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心の法則の陥穽

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「人間の世界は、思う通りになる世界である」という念の法則、「悪を想えば悪を生じ、善を想えば善を生ず」という心の法則を、人を責め裁くことにのみ使っている人々が、宗教や修養をやっている人たちに非常に多数ある。

私は、これは非常に困ったことだ、と思うのである。幽界や霊界においては、その想念は直ちに現れ、その念は、すぐに自分自身に返ってくるので、どういう念が、どういうふうに自分に返るかが体験としてわかるのであるが、それでさえも、なかなかその業因縁の念を消すことができがたいのである。まして、非常に粗い波の体を持つ肉体世界の人間の、しかも、その人間と相手の間にある業因縁の種類さえも知らず、ただ単に一般論の心の法則だけを利用して、指導しようとすることは実に危険なことであって、かえって相手の進化を妨げ、浄化を乱すことになるのである。

想うことは必ず現れる。この法則を知っただけでも、知らぬ人よりは進歩が早く運命改善ができやすいが、これを逆に応用し、反対に考えると、かえってその人自身や人を傷つけ、痛めてしまう。想ったことは必ず現れる。この言葉を真剣に考えている人で、「自分は恐怖心が非常に強い。自分のように恐れる心の多い者は、この心の法則の通り、必ず恐れる事態が起こるに違いない。恐れることはみな来るのだ」とその法則を知ったことが、かえって仇となって、日夜恐れつづけている人がある。

また或る人は、他人のために常に真剣になって心配苦労し、そのためいつも貧乏している人に向かって、「あなたは貧乏したい心があるから、いつも貧乏しているのですよ。富む心を起こしなさい。あなたが貧しい心があるから、貧しい人ばかり側に寄ってくるのですよ」と説教した。このため、この人は善事をなすことに対して、大きな疑いを抱き、それ以来、愛行が乱れていった。

これらの例に見られるように、心の法則(因縁)だけ思ったり、説いたりすると、実に間違った逆効果になりやすい。「あの人は、あんな心を持っていたから、あんなになったんだ」式に、なんでも悪く現れている場合は、その人の心にその悪い原因があるんだと、決めつけられたり、決めつけたりしていたら、まことに愛も情もない人生になってしまう。法則を知ったために、人を傷つけたり、自分を痛めたりするのは、神の本性を知らない、無知から起こるのである。

神は愛である。愛であるから、守護神を我らに遣わし、守護霊を任じて、人間世界の悪因縁を消滅し去ろうとしているのである。守護霊を信じ、守護神を想い、神に感謝しなければ、いくら因縁の転回や、心の法則を知ったところで、人間は永久に救われない。想念は必ず現れる。この法則のままに、想うことが、そのままこの肉体界に現れていたら、この人生は、もっともっと以前に滅びていたに違いない。この業念の感情を、肉体脳髄の念の休止している間に、巧みに夢として肉体世界と離して、描き出してしまうのが、守護霊の偉大なる一つの仕事なのである。

現れれば消えるのが、想念の性格であるので、夢として画き出されてしまえば、その想念は消えてしまう。夢の場合は、その想念が巧みに戯画化されていて、一体何の想念であるか判然としないので、醒めた後で、いくら肉体頭脳で思ってみても、その夢に現れた想念は、再び幽体に記録されることはない。その想念は、夢によって一度断ち切られるので、業因縁がそれだけ消えたことになる。

たまたまはっきり憶えている夢もあるが、守護霊が予知的に、その人に示す夢(霊夢)以外は、その夢の絵が、やはりその想念の内容を察知できぬように描いてあって、判然としない。判然としない夢は、そのまま判然とさせる必要はないので、ただ簡単に、自分の悪想念が肉体の悪い運命となって現れるのを、守護霊がその夢として現して消して下さったのだ、と感謝すればよいのである。このことを知ることは大きな救いになると思う。この守護霊の働きは、真に感謝しなければならぬものである。

人間が、自己の運命を改善し、幸福になりたいとするならば、ただ守護霊に自己の運命を委せればよい。「守護霊さん、ありがとうございます。守護神さん、ありがとうございます。神様、ありがとうございます」と常に感謝していればよい。この心が神への全託なのであり、守護霊の活躍を充分にさせる一番よい方法なのである。この心でいれば、その人の行動は、おのずから調和した整ったものになり、生活は楽しく楽になるに決まっているのである。

守護霊、守護神と真っ直ぐにつながり、そのつながりによって、その光によって、業生の因縁因果の渦巻きから、いつの間にか離脱でき、分霊本来の光が直霊(神)につながり、肉体を持ったままで、人間神の子の実観を、真に体得できるのである。

『神と人間』 五井昌久 1953年 白光真宏会出版局

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 2003 Yoshiaki Sugimoto