■インド洋作戦

※注意:他のルートと似ている点が多々ありますが、これまでの情勢の変化で若干の違いが生じています。(「chapter2_7.html」とは同じです。)

 さて、開戦から三カ月たちました。日本軍はマレー半島もインドネシアも解放しました。ついでに、ビルマにも進撃を開始しています。「聖者」級戦艦を含む英東洋艦隊も撃滅しました。第一段階の作戦は完成です。
 この段階で日本は、印度解放を目的とした東亜解放第二段階に移行する事になります。
 この時点で1941年6月。欧州では、ドイツ第三帝国により「バルバロッサ」、対ソ侵攻作戦が開始されます。
 もちろん日本にはこの情報は入ってきていません。ただ、この年の2月にドイツが北アフリカに上陸していることもあるので、それに便乗する形でもインド洋に侵攻し、英国が崩壊の瀬戸際に近づいている今こそ、今度は印度解放をするべく進撃を開始するのが、順当な線と言う事になります。
 印度侵攻の第一段階は、ビルマ(ミャンマー)全土の制圧とセイロン島の占領。そして、これを迎撃に出撃するであろう英東方艦隊を撃滅、制海権を確保後、全艦隊をあげて英国のインド洋交通線を遮断、英国の継戦能力を外堀から奪い、なおかつ印度に英国の増援が入るのを阻止するのが目的です。
 もちろん、表向きのお題目は印度解放による東亜解放の完成に他なりません。

 当然、勝利に勢いづく日本軍は、ここでも短期決戦を目指して、大戦力を一気に投入して、インド洋になだれ込みます。
 この時点でようやく内地で訓練に明け暮れていた第一航空艦隊に、本格的にお鉢が回ってきます。その理由は、セイロン島攻略のための制空権奪取に、移動洋上航空基地たるこの艦隊が必要不可欠だからです。第一航空艦隊はこのような任務のために編成されたのですから。
 これ以外にも、インドネシア攻略に従事していた第二、第三艦隊が、整備補修の後動員される事になります。第一艦隊は、極東艦隊から受けた傷を癒すために今回は少しお休みです。もちろん、全艦隊を動かすにはお金がかかりすぎるからと言う理由もあります。
 しかし、最強の第一艦隊を欠いていても、いかに増援されたとしても、連合艦隊に全力で攻撃された場合、英東方艦隊に対抗できる戦力ではないでしょう。
 それに、技術の進歩で首脳部の誰も気付かない間に異常に強力になっている第一航空艦隊が存在しています。
 連合艦隊にしてみれば、単に効率的運用のために空母を集中したようなものに過ぎないのですが、状況によっては、単独で航空機による作戦行動中の戦艦撃沈を達成できるかも知れません。
 史実と同様の展開なら、英国がすでにビスマルク追撃戦で航空機が大きな役割を果たし、タラントでは停泊中の戦艦を撃沈しています。また、この世界でもマレーでは英国の大型戦艦三隻の撃沈に大きく寄与しています。
 そして、史実をご存じの皆様なら、1941年夏当時に正規空母5隻(場合によっては7隻!)がもたらす破壊力が、いかに大きいかはここで論ずるまでもないでしょう。
 なお、この世界の日本海軍は、八八艦隊を作ってなお史実より余力があるので、他の部門でも史実かそれ以上の技術と部隊を有しており、航空機の装備もそれが反映されています。
 つまり、国力の増大によりハイオクタンガソリンの実現、無線装備の向上、冶具技術の向上など、見えないところでむしろ進歩しているので、航空機の性能が若干でも向上していると言う事です。(米軍のように平然と露天搭載して搭載機数を水増しする事も可能かも知れません。)

 さて、史実(42年4月)の日本軍の同様の侵攻の前に立ちふさがった英東方艦隊は、戦艦「ウォースパイト」、「ロイヤル・ソヴェリン」、「ラミリーズ」、「リヴェンジ」、「レゾリューション」、空母「インドミダヴル」、「フォーミダヴル」、「ハーミス」、重巡2、軽巡3、駆逐艦多数でした。
 まあ、配役については、インドの重要性を考えれば同じでもいいでしょう。ただし、41年夏では史実でも「インドミダヴル」は存在していませんので、ここでは「アークロイヤル」が代わりに参加するとします。
 さらに八八艦隊の世界だと、これに「インヴィンシブル」級か「フッド」級、「聖者」級のどれかが数隻程度加わる事になります。
 つまり最大戦艦6〜10隻、空母3隻、航空機120機程度が英東方艦隊の戦力となります。(この時点でも英国はなお20隻以上の戦艦を保持していますが、ドイツとの戦争で遠くインド洋にはその半数の主力艦を派遣するのが限界です。)これが通常なら、圧倒的な戦力を有する大艦隊と言えるでしょう。欧州にこの戦力に対抗出来るだけの海軍は存在すらしません。
 対する日本遣印艦隊は、攻略艦隊に第三艦隊が割り当てられるので、実際艦隊戦を行う可能性が高いのは、第二艦隊と第一航空艦隊となります。その戦力は、戦艦8隻、空母7隻、航空機420機程度となります。第三艦隊を含めれば、戦艦は最低11隻にまで増加し、補助艦艇に付いては圧倒的な差となります。
 また、史実よりも建造能力が高いので、1937年計画の「翔鶴」級航空母艦や「高千穂」級戦艦が加わっている可能性も十分あるので、航空戦力においてなら圧倒的な戦力差があることになります。

 な〜んだ、史実と同じ展開になってきたかじゃないかと思われるかもしれませんが、史実と同程度とするとこの当時コロンボには最大150機程度の基地航空隊がいて、英東方艦隊にも空母がいるのた当然とされるでしょうから、電撃戦を行うつもりなら、大量の航空母艦投入は戦術原則に従えば当然と言えます。
 しかも、日本艦隊の目的はセイロン攻略にあります。
 戦闘の形としては、史実のインド洋海戦と言うよりは、攻略船団を伴う以上ミッドウェー沖海戦と似たような状況となるでしょう。
 ただ、ミッドウェーと違うのは、連合艦隊の作戦思想です。敵艦隊は、あくまで戦艦を中心とする水上打撃艦隊が撃滅すべきで、空母は偵察と敵地と艦隊上空の制空権の維持獲得、そして敵陸上基地の無力化がその任務となっています。
 しかも、第一航空艦隊は、どちらかと言えば攻略部隊に組み込まれているので、敵艦隊を撃滅すべく意気軒昂なのは、第二艦隊となります。

 ではここで、純粋に英東方艦隊(最大)と日第二艦隊(最小)の戦力を比較してみましょう。
 英側は史実の戦力に、贅沢にI級戦艦の全て4隻入れるとして、最大16インチ砲9×4、15インチ砲8×5、航空機128、日本側は、41cm砲12×78、航空機60です。さらに日本側は戦闘機ばかりです。
 弾薬投射量比率が、英:日=72トン:78トン=9:10、排水量比率が、英:日=34:38=9:10となります。これだと、日本側が第二艦隊のみだと航空戦も交えれば結構いい勝負になるでしょう。お約束の偶然の一弾があれば、日本の敗北も十分ありえます(笑)。
 また、日本側に有利な状況とするなら、英側は大型戦艦が2隻減って2隻しか派遣されていないとして、日本側に新鋭戦艦が2隻参加しているとすると、この結果は弾薬投射量比率が、英:日=54トン:96トン=56:100、排水量比率は24:46=52:100となります。さらに、日本側には、手つかずの第三艦隊の存在もあります。
 こうなるともう勝負になりません。(八八艦隊1934での)太平洋戦争後期の米艦隊のような有様です。
 しかも、日本側は砲雷撃戦以前に最大7隻の正規空母が、主に敵空母を狙って攻撃をしかけてきます。いかに大艦巨砲主義が主流を占めると言っても、餅は餅屋で制空権奪取と敵空母撃滅の任務が第一航空艦隊に割り振られるのは当然でしょう。
 敵艦隊撃滅に、結局第一航空艦隊も呼ばれます。

 ここで空母が出たので、航空戦がめい一杯行われる場合の状況を見てみましょう。
 英国側は空母「アークロイヤル」、「フォーミダヴル」、「ハーミス」、日本側は「蒼龍」、「飛龍」、「雲龍」、「伊勢」、「日向」、それに「翔鶴」、「瑞鶴」が加わっている可能性があります。搭載機数敵には、英国側は「アークロイヤル」が72、「フォーミダヴル」が36、「ハーミス」が20です。日本側は「蒼龍」が史実の赤城と同等なので66(+25)、「飛龍」、「雲龍」が57(+16)、「伊勢」、「日向」が60(+5)、「翔鶴」、「瑞鶴」が72(+12)です。
 日本側に「翔鶴」級が加わっていなくても、搭載機数差は日:英=367:128(予備含む)、「翔鶴」級も入れると535:128と4倍以上の差に広がり、日本側には、さらにこれ以外に防空のみの軽空母が約60機の戦闘機を別に搭載しています。しかも、英国の航空機は必ずしも空母同士の戦いに適したものとは言えません。
 また、航空戦は、海以上にランチェスターの計算が適用される場とも言えますので、日本側が最大級の戦力を投入して来たとき、英側が全滅しても日本側はなお95%以上もの戦力を保持している事になります。もちろん、これは航空機の能力、練度が同程度としての仮定です。この数字は日本側が最低の戦力を投入しても日本側は15%程度の損害しか受けない事になります。(零とフルマー、ハリケーンの対戦だともっと酷いスコアになりそうですが(汗))
 つまり、制空権については、日本側が圧倒的戦力差で難なく確保という結論が出ます。
 なお、索敵や奇襲と言う点は、取りあえずここでは考えない事にします。状況としては、双方ほぼ同時に索敵機により敵発見です。距離は英艦隊の攻撃距離を考えれば、遠距離でなくかなり近距離と言う事になるでしょう。
 次に、双方の航空機による攻撃力を比較してみましょう。なお、英側の基地航空隊については、それ程大きな戦力もありませんし、面倒になるのでこの計算からは除外します。
 英側の128機の内訳はシーハリケーン、フルマー、ソードフィッシュが各3分の1ずつ。フルマーの半数は爆撃隊となるので、雷爆それぞれ32機ずつとなります。日本側は艦隊上空の制空権奪取を目的とした航空艦隊整備がされているので、同じく半数が戦闘機になっているので、最低150機(常用機のみ)、最大220機(常用機のみ)が攻撃機となります。(シーハリケーンは、英側のラインナップがあまりに寂しいのでリップサービスみたいなものです(笑))
 ですが、圧倒的戦力差があるので、英側の攻撃機60機のうち敵艦隊上空に到達し、本当に攻撃できる可能性のある機数は、最大で5割程度、最悪全く射点につけない可能性すらあります(これはもちろん全機撃墜という事を意味しません。)。ここは平均を取って、3割、15〜20機程度が射点についたとしましょう。命中率はマレーでの日本軍同様に一割とします。つまり、2発程度の命中弾が発生します。しかし、仮に魚雷と爆弾が1発ずつ、しかも1隻の空母に集中したとしても、この数字では軽空母ですら撃沈できたか怪しいと言えます。ですが、日本側に装甲空母は存在しないので、ここで正規空母1隻が大破脱落です。
 対する日本側の攻撃は、圧倒的戦力差で敵艦隊上空においてすら容易く制空権を奪えるのは確実ですので、弾幕による脱落を差し引いて9割が投弾できるとします。もちろん、弾幕による妨害や個艦ごとによる回避があるので、全弾命中などという確率論を無視した馬鹿げた命中率の高さはありえません。
 そこでここは、公平に一割が命中と言いたい所ですが、一度に多数の攻撃が集中しますし、一度被弾した艦は動きが鈍く、防御力も低下するので、後続の攻撃隊は非常に命中率が高くなるのが常です。しかも、この場合2波の攻撃による約200機です。ですから、最終的な命中率は、倍の二割が命中するとします(史実のあの驚異的な命中率はまさに異常ですので、ここはある程度常識的な数値に落としています。)。
 ただし、この場合の二割は数が違いすぎます。最大200機の場合(索敵機で機数が若干減る)、180機が投弾、36発が命中です。しかも当然まずは一番邪魔な空母部隊を狙って。
 命中弾のうち魚雷は18発です。爆弾は装甲空母にはあまり効果がないので、軽空母に集中された場合、史実のように爆弾が爆発する間に爆沈している可能性もあります。(「アークロイヤル」はもちろん通常型の空母ですので、こちらに爆弾が命中すれば、空母としてはそれでおしまいです。)
 さらに、空母に各9本もの魚雷が集中しては、いかに装甲空母と言えど2.3万トンの艦に耐えられる打撃力ではありません。普通この程度の空母が耐えられるのは4〜6本が限界でしょう。9本も受けたら攻撃中に撃沈してしまうかも知れません。しかも、この命中弾の3分の2程度が命中した時点で、攻撃隊は空母全艦撃沈と判断するでしょうから、護衛の補助艦艇にも攻撃が向かう事になります。
 よって、午前中の空母戦で英空母部隊壊滅。勝ち誇った日本空母部隊は、次なる獲物、親の敵よりも憎たらしい戦艦を攻撃目標とします。
 ただし、いったん帰投してからの再攻撃になるので、攻撃時間は午後から、つまり余程距離を詰めていない限り、2波の攻撃が限界です。
 この時準備できる攻撃機の数は、最初が200機でしたが、当時の英国の防空能力を考えれば、被弾による出撃不能機は、撃墜された機体を含めてせいぜい2割、一隻が落伍しているとしても、予備機も出せばもう一度150機程度の攻撃隊を2波に分けて出せる事になります。
 しかも、今度はいかに強力な防空力を持っているとは言え、航空機の傘のなくなった戦艦が相手です。しかも、バッタの英国空軍機に洋上の艦隊を継続的に防空できる能力は高くありません。陸上からのエアカバーがあっても、カバーできる時間が限られてしまい、最悪防空隊のいない間に日本艦隊を迎えてしまう事態すらありえます。
 さて、今度のコンバット・ブローブンはどうなるでしょうか? 命中率については、空母の時と同程度とします。つまり、命中するのは爆弾15発、魚雷15本です。もちろん、相手は戦艦ですので、250kg程度の爆弾はあまり効果はありません。(もちろん、爆弾も敵防空力を奪う効果があるので、その効果は無視できないでしょうが。)
 さて、軍艦「大和」が全力で戦闘しつつ耐えた魚雷の本数は10本でした、これは攻撃が片舷に集中した結果でした。一方の同型艦の「武蔵」は20本の魚雷に耐えたと言われています。しかも、バイタル・パートは遂に破れなかったそうです。また、英国の誇る浮沈戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」は、それより遙かに少ない数の命中魚雷で撃沈していますし、レパルスに至っては命中魚雷14本という滅多打ちにあっています。
 他の事例からも考えると、3万トンクラスなら5〜8本、4万トンクラスなら6〜10本、超大型で10〜15本で撃沈できる事になります。もちろんこれは破壊力の比較的弱い航空魚雷での話しです。
 つまり、15本もの命中魚雷があれば、大型ばかりをねらったとしても、大型戦艦2隻が撃沈、他1〜2隻が損傷となります。これが、防空力も低い低速の旧式戦艦ばかりに狙いを絞ったとしたら、4隻程度が撃沈されているかも知れません。
 どちらにせよ、目標を選択しやすい航空機による攻撃ですので、まんべんなく1〜2本ずつ命中と言う事はありえないので、平均的被害とするなら、大型戦艦1隻撃沈、1隻大破、旧式戦艦1隻撃沈、1隻大破と言う程度でしょうか。もちろんこれは、1941年程度の艦艇、艦隊の防空能力が基準となっています。
 さて、その日は終了しました。こうも遠距離で殴り合いをされては、さしもの八八艦隊のヒロイン達の出番もなしです。指をくわえて上空を飛び交う航空機を眺めるしかありません。ですが日本艦隊は、夜に突入すると敵艦隊への接敵を潜水艦にまかせて、追撃しつつも翌日の戦闘準備をせっせと行います。
 英艦隊は、戦艦2隻撃沈、2隻大中破、空母部隊壊滅と言う大打撃を受けていますので、当然秘密基地アッズに向けて撤退を開始します。
 史実では、日本はこのアッズ基地の存在を知りませんでしたので、攻撃する事はありませんでした。この世界でもそれは同様です。ですが、敵艦隊撃滅を目的としてしまったら、追撃するのが見敵必殺を旨とする日本海軍です。しかも、八八艦隊を以て、文字通り無敵海軍を自認しているのに、航空機にいいとこを取られたとあっては、追撃を断念する事など出来ようはずないでしょう。よって追撃続行、艦隊速度28ノットの優速に任せて、概略方向に突進します。当然これを援護するのが仕事の一つである空母部隊も後を追いかけます。もちろん、次なる獲物を求めてと言うのがホンネとなります。
 そして翌日。索敵一番からの偵察を行えば、すでに概略位置が判明している以上、索敵にそれ程苦労はしないでしょう。
 かくして、日本艦隊は難なく敵残存部隊を捕捉します。この時英東方艦隊は常識的には二つに分かれている事になります。それは、無傷の部隊と損傷艦を抱えた部隊にです。
 もっとも、損傷艦は、速力差が大きけれれば、夜のうちに日本側の打撃艦隊に捕捉される可能性もあります。
 そしていよいよ、再び血と鋼鉄の饗宴の開始です。日本側は、まずは損傷艦を狙う第二艦隊と、昨日の栄光再びと勢いづく第一航空艦隊がそれぞれの目標目指して突進します。英艦隊は三十六計よろしく、守りを固めての逃げの一手です。
 砲撃戦の方は、もう論ずるまでもないでしょう。英艦隊に出来る事は、名誉にかけて船が戦闘力を完全に喪失するまで戦い続けるか、人命のためにキングストン弁を抜いて自沈するかのどちらかです。
 航空戦の方も、追撃側は正規空母6隻、艦載機が実働300〜350機あります。スペアの組立と損傷機の修理が進んでいれば、400機近い戦力がまだ存在するかもしれません。
 つまり、戦艦4隻を擁する英東方艦隊の抵抗は、こちらも無益と言えます。
 昨日と同様のパターンで考えれば、日本側の攻撃機数は、2波で150〜180機程度。二割の命中率で30〜36発程度の命中弾。半数が魚雷として、1隻あたり4本程度お見舞いされる事になります。この打撃力はR級戦艦に耐えろと言うのは微妙な数値です。当たり所が悪かったり、ダメコンに失敗すれば撃沈でしょうし、もし耐えられたとしても、よろばう様にノロノロと後退するか、曳航してもらわなければ撤退もおぼつかないのではないでしょうか。
 さらに、とどめの第三波、第四波が押し寄せる事もほぼ間違いありません。そうなれば、英東方艦隊の主力艦に生き残るすべはほとんど残されていません。さらに追撃してくる第二艦隊を待つまでもなく壊滅です。残った補助艦艇が、ほうほうの体で遁走するしかありません。
 まさに、航空優勢による新しい戦争です。

 ですが、この世界は戦艦が主流を占める世界です。ですから、戦艦同士が戦った場合のシュミレーションも行ってみましょう。状況は、戦闘シュミレーションの最初に記した通りの、純粋な打撃戦がまず展開されます。空母の出番はその後の追撃戦においてからです。その間に互いに接近し合った主力艦隊同士の戦闘に発展します。
 さて、先ほどの戦力計算ですが、英側「I級」巡洋戦艦4、「R級」4、「QE級」1の合計9隻で、日本側は、八八艦隊の41cm砲戦艦揃い踏みにプラス新参の「高千穂」級2隻で合計10隻です。
 戦力比は弾薬投射量比率が、英:日=72トン:96トン=75:100、排水量比率は34:46=74:100となり、日本側が比較的優位です。補助艦艇数は英側の主力艦隊への比率が多くてもほぼ互角、つまりある程度優勢です。
 結果戦力比較は、7:10程度となります。つまり、日本側が50%の犠牲を払えば英東方艦隊はインド洋から消滅している事になります。しかし、何度も言っているように自軍が不利になれば後退するのが普通です。艦隊の主力艦の半数が大打撃を受け、敵に同程度の損害を与えていないのなら、司令官は後退を決意すべきはずです。
 当然、先に撤退を決意するのは、余程のラッキーヒットが多数発生しない限り戦力に劣る英艦隊です。ただでさえ戦艦数において劣勢で、しかも相手は大半が自分たちよりも有力な艦ばかりです。「I級」巡洋戦艦ですら、徹底した近代改装を受けた後の八八艦隊なら、どれを相手どっても不利は免れません。しかも、相手になりにくるのは、当然その中でも有力な艦と言う事になります。
 さて、この戦場で、英戦艦に八八艦隊の撃沈は可能でしょうか。それは可能です。純粋な打撃戦になれば、「I級」巡洋戦艦の主砲なら「天城」級を倒すぐらい十分可能です。それでも重防御の「葛城」級や「加賀」級の撃沈は難しいでしょう。できても相打ちとなる可能性が高くなります。もちろん、15インチ砲しか装備せず、ロクに近代改装を受けていない「R級」では、どれと対戦しても勝ち目はありません。
 よって、ここでの水上打撃戦は、英側が3隻撃沈、残り半数大破で後退とします。日本艦隊はここで、初めて八八艦隊のうち1隻を失います。欠員になるのは順番からいけば「赤城」級のどれかです。彼女の防御力では、「I級」巡洋戦艦の16インチ砲弾に耐えきるのは難しいでしょう。
 その代償に英艦隊は「I級」巡洋戦艦1、「R級」2隻を失い、その他戦艦2〜3隻を大破させられ這々の体で撤退します。他の戦艦も大破とはいかずとも中破は間違いないでしょう。一方日本艦隊は、「I級」巡洋戦艦に殴られた艦はかなりの損害出ているでしょうが、それ以外の戦艦に大きな損傷は発生しません。しかも、先頭を突っ走る葛城はもとが46cm砲戦艦なので、特に問題もなく「I級」巡洋戦艦と殴り合えます。つまり、半数以上がいまだ健在で追撃も可能と言う事です。
 ここでようやく第一航空艦隊の出番です。敵空母を撃滅して次の出撃に備えていた空母艦隊は、「赤城」級を沈めた憎っき英東方艦隊を完膚無きまでに叩きつぶしにいきます。
 つまり状況としては、双方の空母戦が終わった状況から、再スタートです。結局、日本側の一方的な航空攻撃が形を変えて出現する事になります。
 日本側の攻撃機数は、同様に150〜180機。英側は戦艦2〜3隻大破、2隻以上が中破です。先ほどと同じなら、命中するのは爆弾15発、魚雷15本です。ですが今回は、戦闘艦艇のかなりが砲撃戦で傷ついており、防空力が弱くなり、速力も低下して回避能力も低下しています。ヘタをすれば、日本の攻撃機にすれば射的大会のようになる可能性すらあります。まあ、そこまで酷い状況ではないでしょうが、命中率が上昇するのは間違いないので、ここでは命中率は3割程度としましょう。つまり、爆弾と魚雷はそれぞれ20〜25発ずつぐらい命中する訳です。
 何やら結果は、航空攻撃だけ受けた時よりも酷くなりそうです。それぞれに5発の魚雷と爆弾を受けては、損傷している戦艦に生き残るすべはないでしょう。ほぼ間違いなく敵戦艦は壊滅する事になります。
 つまり、この場合も英艦隊壊滅、残存した補助艦艇が三々五々撤退する事で幕を下ろします。

 何やら、どう経過が運ぼうとも、艦隊防空が十分研究されていないこの時代だと、空母の群が戦艦をバカスカ沈めてしまうことに変わりないようです。
 別に英艦隊が悪いのでなく、史実通りに発展してしまった場合の、この当時の空母の攻撃力が高すぎ、対する艦艇の防空能力が低すぎるのです。しかも、正規空母を7隻も集中すれば結果は史実と同じとなるのは必然でしょう。
 そして、短期決戦を目指し、太平洋に憂いのない、艦隊燃料にも不安のない、勝ちで勢いに乗る日本が、インド洋に海上戦力の全力を投入する事を否定する要因はこれと言って存在しません。
 では次に、日本艦隊が勝利におごり、地の利を得ず、完全に英艦隊に奇襲を受けたとしたらどうでしょうか。少しシュミレーションしてみましょう。
 日本艦隊は、第一航空艦隊が中途半端な敵艦隊攻撃を考え、当面は全力でセイロン島を攻撃中です。この間隙を縫って英艦隊が横から航空機による奇襲を図ります。そう、状況はミッドウェーの再現です。殺到する英艦隊の艦載機は、三分の二の約80機。内攻撃機は、一波になるので多くて50機程度です。
 日本側は、第二艦隊が軽空母2隻、常時18機の直援があり、さらに緊急時はその倍が使用可能です。ですが、当面こちらは関係ありません。
 一方攻撃を受ける第一航空艦隊は、最大投入数の正規空母7隻として考えます。つまり、常用機444機のうち、216機が戦闘機で24個中隊あります。うち半数が攻撃隊に随伴、そのさらに半数が常時上空を警戒しています。その数54機。緊急待機が27機と言った辺りが妥当な直援隊の数でしょう。
 ただ、この当時これだけの戦闘機を有機的に統一運用する能力は、史実と同程度の技術力しかなければ、無理と言うことになります。しかし、史実の2倍以上の国力を持つと言うことは、史実よりずっと基礎工業力が高い事になるので、電探はともかくそれよりも簡単な技術を用いた無線技術が高くなっているのはほぼ間違いなく、この点多少史実のミッドウェーより状況はマシです。
 しかし、セイロンの基地航空隊に史実と同程度の洋上攻撃能力しかないとするなら、防空隊をそれ程拘束する事はできません。それに、空母から奇襲してくるのは低速のソードフィッシュに中途半端な能力しかないフルマーです。うち雷撃隊は、ミッドウェーの米軍のように先に突撃してしまうと、その低速ゆえまさに撃墜されに来るようなものです。
 機数的には、一度に出せる攻撃隊はシーハリケーン12、フルマー36、ソードフィッシュ36ぐらいでしょう。(シーハリケーンはリップサービスです。この時期に艦載機型があったとはあまり思えません。あっても少数でしょう。)
 つまり、36機のフルマーの半数ぐらいが爆撃任務でが緩降下爆撃を仕掛けてくる訳ですが、妨害がない場合に極めて高い効果を発揮すると言われるソードフィッシュもこれに一部参加しているかも知れません。どちらにせよ、このような奇襲攻撃の場合の爆弾の命中率の高さは、極めて高いモノとなるでしょう。
 完全な奇襲に成功したとすれば、30機程度が投弾し3割、8〜10発程度の1000〜500ポンド爆弾を敵艦に叩きつける事ができるでしょう。
 これをマトモに受ける日本空母は、軽防御で有名です。ただし、史実のミッドウェーのようにそこら中に爆弾や魚雷が転がっているという悲惨な状態でないので、全艦火だるまと事態はないでしょうが、10発が2〜3発ずつ命中したとすると、4隻が大中破する事になります。戦力半減以下の大損害です。
 ただ、それでも日本側は英側より多数の航空機を抱えているので、英空母艦隊がカウンターで壊滅するのは間違いありません。
 しかし、この奇襲が完全に成功した場合は、日本の空母部隊が英主力部隊を攻撃する余力を失うので、純粋な砲撃戦が展開され、先ほどのような想定で戦闘が始まり双方におびただしい損害を出す結果になります。
 日本側としては、圧勝を確信していたはずが、何とか勝利したと言う程度になってしまいます。
 まあ、良心的な火葬戦記なら、この結果が一番選ばれやすいシチュエーションではないでしょうか。

 さて、さんざん想定を繰り返してきましたが、我らが八八艦隊には以上のどのシナリオが、どのような形で選択される事になるのでしょうか。
 と、このままこれで結んでしまってもいいのですが、これ以降も続けていかなければいけませんので結果を出しましょう。
 さて、可能性が一番高いのはどれでしょう。
 少し日本艦隊の方針と動向を眺めつつ見てみましょう。

 日本艦隊の布陣は、敵艦隊撃滅に燃える戦艦を中核とする第二艦隊、攻略船団の護衛を仰せつかった第三艦隊と海上護衛艦隊の一部、そして全般の航空支援を担当する第一航空艦隊です。
 また、これ以外に第十一航空艦隊のうち二個航空戦隊がビルマ方面から印度東岸を攻撃する事になります。なお、攻略船団は2個師団の部隊により構成される事になります。
 当然、第二艦隊には、迎撃に現れるであろう英東方艦隊の撃滅が期待されます。第一航空艦隊は、索敵と敵空母の撃滅が担当となりますが、やはり主任務はセイロン上空の制空権奪取にあります。また、ビルマのアキャブに一個航空戦隊があり、こちらは東印度全域の制空権奪取を行い、アンダマン諸島に一個航空戦隊があり、長躯セイロンの空襲を第一航空艦隊と共に行います。さすが、世界初の戦略空軍である海軍航空隊です。1000kmの距離ぐらい何のそのです。そして、この基地戦力を含めると日本軍は約1000機の航空機を戦場に投入している事になります。対する英軍は、印度中の航空機をすべて集めてもこの半分程度です。そして防御側の悲しさかな、当然分散配置されています。
 さて、一方の英東方艦隊は、一度マレーで大敗を喫しているのでその分慎重になり、十分な偵察をまず心がけるでしょう。これは、史実でもある程度同様でしたので、まず間違いありません。
 その事前偵察で、日本側が大艦隊と共に攻略艦隊を伴っていると知れば逃げる事は許されず、全力での迎撃、撃退する事がその任務となります。
 このため、ハンターのように敵を待ち伏せ、スキを作り出した所で敵艦隊に奇襲を仕掛けるのが常套手段となります。
 まさに、ミッドウェーと同様の結果を英東方艦隊は狙うでしょう。そうするしか、強大な日本海軍を撃退するすべはないのですから。

 さて、ここで問題です。英艦隊にとっての最重要の攻撃目標とはなんでしょうか。・・・そう、戦艦なんです。この世界は大艦巨砲主義が、1934年の太平洋戦争のせいでより濃厚に支配する世界で、未だどの国も戦艦をまず撃破すべしと考えています。ついでに言えば、マレーで英国の戦艦に大打撃を与えたのは、小型の空母機でなく、基地航空隊の双発爆撃機の群で、まだ空母の攻撃力をそこまで高く評価していない状態です。だいいち10隻もの戦艦は、それだけで十二分に脅威です。ついでに言えば、戦艦の群が一番自分たちに近い位置にいます。
 そして戦訓として、英海軍は「ビスマルク」との追いかけっこや、タラント奇襲を経験しており、戦艦に対して航空機が有効である事を「知って」います。
 かくして、奇襲を狙う英東方艦隊の一番槍を承る空母部隊の目標は、日本第二艦隊の主力艦と言う事になります。
(さんざん、戦艦vs戦艦と空母vs空母の想定ばかりしていたくせに・・・)

 と言う訳で、状況は日本が侵攻を開始し、第一航空艦隊がセイロンを空襲しており、敵艦隊を見つけられない第二艦隊が、しかなたく陸地に接近して艦砲射撃をすべくセイロンに近づくと言う情報を察知した英東方艦隊による全力を挙げての奇襲攻撃により幕を明けます。
 英側は、先ほどの想定のように約80機(シーハリケーン12、フルマー36、ソードフィッシュ36)、うち攻撃機54機です。さらに、セイロンの空軍部隊が嫌がらせの攻撃を断続的に行います。対する第二艦隊は防空機は、追加の発艦分を含めて最大36機(全て零)です。
 零は、基地機の撃退に懸命で、英側の奇襲が成功する可能性は高いでしょう。まあ、雲の隙間から迎撃の間なく次々に艦爆が投弾と言う状態にはないでしょうが、制空隊の活躍(犠牲?)もあれば英機動部隊の約50機の大半が射点に付ける可能性は高いと言えるでしょう。
 ここは妥当に8割が射点につき、奇襲ですので、内3割が攻撃に成功とします。
 つまり、魚雷と1000ポンド爆弾が各6発ずつ程度が命中する事になります。ただし、1000ポンド爆弾では八八艦隊の戦艦の装甲を貫く事は難しいと言えます。それは、言うまでもない事ですが、どれも対41cm砲防御が施されているからです。さらに6本の航空魚雷では、4〜5万トン級の巨大戦艦を撃沈する事は物理的に難しいと言えます。当然、命中弾が1隻に集中しなければいけません。しかし、この命中弾が1隻に集中する可能性は余程徹底した指示が攻撃隊に与えられない限り難しいと言えます。しかも奇襲では集中攻撃を望むべくもありません。そして、通常なら各空母の部隊ごとに目標を定めるので、3隻が標的とされます。となると、それぞれ爆弾と魚雷が1〜3発ずつ命中と言う最終結果が出ます。これでは、せいぜい大破1隻、他は中破がいいところです。ただし、大破するであろう艦は、当たりどころが悪ければ撃沈も可能かもしれません。
 そして、一方的に攻撃された第二艦隊は、怒り狂って反転し敵概略位置に向けて進撃を開始する事でしょう。
 そして、その先鋒を受けたまわるのが、セイロンからの第一次攻撃隊を迎え入れ、次の攻撃の準備をしている第一航空艦隊です。ランチタイムのレストランよりも忙しい彼女たちに、急遽第二艦隊から対艦攻撃のオーダーがやって来ます。「英東方艦隊主力ヲ攻撃サレタシ。」と。
 図らずも機会を与えられれ、敵艦隊撃滅に燃え立つ彼女たちの午後のターゲットは、英東方艦隊です。取りあえず自らも索敵機を放ちつつ、敵艦隊発見を待ちます。
 そして、発見されるのは、攻撃隊を送っている英空母部隊です。それは、攻撃隊を追尾するか、来襲方向から敵の位置が分かりやすいからです。そして、航続距離の短さから英東方艦隊の空母部隊は容易く発見されます。恐らく近くには、主力艦隊もいるはずです。しかし、午後も回り時間が差し迫っているので、一航艦としては早急に攻撃隊を放ちたいところです。航空隊をディナータイムまでに収容できないと、困難な夜間着艦が待っているからです。
 かくして、一航艦の獲物は、戦艦部隊を攻撃した英空母艦隊となります。
 結果は先ほど行ったので、もうここでは行いませんが、一航艦が全力で英機動部隊を攻撃すれば、純戦術的にほぼ間違いなく全空母を撃沈する事が可能です。ヘタをすれば護衛部隊ともども艦隊丸ごと壊滅しているかも知れません。
 ただし、この間に英艦隊は30機程度の第二波を送り出しているのは確実です。当然攻撃対象は再び日本第二艦隊。これを撃滅すれば常識に従えば日本艦隊は後退する筈です。
 しかし、攻撃機は20機程度ありますが、日本側は今度は名誉挽回をかけて直援隊が迎撃するでしょうから、たいした戦果を挙げることはできずに、この攻撃隊は壊滅する事になります。命中弾があったとしても、損傷艦に対しての1〜2発の命中が限界です。なお、この英艦隊の第二次攻撃隊が空母部隊に向っていた場合、圧倒的な直援隊にすり潰され、攻撃する前に壊滅する事になります。
 さて、英東方艦隊は空母を失った後撤退するでしょうか。この世界の主役は戦艦です。自軍の空母部隊は、壊滅する前に日本主力艦隊の3隻の戦艦を撃破したと報告してきます。と言う事は、戦艦の数の上では自軍が優勢です。制空権と言う問題もセイロンや印度本土より味方空軍の援護が受けられれば問題も減少します。
 しかも、ここで引き下がれば、間違いなくインド洋の制海権を長期に渡って失い、この地域の交通線の遮断は英国の存亡にすら関わる事に繋がります。そう、日本はセイロンの攻略をした上に、長期に居座るつもりなのですから。
 見敵必殺、指揮官が余程慎重(臆病)でない限り迎撃を続行するでしょう。
 対する日本艦隊は、損傷し速力の低下した戦艦のうち、損傷の酷い3隻をはずしたとして最低で7隻です。最低でも魚雷3本を受けた戦艦が1隻いるので、これは確実に後方に待避させるでしょう。ここでは、間をとって2隻が待避、8隻が英主力艦隊を追撃します。
 しかし、英軍の自らに対する攻撃と、午後の自軍による戦果で航空機がそれなりに効果を発揮する事を認めたなら、柔軟な指揮官なら敵空母部隊撃滅の為に、敵空母撃滅のためこちらに進撃してきている一航艦に、さらに露払いをさせる可能性は高いでしょう。と言うより、まともな指揮官なら、いかに大艦巨砲主義者と言えど、数の上の不利を補うために、まず航空機に一撃させるはずです。よって、翌日の戦闘は一航艦の航空攻撃によって幕を明けます。
 翌朝これを受けて立つ英軍は、セイロンが前日に攻撃を受けて消耗しているので、マドラス辺りからの増援を迎え入れられれても、艦隊の上空に張り付けられる数は知れています。
 しかも、日本艦隊は正規空母7隻を擁し、一度に100機単位の攻撃隊を何波も放ってきます。しかもうち半数が戦闘機です。フルマーやハリケーンでは、余程の大戦力を艦隊上空に張り付けない限り、無駄に消耗するのがオチと言うことになります。
 かくして、日本側は3〜5波、のべ300機以上の攻撃機が英主力艦隊を襲うことになり(攻撃隊全てを含めればのべ600機近くなる。)、命中率2割としても各30発ずつの爆弾と魚雷が命中すると言う驚異的な打撃力となります。
 英艦隊の戦艦数は9隻、まんべんなく弾が命中したとして各3〜4発の魚雷と爆弾が命中している事になります。
 ですが、最初に損傷した艦と狙いやすい艦、そして大型艦を狙うのが攻撃側の心理として普通ですので、4隻の「I級」巡洋戦艦と攻撃しやすい低速の「R級」戦艦のうち2〜3隻が集中攻撃を受ける事になります。
 順当な結果として、「I級」巡洋戦艦1隻撃沈、「R級」(「QE級」)2隻撃沈、他2〜4隻大中破と言った程度に落ち着くでしょう。
 まあ、どちらにせよ壊滅です。いや、軍事的には全滅とすら言えるでしょう。命中率が1割だったとしても、いきなり半壊です。さらに航空機から攻撃される可能性もある以上、日本の主力艦隊との決戦など及びもつきません。
 こうなっては、英艦隊は全滅を避けるために尻に帆かけて逃げるだけです。
 この過程で、速力の落ちて艦隊から落伍した何隻かが、追撃してきた第二艦隊に撃沈される事になります。これを捕捉する航空機に日本は苦労しませんし、元々純粋な打撃力では日本艦隊が上回っているのですから大破し、速力の落ちた戦艦などものの数ではありません。
 最終的なオーダーは、日本艦隊が大型戦艦4隻大中破、英東方艦隊は「I級」巡洋戦艦2隻、「R級」(「QE級」)3隻、空母3隻、重巡洋艦2隻撃沈、「I級」巡洋戦艦2隻、「R級」(「QE級」)2隻大中破となり、英東方艦隊は事実上全滅します。
 かくして、インド洋沖海戦は日本海軍の一方的とすら言える勝利で幕を閉じます。

 この海戦により英海軍は、インド洋の制海権を完全に喪失し、東洋艦隊の損害を合わせると、王立海軍に所属する大型艦艇の三割近くを失う大打撃となります。しかも、その主要な役割を果たしたのは、太平洋戦争で活躍した戦艦ではなく、それよりも遙かに小さい航空機とそれを運用する航空母艦です。
 日本海軍としては、短期決戦を目指してセイロンの制空権を一撃で奪取するつもりで送り込んだ正規空母の群の一航艦が、大英帝国の誇る戦艦部隊を壊滅させてしまう事になります。
 日本側の主力艦隊も、ダメージこそ相手よりも軽かったものの、英空母機の的にされに来たようなもので、最後に何とか損傷した戦艦を何隻か撃沈できてもいいとこなしです。マレー沖と違い、主役の座を完全に艦載機とそれを搭載する空母に取られてしまった格好になります。

■関東軍北進セズ?