「遠い空の彼方から・・・」
/イラクの子どもたちへ─西村正幸展
/劣化ウランのこどもたち─山口啓介展
/世界の子どもたちの絵画展─日本国際飢餓対策機構所蔵による




"From the distant sky..."
-For Iraqi children; NISHIMURA Masayuki
-Children in the Degraded Uranium field; YAMAGUCHI Keisuke
-Drawings from children of the world; "Japan International Food for the Hungry"(NPO)




山口啓介 西村正幸



会期 2005年5月25日(水)〜6月5日(日)
   休館日なし 時間11:00〜19:00 (最終日は17:00まで)

協賛:住友倉庫

シンポジウム   5月25日(水) 17:00〜18:30
   『戦争被害とその暴力について〜子どもたちのおかれている視点から;芸術の問題として考える』
   パネラー:加藤義夫(インディペンデントキュレーター)、西村正幸、山口啓介、金澤毅氏(ゲスト:美術評論家、成安造形大学名誉教授)
   後援: 名古屋芸術大学

オープニング・レセプション   5月25日(水) 18:30〜


展示スペース
スペースA: 山口啓介
     銅板画とテキストによる版画集『緑化砂 劣化ウランのこどもたち』と、
     主に顔料、樹脂、木版などによる、絵画4〜6点の予定。
スペースB: 日本国際飢餓対策機構(JIFH)
     JIFH(http://jifh.fhi.net/)提供による、飢餓・戦争にさらされた子どもたちによる絵画などを展示予定
スペースC・D: 西村正幸
     スペースC: 絵画、版画、レース等によるインスタレーションの予定
     スペースD: 明かりとオブジェによるインスタレーションの予定




展覧会について
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20世紀美術の黄金期は、1920年代と50〜60年代と言われるが、それは大きな戦争が終わったあとのことだった。
戦争は人間の精神活動である芸術文化を停止させていた。戦争が終結し、芸術家は精神の自由と表現を爆発させた。
芸術文化という精神活動を停止することは、人が人でなくなることに等しい。
今、日本というこの「遠い空の彼方から・・・」イラク戦争を思うとき、芸術文化も破壊されているという気持ちがふつふつと湧き上がる。
(インディペンデントキュレーター・加藤義夫)


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 9.11に始まる米国のイラク戦争の結果、イラクの”silent minority(声なき少数派)”である子どもたちが悲惨な被害を被っている。また、日本政府も米国に追従する形で、イラクに自衛隊を派遣し続けている。
 米国・日本双方の指導者たちにとっては、大義の元には個人個人の存在、特にイスラムの戦争弱者である子どもたちの存在は無に等しいかのようである。

 戦争のたびに、その被害者は”silent minority”である。
 我々人類が美徳として持っているはずの“人を愛すること”は、古今東西のあらゆる芸術分野において、様々に表現されているテーマである。だが、戦争という大義の前に、“愛”は空しく力を持たないかに見える。
 しかし、大義が大事なのではなく、ひとりひとりが大事であることを、戦地から遠く離れて実感の涌きにくい日本にあって、普通の日本人にそのことを訴えかけるために、今回『遠い空の彼方から』という、西村と山口の個展・JIFHによる世界の子どもたちの絵画展という形で、総合的な展覧会を開催する。

 西村自身、”silent minority”というテーマで、観客の身近なことに思いを向けるためのメタファー(たとえ)を用いて、作品を通じてメッセージを放ちたいとの姿勢を持ち続けて制作している。
 今回の『遠い空の彼方から・・・』展は、CASOのAからDまでの4つの空間を使って、イラクの子どもたち及び戦争弱者等に目を向けるテーマの元、西村の個展と山口の個展とJIFHによる世界の子どもたちの絵画展を同時に開催する。

 展覧会初日には、企画者である加藤義夫、西村正幸、山口啓介に、金澤毅氏をゲストに迎えてシンポジウム『戦争被害とその暴力について〜子どもたちのおかれている視点から、芸術の問題として考える』を開催する。
 4名のパネラーは、それぞれイラク戦争に反対し、あるいは戦争と美術のわりについて言及する作品や評論等を通じて意思表明をして来た者であり、JIFHは、一人が一人を助ける“共に生きる”を理念に、25年にわたって、開発途上国の飢餓の現場における自立開発支援や、国内での震災などの緊急支援活動を行なって来たNGOである。

 それゆえ、この企画を通じ、
@美術が社会でなし得る役割があることを、作家・観客双方が再認識し、
A大義のための個人ではなく、個人のための大義であってこそ意味をなすことを、
個や表現の自由が知らず知らずに蝕まれている危機感を持ち、一人一人が何らかの行動を起こすきっかけと
なってほしいと願っている。 (西村正幸)


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 今回の展覧会は、西村正幸氏からのお誘いを受けたものです。
 その契機は、昨年末に東京の文房堂ギャラリーで自分たちが企画したささやかな展覧会に西村さんに参加して頂いたことにはじまります。

 昨年の春から夏にかけて、ネット上で、イラク戦争の劣化ウラン弾にり破壊されたこどもたちの映像を集中的に見ました。自分はこの映像にうごかされるように、一冊の銅板画とテキストによる版画集を制作しましたが、それを年末の展覧会に展示しました。
 そこに偶然、西村さんのイラクの子供たちに寄せる作品が展示されたのですが、このことにより、近年、西村さんはご自身のキリスト教徒としての信条から、イラクの子供たちを主題にした作品を制作されていることを知りました。この展覧会の終わる頃、西村さんご自身から、今回のお誘いを受けた経過がありました。

 現在、兵庫の小さな町にある仕事場で制作していますが、仕事場はなだらかな丘陵地帯にあり、目の前は水田がひろがり、画像でみるイラクの破壊された街並、砂塵の舞う風景と著しく差異があります。
 しかしイラクの破壊された風景は、遠く離れたこの辺境の田舎にも毎日のように画像が送られてきて、理不尽な残酷さが、現在も厳然として存在し続けていることを示します。それは、芸術で生活しているわたし、自分のつくりだす作品、あるいは芸術そのものに、じわじわ突きつけられる鈍くて鋭い感情でした。

 芸術は戦争のような破壊力に無力だと認識し、かつ考えられる様々な難しい問題を検討してもなお、この矛盾した感情の切っ先が制作の動機になっていると思います。 (山口啓介)


山口啓介:
山口啓介展 空気柱 光の回廊
(高崎市美術館、2003)
西村正幸:

『イラクの子どもたちへ』展示風景
(ギャラリーAPA、名古屋、2004)


『イラクの子どもたちへ』
(ギャラリールデコ、名古屋、2005)




出展者略歴
西村正幸

1957:奈良県生まれ。
1981:京都精華大学美術学部デザイン学科卒業。
1983:京都市立芸術大学大学院美術研究科絵画専攻版画修了。
現在、名古屋芸術大学美術学部版画研究室助教授。名古屋市在住。

<個 展>(2000年〜)
2000: O ギャラリーeyes(大阪)
ガレリア・フィナルテ〜名古屋市芸術奨励賞受賞記念〜(名古屋)
2003: エスプリヌーボー(岡山)
"イラクの子どもたちへ";半原版画館(岐阜)
2004: "イラクの子どもたちへ";ギャラリーAPA(名古屋)
"イラクの子どもたちへ";アトリエ倫加(高知)
2005: "イラクの子どもたちへ";ギャルリー・デコ(名古屋)




<主なグループ展>
1983: リュブリアナ国際版画ビエンナーレ(旧ユーゴスラヴィア)
    YES ART (ギャラリー白、大阪)。・・・84年〜90年まで毎年。
    フレンヘン国際版画トリエンナーレ(ドイツ)
1984 ノルウェー国際版画ビエンナーレ
1986: アート・ナウ '86(兵庫県立近代美術館)
1987: NEO GRAFICA (ギャラリー白)。 ・・・90年まで毎年。
    YES ART DELUXE
    (佐賀町エキジビット・スペース、東京 / ギャラリー白)
1989: ARMS 芸術の腕(ハイネケン・ビレッジ・ギャラリー、東京)
1990: 「FROM OUR HEARTS アパルトヘイトに反対する美術展」
    (岐阜県美術館ギャラリー)
1992: seed[失われていた言葉] 中川佳宣、浜本隆司と三人展
    (ノブ・ギャラリー、愛知)
1993: エジプト国際版画トリエンナーレ招待出品(国立美術館、ギザ)
1994: 現代の版画 1994(渋谷区立松濤美術館)
1995: The Tree, Part U
    (Sasakawa Peace Foundation Gallery, Washington D.C. U.S.A.)
1996: International Work-shop for Visual Artists '96 in REMISEN-BRANDE
    (The City Hall of Brande, Denmark)
    『トピカ;日本の現代美術が1100年のハンガリーに挨拶する』
    (エステルゴム王宮博物館、エステルゴム/
    フェシュテティチ宮殿博物館、ケストヘイ、ハンガリー)
1996.6〜1997.3: 日航財団『空の日芸術賞』を受賞し、ドイツに研修。
2000: 1999年度 名古屋市芸術奨励賞受賞
2001: 『MAXI GRAPHICA EXTENSION』(京都市美術館別館)
2004: 『版画を読む〜画層と色層の冒険〜』(文房堂ギャラリー、東京)

『版画を読む〜画層と色層の冒険〜』
(文房堂ギャラリー、東京)展示風景、2004年

山口啓介
1962年兵庫県生まれ
東京と兵庫で制作、在住。

<最近の主な個展>
2002年 山口啓介展 植物の心臓、宇宙の花 (西宮市大谷記念美術館)
2003年 山口啓介展 空気柱 光の回廊 (高崎市美術館)

山口啓介 「 <DU child> の core」 2005 木版、モノタイプ、ミクストメディア





展示風景

 劣化ウランのこどもたち─山口啓介展


 世界の子どもたちの絵画展─日本国際飢餓対策機構所蔵による



 イラクの子どもたちへ─西村正幸展

イラクの子どもたちへ
...for the Iraqi children

戦争反対と言う前に、自分の身近な人がこの世から突然消え去る悲しみを想像してみてはどうでしょうか。

『花はどこへ行った』『風に吹かれて』『山上の垂訓;平和をつくる者』『スターバト・マーテル』『日本国憲法第九条』など、 今回のテーマは、身近におこるかもしれない悲しみに置き換え、イラク戦争の悲惨を自分のこととして思い至らせるための“メタファー(隠喩)としての言葉”によるアレゴリー(寓意)です。
モチーフとなる欧文は、様々な美術家が書いた文章やサインのサンプリングを、“メタファーとしての言葉”として再構成しました。
また、『日本国憲法第九条』は、身近な16名の人たちに九条全文を書いてもらい、それらを再構成しました。