「slow」

立嶋滋樹 TATESHIMA Shigeki





・会期  2005年11月29日(火)〜12月11日(日)
       休 み:なし
       時 間:11:00〜19:00(最終日のみ17:00)

・会場  海岸通ギャラリー・CASO C室
・協賛  住友倉庫

 絵画作品。


 「slow」2003年 キャンバスに油彩 291×112cm

 大阪で大きな絵を展示するのは久しぶりですので楽しみにしています。
 2001年からslowというタイトルの作品を作っていますが、それは私が制作のきっかけとして「時間」に固執していることに気がついたので選んだ言葉です。
 風景の中から絵に描く形を見つけていますが、その空間を再現したいという欲求ではなく、その動き、うつろいといった様なものに惹かれている自分に気付いたということです。私にとって時間とは不思議なものとしてあるだけで、難しい考察など出来ませんが、すべてを同じ状態に留めないという考えを持たらします。目にする光景はすべて移り変わる途中の状態だという考えです。
 私の関心は画面に描く全てのものの関係を明確にすることではなく、むしろ不確定を内包させることです。
 うつろうが故に美しい。目に映るその途中のもの達を、画面に示したいという欲求です。
 「スロー」はそのキーワードです。150号の油彩を中心にした展示です。

■ お問い合わせ、作品写真等はご遠慮なくCASOへご連絡ください。
CASOホームページ http://www.cwo.zaq.ne.jp/caso/index.html
立嶋滋樹ホームページ http://www.yo.rim.or.jp/~ist/






■評論
藤木 周 (現代芸術論 芸術批評誌『リア』編集委員) 2003年12月

・2003年12月23日〜2004年1月4日
 [Rejional Standard 小西祐司×立嶋滋樹] 展 紹介文

  立嶋滋樹のペインティングの場合、大きく広げられた浮遊感のある色面を背景に、刻印されたような線が置かれることで、画面が構築される。印象は植物的な時空の広がりであり、モネ的な懐の深さを感じさせる。
 ところが立嶋の関心は、コップのモチーフに遡る「遠近」にあるのではと考えたときに、立嶋の絵づくりに沈潜する野心に、ペインティングを視る眼が触発されていく。
 オールオーヴァーに浮遊感のある色面が描かれている。これを垂直に立てられたキャンバスに壁のように視ることになるが、この色面は本来、水平面として作られているのではないか。これに気付くとき、視ることはめまいのような感覚を覚える。 画面に重ねられる3つのレベルは、遠景・中景・近景のように見立てられ、オーソドックスに向こうへと奥行をもたらすのではなく、浮き上がろうとするようで、視る者はどこかの瞬間に転倒するようなめまいを感じる。画面に刻み込まれたような線の在り方は、この転倒を防ぐ錘のようで、留められた線の仕事もまた興味深い。
 これは絵画を知悉した者の仕事と言っては作家を祭り上げてしまうが、立嶋がペインティングに何かを掴んでいることは確かである。


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梶谷 真司氏 Shinji Kajitani(哲学) 2001年2月

立嶋滋樹個展 [SLOW] 紹介文
・2002年3月26日〜4月5日
  ギャラリー・デコ
・1999年7月6日〜11日
  番画廊

「体験の緩やかさ」
最近の立嶋さんの作品は、山水画ではないかと思う。
山水画はシンプルな線と濃淡から「間」を出現させる。しかしそのシンプルさ、寡黙さゆえに、「間」はかえって雄弁たりうる。立嶋さんの表現にも、これに通底するものが認められる。どちらも、そこには直接描かれていない「何か」が、豊かに映し出されている。
 ではこの映し出されるものとは、いったい何だろうか?かつて立嶋さんは自分の作品について、「確かに存在し、不確かである」と語っていた。一見謎めいた言葉に思われるかもしれないが、こうした言わく言い難いものは、実は意外に身近にある。たとえば、風や光がそうだ。あるいは音の響き、時間、空間、雰囲気、感情、生命・・・。いずれもそれじたいは見えず、捉えどころがない。だが目の前の景色、周りの空間、多くの体験の中にはっきり感じられるもの。立嶋さんの作品から浮かび上がるのは、このような「何か」、それらが渾然一体となったものではないか。
 今回のタイトルは「SLOW」。「緩慢さ」とは元来、時間的カテゴリーだが、ここではそれがもっと拡張されている。SLOWな風、SLOWな光、SLOWな響き、SLOWな空間、SLOWな雰囲気、SLOWな感情、そしてSLOWな生命・・・。それはきっと、体験の緩やかさだ。
 急激に加速する時流の中、立嶋さんは「SLOW」という位相から、多様な次元を静かに紡ぎ出そうとしているのだろう。


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安黒 正流氏 Masaru Aguro (雑誌「展評」創刊号) 99年9月

・1999年7月6日〜11日
  ギャラリー・ココ個展

「静かなゆらぎの快感」
画面がゆらいでいる。
微かで、ゆったりとして、デリケートな、ゆらぎである。
性急であったり、過激であったりはしない。視覚を楽しませ、くつろがせ、見ることの喜びをもたらせてくれる、ゆらぎである。
その、ゆらぎを、ゆったりと追っていくとき、日頃は、現代生活を生きるための、過剰な情報を取捨選択して取りこむことに駆使されている視覚が、純粋に見ることの快楽を取り戻す。明晰な絵画だといえるだろう。
余分な情景やイメージや構成は排除されている。視覚が、ゆらぎに集中し、ゆらぎに吸いこまれるように、細心に準備されている。
余分な要素が、視覚を引き裂いて視覚の集中を乱すことがない。
画面は、視覚が、静かにゆらぎに陶酔できるような、簡素で静謐な環境をつくっている。
この4、5年、コップをモチーフにしている。モチーフという言葉は当たらないのかも知れない。作者自身は「コップのシンプルな形態を絵画空間への入り口にもちいています」と、コメントしている。それ以前、立嶋は、抽象形態で絵画空間をつくっていた。しかし、抽象図形はイメージを呼び起し、意味を考えさせ、空間を複雑にする。より、端的に率直に、絵画空間のゆらぎに視覚を集中させるための形として、コップが採用された。簡略な線で描出されたコップは、ただのコップとして見る者の意識に収まって、視覚や知覚に、余分な負担をかけない。
 眼は動きに魅かれる。現実空間の中でも、動きは、眼を楽しませる。平面上の抽象化された世界である絵画でも、動勢は、作品を成り立たせる重要な要素である。実際の動きと、画面上の動きと。両者の魅力の質の違いを説明することは、わたしの能力に余る。しかし、絵画空間の動きには、現実の動きを超えたすばらしさがあると思う。純化された動きに視線を誘う、立嶋の作品は、そうした絵画空間の豊かさが健在であることを、改めて、信じさせてくれるものだった。立嶋が最も美しいと思った絵は、デュシャンの「階段を下りる裸婦」だそうだ。
 尾崎信一郎氏は、1990年に、まだ大阪芸術大学に在学中だった立嶋の、第2回の個展を、早くも、美術手帳誌の展評でとりあげている。フォーマリズム絵画の90年代の展開の予感を、立嶋の個展に読み取る趣旨の展評だった。なかで、尾崎氏は、立嶋のマティエールつくりの巧みさに注目していた。今回の作品も、マティエールは美しい。しかし、多分、90年にそうであったろうようには、今は、マティエールはめだたない。マティエール、色彩、形態、そして空間が滑らかに溶け合い、負荷なく交流する、統一体としての絵画作品となっている。そこに、90年代に青春を過ごした立嶋の、順調な成長を見ることができるだろう。



立 嶋 滋 樹 Shigeki Tateshima
1968 三重県四日市市生まれ
1991 大阪芸術大学美術学科卒業
     大阪市在住
個展
1989 ギャラリー白(大阪)
1990 ギャラリー白(大阪)
1991 あべの近鉄(大阪)
     番画廊(大阪)
1992 番画廊(大阪)
     ギャラリーココ(京都)
1993 ひらかた近鉄アートギャラリー(大阪)
     番画廊(大阪)
1994 番画廊(大阪)
1996 葵画廊(三重)
1997 ギャラリー源(福岡)
     ギャラリーココ(京都)
1999 ギャラリーココ(京都)
     ギャラリー源(福岡)
2000 ギャラリーエスプリ・ヌーボー(岡山)
2001 番画廊(大阪)
     ギャルリーデコ(名古屋)
     ギャラリーエスプリ・ヌーボー(岡山)
2002 ギャルリーデコ(名古屋)
     番画廊(大阪)
     ギャラリーエスプリ・ヌーボー(岡山)
2003 ギャルリーデコ(名古屋)
2004 ギャルリーデコ(名古屋)
     ギャラリーエスプリ・ヌーボー(岡山)
     itohen(大阪)
2005 ギャルリーデコ(名古屋)
     ギャラリーキットハウス(大阪)
     ギャラリーunseal(東京)




「slow」2005年 キャンバスに油彩 181×227cm

主なグループ展
1989 NEW FACE展(ギャラリーVIEW/大阪)
1990 第8回現代版画コンクール(府立現代美術センター/大阪)
     版画にこだわる(番画廊/大阪)
     イエス アート(ギャラリー白/大阪)
     新世代の版画家たち(ギャラリーココ/京都)
     大学版画展(町田市立美術館/東京)
1991 期待の新人作家展(りゅう画廊/東京)
     Tae-jeonトリエンナーレ(大田/韓国)
1992 西宮市展(西宮市民ギャラリー/兵庫)
1993 いま絵画は-OSAKA`93-(府立現代美術センター/大阪)
1994 Into Print-版との逢瀬-(ギャラリーココ/京都)
     Into Print-版との逢瀬-(ギャラリー源/福岡)
     HANGA MANGA(ギャラリーココ/京都)
1996 Into Print(ギャラリーココ/京都)
     Into Print(ギャラリー源/福岡)
     日本アジア現代版画展(福岡県立美術館)
1997 日韓交流展(福岡県立美術館)
1998 第12回現代版画コンクール展(府立現代美術センター/大阪)
1999 第1回神戸版画ビエンナーレ(神戸阪急ミュージアム)
     高知国際版画ビエンナーレ(いの町紙の博物館/高知)
2000 京展(京都市立美術館/京都)
     さっぽろ国際版画トリエンナーレ(道立近代美術館/札幌)
2001 International Print Art Exchange Show(福岡アジア美術館/福岡)
2003 画廊の視点(府立現代美術センター/大阪)
     Rejional Standard 小西祐司+立嶋滋樹展(愛知芸術文化センターアートスペース)
2004 青年作家の精鋭展(ギャラリー彩/名古屋)




「slow」2003年 キャンバスに油彩 181×227cm