十人十色<其の七>

「おーい!!仙蔵!小平太!長次!」
「大丈夫か!?」
 小平太たちの目の前に伊作と文次郎が現れたのは、ふざけた発言に対して、男達に仙蔵が蹴りをくれてやった直後のことだった。
「伊作!文次郎!無事だったのか?」
 突如現れた2人に3人は目を丸くした。仙蔵は伸した男達を足で蹴りながら中央に固めると、2人のほうを振り返る。
「お前達、襲われたんじゃなかったのか?」
「まあ、襲われたといえば、襲われたってことになるんだけど・・・」
 伊作は曖昧な返事をしながら、文次郎と顔を見合わせる。一呼吸置いて、2人は急に吹き出した。
「どうした?」
「あはは・・・ちょっと聞いてくれる?もうケッサクだよ?」
 伊作は手をぴらぴらと振りながら言う。今度は3人が顔を見合わせる番だった。文次郎がひとしきり笑い終えると、口を開いた。
「俺さあ、試験開始直前にこいつらに声かけられてさ。最初は凄い殺気漂わせてるから身構えたんだけど、なんかいきなり馴れ馴れしく手を振りながら近寄ってきてさ」
 来るなって行ってるのに来るんだぜ?と文次郎は楽しげに続ける。
「危ないって言ったのにさ、こいつら、俺が仕掛けたばっかの地雷踏んじまってさ」
 ドカーン。文次郎は一旦握った手を開いてみせた。ため息をついて、仙蔵が頭に手を当てる。それを見て、伊作も話し始めた。
「僕のとこにも来てさ、最初はこっちも結構いい感じに襲ってきてさ」
「・・・伊作。なんか日本語おかしいぞ」
 呆れながらの仙蔵のツッコミも、伊作はお構いなしに流した。
「で、追い詰められてヤバイ、って思ったんだけどさ。次の瞬間、自分でこけちゃって。あとはもうタコ殴り」
「・・・もういい。聞いてるだけで疲れが出る」
 仙蔵はげんなりした表情で伊作の口を塞いだ。小平太は伊作の口を塞ぐ仙蔵の手をのけて、問うた。
「じゃあさ、伊作たちは今までどこに行ってたんだよ?組むはずだったのに待ち合わせ場所に来ないから、心配したんだぞ?」
「ごめんごめん。先生達に報告しに、学園に帰ってたんだ」
 ね、と伊作は文次郎に視線を送る。文次郎は軽く相槌を打った。
「それに僕、待ち合わせ場所にちゃんと五色米、おいといたよ?」
「俺も」
 伊作も、文次郎も五色米の袋を掲げて見せた。3人はなんとなくいやな予感がした。
「あー・・・あまりにもお約束過ぎて言うのもなんなんだけど」
「何さ」
 伊作は小平太の顔を覗き込む。
「もしかして、伊作が五色米を置いたのってあの木の下?」
「そう木の下」
「やっぱり」
 小平太は盛大にため息をついて、言った。
「その五色米なら、見たよ」
「・・・じゃあなんで・・・もしかして、僕、置き方間違った?」
 いいや、と小平太は首を横に振る。
「多分置き方は間違ってないよ。でも、それがぐちゃぐちゃになってて」
「・・・・・・」
「その上に、何かが這ったあとがキラキラ光ってた」
 全員は無言になった。その中、長次が徐に口を開く。
「俺も、文次郎との待ち合わせの場所で、岩のところにあった五色米を見つけたんだが」
 4人はちらりと仙蔵を見た。長次は続ける。
「上にぬるぬるとしたゲル状の物体が」
「ま・・・たあいつらか・・・」
 4人は、仙蔵の目がカッと見開かれるのを見た。哀れなことに、その怒りは被害者は直接あの2人とは関係のない、例の男達に向けられる。
 なお、その状況について聞かれても、4人はただただ首を振るだけで何も答えようとはしなかったのだった。


 それから3日後。
 教師達の目を盗んで、学園の六年生を早めに引き抜こうとした弱小の忍者隊は解散し、隊員は皆郷里に戻ったとの知らせが学園に舞い込んだ。
 誰かが大暴れしたおかげでめちゃくちゃになった裏山に植樹をしながら、小平太たちは哀れな同業者にそっと手を合わせたのだった・・・


ああっ、スミマセン!石を投げないで・・・ディスプレイが壊れちゃいます。
最初はシリアスに行こうかと思っていたのですが、たまにはこういう落とし方もいいかと・・・
いつもそうじゃん、というツッコミは受け付けませんのであしからず。

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