××ナナメ45ハニィ××

「お前は怖いんだそうだ」


 唐突にそういって、乾はノートから離したペン先を軽く唇にあてた。海堂は、それを見あげて眉を寄せる。
「だからどうだっていうんスか」
「いや…不思議なものだなぁ、と思って」
 乾はグラウンドに下りるコンクリートの階段に腰掛けて、階段の下の海堂のフォームに逐一と言葉を入れる。ノートに、サラサラと何かを書き込んで、その後の言葉を全部飲み込んだ。ぶつぶつ、何かを言ってるらしいが、そんなもの一々気にしていたらこの人の場合際限がないので、海堂は再びラケットを握り締めると素振りに戻った。
 濡れ手ぬぐいは排除されて、ラケットになったからと言って、その綺麗なフォームには間違いは無い。乾は、再びううん、と唸った。
「問題はないね。多分、打てるはずだ。明日あたりコートでやってみるか」
「……」
 海堂はそれを聞いて、無言で左手で右手首を掴んだ。小さい、ため息。
「…なんだ?何か文句でも?」
「…いや…あんたは…」
 先輩、じゃなくて、あんた、と来たもんだ。一瞬自分でさらりと口にした言葉に海堂自身が戸惑うが、そんなことになれっこの乾は、眼鏡の向こうから、どうぞ、と続きを促した。
「あんたは、俺を利用するって言ったけど…俺の何処を利用してんだよ?」
 ぼそぼそ、と呟かれた言葉。
 三白眼がこっちを見あげてる。ちょっと慣れてなかったら、まるで睨まれてるように感じる瞳だけれど。
「…利用する理由もばらさないといけないのかな?」
「いけないって…」
「心配するな。同情とか、そういうんじゃない」
 乾はひらひらと掌を振った。しかし、まずい言葉をすべり込ませてしまって、海堂はぎらり、と睨みつけてくる。(差は無いようだが、今度は本当に睨んでいるのだ。)
「同情!?」
「…ああ、言い方が悪かった。悪かったけど」
 ううん、と乾は顎を掴んだ。やはり言わないと通じないようだから、いっても良いだろう。
「俺が海堂を好きだから選んだとかそういうのは無いよ。本当に実力的に必要だったんだ…お互いのためにね」
 海堂は、そのまま、ぴたりと動きを止めている。乾はふう、とため息をついた。
「俺だって元々シングルスの選手だったんだぞ。忘れてるだろう?」
「…」
 あれ。
(まだ黙ってる…ってことはそういうことじゃなくて)
 これは。
 ううん。
「驚いてるのか?」
「…」
 視線が、またこっちに上げられた。ああ、と乾は手を叩いた。
「俺が好きだとかいうからビックリして、照れてるわけか。成る程」
「おど、驚くとか、なぁッ!!?」
 ざり、と海堂の足の下で、動揺して踏みしめられたグラウンドの土の音。
「そういう、そういう…」
「だって、だから選ばれたんじゃないかとか、だからダブルスに誘ったんじゃないか、とか、そういう風に疑ったのは海堂のほうだろう?それを聞きたかったんじゃ無いのか?」
 言葉をぽんとかぶせると、海堂は見事に黙った。黙った上に、なんだかばつが悪そうに視線を逸らした。乾は、立ち上がった。思わずにやけてしまう。ああ、駄目だ駄目だ。
「俺はそこまで甘くないし、子供でもないよ?そんな事をしても…」
 スタスタ、近寄る。
 ひょい、とラケットを取り上げた。じゃないと、どうされるか、わからないからね。
「お前の気持ちが手に入らないなんてことは、わかってるから」
 ぽんぽん、と頭を軽く叩く。海堂は、邪険にその手を払った。
「わかってるなら、なんで…」
「だから、これは別に俺のためだって。海堂が気にする問題じゃ無くて」
「気にしてなんかねぇ」
「…うーん。…強情だな。まぁ、そういうところが可愛いとはおもうけど」
「可愛い!?」
「うん、可愛いよ」
「…あんたぐらいだ、そんなこというの」
「そうかもしれないねぇ」
 乾はとりあげたラケットで軽く自分の膝を叩いた。
「男性は一般的に、小柄な女性を好む傾向にあるそうだよ」
「だからなんなんスか」
 いつもながら始まったうんちくに、海堂は眉を寄せる。毎度これだ。付き合いきれない。
「…少し上から見ると、可愛く見えるんだそうだ。綺麗に見える、らしい」
 上から見下ろしたら、少し綺麗に見えるそうなんだけど。と、乾は付け足す。
「俺はそれを聞いて、ちょっとだけ、思ったんだ。海堂は、結構怖いとかいわれてるらしいんだけど」
 乾はそこで言葉を切って、ぽんぽんと、膝を叩いていたラケットをとめた。
「俺にはとても綺麗に見えるんだよなあ」
 それは、と海堂はまた眉を寄せる。ずっと寄せっぱなしだ。
「あんたがおかしいんスよ」
「うん、そうかもね」
 意外にも乾はあっさりと認めた。はは、と小さな笑い。
「でも、俺にはとても可愛い。それは、俺が上からみてるからであって、とか、俺の条件的な特殊性とかも考えてみたんだけど」
 乾は、そこまで言うと、急に膝を落とした。膝に手をついて、身をかがめる。海堂の目の前に、その顔がいきなり現れて、海堂は思わずびくりとする。
「…やっぱりさ、同じ目線でも、俺には海堂は可愛いよ」
 いつも見上げてるその顔。
 目が悪すぎてビックリするぐらい厚い眼鏡の向こうの目が、ふ、と緩む。
 
 どきり、とする。

 吐息のかかりそうなほどの近くで、乾は微笑った。
「やっぱり、身長の所為だけじゃなさそうだな」
 そして、ふとまた身体を伸ばす。
 決して、小柄というほどでもない海堂でも、見上げる高さに乾の顔が戻った。海堂は、それをちらりと見上げる。
 身長とか…その所為だけじゃ無いとしたら。

 この、キモチとか動揺とか、…それはなんの所為なんだろう。

「じゃあ、また明日もあることだし、帰るとするか、海堂」
「…ッス」
 
 答えを見つけるより、ラケットを取り返す方が先で、乾が差し出すラケットを海堂は受け取る。
 斜め四十五度。

 乾の上を越えて、夜空の星が落ちてきそうだった。





貴方の誕生日一日過ぎた。
珠姫ふじやさんより。

祐也さん誕生日おっめでとー。

っていうかまた間に合わなかったYO。
毎年言ってる気がする。

…そして、結局乾海書きましたー。
誕生日はよく考えたらグレイをあげたほうが良かったんじゃ…?
そんでもってこれが誕生日プレゼントということは、
千部をかいてもらうには後1作品ささげにゃならんということに…?

…まぁ良いか。

初書きで苦労しました。
か、かきづら!かきづらいよ乾海!ていうか青学!(涙)

出来るだけ恥ずかしいストーリーとかにしてやろうと思って
キワキワ決め決めです。(対自分比。)

乾は紳士で意気地なしで一方通行で強引で自己完結だと思います。
そしてどうでもいいけど、四十五度ってどんなもんだろう。
いいかげんさがこんなところで露呈。

貴方がオッケーならこのファイルどうぞサイトにでもばばんと置いてちょうだいよ。

ばばん。と置いてみました!なんか、もしかしなくても
私、ふじやんの誕生日にモノあげたことないよね?!あわわ、
一日過ぎた、とかそんなレベルじゃないね私?! ごめん、10年とか
付き合ってる友達の誕生日でも中々覚えられん人間やねん私。
特にイベントごとに合わせて描くってのも思いつかなくて(笑)。
今度埋め合わせる。そして飢える私に乾海有難う!のたうって
喜びました。「おど、驚くとか、なぁッ!!?」てのが可愛くて、あー
私奥島さんのこゆセリフ回しが好きなんだよなーと再確認した。
このこっぱずかし感(激誉めてます)がテニプリの醍醐味!!
おっとっと、
一発やり逃げ屋の珠姫ふじや嬢からの頂きものでした!