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2013年7月25日開催

市民の福祉を削らなくても、

北山氏、「大阪市の場合は財政的に十分にやりかたはある」と指摘

 荒木幹男塾長率いる大阪文経塾は7月25日、午後7時から西淀川区大和田2の西淀川区民会館で講師に日本共産党大阪市議団団長、北山良三市議を迎えて開催されました。塾生ら約30人が参加しました。
まず、北山氏は荒木幹男塾長から講演会の機会を設けていただいたことに感謝の言葉を述べました。
北山氏は「共産党の議員団なのでいろいろお考えの違いはあると思います。それは当然と思いますが、日本共産党大阪市議団としてどのように考えているかという思いを述べさせていただきたく思います」と前置きした上で、忌憚(きたん)のないご批判、ご質問をいだだけましたらと思っておりますと述べました。

以下、北山氏の講演要旨は次の通りです。

大阪市の財政事情、実態は収支トントン
 橋下徹大阪市長は、大阪市は財政的に非常に困難な事情にあるとおっしゃっております。今後10年間は約300億円~400億円の通常収支不足が見込まれるとして大阪市政を行うとしています。
今年度(平成25年度)は346億円の収支不足になるという前提になっています。果たして本当にそうなんでしょうか。
300~400億円の収支不足が見込まれるという前提は、実は税収、入るお金と出るお金が300~400億円多いというのが収支の赤字です。その計算として大阪市はどのようにみているかといいますと入るお金は税収だけの計算で成り立っています。
実は橋下市長が市長に就任する以前は、税収だけでなく税収以外の収入も計算の中に入っていましたが、橋下市政ではこれが含まれていません。これは恣意的に知らされていない状況にあります。

市税以外にも市有地の売却益、預金利子、株主配当などの収入が
 たとえば、どういうものがあるかというと大阪市は不要地、空いた土地、利用されていない市有地が市内に約800箇所あります。甲子園球場の約64倍分の広さの空いた土地、実は大阪市はこの土地を売却しています。ちなみに平成25年度の予算書を見ますと大阪市は242億円の土地売却収益を見込んでいる。ところがこの売上額が収支の計算から除外されている。
それ以外にも大阪市はいろいろとお金が入ります。大阪市は積立預金、54の定期預金を持っている。当然利息がつきます。積み立て預金の利息ですから当然税収ではありません。それから関西電力の株、一般会計だけで8374万株持っています。関西電力の筆頭株主で約9・3%の比率です。大阪市は300億円、お金が足りなくなっているといっている。実際には土地を売ったお金、積立金の利息、運用益もある。
果たしてそういうものを入れると果たして財政収支が300~400億円不足するといえるのか。
もうひとつは支出です。支出の計算も橋下市長になってから変わっています。一番大きく変わっているのは退職金の扱いです。普通の会社は退職引当金といい退職金の積み立てをしています。大阪市の場合は、退職金はいったん本人には全額渡します。大阪市はこれを起債、借金して借りた金融機関にローンで返しています。これを退職引当債といいます。
たとえば2000万円の退職金があれば、これまで20年ローンで毎年100万円の赤字計上だったのが、橋下市長になってからは「これを2000万円の赤字」と計上しているからくりがある。
したがって収支で300~400億円足りなくなると橋下市長はおっしゃるが、実際の姿からすると必ずしも300~400億円の収支不足が起こるというのではない。

大阪市、毎年の決算は赤字計上なし
 もう一つは大阪市の借金のからくりです。橋下市長は大阪市の借金は大きいから大変だと言っておられる。
それでは大阪市の財務、借金は一体どうなっているのか。起債、借金の合計は平成15年度末でいいますと、5兆4千761億円。直近の平成24年度の見込みは4兆9153億円。というようにずっと今は減り続けています。
私は減り続けているから良いとはいいません。問題はその中味です。国の場合は2種類の借金をしています。建設国債、これは何かの事業、建物を建てるなどのために借り入れをする。借金して何かが残る借金が建設国債です。
もう一つの借金は赤字国債です。収支がたらないから借金するのが赤字国債です。国は2種類の借金をしています。
大阪市はどうか。平成15年度ですと2兆7782億円、うち臨時財政対策債(臨財債)は国が責任を持つ借金なんです。つまり臨時財政対策債は国が地方交付税を減らす代わりに国が責任を持つので借金してくださいというものです。だから大阪市は事実上、関係ありません。
臨時税収補てん債は、税収が見通しより減った、特に法人市民税の場合です。固定資産税や個人の市民税はだいたい見込み通りに入ります。法人市民税の場合はどれだけ利益があがったかに税収がかわるので見込みがくるう場合があります。見込みがくるった分、借金するわけです。地方税法によってこれも国が補てんしてくれますので大阪市の負担にはならない。減収補てん債もそういう性格のものです。だからいわゆる赤字市債はゼロなんです。
増えているのは臨時財政対策債はすごく増えていっています。たとえば平成15年度で1135億円だったのが今は5514億円に増えています。ここだけは増えています。あとはずっと減っていくんです。新年度ではゼロです。ですから赤字だから補てんしないお金、借金は大阪市の場合、ほとんどないのです。
だから大阪市の借金は国が責任を持つ借金、いわゆる臨時財政対策債(臨財債)はなんです。だから財政上、大阪市は決して逼迫した状況ではありません。こういうところを是非、みていただきたい。

事業の失敗で一般会計から〝穴埋め〟
 大阪市が失敗をした事業、その穴埋めを一般会計、我々の税金で埋めている。その一番高いのがアベノ再開発です。バブルがはじけたのは1991年、アベノ再開発はバブルの前に事業を立てています。全部立ち退きしたために全部、大阪市が土地を買収しました。買い取って、更地にした上で高層ビルを建てた。
一方で市営住宅、一方では分譲マンションを建設した。商業ビルなら売る、あるいはテナントで貸す。大阪市はバブル前だから高い値段で土地を買っていた。その後、バブルがはじけ、土地の評価が落ちた。したがって買って払ったお金よりも貸して入ってくるお金がうんと少ない。その結果、2200億円、穴があきました。
アベノ再開発計画は当初の計画では収支あいつぐなう計画だったが、2200億円の大赤字をだす事業になってしまった。アベノ再開発計画は平成21年度では41億円の赤字分を一般会計で補ってあげています。24年度からこの穴埋め額は190億円に増えています。厳しいのは30年度まで100億円以上、穴埋めしなくてはならない。事業の失敗による穴埋めを一般会計からしなくてはならない。
もう一つ厳しくなるのはWTCの失敗。2次破綻しまして一般会計で丸々、銀行への残債を大阪市がすべてめんどうをみた。銀行への644億円、その他の損失をあわせると1000億円以上。この穴埋めは港公営事業という会計があってここから補てんさせます。大規模開発の失敗がこれからも大きくのしかかっているのも事実。これは市民としては何の責任もない。大阪市の事業の失敗。その失敗のツケを大阪市民にしわ寄せする必要もないしやってはいけない。
この借金の穴埋めはどうするのか。大阪市には50いくつかの基金、積み立て預金があります。公債償還基金といいます。平成24年度で4200億円の残高見込みがあります。平成34年の見込みで5625億円まで残高が増えてきます。この10年間で1千400億円まで残高が増える積立金がある。今年はまだ残高見通しが増えている。

北山氏、橋下市長に対し収支の隠蔽(いんぺい)を指摘
 代表質問で橋下市長に質問した。財政が大変だというが収支にごまかしがあると指摘した。
本来、入っている収入を除外している。小さく支出しているものを大きくみせかけている。収支でしんどいということはない。赤字国債、赤字資産はほとんどない。建設国債はちゃんと事業計画をやり返済のめどをたてながらやっているので問題にする必要はない。
しかし、過去の失敗した事業でしんどいことになる。その問題は市民にツケを回すのでなく市のやりくりですべき。ここ10年、たとえば年100億円、公債償還基金から借り入れをすべき。法律的に認められている。
大阪市は財政難だから厳しいからといってそれを理由に市民の生活を切り詰める、市民の福祉、市民の暮らしにかかわる施策を縮小したり圧縮してはならない。市民の福祉を削らなくても大阪市の場合は十分にやりかたはある。

特別区の議院数、各区の財産処分は? 難問山積の「大阪都」構想
 都構想の前提は大阪市は財政難、経済的に厳しいというところから始まっている。一昨年の11月の市長選挙で、維新の会の法定ビラには「騙されないでください」と書いてあります。
その1、大阪市はバラバラにはしません。その2、大阪市はつぶしません。町会はなくしません。敬老パスはなくしません。
そして大阪氏の24区を色鮮やかな大阪市に変える。もっと輝く24区にするとしている。普通は24区は残ると思います。
そのビラの裏には、「敬老パス」制度はなくしません、維持しますと書いてある。都構想は大阪市民の生活を良くする手段ですと公約している。
昨日、大阪市公報が新聞折り込みでまかれました。それは大阪市をどうするかを伝えている内容で地図が載っている。
それには、都構想の24区を「7区案」と「5区案」が提示されている。5区案には西淀川区がどうなるのか。西淀川区、此花区、福島区、港区、大正区、住之江区の6つの行政区を1にして特別区にしますと紹介されている。
5つか7つに自治体をバラバラにするという案ですね。そうしますと選挙公約の「バラバラにしません」というのとどう整合するのか。大阪市という人口267万人を5つか7つの自治体にバラバラにするわけです。そして大阪市という自治体はなくすという話です。選挙で言っていたこととどう符合するのか。約束したことと違う。維新のマニフェストには確かにそういう意味のことが書かれているが果たして市民の方々が細部まで読んでいるのでしょうか。市民はご存知ないのです。
都構想はどうしていくのか。橋下市長の提案は平成27年4月、2015年の4月から大阪市という自治体がなくなって5区もしくは7区にするという提案。2年後です。5区ないし7区の名称は今のところ出ていない。
それから設置に伴う区の財産処分についてはプラスとマイナスの財産がある。大阪市政は明治22年(1890年)以来、124年になるが、これまでつくりあげてきた土地、施設などのプラスの資産と、逆にマイナスの財産は全体で4兆9000億円あります。今は大阪市があるから大阪市が返しますが、5つか7つの自治体になったら誰がその借金を返すのか。こういう財産処分をどうするのか。
特別区になりますと区長も選挙で選びますがそこには区議会がある。区議会議員をおくことになる。何人くらいの区議会議員にするのか。仮に5区案ですと1区あたり50万人の人口になる。今、大阪で50万人都市といえば東大阪市で議員数は46人います。大阪市の議院は現在86人です。もし5区案でいきますと区議会議員は230人となる。議員の数はどうするのか。
そして特別区と大阪府の関係はどうなるのか―などを北山氏は指摘しました

講演を前に握手する
北山良三共産市議(右)と荒木氏
「財政事情を理由に市民サービスの削減はおかしい。
やり方がある」と話す北山氏


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