともに戦時動員してすらいません。いや、欧州列強ですら史実ほど戦争にはお金使っていないのは確実です。世界のどの国もお金のかかる戦略爆撃に手を染めていませんからね。
 しかも、戦場となった文明地域はドイツとベネルクス地域だけで(支那・満州は近代的文明価値は高くない)、そこでの破壊すら史実より低くなります。
 そして、アメリカは限定的な日米戦争以外していないので、それ程国富を蓄える事はできておらず、そればかりか中途半端な戦争のおかげでニューディールの後遺症が出て、再び不景気に突入している情景すら容易に想像できます。
 で、これをドンブリ勘定で単純に数値化すると、だいたい以下のようになると思います。

潜在戦争遂行能力比較(1945年・日本=1=5%)
アメリカ 8
ソ連邦 4
イギリス 2
日 本 1
フランス 1
ドイツ 1(西ドイツのみ)
イタリア 0.5
その他 2.5
合 計 20

 この数字はあくまで潜在力なので、実際この世界でのアメリカの数字はかなり低くなり、反対に常備兵力の豊富なソ連は高くなり、海軍力の大きな日英も同様です。軍事力のプレゼンス効果は莫迦にできません。
 そして、上記の表の上位5カ国が、国連常任理事国となり今後世界を引っ張ると予測でき、寄り合い所帯の資本主義社会と一致団結共産主義社会の対立構造を抱えたまま、1970年代には南北対立時代に突入するという、私達の世界と同様の流れに大きな変化はないでしょう(ここでの発展途上国の隆盛と本格的な人種差別問題の浮上は、史実より10年遅れと私はみています)。
 もちろん、米ソによる二極構造でない以上ゆらぎは大きいでしょうし、冷戦解消後アメリカの一人勝ちという事もないでしょうが、共産主義陣営をここまで大きくしている以上、何となくそのまま日本帝国が続いてしまったという以外、日本人の視点からあまり大きな違いはないかと思います。
 それに、核兵器の開発は10年は遅れるでしょうし(英仏日の共同開発と言ったところか)、中東にイスラエルという国家が誕生する可能性も低く、そう思えば私達の世界よりむしろ穏やかな世界かもしれませんね。

 何にせよ、これほど歴史改変された世界は、私のようなひねくれ者にとっては、興味の尽きない世界です。
 そう言う意味もあって、今回この作品を採り上げてみました。

 では、次の作品で会いましょう。