甘い匂い。の前。

「なんつーかお前のエプロンすがたって凶悪じゃね?」
「おれになんできくんかの、お前は…」
 そもそも何しにきちょる。と仁王はブン太の足を軽く蹴飛ばして追いやる。そんな事ではめげないブン太は仁王にいつものようにくっついてきた。
「お前の班まだなのかよー」
「お前もなんでここまできとるんじゃ」
 呆れながらも仁王は、ぐに。としぼり出す。
 テーブルの向こうでは女子がかたぬきの方を楽しそうにやっている。男女にすっかり分かれてしまった状況をみて、およ。とブン太はざかざか洗物をしている仁王と同班のクラスメイトに話し掛ける。
「春日はやらなくていいのかよ?」
「俺は今まで働いてた。仁王は今までずーっと遊んでた」
「えー、でもこれが一番楽しい作業じゃねぇ?」
「そうおもっとったから今までさぼっ取ったんじゃ」
「…理由かよ、それ…」
 呆れながらも春日少年は好きにしろ好きにしろ、とちゃっちゃと洗物。
 まぁ、確かに嬉しそうにクッキー絞ってる仁王君は幸せの象徴みたいな感じなので、取り上げるのもあれですから。
(つうかなんていうか、可愛いなー仁王…)
 ものすごい真顔。
 すんごい真剣。
 指先が器用なんで結構上手。
(ていうか真顔でハートマークとか!)
 面白スギ。どうしよう、これ赤也に見せてぇー…。
 
 …カシャっ。
 
「お前何とっとるんじゃい」
「えー、だって珍しい風景じゃん!」
 携帯カメラの小さな音に、仁王は眉を寄せて反応する。向こうの方から女子が『ブン太ーあとでチョーダイその画像ー!』と笑いながら声をかけてくる。ブン太は、勿論!と応え、仁王は、肖像権侵害じゃーとぼやく。
「あーなんか鉄板いっぱいになってきおったけど…もうやめてええ?残りどうすん?」
 そう言いながら片手に絞り袋をもち、仁王は顔を上げる。無意識のようにこなまみれの手を腹になすりつけた。
「って、あー!お前そうやってまたエプロンとかで手ぇ拭いて!」
「ええじゃろ別に。汚れるからエプロンしとるんじゃけ」
「なんでそう言うところはがさつというか大雑把なんだよお前は…」
 うるさいのう、と仁王はぐるぐるぐる。と適当に円を描いた。
「…仁王、それうんこにしか見えん」
「うわ、最悪。お前食いもんにうんことか言うな!」
「ちょっとブン太ー、やめてよー!」
「え、何、それ、俺のせい!?」
 かおりちゃんどーすんのこれーと仁王はリーダー格の少女に声をかけ、こっち鉄板のスペースあまってるから頂戴、といわれ、仁王は皿洗いを終えた春日少年に袋を渡した。
「はい。やりたいやろ?」
「…要するにあきたんだな…」
 いいから貸せよーと春日少年は手を拭き拭き受け取り、仁王は、へへ、と笑った。
 鉄板の上にはやたらめったらキレイなハートマークだ、模様だ、円だ、等というのが並び、先ほどブン太がうんこと称したかなりやけっぱっちな形も並ぶ。
「上手いなー仁王」
「何が」
「いや、お前ホンット手先器用」
「ありがとお」
「一個もらってもいい?」
「焼き上がったらな」
 んじゃこれ。とブン太はクッキーの一つに、赤い砂糖漬けフルーツを乗せた。目印らしい。んじゃ!と帰る後姿にヘロヘロ手を振って、さて。と仁王は鉄板に向かい直る。
「アイツもアホじゃの…」
 学習能力の無いやつめ。と仁王は、粉だらけのエプロンから小ビンを取り出した。
 
 
 焼きたてのクッキーの甘い香り。
「ハイ、できたの分けるよー」
 少女の号令に、ワーイと総勢が盛り上がる。
 仁王君、適当にいれていいの?ときかれて、あー、と仁王は空返事。
「あ、まった。俺の分多めにいれてくれるのがやさしさかも?」
「わかってるって、ていうかちゃんと袋分けてきたから皆に渡してね」
「うん。名前かいといて」
 うん、だって、可愛い仁王ー。と仁王は笑われて、あの袋が赤也、こっちが柳生の分か…と袋のデザインを見ながら思う。
 型抜きクッキーはそうやって可愛く別けられ、名前入りの袋は仁王に預けられた。
「じゃあ絞りだしのほうは皆で食べる分でわけちゃう?もう今食べちゃうよね、お昼まで持ってる?」
 メンドイよなー、今もう食うべ食うべ、と残りは皿に入れられることになった。ざーっと鉄板を滑るクッキーをみて、仁王はリーダーのエプロンをつんつん引っ張る。
「かおりちゃんかおりちゃん」
 にこーと、満面の笑み。
「え、なーに?」
 こりゃろくなことが無いな。とクラスメイト全員が思う。…何だか上機嫌すぎる。
「赤いの乗ってんの食ったらアカンよ?多分さっき避けたんであってると思うし…大丈夫やと思うけど、まざってたら悪いから後数秒待って」
「え。何…」
 で、という声はかき消された。
「てめ、こら、仁王!俺の分に唐辛子入れたな!」
 空を計量カップが飛んだ。
 仁王はしゃがんで、それを避け、ぽり。とクッキーをほお張る。
「うん、上手いこと焼けちょる」
 自画自賛。
 そういえばこれ、真田もやるんじゃろうな。あっちの方がよっぽど凶悪じゃ。…日曜日のお父さん?…あ、そりゃ大工か。とか、フト、おもった。
 

テニスの王子様RPG(偽)(光樹祐也様)に贈呈。
 
 真田のクラスは団子で皆がっかりでした。(期待したらしい。)
 でもエプロンしてたと言うことではなしがまた盛り上がりました。
 割烹着ではなかったらしい。
 ブン太は計量カップなんか投げたからあとで先生に怒られるよ!
 「仁王の所為です!」っていって、人の所為にしない!ってまた怒られるんだよ。

前にあげた小説「甘い匂い」にちらっとかいた「絞りだしクッキー」の仁王に萌えるといってくれたので
「じゃあ絞りだしクッキーの仁王の絵をかいてよ」といったら
書いてくれたからわたしも書いてみた。

煩悩ストリッパー珠姫ふじや嬢にいただきました。
経緯は上記の通りです。82の
「甘い匂い。」の続き
というか、その前ですね。ちなみに絵は
これです。
えっへっへ、この一連のクッキー話は楽しかったなあ。
描いてる私も楽しかったが、ぽぽんと話を書いてくれる
ので、お得でした。たまには役得もないとなあ!(笑)
そうそう、こういう、中学生らしい授業ね! 原作の
人間離れしたやつらも好きですが、日常話にいたく
萌える私としては、普通な生活も大好きなのです。
しかし真田…! 前述のように言いながらも、やはり
あいつだけは普通の中学生らしい日常なんぞ想像
できゃしません! たまらん!!
で、タイトルなかったのでこんな感じで(笑)。
ふじやんに私信。賄賂のコーナーにクッキーの絵
置いてくれるのはいいんだけど、「祐也から柳生仁王」
て、うん、決してにおvブン絵じゃなく、82の一環なんだけど、
それでは見た人は、え?と思っちゃうよ(笑)。