あなたは、自分の家族の人たち、またはその他のあなたの関係する社会の構成員との交際において、真に彼らと意思を交流させ自然法爾（じねんほうに）に生命自らの働きに打ちまかすならば、あなたはきっと大調和と心の平和を体験するであろう。私は多くの人々の生活は、誰かが他の人を支配しようという心の衝動を持つために、擾乱（じょうらん）の状態にあることを知っている。他の人を支配しようとする代わりに、その人とよく親しく話し合うように努めて、この意思の交換で問題が解決するかどうか実際にやってみることである。あなたが自分の環境とよく意思が通じ合うとき、あなたは幸福を見出すのである。

今度、あなたは気がふさいで世の中があなたに逆らっているように思うとき、次のことを実行するがよい。そういう時には気分をほぐしてあなたの周囲を注意深く眺めるのである。あなたのいる周囲を生き生きと念入りに見るのである。あなたの両足を支えている床、部屋の温度と雰囲気、あなたの周囲にいる人たち、これら全てに心で触れるのだ。心の緊張を一切ほぐして、周囲全てをそのまま受け入れ、自分のいる世界が素晴らしい現実であると知るがよい。

こうするとき、あなたは自分の気力が蘇るのを感じる。それはなぜか。それはあなたの生命が自分の環境の生命と交流するからである。互いの生命の交流が完全であれば、全ての問題は解決するのである。あなたは、ある領域の責任を回避し、ある情況、ある感情を避けようと思うならば、あなたはそれらの点において互いの生命との接触が失われ、このためあらゆる面に欠乏が生じて来るのである。

人生を正しく理解するならば、成功することは難しいはずはないのである。あなたが誰であろうとも、あなたがどこにいようとも、そんなことに関係なく、あなたが内から導かれて為そうと思うことを為しているならば、その成就を見出すことができるのである。あなたが希望達成の行為を重ねるほどに、それは呼吸するのと同じようにごく自然なものとなるのである。そして自働的な行為となるのである。

あなたは困難に面して障害を克服しなければならぬのだなどという考えに一生懸命思い煩ってはならないのである。あなたは素晴らしい大調和のうちに自らの内部秩序にしたがって生命が確実に自己表現しつつあるさまを観じ、自己がその全体の調和の一部分であることを観ずる境地に達しなければならない。全てを心の目を開いて見るのである。あなたは肉体の自己を「生命」があらゆる境涯において顕現するための完全なる媒体であると信ずることである。

あなたは過去において事態がなめらかに進展したとき実感した喜びの経験をつとめて思い出すようにするがよい。あるいはまた自ら進んで聖典のなかの聖句や霊感詩の一連一節に親しむがよいのである。何でもよい、内部生命との調和を保つものならば、選ばずするがよいのである。

そして次のような言葉を強く思念してその言葉の意味を心の底から実感することである。 --- 「私は大生命の流れ入る完全なるチャンネルであって、今このチャンネルを通して完全なる大生命は流れ入りつつあるのである。大生命の流れそのものが私の生命、私の健康、私の供給、私の繁栄であるのである」 --- こうした「思念の言葉」を用いる考えは、自分自身に催眠術をかけて、信じ込ませるというのではなくて、自分の心の目を開いて真理であるところの実相を認識し得る境地に達せしめることなのである。それは自己催眠ではなく自己覚醒なのである。

この世を生きるには相反する二つの道がある。一つは限定的な条件つきの道であり、他の一つは、内部実相の顕現の道である。前者は人間を束縛し、後者は人間を解放するのである。

多くの人たちは、常にふらふらになってむやみに働かなければ生存する資格がないかのごとく思って、過剰労働して常に疲労していなければ罪を犯しているかのように感ずる社会通念に束縛されているのである。肉体を酷使しさえすれば必ず成功すると考えるのは大きな間違いである。私は活動的であってはならぬと言っているのではなくて、われわれは生計を稼ぐのに額に汗しなければならぬという考え方を棄てねばならぬと言いたいのである。一日長時間働いてやっとどうにか生活できるという人たちが何千といるのである。

一方またこういう人たちもいる。すなわち異なる次元で働く人たちであり、これらの人たちは心の持ち方が違うのであり、彼らは自分の費やした時間と労力に対して莫大なる報酬を実現しているのである。

創造的事業とただ平凡な重労働との間には大きな相違があるのである。あなたは自分自身の受け入れ条件を再調整することを学び、この世の事物をいっそう自由に支配できる内在の力を自覚し始めねばならぬのである。あなたは自分の心の視野を拡大して、受け入れる能力を増すことを学ぶがよいのである。

いわゆる逆境のまっただ中にあって、素晴らしい成功を収めた人たちが、男女の別を問わず世間にはあるのである。彼らは心の方向を全然消極的な否定的な精神状態の方に向けないのである。彼らは否定的なものとは異なる明るい心の持ち方をして、成功と繁栄を実現するのである。あなたがこれらの原理を理解するとき、世の趨勢や、時代、環境に押し流されてあなたの生命の自由な表現を損なってしまうということはないのである。

ある人は労働と生活のための闘争に長年月精魂を傾けて努力したのち、やっとある程度の成功を収めるのであるが、なかには直ちに成功を射当てる人もいるのである。なぜならば、その人はその成功を受け入れることのできる心境に到達しているからこそ成功したのである。

ここに全ての事物を開く鍵があるのである。成功というものはわれわれの形の上での努力、それがどのように立派な意図をもったものであろうとも、そうした努力に対する報酬として出てくるものではないのである。成功はわれわれがそれを受け取る能力ができたときに、結果として出てくるものである。

（後略）

『心の力の秘密』　ユージン・ロイ・デービス　１９６４年　伊藤正・谷口雅春共訳

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