柴清文
「黒のメッセージシリーズ」

SHIBA Kiyofumi






・会期  2009年11月3日(火)〜11月8日(日)

・時間  11:00〜19:00 (最終日は17:00まで)

・会場  海岸通ギャラリー・CASO B室

・内容  絵画



めまぐるしく変遷をくり返す現代において、一陣の風となり新鮮な空気を送り込みたい。

ある冬の朝テレビのスイッチを入れると、日本海の荒波と一面の重油のどす黒い対比が目に飛び込んできました。
ナホトカ号重油流出事故、この痛ましい光景がこのシリーズを描く原点となりました。

あれから十数年、改めて見直す時が必要であり、140点以上の黒のメッセージを発します。


柴 清文
・1955年 静岡県に生まれる
・1982年 東京芸術大学 美術学部絵画科油画専攻 卒業
・1984年 東京芸術大学 大学院美術研究科 壁画研究室 修了
・1985年 同大学 同大学院 研究生 
・1986年 東京芸術大学 非常勤講師(助手)
・1989年 東海大学 教養学部芸術学科 非常勤講師
・1990年 東京芸術大学 非常勤講師
・1991年 近畿大学 文芸学部 芸術学科 講師 
・1999年 近畿大学 文芸学部 芸術学科 助教授 
・2006年 近畿大学 文芸学部 芸術学科 教授 現在に至る
活動
・1999年 9月28日〜10月11日  地球散歩(おもしろいもの見せてあげる)  夢の島熱帯植物館 東京都江東区
・2000年 4月11日〜 5月 7日  地球散歩(花と緑の恵み)  咲くやこの花館  大阪市鶴見区
・2001年 4月23日〜28日  柴 清文展(黒のシリーズ)  信濃橋画廊  大阪市西区
・2001年 4月26日〜 5月 8日  もぎたて!フルーツアート展  ギャラリー新宿高野  東京都新宿区
・2001年 8月20日〜26日  柴 清文展(黒のシリーズ)  TOKIアートスペース  東京都渋谷区
・2001年10月 1日〜2002年3月 エクスポ ファルコン ジャポン-U-20001 ギャラリータヌキ フランス-リヨン
・2001年10月22日〜11月12日  エスペラントビルに集う芸術家達 展  エスペラントビル  大阪市浪速区
・2002年 4月 1日〜8月31  エクスポ ファルコン ジャポン-T-20002  ギャラリータヌキ フランス-リヨン
・2002年 4月 6日〜28日   パノラマ アート コンテンポレーション ジャポネーズ  リヨン市立ギャラリー サロンドボンディー
・2003年12月16日〜12月21日  たぐいまれなるもの  ギャラリー デン  大阪市西区
・2004年10月 6日〜11日  柴 清文展(黒のメッセージシリーズ)  グストハウスギャラリー 兵庫県神戸市
・2005年1月24日〜29日 thing matter time   信濃橋画廊  大阪市西区
・2006年3月14日〜31日 LATER of WORDS    在ベルギー日本大使館広報文化センター
・2006年3月     春風ながさきより [  長崎ブリックホールギャラリー
・2006年7月18日〜30日 柴 清文展(遊・環)  ギャラリーCLASS 奈良県生駒市
・2007年2月5日〜10日  thing matter time  信濃橋画廊 大阪市西区
・2007年3月2日〜13日  春風ながさきより \  長崎ブリックホールギャラリー
・2008年10月28日〜11月9日 柴 清文展「遊動」  ギャラリーCLASS 奈良県生駒市
・2009年1月5日〜30日 THAI-JAPAN Symposium Sculpture  タイ チェンマイ大学芸術学部ギャラリー
・2009年3月27日〜29日 今日の美術を考える会  カストル国立アートセンター    フランス、カストル市
・2009年3月30日〜4月4日 今日の美術を考える会  プラホー・デコラシオン  フランス、リヨン市



柴清文《黒のメッセージ・シリーズ》展に寄せて

井面信行
(近畿大学文芸学部長 美学・芸術学専攻)


 大学の古ぼけた建物の一角の狭い研究室。上部をレリーフ風のオブジェが占拠する決して高くも広くもない壁に、柴清文は4枚のワトソン紙を張りつけ、来る日も来る日もそこに向かってアクリル絵具を、指で―決して指以外のものは使わず―擦り付ける作業を続けてきました。それは、世界の様々の出来事や事象からインスピレーションを得た自分の小さな内部感覚を、ただひたすら形へと現実化/具体化するためです。
指の触覚運動の痕跡をじかに伝える強靭な色線は、黒い闇を背景に、赤く、青く、白く、黄色く、また緑に、爆発し、噴出し、拡散し、収縮し、凝縮し、あるいは錯綜します。そして、そこにタイトルの重い意味が絡みついています。
4枚一組の作品は、1997年に描き始められ、今日まで12年間にわたって綿々と描きつながれてきました、否、いまも描かれ、これからも描かれるにちがいありません。一組が完成するまでに短くて2か月、長い場合は5か月を要するといいます。この破天荒の持続の力こそが42組168点の作品を紡ぎ出したのです。柴清文《黒のメッセージ・シリーズ》の出現です。

柴さんの《黒のメッセージ・シリーズ》をはじめて見たのは、7年前のことでした。造形芸術専攻の教員の作品世界を学生と教員が一緒に観賞し、語り合うというイベントが企画されました。毎回一人の教員がアート館(舞台芸術専攻の舞台兼稽古場)に自分の作品を展示し、作者が解説をして、自由に批評しあうという内容です。
柴さんの番が回ってきたとき、彼は、現在の担当ゼミの立体造形作品ではなく、数十枚の《黒のシリーズ》をアート館の床に並べました。そのとき柴さんがこのような作品を描き続けていることを、改めてはっきりと知るようになりました。正直、私は鳥肌が立ちました。しかし、それは決して「美しい」ものを見たときの感動ではありません。むしろ、湧き上がってきたのは―あとから思えば―「崇高」の感情に近いものだったと言えます。
この作品群はうっとりするような至福の快を与えてくれるものではありません。むしろそこには、全貌を捉えきれない、境界をはみ出してしまう広大さによって、見るものを圧倒する威力があります。その原因は、営々と描き続けられた結果の「量」にちがいありません。この量は、物理的には有限にちがいないのですが、直観的には時間的にも空間的にも「無限」を感じさせてくれます。「量」が「質」に転換しているのです。
《黒のメッセージ・シリーズ》には二つの時間が流れています。指の運動の軌跡と作品群全体の制作過程とが直観させてくれる時間です。二重の時間は、42組168枚の広大な画面上を漂いつつも、画面という空間を超えてはみ出ていきます。それと同時に、画面もまた有限の枠を超えて、宇宙のように膨張していくように思えます。人間精神の広大無辺に触れる何かが体験がなされたのではないのか―そのように感じられるのです。「崇高」の感情はこの点につながっています。

《黒のメッセージ・シリーズ》をはじめて見たときから、この作品群は多くの人々の眼に触れるべきだと思い、柴さんにこの展覧会を開くことを勧めてきました。今回、その願いが実現し、嬉しく思います。
展示室の四つの壁面すべてを《黒のメッセージ・シリーズ》が覆い尽くしたとき、この作品群がどのような新しい力によって私たちを触発するのか、それを楽しみにしたいと思います。