活動報告トップページ>大阪文経塾 5月
2014年5月22日開催

大阪市水道局 経営改革担当課長、大塚久征氏

公共性確保の観点、経営面から〝上下分離方式〟の民営化のメリットをあげる
参加者からは民営化への危惧の声も
 荒木幹男市会議員が主宰する大阪文経塾は5月22日、西淀川区大和田2丁目の市立西淀川区民会館(エルモ西淀川)で講師に大阪市水道局総務部経営改革担当課長、大塚久征氏を迎えて開かれた。大塚氏は「大阪市水道局民営化について」をテーマに講演し、現在の大阪市の水道事業民営化基本方針の現況について説明した。


水道需要、右肩下がりの状況
 まず、大塚氏は「水道事業は独立採算制で特別会計となっている」と大阪市の一般会計とは別に特別会計となっていることを紹介した。そして大阪市水道事業の経営状況について平成10年は856億円の売り上げ収入があったが、平成24年は653億円と右肩下がりの状況が続いていると指摘。売り上げ減少の原因として「節水型の傾向が続き、将来的にも人口の減少などの要因がある」と指摘。そして、「水道事業は現在、市町村エリアに限定されている」として、今後は右肩上がり、V字回復は見込めないとの見解を示した。
さらに、大塚氏は「大阪市の水道は全国で4番目に古く、120周年を迎え古い水道管が残っている。水道管の全長は市内全域5000キロの長さ。東京、大阪間の距離500キロを10回行き来できる長さ」と紹介。職員数も類似団体、他都市と較べて多く生産性・効率性が悪く企業債(借金)残高も多いとした。

平成10年以降、コストカットしているが
 経費についても、大塚氏は平成10年の802億円から同20年には550億円に減少、コストカットして現在は黒字化しているが、「今後のコストカットには限界がある」との見解を示した。
一方で、大阪市の高い水道技術を活用して他都市やベトナム・ホーチミン市での技術支援を行っている現状を紹介。今後、海外では新興国を中心に水インフラ整備に関する需要が増大し、市場規模は87兆円になるとの見解を紹介した。

新しい経営形態のあり方
 大塚氏は水道事業で収入を増やす方策がないとして「大阪市内だけの事業では右肩下がり。事業
環境の変化に柔軟かつ機動的に対応するには、有益であった公営企業制度にも一定の制度的な障壁が生じ、公営企業制度の限界がきている。成長産業を狙うには市域以外にも拡げる新しい経営形態のあり方を考えることも必要」とした。

さらに大塚氏は地方公営企業、地方独立行政法人、指定管理者、民営化―の経営形態から具体的に「公共性」「効率性」「発展性」「規模の拡大」―の点で比較し、「今後の本市水道事業が目指す方向性や課題解消に向け、抜本的な経営改革を行うためには、民営化の検討を行うことが必要」との見解を示した。
そして民営化を検討するに当たって①「公共性の担保」②「効率性・発展性」③「早期の実現可能性」の3点の重要性を指摘。
さらに、民営化手法の比較検討、検証について公共性確保の観点、経営面からの比較から〝上下分離方式〟のメリットをあげた。

【上下一体方式】資産(施設)を会社に移管し、会社が資産を保有する民営化方式
【上下分離方式】資産(施設)を会社に移管せず、市が資産を保有する民営化方式


出席者からは水道技術力の低下の危惧など不安も
出席者からは多くの質問の声が上がりました。
「府市統合で大阪市が積み上げてきた水道技術が低下しないか?」
「民営化は拙速でないのか?安心・安全をいかに担保するのか」
「水道料金は本当にさがるのか?辺鄙な地域でのサービスの低下はないのか」
「水は大阪市民のライフライン。民営化で外資に資本を持たせて大丈夫か?」

講演を前に荒木議員と握手する
大阪市水道局経営改革担当課長、大塚氏(右)
大塚氏(右)は抜本的な経営改革を行うためには、「民営化の検討を行うことが必要」と話す

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