喧々囂々

「今度こそ、お前の素顔を見せてもらう!!」
「ヘタな詮索は止めて下さい、小平太先輩!!」
 学園内は相変わらず賑やかだった。小平太が三郎を追い掛け回す。
 小平太が三郎の袖を掴もうとした瞬間、三郎の袖からころりと煙玉が落ちた。
 よける暇もなく、視界が真っ白になる。
「意地でもお前の素顔を見てやるからな!!」
 煙の向こうから聞こえる小平太の声に、三郎はため息をついた。
「…たまんないよ、こんなの」
 三郎は再び大きな溜息をついた。

 漸く煙から抜け出した小平太は、周りを見回した。さっきまで三郎がいたところには三郎はおらず、代わりに一年は組の忍たま、団蔵がいた。
「さっき、馬借時間便が届いたんです。小平太先輩宛ですよ」
 そう言って竹筒を差し出す団蔵の肩を小平太はがっしと掴んだ。
「武器を使うなんて卑怯だぞ…三郎」
 どうやら小平太は団蔵を三郎の変装だと思っているらしい。呆気にとられる団蔵から竹筒をひったくると、小平太は言った。
「六年生をなめてもらっちゃ困るよ…」
 そのまま姿勢を低くして足を払おうとする小平太。団蔵は慌ててそれを避けた。
「うわっ…せ、先輩!違います!!僕は本物の団蔵ですってば!!」
 団蔵の必死の一言に小平太は動きを止めた。

 暫くして、落ち着いた小平太はそっと竹筒の中身を見た。
 綺麗な和紙が一枚、筒状になって入っていた。
「誰からですか?」
 横から団蔵がわくわくして覗く。小平太は徐に和紙を広げた。
「ん…と…母さんからだ」
 思わずわあ、と団蔵は言った。美しい和紙に書かれた流れるような文字。文章の内容までは見ないまでも、いかにそれが心を込めて書かれた物かは一目でわかった。
「…俗に言う、『母の愛』ってヤツかな」
 小平太は照れ隠し気味に言った。先程までの腕白な少年はどこへ行ったのか。
 団蔵にはその時の小平太がとても大人びて見えた。
「…裏にも何か書いてあるな」
 表の文章に一通り目を通した小平太は和紙をひっくり返した。
 突如、小平太の表情が凍り付く。
「…おのれ…」
 小平太は急に拳を握りしめると走っていってしまった。
「そんなに慌ててどこ行くんですか、先輩!!」
 団蔵が慌てて小平太を呼び止めようとするが、もはやその声は届かなかった。
「全く…一体何が…」
 呆れて、小平太がほっぽりだした手紙の裏を見る。
 と、団蔵の表情も凍り付いた。
「…ついにここまで…鉢屋先輩も此処まできたか」
 団蔵はその手紙を再び見て溜息をついた。
 そこにはこう書いてあった。
  ――七松小平太先輩
    小さなことにこだわっていると大きな人間になれませんよ。
    現に僕へのこだわりが大きすぎてこの手紙をお母上からだと勘違いしたでしょう?
    まだまだ修行が足りませんね。    三郎
 これでは小平太が怒って走っていくのも当然である。
 団蔵は三郎の(といっても雷蔵に変装しているときの)顔を思い浮かべ、やれやれと首を振った。
「でも、小平太先輩ってからかい甲斐があると思いませんか〜?」
「し、斜堂先生!!」
 不意に後ろからかけられた声に団蔵は慌てて振り向いた。そこには一年ろ組の担任、斜堂影麿がいた。影麿は口の前に人差し指を立て、静かにするように、と団蔵に目で伝えた。そして自分の忍び装束を指差す。
 影麿がまとっていたのは五年生の制服だった。
 団蔵がその人物が三郎の変装だと気付くのに、さほど時間はかからなかった。
「…楽しんでるでしょう、先輩」
 ジト目で三郎を見つめる団蔵。
 そんな後輩を三郎はにこにこして見つめていた。
 忍術学園の一日は、長い。


 いつもなら別ページにあとがきを添えるのですが、今回はそんな気にもなれませんね(爆)
 『自爆記念なんだし、普通の小説じゃ面白くない』というわけで、少しパズル仕立てに挑戦して見事に失敗。
 さて、問題です。この小説に隠されたパズルを解いて下さい。
 答えはこのず―――――っと下にありますので、答えを見つけた方、解らなくて諦めた方はそちらをご覧下さい。

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 答え
  (手紙文を除く)全ての会話文の頭の文字を拾ってみて下さい。
  それでも解らない方はさらにスクロールして下さいね。



























 『小平太、三郎、団蔵。おそまつでした☆』

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