話好きで世話好きな感じ
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白浜(有名な観光地です)にいのちの電話のサービスがあり、地元の白浜バプティスト教会が運営しています。白浜には三段壁という有名な絶壁があり、ここで絶えず飛び込み自殺者が出るからです。絶壁には看板があり、

「重大な決心をされる前にこちらにお電話ください」

といのちの電話の電話番号が書かれています。私が以前白浜を訪れた時にこのいのちの電話をやっておられたのは、牧師の江見太郎先生でした。この方は著書も出しておられます。私は三段壁を訪れたのがきっかけで、この本も読んだことがありました。

さて、私は恥ずかしながら、20年ほど前にこの江見先生にお世話になったことがあります。べつに「重大な決心」をしたわけではありません。失恋して何も手につかないので、会ってもらったのです。アホですが、会社を休んで大阪からわざわざ白浜まで訪ねて行ったのです。

この江見先生、決して聖人君子という感じではありませんでした。話好きで世話好きな感じで、どちらかというと話し出したら止まらない感じの人でした。自殺志願者相手では、こうでないと勤まらないのだな、と思ったことを覚えています。

この先生、ポケットから自動車のキーを取り出して、何を言うかと思ったら、

「せっかくですから、白浜をドライブして帰られますか」

と言われるのです。もちろん固辞。そうしたら奥へ引っ込んで、

「家内の書いた色紙ですが差し上げましょう」

と色紙をくださいました。色紙には、

「患難は忍耐を生み出し、忍耐は錬達を生み出し、錬達は希望を生み出すことを、知ればなり

ロマ5:3」

と書かれており、

「今のあなたの答がここに書かれていますよ」

と励ましてくださいました。

さて、自分も今は助言者の端くれです。江見先生のようにいのちの電話をやってるわけではありません。しかし、江見先生のありようは大変参考になっています。助言者は「話好きで世話好きな感じ」が必要です。と言うか、そういうキャラが最も適性があります。一番向かないのはクールで斜に構えた感じです。

もしあなたが「話好きで世話好きな感じ」なら、十分助言者としての適性があることになりますね。

GROWモデル
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コーチングの極意はGROWモデルだと最近つくづく感じます。

GROWモデルを噛み砕いて言うと、クライアントの話を「理想と現実のギャップがある問題」ととらえることです。

「どうも最近惰性に流されて生きてるような気がするんですけど」

「なるほど。どういう点が惰性に流れていると感じるのですか」

「ひとつには朝起きれなくて、あたふたと出勤していることでしょうね」

「そうなんですか。○○さんは何時に起きれたら満足なんですか」

「今の時期は6時でしょうか」(理想)

「それで今何時に起きているのですか」

「ぎりぎりの7時半です」(現実)

「じゃあ、1時間半早く起きれたらいいってことですね」

「そうです」

あとは、

「6時に起きて何がしたいのですか」または「6時に起きて何ができますか」
「6時に起きれないのはどうしてなんでしょう」
「6時に起きるためにはたとえばどんなことができますか」

と訊いていきます。

クライアントの最初のひと言は「惰性に流されて生きてる」ということでした。これはいかようにも展開できますが、プロの技量というのはこれを「理想と現実のギャップがある問題」のフォーマットにのせて料理することです。

今回の例では「朝早く起きれない」というのを取り上げましたが、現実はもっと複雑でもっと深刻な問題が提示されます。しかし、訓練を積めば大抵の問題は「理想と現実のギャップ」として明快に捕捉できるはずです。

こう考えると、「自分は何をしたいかわからない」は理想が不明なので、コーチングにならないことがわかりますね。私は自分探しの人に対しては推薦図書はご紹介するものの、コーチングのお相手はしないことにしています。

そうした切り分けもGROWモデルから出てくるということです。

コーチングの要約
443



たとえば職場の人間関係で行き詰っている女性が、

@職場の人間関係を改善したい

と言いつつ、

A今の仕事にやりがいが感じられない
B転職すべきかどうか迷っている

と言ったとします。この場合、ABはたいてい無視すべきポイントです。@の反動でそう言ってみたに過ぎません。私なら、

「『転職して具体的にこうしたい』というお考えはあるのですか」

と訊いてみます。何も返ってこなければABは捨象(捨て去る)べきなのです。そして@だけに集中すべきです。コーチングの要約というのは、積極的に相手の考えを整理していく必要があり、整理とは「選択と集中」であるわけです。

ところが初心者は@ABと単に並べてしまって、この整理ができません。その結果コーチングにならないケースが多く見られます。

コーチングの要約とはテーマを選択し、選択したテーマに集中することです。その意味では相手の発言をそのまま真に受けるのではなく、真意を把握する必要があるのです。極論すれば、コーチングは「ほんとにそうなの?」と相手の言うことを頭から疑うところから出発するくらいでちょうどいいのです。

ありのままの自分で「居直る」「開き直る」
442



結構多い相談が、コミュニケーションの改善です。会議で発言できない、とか同僚の集まりのなかで発言できない(1対1なら発言できる)、といったことです。

確かに発言できるに越したことはないでしょう。しかし、これを解決したいと言われてもはたと困ってしまいます。たとえて言えば「どうしたら泳げるようになりますか」というのと似ています。体得が必要なのです。

その人が実際に話しているところを目の当たりにするのは、電話によるコーチングでは当然不可能ですね。だから憶測でものを言うしかありません。

第1に根本的にこれが問題なのか、という問いかけも必要だと思います。寡黙だとか口下手だというのも個性であり、この個性を生かした処し方を考えたほうがいいでしょう。というかそう考えるしかないと思います。

第2に人前のコミュニケーションが苦手な人は自分を良く見せようと取り繕う傾向がある、ということが挙げられます。コミュニケーションのうまい人は通常「ありのままの自分」で勝負しています。

では「ありのままの自分」で勝負できないのはなぜなのか。これは結局、これだけは人に負けないという自信が欠けているからであると思います。一芸に秀でた人は自分の欠点が明らかになり、それを他人がどう思おうと気にしないものです。だからコミュニケーションに問題を感じていない人が多いと思われます。

結局、コミュニケーションの問題を改善しようと思えば、ありのままの自分で「居直る」「開き直る」といった要素が不可欠だと言うしかありません。

下記はまことにその通りだと思います。

何よりもまずこの事だ
自分自身に忠実であれ
されば、夜の次に昼が来るように
必ず伴うて出てくることは
あなたが何人に対してもニセモノでないことである

『無限者との協調』 ラルフ・ウォルドー・トライン 1896年 谷口雅春訳


オタクの趣味の延長
441



私のところに、

「自分は何をしたらいいのかわからない」

と言ってくる人は相変わらず多いです。なかには、

「何をやるべきか、コーチングで引き出していただきたい」

などと平然と言ってのける人もいました。こういった人の多くはフロー・チャートでもたどって行くと、やるべきことがわかる程度にしか考えていません。仮に私が、

「あなたは不動産屋が向いていると思います」

と言ってみたところで、この人はまず不動産屋になろうとは思わないでしょう。こんな助言は気休めです。ですから今では、「何をしたらいいかわからない」というメールを頂戴すれば、一旦お返しして、自分で考えを整理してもらうことにしています。

では具体的にどうすればいいのか?

オタクの趣味というのがあります。ひと言で言って社会性がない趣味がオタクの趣味です。引きこもってでもできるわけです。

しかしオタクのワクワク感があるというのは、決して卑下することではないです。世の中にはオタクのワクワク感すら持ち合わせない人がずいぶん多いのですから。

何をやったらいいいかわからない、と言う場合、手っ取り早い解決法はオタクの趣味です。

引きこもったオタクの趣味に満足できないというのなら、オタクの趣味の間口を広げて少しでも社会性のある趣味にするのです。□□同好会とか□□研究会という形にするわけです。これをさらに発展させてビジネスにできたとしたら、間違いなくライフワークになるはずです。

すべてがそうはうまく行くわけではありませんが、ライフワークを考えるにはオタクの趣味が突破口で、オタクの趣味をベースに新しい発想を取り入れたものから検討していくのが正解だと思っています。
450 問題意識
449 だからどうなの?
448 人が変わるのには承認が必要
447 95パーセントの承認と5パーセントの問題提起
446 人間は承認を食って生きている

*
445 話好きで世話好きな感じ
444 GROWモデル
443 コーチングの要約
442 ありのままの自分で「居直る」「開き直る」
441 オタクの趣味の延長
*
440 いのちの電話に非ず
439 人の心の機微を理解したサービス精神
438 ハイCP
437 いくら考えてもわからないこと
436 好きでやっている、ということ

*
435 二流でもいいから自分の芸風を確立する
434 無線の師匠
433 信用と誠
432 コーチングの小冊子
431 調子が良すぎないこと

*
430 まだ整理できていない
429 驚くばかりの多様性
428 こじれきった上下関係
427 普通の電話はもう古い
426 コミュニケーションを改善したい

*
425 意見の対立
424 アカウンタビリティ
423 新サイト
422 グランド・ピアノ
421 新ブログ

*
420 口内炎
419 成り行きまかせ
418 アマチュア無線
417 サクラサク
416 早めに真剣に定年後を

*
415 ほめない承認
414 その通り、失礼です^^
413 ムラ社会の価値観
412 どうあってもやりたいこと
411 遥かに民度が上がっている

*
410 コーチングは経済的豊かさの産物
409 プレ・コーチング
408 予想外に健闘
407 3周年
406 日本人のDNA

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405 ビジネス・コーチングの極意
404 テレビカメラというメタ視点
403 承認が第1ステップ
402 社外の座標軸を
401 言葉の錬金術


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