『リボンの騎士』を知ってはいるけど見たことがない方、見ていたけれども昔のことだし忘れちゃったよ〜と、おっしゃる方の予習・復習(?)のために、基本的なストーリーと原作とちょっと異なるアニメ版の特色などををご紹介してみます。


※ここでいう『リボンの騎士』はTVアニメ版です。原作漫画(少女クラブ版・なかよし版)とは異なります。
※アニメ版は全部で52話になりますが、各話のあらすじについては『全52話作品リスト』のコーナーで紹介しています。





基本のストーリーは…
 物語の舞台は中世のヨーロッパを思わせる架空の王国シルバーランド。この国には「男でなければ王位を継げない」という昔からの掟がありました。主人公のサファイアはこの国に王女として生まれますが、王女であれば王位を継げないばかりか、次の王位は王様のたった1人の従兄弟で腹黒いジュラルミン大公のものになってしまいます。ジュラルミン大公に王位が渡ることを憂慮した王様は、国民に「世継ぎの王子が生まれた」と嘘の発表をして、サファイアを男の子として育てることにしてしまいました。この秘密を知っていたのはサファイアの両親である王様とお妃さま、博士と乳母と侍従といったごくわずかな人たちだけでした。


12年の月日が経ち、サファイアはすっかり王子になりきって成長していました。ところがジュラルミン大公はサファイアは本当は女の子ではないかと疑い、なんとかして秘密を暴こうと腹心の部下・ナイロン卿と共に日々策略を巡らすします。でも元気なサファイアは負けてはいません、ナイロン卿が差し向ける殺し屋たちも得意の剣で返り討ちにしてしまうのです。


 そんなある日サファイアの前にチンクという小さな男の子が現れます。チンクは自分を元・天使だと名乗って、「きみを元のかわいい女の子にするために天国から降りてきて(12年間)ずっと探していたんだ」と告げます。それには理由がありました。チンクは天国にいた頃いたずらをして女の子に生まれるはずの赤ちゃんに、女の子の心の他に男の子の心を与えてしまったのです。そのせいでその赤ちゃんは男女ふたつの心をもった女の子として生まれることになってしまいました。神様は怒って罰としてチンクを下界に落とし、その女の子から男の子の心をぬきとってくるよう命じたのでした。その女の子こそがサファイアだったのです。


 けれどもすっかり「男の子」が板についているサファイアは、自分を女の子らしくさせに来たというチンクの言葉を聞いてもそれを笑いとばしてしまいます。それにサファイアはシルバーランドの悪い企みやしきたりがなくなるまでは、自分は男の子だと決意を固めていたのです。


はたしてサファイアはジュラルミン大公たちの悪巧みを退けて、王子としてシルバーランドに真の平和をもたらすことができるのでしょうか?チンクが言うような本来の女の子として暮せるような日々は訪れるのでしょうか………




※チンクが男の子の心を与えてしまうシーンは原作では物語のプロローグとして冒頭に登場しますが、アニメ版では第一話には登場せず(後のエピソード内でチンクの回想として初めて登場。ただしエンディングの映像には天国のシーンが一部挿入されています)、チンクは理由を話さずに『きみを元の可愛らしい女の子にするよう天国から言い付かってきたんだよ』とだけサファイアに告げます。






TVアニメ版の特色
 TVアニメ版の「リボンの騎士」では、シルバーランドの王位とサファイアが本当は女であるというひみつを巡るジュラルミン大公たちとの攻防と、サファイアが持つ男女2つの心を物語の軸にして、一話完結のエピソードを重ねて行く形式をとっています(原作は連続したドラマとして展開。ただしアニメ版でも物語の山場となるところなどでは連続ものの形をとっています)。
 またチンクがまちがえて入れたサファイアの男の心を巡り、敵役として魔王メフィストという悪魔が登場し、サファイアから男の心を奪って娘のヘケートに与え、ヘケートを強力な魔力を持つ大魔女に育てようと企て、サファイアをつけ狙います(男の心が魔力のパワーアップの源に。まるでスーパー○リオのキノコのよう?)。
 この悪魔役は原作にも登場するのですが、原作では逆に女の心を奪ってヘケートを女らしくおしとやかにさせるのを目的として登場するため、アニメ版では原作とは異なるオリジナルのエピソードが展開されています。しかしアニメ版は一話完結を基本としているので、メフィストやヘケートは主要登場人物ではありますが毎回登場するわけでなく、エピソードによって登場するという少しゲスト的な出演の仕方をしています。これは同じメインキャラクターで、サファイアとのロマンスを演じる役柄のフランツ王子も同様です(ただしフランツはシリーズ後半の中盤以降はほぼ毎回登場するようになりますが)。


 他にアニメ版の特徴として、世界各地の昔話やおとぎ話がパロディ的にいくつかのエピソードに組み込まれていて、サファイアとチンクの冒険譚を描いている一面があります。代表的なところでは第31話の「チンクと海のお姫さま」などは日本の昔話を楽しくアレンジして作品にとりいれたアニメ版ならではの秀作のひとつではないかと思います。


 さらにアニメ版ならではの展開として、シリーズ後半の特に中期から終盤にかけて、シルバーランドそのものが外敵に狙われ、サファイアが王女として国を守るために敵と戦うというストーリーが各エピソードの中心になっていき、前半のファンタジックな雰囲気に対して後半はよりシリアスなムードで話が進行していくのも大きな特色になっています。





参考資料:『手塚治虫アニメ選集6巻・リボンの騎士』(少年画報社) / 『手塚治虫劇場 手塚治虫のアニメーションフィルモグラフィー』(手塚プロダクション) / ノスタルジックTVグラフ2“ずっとアニメが好きだった!”親子で見たい思い出アニメビデオBEST50(ノスタルジックTV倶楽部編/(株)メディアファクトリー) / TVアニメ25年史〈THE ART OF JAPANESE ANIMATION I〉(徳間書店)