裏切り<終章> 「おや」 結局、父親の代理を無償で引き受けた利吉は、暫く学園に逗留することとなった。ところが、強制送還から十日経って、ひょっこり伝蔵が学園に帰ってきたのである。帰るなり利吉の部屋を訪れた伝蔵は疲労困憊、といった表情を見せていた。先ほどの台詞は、そんな伝蔵を見た利吉の第一声である。 「お早いお帰りで」 「利吉…」 伝蔵は、もはや怒鳴る気力も失せているようであった。その場にどかりと腰を下ろす。 「随分と粋な計らいをしてくれたじゃないか」 「やだなあ。当然の親孝行ですよ」 外面は和やかな親子の談笑であるが、その言葉の裏には強烈な棘があった。2人の視線のぶつかる地点で火花が散っている。 「あのあと母さんが散々用事を言いつけてくれて…実に有意義な休暇だった」 「それはそれはなによりです」 がちゃん。 茶を運んできた秀作が、茶碗を取り落とした。流石の秀作も、二人から放たれる殺気にも似た凄まじい空気を察したのであろう。 思わずそちらを見た伝蔵と利吉に慌てて礼をすると、あっという間に欠片を拾い上げて、秀作は逃げるようにその場を去った。伝蔵と利吉は気を取り直したように向き合う。 「そういえばあの演技は実に見事だったな。お前が庵から飛び出してきて、儂を睨んだときのあの目つきといったら」 「お褒めに預かり光栄です。父上」 利吉は相変わらずしれっと流してみせた。伝蔵はそんな息子を睨む。 「あの目…よもや本音ではあるまいな」 「まさか。演技ですよ。え・ん・ぎ」 利吉は目をそらしながら答える。伝蔵は思わず立ち上がった。 「待て利吉!本当のことを言っているならちゃんと儂の目を見て言え!!」 「…懲りないなあ…」 そんな様子を半助は影から見守っていた。視線の先では、一方的な親子喧嘩が始まろうとしている。 芝居が、山田親子の関係にしこりを残すのは明白な様子であった。 うわあ…なんかすみません。色々と。 最初は山田親子モノが書きたくて始めたような気もしますし、リッキー裏切りネタに一度挑戦したかっただけのような気もします。 結果。 やりたいシーンを切って貼ったみたいになっちゃいました!! まず書きたかったのが三郎さん。三郎さんが利吉さんを尊敬してるってのはオリジナル設定、というかMy妄想です。アニメでも目をキラキラさせるシーンがあったんで…ありかな、と。 次に書きたかったのが最後の山田親子の舌戦ですね。皆が避けるくらいの凄まじい雰囲気を醸しながら静かにケンカする、っていうイメージがあったので。んで土井先生はそれを影でじっと見ているという…(家政婦は見た!!みたいな感じで) 今良く考えたら長次とか文次郎とか小平太とかほとんどでないままに終わってしまいましたね…本当はもっとたくさんキャラを出すつもりだったんですが。主人公達が申し訳程度に出ているのがその名残です。 やり残したことが多いわりに文字数は多めです。さっきカウントしたらスペースを除いて23657字。スペースを含めると24636字。凄いなあ。スペース1000文字分も使ってんのか(行数稼ぎがバレバレです)。 最後になりましたが、応援してくださった皆様、本当にありがとうございました!! メールフォームやweb拍手での御激励が大きな励みになりました。 こういうオチで満足していただけるかどうかは解らないのですが、私なりに精一杯頑張ったつもりです。 これからもぼちぼち精進してまいりますので、どうぞ見守ってやって下さいね。 ●戻る |