私は、例えば、頭上に広がる空を見上げる時、いくつかの雲の行方をみとどける時、木々のざわめきの中にいる時に、私という存在ですら、全体の一部であり、そのことに気がついた時に大いなる安らぎと納得を得ます。
 私たちはそれぞれの内に精神的内的宇宙を持っていますが、他者と他者の間には、様々な壁が存在し、容易に理解しあうことは困難のように感じます。しかしながら、必ず共通するものがあり、根源的な部分で理解しあえるはずだと考えた時に、今回の制作の意図を見つけたように思います。
 そして、それを可能にするためには、制作にあたって「私という存在も全体の一部」という地点が目指すべきものでした。
 自己の表現をできうる限り抑え、作品を通してみる鑑賞者の心そのものに生じる想いを尊重しました。そして、作品の完成とは、常にその人の心の中で行われるものだと考えました。言うなれば作品とは、見る人の心に開かれた、窓のようなものであり、作者は、開けるだけの存在であると言えます。また、人は自らの想いを見る時、もはや窓の存在や開けた人の存在を感じないのと同様に、作者としての私という存在が無化されれば私の制作において理想といえます。


 略歴
1967年  大阪に生まれる
1993年
京都市立芸術大学 大学院 修了