2018年7月1日開催

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2020年1月23日開催
講師 ノンフィクションライター 大山勝男さん

ハンセン病「強制隔離」という誤った国の施策
歴史的事実を学び、一人一人の問題として捉えることが大切


 荒木幹男市政報告会は1月23日、西淀川区大和田2丁目の市立西淀川区民会館(エルモ西淀川)でノンフィクションライター、大山勝男さんを招いて「西淀川区にあったハンセン病療養施設『外島保養院』」をテーマに開かれた。大山さんはかつて大阪市西淀川区の神崎川河口の海抜0メートルの低湿地帯という劣悪な療養環境に設けられていた外島保養院(大阪府主管、定員300人)が1934年9月21日、近畿地方に上陸した室戸台風によって、壊滅的被害を受け、入所者ら196人の命が奪われたと歴史的な事実を報告。大山さんは「この被害はハンセン病患者の強制隔離という国の誤った施策の中で国民に偏見、差別が生まれ、この悲劇につながった」と指摘。一方で「この悲劇を繰り返さないためにはときの政府、施策を批判するだけでなく、歴史的事実を学び、一人一人の問題としてハンセン病を捉(とら)えることが大切」と述べた。

「今もハンセン病患者、元患者、さらに家族までも偏見、
差別にさらされている。一番怖いのは無関心」
と話す大山さん


過酷な環境を強いる
 大山さんは「外島保養院の悲劇は法律『らい予防ニ関スル件』(1907年公布)に基づいて国が推し進めた絶対隔離政策のもと、劣悪な環境下へハンセン病患者を追いやった。さらに保養院がある地元住民の反対や移転予定地での建設反対運動により、ハンセン病患者が過酷な環境での生活を強いられた」と指摘。
 地域からハンセン病患者を無くす強制隔離政策「無らい県運動」が官民が一体となって起こった背景には日清・日ロ戦争で勝利し、世界の列強進出を目指す日本にとって「家や地域から排除されて放浪するハンセン病患者は〝文明国の恥〟だ」とみなし、隔離収容するためだった。
 さらに順次、法律を制定しながらハンセン病政策を進め、社会、市民に『怖ろしい病気』だという誤った認識を植え付けてしまった。そして『無らい県運動』と称して自分たちの住む地域からハンセン病患者をなくす運動を国、地方自治体、市民らで推し進めてきた。そして隔離収容政策によって施設内で夫婦は断種(強制不妊手術)や中絶手術を強制されるなど深刻な人権侵害が長期化した」と指摘した

ハンセン病、今では完全に治る病気
 大山さんは「ハンセン病は今では完全に治る病気。感染力・発症力が弱い病気で、まれに発病しても多剤併用療法を開始すると3日~3週間のうちに感染力を失う。それでも今もハンセン病患者、元患者、さらに家族までも偏見、差別にさらされている。一番怖いのは無関心。歴史的事実を学び、真相を知り、一人一人の問題として捉(とら)えることが大切」と呼び掛けた。


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