2代目リボン“ビオレッタ”はとっても「リボンの騎士」らしい名


CHOBOKO
「リボンの騎士」のネーミングの法則


と、今更力を入れて小見出しをつけるまでもなく、「リボンの騎士」といえばサファイア、ナイロン、プラスチック、ジュラルミン、シルバーランド…等々、多くの登場人物や国の名前が、宝石や貴金属に因んだものであるということは、大抵の人がすぐにお気づきになることかと思います(主要登場人物全てがそうではないですが。例としては、フランツ王子やヘケート、ウラナリ博士など)。では、続編にあたる「双子の騎士」ではどうでしょう。サファイアの娘であるヒロインの名前は「ビオレッタ」。意外に普通といおうか一般的な女の子の固有名詞を使っているだけのように思われます。確かにいくらサファイアの娘だからといって‘ルビー’だったり‘ガーネット’だったり‘エメラルド’(ただし、エメラルドという名前の少女がビオレッタを助けるジプシーの娘として登場。この辺には初代の法則の名残があるかと思われますが。)では、あまりにもそのまま過ぎ、ひねりがないとも言えます。しかしそこは流石に手塚先生。この一見普通っぽい名前の‘ビオレッタ’はこのうえもなくこのうえもなく「リボンの騎士」らしいネーミングなんです。



 「ビオレッタ」の表すものは


講談社から刊行されている手塚治虫漫画全集をお読みになったことがある方は、ご存知かと思いますが、この全集では巻頭の方にストーリーを英文で要約して載せているページがあります。「双子の騎士」もその例にもれませんが、ここで注意したいのが「ビオレッタ」の英文表記がVioletとであることです。語学がそれほど堪能でない私はこの英訳を見るまで、ピンときてなかったのですが、「Violet」を英語の発音に変えて読むと「バイオレット」。英語で「バイオレット」というのは「スミレの花」。つまりビオレッタ姫をあえて日本語に訳すと「スミレ姫」になるのですが、そのことはヒロインにビオレッタという名前を使う上で充分意識されていたことは明らかです。なぜなら「双子の騎士」に登場する多くのキャラクターが、例えばビオレッタの兄の名前がデージィ(ひなぎく)であることや、コスモス公爵、ダリヤ伯爵、また白バラの王子や黒バラの王子といった花の名前にちなんだの登場人物が多数登場することから考えて、まず間違いないでしょう。さてここまで言えばピンと来た方もいらしゃるハズ。そう、「すみれ」は「宝塚」を象徴する花なのです。



 「リボンの騎士」と宝塚


「リボンの騎士」の作者である手塚治虫氏と宝塚の関係についてはあちこちで言及されていますし、ずばりそういった内容の書籍もありますのでここではあまり詳しくはしゃべりませんが、手塚治虫氏は、4歳から24歳までを兵庫県宝塚市で過ごしました。このため手塚さんは幼い頃から宝塚歌劇のファンであった母親に連れられて、たびたび宝塚の舞台を見に行ったそうです。そして手塚治虫さんご本人が語っておられるように、その経験から手塚作品には登場人物のコスチュームや背景等宝塚の舞台の影響を受けたものが見られるのです。そしてそれが最も顕著に表れた作品が「リボンの騎士」なのです。手塚さん自身「宝塚へのノスタルジアをこめて作った」と評しています。つまりは「宝塚」なくしてはもしかしたら「リボンの騎士」も生まれなかったかもしれないのです。「宝塚」はいわば「リボンの騎士」の母体ともいえるでしょう。
「すみれ」はそんな宝塚と非常に縁深い花なのです。宝塚歌劇団の愛唱歌が「すみれの花さくころ」であり、また宝塚市の花も「すみれ」です。宝塚の歌劇場へ続く「花のみち」を歩くと、その道の石組みにすみれの花の模様が刻まれていることにお気づきになることと思います。それほどに宝塚とすみれの花は色濃い関係にあるのです。


その「スミレ」を名前に冠した2代目リボンの騎士、ビオレッタ姫。彼女はこれ以上はないというくらい「リボンの騎士」にふさわしい名前を与えられている。と、言えると思います。