5つの仕事があれば
860



中村天風さんの『成功の実現』に「気を散らさずに行なうこと」という下記の一節があります:

はっきりした気持ちというのをわかりやすく言うと、なあんだ、そんなことか、と思うことなんだよ。はっきりした気持ちと言うのはね、気を散らさずに行なうことがはっきりした気持ちなんだ。

どうです?もう少しくわしく言えば、執着から解脱して、つまり雑念、妄念、邪念から心を放して、気持ちを使うのが気の散らさない心なんだ・・・・・・と詳しく説明されると、かえってわからなくなっちまうだろ。

人間が心を使うとき、気が散っていることぐらいいけないことはないんであります。なぜ気が散るといけないかというと、気が散れば心のまとまりがくずれてしまう。

ノイローゼにかかったり、神経衰弱にかかったり、精神病の一歩手前に入っちまうのは、この気の散りすぎが原因なんですぜ。頭のなかは線香花火みたいに、パッパッパッパッ、いろんなことを考えてますわ。水鳥の足に暇なきありさまと同じように。そうなるとね、心本来の力も分裂してしまうからだめなんです。

心というものが、まるで花魁(おいらん)のはなかんざしみたいに、あるいはまたカニの手みたいに食い物に、お金に、女に、煩悶のことに、心配事に、あるいは何かとエトセトラ。そうすると、たとえば百の心がここに十、ここに十、ここに十、ここに十、ここに十、ここに十となると、残るところは四十だろう。百の心を与えられていながらボルテージが下がっちまうから、わずか四十だけの力で人生を生きるべく余儀なくされたら、神経衰弱にもなればノイローゼにもなるよ。

百貫目持ち上げられる力を与えられていながら、六十貫だけ他へ使っちゃって、持ち合わせている力が四十貫になっちゃったら、目の前に百貫の物が出たときはどうする?わかりきったことなんだよ。

聞いてて、「ばかげた話だなあ、そんなことぐらいは、俺は生まれたときから知っている」というような顔をしている人はいやしないか。けれどよく考えなさい。いま現在、己(おのれ)のこころがどっかにひっかかっていやしないか。

お集まりの諸君の顔見てると、一心に聞いてる人と、なかには何かを思い出しちゃって気がそわそわとしているものがある。出がけにガスの栓をしてきたかしらんとか、電気ストーブのスイッチひねってきたかしらん、なんてことを考え出すと、もう私の話なんか聞いてる気になれないもん。話をしながらしばしばあなた方の顔を見てると、ああ、この人は私の話とピタッと結びついているわというのと、でないのは、すぐわかるんですよ。

とにかく、こころがまとまってないんだ。しょっちゅう、ちらかっちゃってるんだから。ちらかってたらば、心の力、働きはそれはもう哀れ惨憺たる状態になってしまうんだ。ばらばらになっちゃってるもの。

あなた方も、よくこういう人を見受けやしない?私なんかのべつ見せられているけれども、たくさんの仕事や、ややこしい事件に直面すると即座に面食らっちまって、さながら釘づけにされたように手も足も出ないウロチョロ組になっちゃう奴がいる。


あるクライアントさんが押し寄せてくる仕事量に圧倒され、仕事ですっかり自信をなくして、この状態になっておられました。

自信を回復するためには、何か結果を出さなければなりません。根拠のない自信はありえませんから。しかし、自信はひとつひとつのことを確実に仕上げることによってのみ可能になります。目の前の仕事を片付けてはじめて、その仕事を心から消し去って次の仕事へ進むことができるわけです。

5つの仕事があれば、5つとも仕上げようと思わず、2つか3つを確実に仕上げることをオススメしておきました。2つでも3つでもいいから確実に仕上げる境地の延長上に、5つとも完全に仕上げることができる境地があるわけですね。

イヤな相手の対処法
859



いろいろな方をクライアントに持ち、話を聞いてきた経験から、イヤな相手、苦手な相手に共通するファクターは大きく2つある、と考えています。

・人を教え導くためには、責めたりとがめたりしなければならない、という信念を持っている(叱責主義)
・人間理解にあたって、理想からの減点で相手を評価する。相手はこうあるべきだという期待感が強い(減点主義)

叱責主義と減点主義を兼ね備えた人は、例外なくイヤな相手というのは、まずどなたも同感していただけると思います。こうした人はたとえばこんな言い方をします。

「そんな失敗をするのは、だいたい君の心がけが悪いからだ」

イヤな相手とのこじれた人間関係は、原因が相手にあることは疑う余地がないでしょう。しかし経験から言えば、人間関係のトラブルは、イヤな相手に対処する側にもある種の共通点があります。

それはこちらも相手と同様に、叱責もしくは減点主義で相手に接しているということです。実情はこちらも相手からしたら「イヤな奴」であるわけです。結果的には、イヤな相手に影響されて、こちらも「イヤな奴」になり下がってしまっているわけです。

その場合、たとえば反発をむき出しにして、こういう言い方をしています。

「そんな言い方はないでしょう!」

もし反発できるほど立場が強くなければ、黙って耐えてストレスを募らせることになります。

しかし、いずれにせよ、もっとやさしく言ってほしい、目上なら目上らしく振る舞ってほしい、上司ならいざという時には責任を取って欲しい、と思っている限り、相手に対する批判は顔に出ます。その結果、こちらの思いはたちどころに相手にわかってしまいます。この状態では、こじれた人間関係が解消することなど絶対にない、と言っていいでしょう。相手も「なんてイヤな奴だ」と思わざるを得ないわけです。

こじれた人間関係を解決するために必要な基本理念は加点主義、つまり「ゼロから出発して、期待感を捨てる」ということです。言い換えると、「相手はこういう人なんだ」という健全な絶望感から出発するわけです。

いろいろコーチングをやってきた経験から、この絶望感から出発する知恵があればトラブルは軽減できるし、回避できると私は考えています。ポイントは、決してへつらわず、相手を否定しないものの言い方をすることです。ゼロから出発すれば、相手を肯定できる点はなにかあるものです。

こじれた人間関係で見られる最も顕著な現象は、お互いがお互いを「イヤな奴だ」と思っていることです。逆に言うと自分が相手に対してイヤな奴でなくなれば、人間関係は好転することになるのです。これは相手が上司・部下であっても、家族・親族であっても、例外はありません。

ではどうすれば自分自身が相手に対してイヤな奴でなくなるのでしょうか。それは加点主義を取って、前向きの言葉でこちらの批判を悟らせないことです。「あ、こんな人なんだな」という加点主義を取って前向きの言葉を発するかぎり、こちらの批判が伝わりにくいのです。たとえば、

「厳しいご指摘ですね。真摯に受け止めさせていただきます」

とサラリと言えるようになり、身をかわせます。そうすれば相手は、

「なかなか素直な奴だな。憎めないな」
「こいつ、もしかしたらオレに好意があるのかもしれないな」

と思うわけです。その結果、さしもこじれた人間関係も少しずつ改善し、積極的に良好と言えないまでも、大過ないレベルには落ち着けることができるようになるのです。

タフ・ネゴシエーター
858



タフ・ネゴシエーターという言葉があります。手強い交渉相手という意味です。この言葉から従来は、

・押しの強い相手
・威嚇的/高圧的な相手
・容易に主張を曲げない相手


を連想していました。確かにそういった側面もあるでしょうが、究極は、

・相手の感情を肯定しつつ、主張を曲げない。その結果、ギリギリの譲歩を引き出す相手

なんだろうと思います。交渉の最後の局面で、

「○○さん、それじゃ話にならないよ」
「○○さん、□□でなきゃ私も立場がないんだよ」

と言うのと、

「○○さん、あなたの立場もわかる。しかし、それじゃ話にならないよ」
「○○さん、あなたなりに努力してくれたことは認める。でも、□□でなきゃ私も立場がないんだよ」

どちらが最大の譲歩を引き出せるでしょうか。それは相手の感情を肯定する方でしょう。

ところで、相手の感情を肯定することは「承認」であるわけですから、結局、タフ・ネゴーシエーターとは「承認もできる人」であるはずです。剛柔取り混ぜることができるのがタフ・ネゴシネーターでしょう。

承認は相手から目一杯の譲歩を引き出す効果もあるのです。

コーチングが一皮剥ける時
857



コーチングを実習中のクライアントのSさんによると、

「最初の1〜2回は実習相手も喜んでくれたのだが、3回目ぐらいから行動を促しても警戒して乗ってこなくなった」

のだそうです。

教科書的なコーチングというのは、オープン・クェスチョンを使いながら、行動を促していくというものです。ところが教科書通りのコーチングは1回や2回ならいいかもしれませんが、特定の相手から繰り返し受けるとなれば苦痛です。アホらしくてやってられないというのが実情でしょう。

・何もあなたに問題の原因を所在をさぐって欲しいわけではない。
 (それぐらい充分認識してる)

・何もあなたに行動を促して欲しいわけではない。
 (それぐらい自分で考える)

・何もあなたのちんけなアドバイスを聴きたいわけではない。
 (そんなこと言ってもらわなくてもわかっている)

・わかったような承認など聞きたくはない。
 (口先だけのリップサービスでしょ)

詰まるところ、誰しもこんなふうに感じてしまうのです。ところが遠慮もあって、こうした感想はストレートには返ってこないものです。その結果、無理に取り繕って、

「気付きがあった」

などと言います。しかし、正直なところ、

「何が気付きなものか、鬱陶しいだけじゃないか」

思っているものですす。何を隠そう、コーチングを学び始めた初期のころは、私もこんな陥穽にはまっていたのです。しかし、これではいかんと思い、早期にやり方を変えました。何を変えたかというと、

@行動を促すよりも、気持ちの整理・考え方の整理(カウンセリング)に重点をおく。
(気持ちの整理・考え方の整理がすすめば、相手は行動を促さなくても行動できる)

A単なるオープン・クェスチョンはやめ、フィードバック+オープン・クェスチョン、または提案+オープン・クェスチョンの複合クェスチョンとする。
(単なるオープン・クェスチョンでは引き出しに限界がある)

以上の工夫で一皮剥けて、相手に本音で肯定してもらえるコーチングになります。

さて、くだんのSさんですが、一時中だるみはあったものの、実習で回数を重ねて終了する時点で、相手から心から肯定してもらえるセッションができるようになったとおっしゃっていました。おそらく@Aを取り入れて、教科書的なコーチングから一皮剥けたに違いないと私は思っています。

志のない相手は時間の無駄
856



たまにサラリーマン生活がイヤになったから起業したい、といって家族があるので、そこそこの収入は確保したい、ついては相談に乗ってもらえないか、というメールを頂戴することがあります。

気持ちはわかります。私も過去何度となくそんなことを考えたことがあるからです。誰しも似たような想いにとらわれることは多いはずです。

ですが、起業という点ではこの状態では全く見込みなしだと思います。こうしたいという志が根本的に欠如しているからです。そんな状態で高収入という出口を探した場合、結論はいつまで経っても出ないだろうし、結論が仮に見つかったとしても、とてもじゃないが、まず成功することはありえないと思います。

自分の志で起業したときのみ、際限なく仕事に没頭できるので、成功する勝算があるのです。志でないことで起業してうまくいくほど世間は甘くないものです。

サラリーマン生活がうまくいっていても、自分としては目指すべき理想があるから行動を起こしたい、というくらいの志があってはじめて成功する可能性がある、と私は考えます。とは言え、たとえ志があっても、失敗することだって多いに違いありません。

それが現実なのに、志のない相手の相談に乗ることなど論外、と私は思います。○○したい、がなくて、できそうか、儲かるか、だけに振り回されるからです。ということは塾経営?外食?ネット起業?という脈絡のない選択肢と向き合わなければならず、その答えは相手の適性と好き嫌いの中にしか存在しないわけです。正直付き合ってられません。

極めつけは、

「コーチングは儲かりますか」

という質問。とくにコーチングを志す相手でなければ、この質問には答えたいとも思いません。

志のない相手に付き合ってあげることは親切なことなのでしょう。しかし、数年間インターネットでクライアントを見つけて来た経験から言えば、志のない相手は付き合っても時間の無駄だと思います。
900 タイプ分け
899 アンチ原理主義
898 他の手法と組み合わせる
897 批判する相手とのコミュニケーション
896 攻勢のアサーティブネス

*
895 2人、3人の上司
894 やれるところまで
893 今後オススメするとしたら絶対OFFICE LIVE
892 一旦引け
891 とりあえずコアの2割だけ即片付ける

*
890 資産運用はすこし勉強すれば事足りる、是非勉強すべきだ
889 友人が鬱でなんとかしてあげたい
888 内視鏡検査
887 マットを敷き詰める
886 気高く生きる権利

*
885 過去の自分が引き起こした問題
884 赤信号をぶっ飛ばすような、反則コミュニケーション
883 主人に代わります
882 自分はふだん「箱」に入っているのだろうか
881 遠慮しないで、関わろう

*
880 いついかなる相手に対してもアサーティブであれ
879 社保庁サイト
878 手を上げた人を鞭打つ発言をする人
877 インデックス・ファンドの積立投資
876 雑用もやります

*
875 副官の選定
874 批判的だが、批判する立場にはない
873 自分で自分が許せるのかどうなのか
872 山道の木
871 真夏の通り抜け

*
870 迎えず送らず
869 日経経営セミナーに3度目の登場
868 状況が変わってもやっぱりインターネット
867 「解説する」が「話すべきではないことは話さない」
866 ファイナンシャル・プランナーの相談は足が長い

*
865 中村天風を読んでもらう
864 ファイナンシャル・リテラシー
863 その手は食わない
862 ファイナンシャル・プランナー
861 サブプライムローン

*
860 5つの仕事があれば
859 イヤな相手の対処法
858 タフ・ネゴシエーター
857 コーチングが一皮剥ける時
856 志のない相手は時間の無駄
*
855 承認で切り返す
854 それはちょっと難しいんじゃないでしょうか
853 コーチングの影の部分
852 聴衆の反応
851 独立したら生活していけませんね


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001〜050 051〜100 101〜150 151〜200 201〜250
251〜300 301〜350 351〜400 401〜450 451〜500
501〜550 551〜600 601〜650 651〜700 701〜750
751〜800 801〜850 851〜900 901〜950 951〜999
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