■アトランティック・ラプソディー

・フェイズ1 ジブラルタル
 前年秋より激しさを増しているドイツの航空攻勢、通称『第二次バトル・オブ・ブリテン』の中、1943年1月ついに日本遣欧艦隊がスエズ運河を通過して、地中海に入ります。
 最終目的地はもちろん英本土ですが、当面の目的はイタリア艦隊と合流し、独伊の部隊を援護してジブラルタルを攻略する事にあります。これにより、ドイツと日本を直接つなげ、必勝態勢を確固たるものにするのです。
 あえて史実と例えるなら、大東亜戦争でのフィリピン戦か沖縄戦に当たるのではないでしょうか。
 英国にとってジブラルタルは、すでに東洋を失っている以上、戦略的重要度は以前より遙かに低下していますが、英本土を守る最後の防衛線とも言え、海峡を日本の未曾有の大艦隊に突破されては、英本土は風前の灯火とすら言えます。それは、ここを失えば、ドイツに日本の輸送船が直接乗り込める事を意味しており、それは膨大な物資がドイツにもたらせる事を意味しているからです。もちろん、スエズが陥落し地中海が枢軸側のものとなっている事から、すでに日本とドイツ、イタリアはつながっていると言えますが、陸路と海路を考えるとその輸送コスト的に比較にならない効果を発揮する事になります。
 しかし、在ジブラルタル軍では、イタリア単独だけならとにかく、日本の巨大な戦力を押しとどめる力はありません。かと言って英本土から増援を派遣しようにも、ドイツ高海艦隊が虎視眈々と出撃を狙っている以上、グランド・フリート全艦隊を挙げて迎撃するわけにもいきません。英本国から派遣できる戦力はせいぜい本国艦隊の三分の一程度、戦艦1〜2個戦隊に支援部隊程度です。
 果たしてこの程度の戦力で、日伊の艦隊を押しとどめることが可能でしょうか。英側の戦力は、在ジブラルタルの空軍以外は、戦艦が7〜9隻、空母が2〜4隻程度、航空機は空母部隊、基地部隊全てを含めても最大400の数字を上回りません。しかも、狭い地域ですので、膨大な空軍戦力を駐留させるという技も使えません。
 まあ、地の利を活かして、海峡の狭い地域での防衛戦を展開すれば、持久は可能なようにも見えます。
 一方の枢軸側としては、圧倒的な航空戦力で押し潰してしまい、事後処理的に上陸作戦を展開すれば事足りると言えます。厳重に海から守られた要塞に、軍艦で直接殴りかかるのは愚の骨頂です。機動部隊と空軍を使い無力化するのが一番です。
 そして、ドイツの第三航空艦隊、イタリア空軍、日本空母機動部隊を合わせれば1500機以上、その気になれば2000機の作戦機を確保できるわけですから、ジブラルタルの短期無力化はまず問題ないでしょう。英本土の防衛に必死な英国に、これに対抗する戦力をジブラルタル方面に派遣する能力はもはやありません。
 しかし、英国としては何をするにしても、この大戦力をジブラルタルに押しとどめる事は、相手の戦力を集中させないためにも重要と言えるでしょう。
 かくして、英側の遅退防御を前提とした、ジブラルタル攻防戦が始まります。

 まず、行動を開始するのは、ドイツとイタリアの空軍部隊です。彼らは、前線拠点を確保するためにヴィシー政府が確保しているアルジェリアを横断し、モロッコ一帯に前線航空基地を開設し、地上からの補給を受けて、ジブラルタルに対する圧力を強めます。
 そして、本格的にドイツ第二航空艦隊が活動を開始すれば、ジブラルタルの制空権は、ほぼ間違いなく枢軸側が確保できます。英海軍のジブラルタル艦隊は、泊地にいることも出来ず、撤退するより他なくなります。
 これに、作戦位置についた日本空母部隊が、遠距離から一撃で膨大な数の攻撃機を放ち全ての目標を破壊します。
 敵空軍戦力が無くなり防衛能力が低下した段階で、空挺降下を行いこれを制圧。
 それでもダメな時に初めて大艦隊で押し寄せて、艦砲射撃をして要塞そのものを廃墟に変えてしまえばそれで終了です。
 現地に進出していた英艦隊は、空軍機の攻撃が本格化し、損害が出た時点で名誉ある戦いを選択するか撤退を余儀なくされるでしょう。
 もともと、この狭い地域を大軍から防衛する事そのものに無理があるのは明白です。対して、狭い地域に存在する英軍基地に対しての、枢軸側の過剰とすら言える攻撃ですが、日本海軍の登場とジブラルタル侵攻は、英国に対するメッセージであり、号砲程度の役割しかありません。むしろ、枢軸側としては、この攻撃で停戦に少しでも傾いてくれればとすら思うかもしれません。
 
 ジブラルタル制圧が完了すると、在欧州の枢軸国側の戦力の大半は、フランス沿岸、英本土を目標とした配置にシフトしていきます。
 ただし、日本艦隊とイタリア艦隊は、一旦タラントの泊地に引き返して整備を万全に行ってから、ブレストへと入港すべく行動を開始します。時期としては、43年1月にジブラルタル制圧があるので、徹底した整備を行ったとして、その2〜3カ月後、43年の春ぐらいとなります。
 そして、英国にとってこの地中海でバカンス中の艦隊が大西洋で活動を開始すれば、今度こそ本当に英国本土の防衛が不可能になります。英海軍としては、そうなる前に何としても撃滅したいところ、ないしは最低限ドイツ本国奥地で逼塞しているドイツ艦隊ぐらい各個撃破しておきたいところでしょう。
 つまり、英海軍としては、日伊艦隊がブレストに入港して、そこを拠点とする前に戦闘を挑み、撃滅とまでいかなくても、撃破しておかなくてはいけない事になります。
 しかし、日本艦隊がたむろしている地中海は最早手が出せず、次なる拠点として予定している予定しているジブラルタルやブレストの近辺は、ドイツ空軍が鉄壁の防衛体制を敷いているので、ここで手を出すことができず、恨み募る日本艦隊に戦闘を挑むチャンスは、艦隊がスペイン沖通過する時となります。
 また、ここで彼らのブレスト入港を放置し、その後の活動を許せばドイツ軍の攻撃と違い、英本土はどこからでも攻撃される事になってしまいます。ここは何としても撃滅する方針が選ばれる可能性が高いでしょう。
 一方の枢軸側としてもそんな事は分かりきっていますので、これに対して対策を立てなければいけません。
 方法は、いくつか考えられます。一つ目は、スペイン沖を通過中は索敵を密にして、万全の迎撃体勢を強いて堂々とイギリス海軍の挑戦を受けることです。おそらくコレが最も堅実な選択でしょう。二つ目は、日本海軍が英側のどこかの拠点を先制攻撃し、それを察知した英艦隊を自らの望む場所に引きずり出し決戦に及び、撃破後邪魔される事なく堂々とブレストに転進する作戦です。ただし、これは英艦隊を撃破できる可能性が高くなりますが、自らも大きく傷つく可能性が高く、英本土上陸を控えた枢軸側としては出来れば避けたい作戦です。三つ目は、日本側が補給部隊ごと海峡を突破し、爾後大きく海洋に出て通商破壊作戦を展開し、無理矢理英艦隊を引きずり出し、二つ目と同様決戦に及ぶものです。これは、二つ目よりも敵制空権下で行動しなくていい分枢軸側に有利と言えますが、船団奇襲に失敗すればただ徒労に終わるだけで、やや賭博性の高い作戦と言えるでしょう。四つ目は、三つ目同様行方をくらました後、いきなり英本土のどこかを英本国艦隊が対処出来ない間に強襲してしまい、英側混乱を巻き起こして、そのスキにブレストに滑り込んでしまう作戦です。これが、目標がスカパ・フローなどなら、いきなり英海軍を撃滅出来るかもしれませんが、そうも都合良く事が運ぶとは想定出来ないので、これも難しいと言えます。また、これら以外にもいくつか方法は考えられるますが、ここではこれ以上は問わない事にします。
 特に諜報合戦で英国を出し抜くことは考えない方が身のためです。第一、日本軍、特に日本海軍には情報封鎖以外は、情報合戦など似合いません。

 しかし、このように方法はいくつか考えられますが、基本的に日本海軍の体質として、決戦海軍の色が主に心理的に色濃くあるので、日本海軍が立てる作戦は、自らにとって都合の良い決戦を前提としたものとなる可能性が最も高いでしょう。
 だいいち、日本は業界一のヒロイン軍団を率いて「勝利」するために来ているのですから、この選択こそ日本らしいと言えるでしょう。それに、日本海軍は米海軍などと同様、ペナントレース(長期戦)でなくトーナメント(決戦)的な戦争が大好きです。
 となると、英主力艦隊が一番出現しやすい作戦をあえて選択する可能性が高いのではないでしょうか。
 つまり、相手の喉元を締め付けてやればいいのです。一度で出てこなければ数度に渡り行い、イヤでも引きずり出せばいいのです。
 かくして、日本海軍が選択するのは、やや賭博性の高い日本側が補給部隊ごと海峡を突破し、爾後大きく海洋に出て大規模な通商破壊作戦を展開し、無理矢理英艦隊を引きずり出すと言うものが選択されます。
 本来なら、ドイツ海軍に囮の役割をさせ、これにつられて出てくる英艦隊の分力を撃破すればいいようにも思えますが(と言うかこちらの方がまだ妥当)、漢らしい艦隊決戦をしにきた日本海軍が自らかって出て囮兼主役となります。
 イタリア海軍には、後詰めとしてジブラルタルに待機してもらい、動向を見極めてから増援として戦闘に参入するか、ブレストに移動してもらいます。
 そしてドイツ海軍としては、はるばるやって来た日本海軍が、自ら進んで英本国艦隊を撃滅して、その上通商破壊すら大規模に行ってくれるのですから、これを断る理由はあまりありません。どのみち英本国艦隊とは一度決戦し撃滅しないといけないのなら、上陸作戦という混乱しやすい状況で戦闘するよりも、ここでしてくれた方が気楽と言うものです。しかも、この場合日本海軍は、ドイツ海軍にとっても「十八番」と言える戦闘を選択してくれたのですから、Uボートに全力支援を行わせるのは当然として、水上打撃艦隊にも出撃させ、日本艦隊をダシにして溜飲の一つも下げたいところです。

 作戦の概要は、カナダからの大船団が出発した情報を掴んだら、日本艦隊がジブラルタルを出発、その後Uボートからの情報を元に接敵を行いこれを撃滅。これは、空母機動部隊が伴われているので、全く問題なくほぼ撃滅できる事でしょう。それに打ち漏らした分は、Uボートの餌食とすればいいだけです。
 この時点で英本国艦隊が現れなければ、そのまま通商破壊を継続しつつブレストを目指します。
 また、英本国艦隊が出てくれば、それを厳重に索敵しつつ待ちかまえます。そして、本国が手薄になったところで、ドイツ高海艦隊が全力出撃を行います。これに英本土の残存艦隊が食らいついてくれば、戦力が低ければ空軍と協力して撃滅を行い、相手の方が戦力が多ければ、敵を交わしつつ大規模な通商破壊活動を行い、最終的にブレストに合流します。
 同時に全ての空軍が全力出撃を行い、英本土を激しく攻撃し牽制、あわよくば混乱している可能性のある英空軍の戦力漸減を行います。
 なお、アメリカが騒ぎ出してはいけないので、カナダは攻撃最初からハズされます。近海での行動もいけません。これ以上戦争がややこしくなったら、収拾がつきませんからね。

・フェイズ2 ターゲット・グランド・フリート
 はたして、枢軸国(と言うか日本海軍)の目論見は巧く事が運ぶでしょうか? では、実際の動きを見ていきましょう。
 1943年4月某日、英国の大規模な護衛船団が英本土目指してカナダのハリファクスを出発します。これを、以前からの地道な情報収集と北大西洋中に張り巡らした濃密な索敵網で待ちかまえ、ピケットを張っていたUボートの1隻が全部隊に通報。この際、別に見失っても構いません。それは強大な戦力を持つ日本艦隊にこれを知らせる事が重要だからです。最悪、あとは日本の機動部隊に任せておけば潜水艦が苦労して追跡せずとも膨大な数の航空機で撃滅してくれるからです。ですが、もちろん発見したボートはむろん、ほかの灰色狼たちも獲物を横取りされてなるかと想定海域に向けて急行します。自らの縄張りで日本艦隊にばかり良いところを持っていかれたら、灰色狼の面子が立ちません。
 そして、この報告を受けて日本艦隊が大挙、待機していたジブラルタルから出発、一路ブレストでなく北大西洋を目指して全力で移動を介しします。
 これをキャッチして混乱するのは英国です。日本艦隊が、ジブラルタルに入り、移動の機会を窺っていた事は掴んでいましたが、ブレストを目指さずに全力であさっての方向目指して出発してしまったからです。ですが、ドイツ海軍も活発な活動をしているのも明白なので、これが護衛船団撃滅の可能性がある事を掴むのに時間はかからないでしょう。
 ここで、英本国艦隊はジレンマに陥ります。
 本来なら、全力をあげて日本艦隊撃滅に赴きたい所ですが、本土をガラ空きにすれば、ドイツの田舎海軍が『鳥なき里の蝙蝠』よろしく、活発な活動を開始するのは目に見えています。そして、ドイツ海軍の行動を完全に封じるためには、高速戦艦と巡洋戦艦が最低で4隻できれば6〜8隻、つまり本来のグランド・フリートのほぼ全力が欲しいところです。しかし、日本艦隊をこのまま放置しておけば、圧倒的は破壊力で英国の生命線をズタズタに断ち切ってしまうのは目に見えています。
 この時の日本艦隊は、史実の44年後半のハルゼー機動部隊のようなものです。
 そして、見敵必殺こそ英海軍の誇りとすら言える行動です、先達の勇名を汚さない為にも出撃が行われます。
 日本艦隊撃滅に赴くのは、本国艦隊と元ジブラルタル艦隊から、戦艦が「St. グレゴリー」、「St. パトリック」、「キング・ジョージ5」、「プリンス・オブ・ウェールズ」、「デューク・オブ・ヨーク」、「QE級」3隻の8隻で、巡洋戦艦が「インヴィンシブル」、「インディファティガブル」の2隻、そして日本海軍が沢山持ち込んでいる空母は全力の「イラストリアス」、「ビクトリアス」、「インドミダヴル」、「フェーリアス」の4隻が出撃し、その艦載機約180機となります。
 それ以外については、ドイツの抑えとしてスカパ・フローに残留します。

 通常なら全欧州の海軍すら相手取れる英本国艦隊は、北大西洋の日本艦隊が活動しているであろう海域に向けて進路を取ることになります。
 しかし、タイムラグ的には、日本艦隊の方が早く英護送船団を捕捉する事が可能です。しかも、日本艦隊は艦隊平均速力が30ノットを超える驚異的な健脚を誇っています。後方に高速補給船団を残置して、高速偵察機を放ちつつ平均18ノット、最大28ノットの艦隊速度で急追すれば、英護送船団の護衛にR級戦艦が随伴していようとも、その命運は明らかです。
 もし護衛空母が随伴していたとしても、インド洋以来大物を狙いたがるようになっている日本パイロットを喜ばせるだけに終わることでしょう。
 護衛艦隊が王立海軍としての誇りを示すまでもなく、膨大な数の艦載機が空を黒く染めるほど襲撃し、その全てを海の藻屑と帰す事になります。500機以上の艦載機に対抗できる戦力など世界中を探しても、そうそうあるものではありません。この日本艦隊に対抗できるのは、アメリカが軍拡を全く行っていない状況ですので、自らの攻撃力に怯え、それに対抗できるように戦術を練っているであろう日本海軍のみでしょう。
 また、これに便乗して付近に集合しつつある何隻かのUボートも、スコアを伸ばす良い機会と勇躍して襲いかかることも疑いの余地はありません。

 そして、この英護送船団の悲報が入電する頃、英本国艦隊主力は、日本艦隊のおおよその位置を掴むことが出来ます。正確に掴めないのは、英海軍が放っている決して多くない潜水艦の情報でしかこれを掴めないからです。また、日本艦隊が高速で移動している上に、空母艦載機で攻撃隊を放って、その艦載機は対潜制圧もしているので潜水艦での捕捉は極めて難しいと言えるからです。
 反対に、英艦隊の情報はこの頃200隻体勢を確立し意気あがるドイツ潜水艦隊が(史実もほぼ同様で、1942年末から43年始めの頃はドイツ潜水艦隊の絶頂期である。)、この作戦の為に稼働率に目をつむり多めに大西洋に放っているUボートからの情報によりほぼ正確に掴むことが可能です。
 そして、次の獲物として日本艦隊選択するのが、近在の小規模の船団でなく英本国艦隊です。日本人達にすれば、このためにやって来たのであり、据え物切りのような輸送船団の攻撃などをしに来たわけではないのですから。
 そして、日本遣欧艦隊が決戦目指して移動を開始している前後に、正確には英本国艦隊主力部隊が、もはや引き返しても自分たちの捕捉が難しい位置まで来たところで、ドイツ高海艦隊が動き出します。目的は、英輸送線を日本艦隊と共同して遮断する事です。第三帝国でのドイツ海軍に、艦隊決戦などと言うドクトリンは持ちたくてもありません。そして、日本艦隊以上にドイツ海軍は監視されているので、英空軍が大量の偵察機などを放ち比較的早期に発見し、スカパ・フローに残留している英本国艦隊巡洋戦艦隊がこれの撃滅のために出撃します。
 英海軍にしては、予期せぬ総ざらえでの出撃です。
 海でこんな戦争をしたがるのは、日本人とアメリカ人以外はありませんが、すでにその日本人のゲームに乗ってしまっている以上、これにつき合う以外の道は残されていません。放置すれば、英国は世界とつながっているはずの海から遮断されていします。
 恐らく、状況がここまで進展するのに要する時間は、日本艦隊の行動開始から4〜6日、そして次なる幕は、日英独のだれが敵(獲物)を発見するかで決まります。
 一番敵(獲物)に遠い位置にいるのが、ドイツ水上艦隊です。彼らの目的が、まだ撃滅されていない英護送船団にある以上、長期の通商破壊を行うべく、史実のライン演習よろしくアイスランド迂回ルートで航行を続けています。
 次に敵に遠いのは、ドイツ艦隊を追いかける英国巡洋戦艦部隊です。これも史実のビスマルク追撃戦のようにアタフタと奔走する事になります。
 そして、お互い会敵するために移動している、日英の機動部隊が最初に対戦する機会を得ます。
 特に、敵を目指してUボートの誘導に従って、自らも長距離偵察機を放ちつつ英本国艦隊を血眼になって探している日本空母部隊が、一番最初に対戦相手を発見する機会に恵まれます。
 英本国艦隊も、敵である日本艦隊を探す事に違いありませんが、日本側がここまで積極的に自分たちを捜しているとは思っていませんし(派手に第一撃をしている事と、ごく常識的な発想から通商破壊に精を出していると思っている可能性が高い)、何より索敵機の航続距離が日本側より遙かに短いですから、このハンデはどうしようもありません。

・フェイズ3 オーバー・キル
 さて、久しぶりの派手な鉄と血の饗宴の始まりです。
 お互いのオーダーは、日本側が第一艦隊と第一航空艦隊の全力で戦艦13、空母13、艦載機約730(スペアが他に100ほど)で、英側が戦艦・巡洋戦艦10、空母4、艦載機約180(スペアはほとんどなし)です。これ以外にドイツ潜水艦隊が数隻、多ければ10隻程度が付近海面にあり、偵察任務に就いていたり英艦隊攻撃の機会を狙っています。
 なお、お互いの空母艦載機の比率、戦・爆・攻の比率は同程度とします。英艦隊の空母全てがオール・ファイターズ・キャリアーなどと言う「奇想」な発想をもって運用される事はありません。そんな偏った編成は、空母と言う柔軟性に富んだ兵器の長所を抹殺するに過ぎないからです。

 戦闘の号砲をあげるのは、日本側索敵機のおそらく二式艦偵または彩雲かもしれません。彼らが、日本第一航空艦隊に敵発見の報告を送るのが第一報となります。
 これに、会敵近しと準備万端整えていた一航艦は、敵艦隊に対する全力出撃を命令。時間は、日本側がベストコンディションを狙って先述運動を繰り返しているので、午前の比較的早くとなります。そして当然のごとく、アウトレンジ攻撃となります。これは日本機にとってはごく通常の攻撃距離であっても、英国のシーファイアでは逆立ちしても往復できる距離ではないからです。
 そして一航艦から、膨大な数の攻撃隊が放たれます。正規空母9隻、軽空母4隻から放たれる攻撃隊の総数は約500機。発艦の関係上どうしても二波に分かれて放たれるので、第一波が300機、第二波が200機です。このうち、350機が攻撃機となります。ほかに偵察に30機、艦隊の護衛として150機程度が防空、50機程度が対潜活動、索敵を行っています。
 一方これを迎え撃つ英機動部隊は、総数で180機あり半数がシーファイアになります。他はいまだに機種改変が追いつかないので、ソードフィッシュやアルバコア、フルマーになります。戦局が追いつめられているのでバラクーダは、無理矢理登場していてもごくごく少数でしょう。
 そして、英機動部隊としては、こちらが見つかり相手が見つかってない以上、まずは防空に専念するしかありません。
 英艦隊は前年インド洋でヒドイ目にあっているので、こちらの方はおさおさ怠り有りません。恐らくこの世界でもっとも完成された防空システムを持っています。
 しかし、防空にあげれるシーファイア、フルマーは、攻撃隊の事を考えずにどれだけ無理をしても120機。常識的には三分の一程度は攻撃隊用に待機させるので、80機が防空隊となります。ですが、航続距離の短さを考えれば、常時全てを上げておくのは自殺行為ですので、半数が上空にあがり半数が格納庫か甲板で待機となります。
 ただ、ここで英機動部隊の欠点がもう一つあります。それは、ご自慢のシーファイアです。もともと空軍用の迎撃機として作られたものを無理矢理艦載機にしているものですから、日米のような専用機に比べると、着艦時の事故率が異常に高いのです。史実でシーファイアの写っている写真は、事故の時のものの方が多いとすら言われます。このためここでも5%の機体が戦闘前の防空シフトの中ロストするとしておきます。
 さらに、ここでお約束だとUボートが厳重な警戒を潜り抜けて、英空母に一発お見舞いするところですが、ここでは取りあえずソレはなしとしておきます。
 高速で動き回る、厳重な警戒下に置かれた艦隊を攻撃するのは、Uボートにとっても自殺行為です。

 そして、英艦隊が日本艦載機が来るのが遅いのをいぶかしがっていると、RDFに膨大な数のプリップが映ります。
 しかも先頭を進む部隊は、英海軍の常識から見ると異常に早い進撃速度を示しています。迎撃が十八番のシーファイアと言えど、早く上げなければ迎撃が間に合わない可能性すらあります。
 そして、何とか全機(約80機)を上げ、日本攻撃隊を待ちかまえますが、押し寄せる攻撃隊の数は300機、内120機程度が戦闘機です。すでにこれだけで防空隊を上回る数で、日本側も新型機を導入しているので、シーファイアがどれだけ頑張っても戦闘機戦だけで何とか五分程度、とても攻撃隊にまで手は回りません。つまり、180機にも上る攻撃機が英艦隊上空にそのまま侵入して来ることになります。
 日本側の第一目標は、もちろん敵空母。防空隊を突破できるのは、制空隊が頑張っているので、攻撃機のおおよそ9割、150〜160機が投弾できる事になります。
 全く無傷の空母機動部隊に対しての攻撃で、しかも英国の優秀な防空体勢で出迎えられるので、日本側が多数の新型を用意していちもこれは相殺される事になります。
 ただし、日本機にレーダーの連動できない近距離に入られると、「彗星」、「天山」の圧倒的なスピードの前に対空機関砲が対応できずに、彼らの投弾を許す事になるでしょう。
 ごく常識的な命中率はおおよそ1割程度、爆弾と魚雷が8発ずつ敵母艦に命中する事になります。そして、基本的に防空力が弱く、速力が遅い艦または、最初に命中弾を受けた艦が集中攻撃されるるのが常ですので、フェーリアスとヴィクトリアス級から1隻が主にスケープゴートになります。しかも今回日本機は爆弾も500kgになっているので、うまくいけば、ヴィクトリアス級の装甲も貫通する可能性もあります。どちらにせよ、仲良く魚雷4本ずつを喰らえば両艦とも大破は確実。さらに他の艦も、手中攻撃のおこぼれをもらって、空母1隻、護衛艦艇1〜2隻が損傷します。
 そして、30分程度したら第二波が押し寄せます。既に防空のシーファイアは、数の劣勢もさることながら航続距離の問題から迎撃が難しい状況です。
 日本攻撃隊は難なくこれを突破してくる事になります。次の日本側は、戦闘機70、攻撃機130機程度です。そして、今度のターゲットのいくつかはすでに損傷しており、第一波の攻撃により艦隊そのものの陣形も乱れており、有機的な迎撃に齟齬が生じています。
 ですので、第二波の攻撃隊の命中率は、2割程度まで上昇。おおよそ26発の命中弾が生まれます。つまり、魚雷と徹甲爆弾が13発ずつです。
 これにより、先ほど大破した空母二隻が確実に鬼籍に入り、残りの空母も大破し護衛艦艇にもさらなる損害が発生します。
 つまり、英機動部隊は日本機動部隊が放った攻撃により、期せずしてアウトレンジされてしまい、結局今回も為すすべもなく壊滅する事になります。もちろんこれは若干の機材の差もありますが、基本的には物量の差と用兵思想の差が生み出したもので、日英のどちらが優れているというのを示すものではありません。ハッキリ言って、日本海軍のする事がそれまでの常識からすれば無茶苦茶なだけです。

 制空権を完全に失った時点で英艦隊の退却が始まりますが、日本機の攻撃は第一波をしただけ、まだ午後を回ったばかりです。そして、距離をさらに詰めつつある日本機動部隊は、小物には用はないので、次なる獲物の英主力艦隊に対して次なる攻撃隊を放つ事になります。
 放たれる攻撃隊の数は、午前の英側の激しい防戦で2〜3割程度の消耗(撃墜を意味する訳ではありません)をするので、二波で350機程度、スペアなどを組み上げても400機が精一杯です。内攻撃機は250機。これらがすでに敵戦闘機隊のいない英艦隊上空に悠々侵入し、獲物を物色します。
 英主力艦隊もこの攻撃に対して激しい対空砲火を浴びせますが、空母部隊と同様、懐に入られると機関砲による対応が難しく、日本機に多くの投弾を許すことになってしまいます。
 命中する魚雷と爆弾は、先ほどと同様としてトータル15%の命中率として、18発ずつが大物と鈍重な船、そして新鋭戦艦から3〜4隻に攻撃が集中するので、「聖者」級、「KJ5」級からそれぞれ1隻ずつ、「QE」級から2隻が仲良く中破から大破します。このうち「QE」級のうちどちらかは、ダメージ的に撃沈している可能性が高いでしょう。
 そして、英艦隊にはさらなる刺客が待ちかまえています。それは、水面下で日本機の攻撃を見物していた灰色狼たちです。
 通常なら厳重に警備された大艦隊への攻撃は自殺行為に他なりませんが、航空機の迎撃のために艦隊の陣形はバラバラ、沈んだ船の乗員救助のためにノロノロ動いていたり、損傷艦は僅かな護衛を連れて後退を始めるなど、ボートから見れば涎のでそうな獲物ばかりです。
 確かに、それまで高速で動いていた艦隊に対する攻撃となるので、攻撃位置につけるボートの数は限られいますが、追跡していたボートのうち数隻が攻撃に成功、さらなる追い打ちをかける事ができるでしょう。
 確率論的にみれば、損傷している戦艦と空母から1隻ずつがさらに鬼籍に入り、護衛艦艇にもさらなる損害が発生して、そして戦艦がさらに1隻傷物になります。
 かくして、ようやく一日目が終了です。
 この時点でのオーダーは、日本側が航空戦力の3割消耗(スペアの組立で回復)、英国側は、戦艦2隻撃沈、3隻損傷、空母3隻撃沈、1隻損傷、護衛艦艇の1割の消耗です。
 英国側としては、もはや決戦もありません。全力出撃したはずが、今回も結局逃げの一手です。
 この結果は、先ほども言った通り、海上航空戦力での物量の差と集中性が生み出した結果に過ぎません。もし、英艦隊が航空奇襲攻撃に成功しても、日本艦隊の損害が増加しただけで、英艦隊の損害はそれ程変化ないでしょう。

 ではここで、一応英国側の間合いで機動部隊戦が始まった仮定も見てみましょう。距離は、シーファイアの届く距離です。殆ど近距離とも言えますが、英艦載機が日本の防空網を突破するためにこの距離とします(でないと、「大西洋のコジュケイ打ち」になってしまいます。)。
 日本側のオーダーは先ほどと同じく攻撃機は二波500、防空隊150です。一方の英機動部隊は、二波で120機、うち攻撃機90機、防空隊60機です。
 この場合、日英同時発見とします。英側の奇襲攻撃も無しです。お互い同じ条件とします。
 英側の機動部隊の顛末は先ほどと同じとしますので、日本側だけの経過をここでは見てみましょう。
 日本の防空隊は約150機。主力は「零」であと少数の「烈風」があります。
 一方英側の第一波は最大で80機程度、第二波が40機程度です。単純に数の差だけなら、英側の攻撃隊は完全にインターセプトされてしまう事になります。
 ですが、史実のマリアナ沖海戦ですらそうだったように、この時代に完全な迎撃など夢物語なので、両者が絡み合って混沌とした空から、三割程度の英攻撃機が日本機の迎撃網を突破します。艦隊に入り込んでくる機数は、第一波が20機、第二波が10機程度です。さらに日本側も英国側ほど洗練されていませんが、戦訓によりそれなりに防空体勢を強化しているので、この攻撃機を熾烈な対空砲火が出迎える事になり、日本側と同様に最初が1割、次が2割の投弾成功として、合計で4発程度の命中弾が発生します。魚雷と爆弾が半分ずつとして2発ずつ、日本側の中型空母なら十分撃沈できる破壊力です。分散していれば、2隻が損傷です。そして常識的に見れば、軽空母と中〜大型空母1隻が被弾。大破損傷後退となります。
 以後日本側の攻撃力は、さらに1〜2割程度低下しますが、結局のところ大勢に影響はありません。次の攻撃で英主力艦隊に大損害が発生する事は、その戦力差から間違いのない事です。しかも、この場合接近しているのでより多数の攻撃隊が日本側から放たれる可能性があり、しかも主力艦隊すら接敵できる可能性すらあり、この日のうちに英艦隊がまるごと壊滅する可能性も十分あります。
 ついでに、インド洋でも扱った奇襲攻撃の可能性も、日本側もすでに大半の艦艇に電探が装備されているので、無様な奇襲ではなく結果として強襲になり、初手の日本側の攻撃力が低下するだけで、これも大勢を覆す事は不可能です。
 そして、索敵面ではドイツからの全面バックアップを受ける日本側が、むしろ有利な体勢にあります。
 もちろん、英側も方々で逃げ回る護送船団や潜水艦、哨戒機などからの報告があるでしょうが、英艦船の大半が日本機を恐れて逃げているだけに、いつも通り執拗に相手を追いかけ回すドイツ側の情報と比べれば、どうしても精度に劣ります。
 ゆえに、ここでは最初の想定どおり、日本側が図らずも一方的に殴り続ける状態をとります。
 日本艦隊としては、英機動部隊の攻撃距離がそこまで短い事は想定していないので(ないしは知っていてそれを利用して)、結果として一方的な戦闘となります。
 また、もし日本側が相手の間合いを完全に知っていれば、さらに一日接近に費やして、徹底的な攻撃を画策している可能性もあります。(これは、率いている指揮官による。)

・フェイズ4 ラプソディー
 さて、決戦一日目が終了しました。
 英本国艦隊主力が日本艦隊に敗北し遁走を開始した時点で、ドイツ艦隊を追跡していた英巡洋戦艦部隊にもこの悲報が届き、当然、体勢を立て直すために、ドイツ艦隊の追撃を中止し、主力の撤退援護が指示されます。
 一方の枢軸側は、日本艦隊は当然追撃を強化、速力を上げて英本国艦隊主力を急追します。特に戦艦部隊にすれば、今回もいいところを全部空母に持って行かれては、せっかく最強戦艦を束ねて持ってきたのにメンツ丸つぶれです。しかし、すでに方々動き回っているので、もし後で補給部隊と合流できなければ、大西洋で漂流する事になるかも知れません。
 そして、ドイツ艦隊は強敵の追撃がなくなったのは良いのですが、今回の戦闘ではボートと日本艦隊だけが活躍しており、ここで水上艦隊もいいところを見せておかないと、今後総統閣下からの覚えが著しく悪くなること請け合いです。しかし、相手をまくためにアイスランドを大回りして、北大西洋に躍り出ようとしていたので、お誂え向きに日英の決戦海域の比較的近くにまで移動を終えています。
 このためドイツ艦隊は、損傷後退している英部隊を標的として進路を変更、日本艦隊と挟撃する形で追撃を開始します。
 また、ジブラルタルに待機しているイタリア艦隊も、ドゥーチェが調子に乗って追撃戦に参加を表明させます。
 さて枢軸側全てから追われる立場となった英国側、叩かれた主力部隊は戦艦5隻がまだ無傷で健在ですが、戦艦3隻、空母1隻が大きく損傷しており、これを護衛しつつ撤退するのは至難の業です。途中で巡洋戦艦5隻を擁する部隊が合流すると言っても、枢軸側の艦隊が追撃してきている以上、予断は許しません。特に圧倒的な航空戦力を誇る日本艦隊から逃れるのは至難で、余程巧妙に逃げなければいけません。でないと朝日が昇ればまた雲霞のごとく艦載機が空襲してくるのは明白です。また、ドイツのUボートの存在も無視できません。特に進路を妨害しつつ攻撃を時折仕掛けてくるので、これに対処するだけで時間が取られており、場当たり的に対処する以外処置無しです。
 英艦隊としては、いかに自制空権下に逃れるかがキーポイントとなりますが、大型爆撃機は基本的に対潜攻撃しかしたことなく、モスキートやタイフーンはまだ少数、頼みのシーファイアは航続距離が短いときています。そして、大西洋のど真ん中で決戦してしまったので、追いかけてきている日本艦隊を振り切り、本土近辺まで戻るには最低後丸一日が必要です。
 しかも、真っ正面に後退すれば、北からはドイツ艦隊、西からは日本艦隊、南からはイタリア艦隊まで来るかもしれません。しかもどの艦隊も自らよりも脚が速く、確実に距離を詰めつつあります。
 つまり、逃げるだけではジリ貧です。それならば積極的行動に出るのが、見敵必殺を信条とする王立海軍としては傾きやすい戦術判断かもしれません。時にはバクチも必要です。
 そして、相手の分力を叩くのが戦いの常道ですので、強大な日本艦隊でなく、ドイツかイタリア艦隊のどちらかをまず撃破するのが、この状況の中で妥当な戦術判断となります。距離が近いのは、ジブラルタルを出たばかりのイタリア艦隊でなく、アイスランド沖を南下してきているドイツ艦隊ですので、これが攻撃目標になります。
 しかもこちらなら、巡洋戦艦部隊がすぐ後方からドイツ艦隊を追撃する形になっており、マークも最初からしているので捕捉も容易です。うまくすれば挟み撃ちもできます。さらに、英国の窮状を作り上げたドイツが相手ですので、船員達の戦意も高いこと請け合いです。
 そして、ドイツ艦隊を撃破後、部隊を合流させて陣形を再編、大きくなった防空能力を維持しつつ、日本艦隊をかわせば撤退も不可能ではないでしょう。
 また、枢軸側の裏をかいて一旦北に転進すれば、うまくいけば日本艦隊の明日の予定を酷く狂わせる事も可能となります。
 これは日本艦隊がなまじ大艦隊なだけに、こうした突然の変更に対応が難しいからです。
 もし、それでも強引に追撃してくれば、RAFの航空攻撃で返り討ちにしてしまえばいいのです。

 こうして、夜に入り方針が変更され、部隊を編成しなおし、急遽英艦隊は全力挙げてドイツ水上部隊の方へ進路を向けます。なお、この際速力が著しく低下して戦力にならない艦艇は、一部護衛をつけて、別航路で本土に向かわせます。
 そして、夜明けも近い深夜、ドイツのラダールは突如多数のプリップを確認します。コソコソと逃げていたはずの英国艦隊が、突如として自分たちの前に姿を現したのです。部隊には間違いなく戦艦がいる事も分かります。戦艦は合計5隻、間違いなく英本国艦隊主力です。しかも、ここでもたついていたら、自らの位置から見ると斜め後方から5隻の巡洋戦艦が襲いかかってくることも十分予想できる状態です。つまり、挟撃されると言うことです。
 対する独艦隊は、戦艦2隻、巡洋戦艦2隻、装甲艦2隻ですので、相手が大型戦艦ばかりなので対戦すれば著しく不利です。補助艦の不利も合わせれば、向こうが本気で殴りかかってくれば、夜明けには全滅していても不思議ではありません。
 かくして、ドイツ艦隊としては、反航戦に持ち込んで英本国艦隊の斜め脇をすり抜ける戦術運動を選択します。あとは、朝食の時間ぐらいまで我慢して逃げれば、日本の艦載機がやって来るはずです。追撃はその後すれば良いのです。
 ところが、英本国艦隊の目的は、ドイツ艦隊の撃滅ではなく、撤退のための牽制攻撃ですので、この反航戦にまとも乗ってきます。
 今次対戦において、大型艦多数を含む砲撃戦の経験の少ない第三帝国のドイツ海軍にこれをいぶかしむ余裕はなく、そのまま砲撃戦に移行します。
 キャスティングは英側は「聖者」級1隻、「I」級2隻、「KJ5」級2隻、級「QE」級1隻で、ドイツ側が「ビスマルク」級2隻、「シャルンホルスト」級2隻、装甲艦2隻です。
 これをいつもの主砲比較をしてみると、英側18インチ×9、16インチ×34、15インチ×8で、ドイツ側15インチ×16で、11インチ×30です。なお、「KJ5」級は16インチ砲3×2、2×1の8門搭載艦として完成しています。なお弾薬投射量は、英:独=47:30で、排水量は25:17です。つまり、とことん殴り合えば、英側は4割の犠牲でドイツ艦隊を完全に撃滅できる事になります。
 しかも戦闘が長引けば、英側は「フッド」級3隻、「レナウン」級2隻を擁する艦隊が、後方からドイツに襲いかかる事ができます。
 ちなみに、大型戦艦ばかりを擁する日本の水上打撃艦隊の能力は、個艦性能の大きさから英側の二倍以上になります。
 そして、ドイツ側、英側双方の目論み通り一通過で砲撃戦は終わり、双方多少損傷艦が出ただけで戦闘は終了します。結果は、単純に見て順番に打ち合っていれば、装甲を貫通される可能性の極めて高いドイツ側が大きな損傷を受ける事になります。18インチや16インチ砲を受け足がヨタついたところに、懐に駆逐艦から魚雷をたたき込まれれば、巡洋戦艦や装甲艦なら撃沈されてもおかしくありません。

 そして、双方の艦隊が離れると夜が明け、英本国艦隊は無事巡洋戦艦部隊と合流し、日本艦隊が前日の夕刻時から予想もしなかった位置にいます。夜明け前にドイツ艦隊から報告を受けますが、索敵機すら届く距離になく追撃も難しいので、やむなく本作戦をここで終了します。
 ただし、全ての枢軸艦隊のうち、ドイツ艦隊主力と日本艦隊は、本来の目的地ブレスト目指さず、次なる英本土作戦のために、より有利な位置にあるドイツ本土へと進路を取り、敵艦隊の警戒の必要がほとんどなくなった北海を通り、キールやヴィルヘルムス・ハーフェンへと堂々入港します。
 一方、イタリア艦隊は一旦ジブラルタルに後退し、同じく次の作戦に備え、一部ドイツの通商破壊部隊だけが、ブレストへと入港します。
 そして、日独の艦隊が初めて邂逅し、お互いエールを交換し、総統閣下による高らかな勝利宣言が行われます。

■バトル・オブ・ブリテン・Round 2