■バトル・オブ・オーダー・イン1940

 では、ここで一度この当時の海上戦力を、海軍編成を中心に見てみることにしましょう。
 なお、日本海軍などの個艦レベルでの詳細などは、別の時間軸において紹介しているものもあるので、気になる方はそれを見つけて参照ください。

◇日本海軍編成表(1940年5月)
●日本近海配備
 第一艦隊:
第一戦隊:「紀伊」、「尾張」、「駿河」、「近江」
第三戦隊:「加賀」、「土佐」、「長門」、「陸奥」
第十三戦隊:(「高千穂」、「穂高」)(1941年就役予定)
第七戦隊:「妙高」、「那智」、「羽黒」、「足柄」
第十戦隊:5500t型:4隻
第五航空戦隊:(「翔鶴」、「瑞鶴」)(1941年就役予定)
        駆逐艦4隻
第一水雷戦隊:「阿賀野」 艦隊型駆逐艦:16隻

 第二艦隊:(欧州派遣準備中)
第二戦隊:「富士」、「阿蘇」、「雲仙」、「浅間」
第九戦隊:「最上」、「熊野」、「鈴谷」
第四航空戦隊:「龍驤」、「龍鳳」 駆逐艦3隻
第四水雷戦隊:「酒匂」 艦隊型駆逐艦:16隻

●アジア地域派遣部隊
 第四艦隊(南遣艦隊):
第十二戦隊:5500t型:3隻
第十二航空戦隊:(「日進」、「瑞穂」)(1941年就役予定)
第六水雷戦隊:5500t型:1隻 神風型駆逐艦:8隻

 第七艦隊(遣印艦隊):
第八戦隊:「古鷹」、「青葉」
第十四戦隊:5500t型:3隻
第十一航空戦隊:「千歳」、「千代田」
第五水雷戦隊:5500t型:1隻 睦月型駆逐艦:8隻

 第六艦隊(潜水艦隊)
旗艦:「鹿島」
潜水母船:6隻
潜水艦(大型):54隻(6個潜水戦隊)

 海上護衛総隊
旗艦:「香取」
第三航空戦隊:「鳳祥」 駆逐艦2隻
3000t級:3隻 5500t型:3隻
神風級駆逐艦:10隻
小型艦隊型駆逐艦:30隻
護衛駆逐艦:48隻
海防艦:24隻

直轄・他
水上機母艦:3隻
他多数

●遣欧艦隊(除く潜水艦戦隊)
 第三艦隊:
第四戦隊:「葛城」、「赤城」、「愛宕」、「高雄」
第五戦隊:「金剛」、「榛名」、「比叡」
第六戦隊:「鳥海」、「摩耶」、「伊吹」、「鞍馬」
第三航空戦隊:「祥鳳」、「瑞鳳」 駆逐艦3隻
第二水雷戦隊:「矢矧」 艦隊型駆逐艦:16隻

 第一航空艦隊:
第一航空戦隊:「蒼龍」、「飛龍」、「雲龍」
第二航空戦隊:「伊勢」、「日向」
第十戦隊:「利根」、「筑馬」、「大淀」、「仁淀」
第三水雷戦隊:「能代」 艦隊型駆逐艦:16隻

●海軍航空隊

第十一航空艦隊
 第22航空戦隊:
 第24航空戦隊:

第十二航空艦隊(欧州派遣)
 第21航空戦隊:
 第23航空戦隊:

各定数(補用含まず):
 侵攻戦闘機:108
 邀撃戦闘機:36
 中攻:108 
 陸偵:24 輸送機:24
 (飛行艇:18(偶数番号隊のみ))
 

●母艦航空隊( )はスペア
 第一航空戦隊:戦:84(18)爆:48(12)雷:48(12)
 第二航空戦隊:戦:60(4)爆:30(2)雷:30(4)
 第三航空戦隊:戦:36(4)雷:24(2)
 第四航空戦隊:戦:36(4)雷:24(2)
 第五航空戦隊:戦:72(12)爆:36(6)雷:36(6)
 第六航空戦隊:戦:9(0)雷:6(0)

他艦載水上機隊多数

◇英国海軍編成表(1940年夏当時)
 英国海軍は、軽巡洋艦以下の艦艇数があまりに膨大のため、欧州・大西洋方面にあるものは省略します。ご了承ください。

 大艦隊(グランド・フリート)
本国艦隊(スカパ・フロー)
戦艦:「キング・ジョージ5世」
戦艦:「St. アンドリュー」、「St. デイヴィット」
巡洋戦艦:「インヴィンシヴル」、「インフレキシヴル」、
     「インドミダヴル」、「インディファティガヴル」
巡洋戦艦:「アンソン」、「ハウ」
重巡洋艦:3隻
航空母艦:「イラストリアス」
航空母艦:「フェーリアス」

R部隊(在ジブラルタル)
巡洋戦艦:「フッド」、「ロドネー」
航空母艦:「アークロイヤル」
重巡洋艦:2隻

地中海艦隊(在アレキサンドリア)
戦艦:「St. グレゴリー」、「St. パトリック」
戦艦:「クイーンエリザベス」、「ウォースパイト」、
   「バーラム」、「マレーヤ」、「ヴァリアント」
重巡洋艦:4隻
航空母艦:「イーグル」

カリブ艦隊(在ジャマイカ)
重巡洋艦:2隻

イギリス東洋艦隊(在シンガポール)
駆逐艦:4隻
潜水艦:2隻

イギリス東方艦隊(在インド洋)
戦艦:「リヴェンジ」
軽巡洋艦:エンタープライズ級1、フィジー級1
駆逐艦:3隻
潜水艦:9隻

オーストラリア、ニュージーランド艦隊
重巡洋艦:「キャンベラ」、「オーストラリア」
軽巡洋艦:リアンダー級:3隻

シーレーン維持部隊所属
戦艦:
「ロイヤル・ソヴェリン」、「レゾリューション」、「ラミリーズ」
巡洋戦艦:「レパルス」、「レナウン」
重巡洋艦:4隻

◇ドイツ海軍
戦艦:「ビスマルク」(「テルピッツ」は建造中)
巡洋戦艦:「シャルンホルスト」、「グナイゼナウ」、
装甲艦:「ドイッチュラント」、「アドミラル・シェーア」
重巡洋艦:「アドミラル・ヒッパー」、「プリンツ・オイゲン」
軽巡洋艦:2隻
駆逐艦:12隻

◇イタリア海軍
戦艦:「ヴィットリオ・ヴィネト、「リットリオ」
戦艦:「アンドレ・ドリア、「カイオ・デュリオ」
戦艦:「コンデ・デュ・カブール、「ジュリオ・チュザーレ」
重巡洋艦:「トレント」、「トリエステ」、「フィーメ」、
     「ゴリツィア」、「ポーラ」、「ザラ」、
     「ボルツァーノ」
軽巡洋艦:11隻
駆逐艦:50隻
潜水艦:38隻

※参考
◇アメリカ海軍編成表(1940年冬〜41年夏当時)
第三艦隊(太平洋艦隊)
第一任務部隊(太平洋)
第一戦隊:「インディアナ」、「モンタナ」、「サラトガ」
第二戦隊:「ノースカロライナ」、「ワシントン」、
     「サウスダコタ」、「アラバマ」
第四巡洋艦戦隊:「ヘレナ」、「セントルイス」
第一水雷戦隊:「シンシナティー」 駆逐艦16隻

第一七任務部隊(太平洋)
第一空母戦隊:「エンタープライズ」
第三空母戦隊:「ヨークタウン2」、「ワスプ」
第一巡洋艦戦隊:
「ノーザンプトン」、「ソルトレークシティー」、「ヒューストン」
第六巡洋艦戦隊:
「サヴァンナ」、「ナッシュヴィル」
第二水雷戦隊:「コンコード」 駆逐艦16隻

第二艦隊(大西洋艦隊)
第二任務部隊(大西洋)
第四戦隊:「コロラド」、「カリフォルニア」
第五戦隊:「テキサス」、「ニューヨーク」、「アーカンソー」
第二巡洋艦戦隊:
「ルイスビル」、「シカゴ」、「ニューオーリンズ」
第五巡洋艦戦隊:「ブルックリン」、「フェニックス」
第二空母戦隊:「ホーネット」
第三水雷戦隊:「ミルウォーキー」 駆逐艦16隻

第六任務部隊(カリブ艦隊)
第三巡洋艦戦隊:「ヴィンセンス」、「クインシー」、
        「アストリア」、「ミネアポリス」
第五水雷戦隊:「ローリー」 駆逐艦16隻

潜水艦隊:潜水艦41隻

■艦隊編成補足
 欧州・大西洋地域の各国の海軍力は、だいたい先述のような感じです。なお、参考程度になお太平洋にある日米の戦力も合わせて紹介していますが、これでほぼ世界中のこの当時の海軍戦力にあたる事になります。
 これを見て分かる事は、八八艦隊の中核たる16隻の戦艦と、それに付随する多数の補助艦艇を有する日本海軍の戦力がいかに巨大化が分かると思います。
 同時に、戦艦、巡洋戦艦合計24隻を保有する大英帝国海軍の水上艦隊の巨大さも分かるでしょう。
 これは日英だけで世界の半分以上の主力艦を保持している事になります。
 なお、日本海軍の補助艦艇については、旧式艦や安上がりな艦艇からなるシーレーン防衛艦艇を除けば、をせいぜい史実の一割増し程度しか建造されていません。これはひとえに、八八艦隊の戦艦の多さが艦隊の規模そのものを巨大にしてしまっているのです。
 また、英国は世界中に戦力を分散しているので、明記するとうるさくなりすぎるので除外しましたが、補助艦の数については空母以外はほと史実と同じだけ展開しており、この時点ではいまだに世界最大の海軍国であることに変わりありません。
 なお、日本海軍は自慢の彼女たちの徹底したお色直しもようやく全て終了し、さらに新キャラもとい新造艦の登場も間近です。対する英国は一足早く新顔が登場しつつあります。

 ここで少し特殊な編成をしている日本海軍に重点を置いて見てみますが、艦隊の規模的には、史実と比較すると戦艦がほぼ二倍で、空母が二割増し、護衛艦艇が別枠であって、他の戦力が一割増しです。艦隊維持費的には、最低でも史実の5割増ぐらいが必要になります。
 これ以外の戦力的な補足を入れるとすると、日本は世界最初の戦略空軍たる海軍航空隊が、そろそろ立派になり始めています。総合的な国力が史実の約2.5倍程度、軍事予算が史実の2倍程度ですので、戦艦に予算が食われても、さらに予算があるので史実の1.5倍程度の部隊が出来上がっています。つまり、部隊数的には、第11航空艦隊は完全編成の4個航空戦隊(各3個航空戦隊(実働約250〜300機)編成)程度が存在している事になります。
 また、空母が集中された艦隊が存在するのは、別に航空主兵が実現されたのではなく、漸減作戦の航空艦隊構想が実現した訳でもありません。これは、太平洋戦争の戦訓を踏まえて、遠距離侵攻の際の制空権奪取と敵地攻撃を効率的に行うための、「移動洋上基地」の効果を期待するためです。また、戦艦や水雷戦艦艇などのように集中すれば、戦力としてそれなりに役に立つだろうと言う、攻撃が原則の日本海軍としてはごく常識的な判断によります。そして、日本には正規空母の集中運用をしてなお、艦隊護衛用の小型空母も確保されています。(お金持ちっていいなぁ(笑))
 こうして航空艦隊は、艦隊と敵地の制空権を奪うのが主任務になり、その任務上搭載機の約半数は戦闘機と言う事になります。つまり、史実の攻撃力重視と違っています。これは、八八艦隊健在の世界では、水上での主攻撃はあくまで砲雷撃が担当する事になり、空母は主に防御が担当となるからです(オールファイターズキャアリアを意味するわけではありません。)。
 さらに、米軍を撃滅した日本海軍にはもう漸減戦術思想は薄くなり、単に大艦隊をまとめて敵に叩き付ける決戦方針に変化しているのも理由です。あと、集中することによる維持管理の簡便化も期待されて集中配備されています。(平時の集中配備の理由は、戦艦も水雷戦隊も同様。)
 なお、「伊勢」級が空母にされているのは、軍縮会議の結果日本の戦艦の数が多すぎ、その削減の代わりに空母への改装が別枠で認められたからです。3万トン級(搭載機60機程度)の中型改装空母になっています。また、「蒼龍」は多段空母から全通甲板式の近代的な空母に生まれ変わっています。
 そして、この巨大な艦隊の建設・維持に莫大な国費が消費されている事は間違いなく、まさに日本の命運を握っていると言えるでしょう。

 次に大英帝国ですが、編成表に上がっているのは、戦艦以外は史実の同時代とほぼ同じです。そう、八八艦隊世界での英国は、厳しい予算の中から史実よりも9隻も多く、しかも強力な戦艦を建造しています。
 ラインナップ的には、各4隻ずつある「インヴィンシブル」級と、「St. アンドリュー」級です。あと「フッド」級が計画通り4隻就役しています。以前も紹介しましたが、「インヴィンシブル」級は、4.8万トン級の16インチ砲3連装3基搭載の巡洋戦艦で、「St. アンドリュー」級は、4.8万トンの18インチ砲3連装3基搭載の巨大戦艦となります。
 それ以外にも、史実とほぼ同じだけの旧式戦艦も存在しています。質、量共に日米の同時期の戦艦に決して引けを取らない強力なものです。さらに空母ともども新造戦艦も建造中です。
 その配備は、1939年秋からドイツとの戦争が始まっている事から、艦隊は広く大西洋、地中海へと分散しており、さらにカナダやインドなど世界中の植民地からの物資を運ぶ船団を護衛するため、多数の艦艇が護衛部隊に属しており、駆逐艦や旧式軽巡洋艦の大半が戦艦を中核とした主力艦隊には属していません。
 それどころか、旧式戦艦の一部はドイツの通商破壊艦から船団を護衛するために、護衛艦隊に属している状態です。
 しかし、英国は平和な時代に、日米の建艦競争につき合い戦艦の建造と維持に狂奔した事が祟って、新たな洋上戦力として注目されている航空母艦戦力において、潤沢な海軍予算を持つ日本に大きく溝を開けられているのが現状です。
 それを挽回するために、新型戦艦と同時にイラストリアス級の建造が急ピッチで進んでいますが、現状ではようやくその一番艦が就役しただけです。
 その影響もあり、英国艦隊の編成は依然として、戦艦と巡洋戦艦、巡洋艦を中核とした純粋な水上打撃部隊しかなく、空母はその補助戦力として分散配置されているのが現状です。
 なお、英国にとっての海軍の目玉商品はやはり海上護衛部隊で、日米海軍のような極端決戦編成をとった艦隊は存在しない事が一番大きな特徴でしょう。
 一見決戦編成を取っているようにも見える艦隊もありますが、基本的に適時必要に応じて運用されており、一度に全てが動くと言う事はほとんどありません。
 英国人から見れば、スカパ・フローに入ってきた極端な編成をしている日本人の艦隊の方が、どちらかと言えば変則的な編成をしているように映ります。

 その次は今回は戦力外の米国ですが、不景気のさなかでも、日本海軍に徹底的に沈められた艦艇を、条約枠内で何とかやりくりして建造されています。不景気でも軍艦が建造出来る理由は、戦時計画の資材が余っている事と、戦争で多くの艦艇が失われそのため艦艇の維持費が大きく浮いているので、予算が削減されてなお、その分が艦艇建造費に回す事ができると言う皮肉が原因しています。また、軍縮条約と不景気のせいで補助艦艇は史実ほど整備されておらず、太平洋戦争から5年が経過したぐらいでは、復活できそうにありません。それでも、仏伊よりも有力な軍事力を保持していますが、国そのものが国内に逼塞している以上、戦力として計上できるものはあまり存在しません。また、太平洋と大西洋の双方に戦力を配置しないといけないので、外国(日英)の脅威となる程の軍事力は太平洋には存在しません。
 なお、第二次世界大戦が始まっても、不景気まっただ中な上にルーズベルトによる軍需復活がないので、両用艦隊法やヴィンソン・プラン、スターク案が予算として通ることはありません。
 また、これがよくある火葬戦記なら戦艦を多数失ったことで、なぜか航空主兵に目覚め、猛然と空母を建造し出すところですが(笑)、この世界では軍縮条約で戦艦以外の建造もしばられており、しかも米国経済は、まだまだ回復していないのでそのような事はありません。それに、1930年半ばに経済が一度崩壊しているので、造船所の多くが閉鎖され、カーチスなど大きな航空機会社以外はかなりが倒産して、空母の大量建造や艦載機の開発どころでないかも知れません。

 そして日英の当面の対戦相手に指名されてしまった、ドイツ第三帝国とイタリア王国ですが、戦艦の数においてみると双方合わせても装甲艦を含めて11隻しかなく、欧州で高速戦艦だけで18隻も配備し、合計で30隻以上の戦艦を配備している日英連合国に対して、水上戦力での対抗はほぼ不可能とすら言えます。
 特に、北海の出口を英国ご自慢の高速戦艦群に抑えられたドイツ海軍水上艦部隊は、スキを見て通商破壊を行う以外手だてはありません。
 なお、ドイツ海軍はノルウェー沖で、英国の高速戦艦群に痛打を浴びており、現在巡洋戦艦の2隻ともドック入り中で「ビスマルク」も就役したばかりで、出撃に耐えれるまでにはまだ時間が必要です。つまり、実質的には戦力として存在していません。
 ドイツで有力な戦力を持っているのは、ここには出ていない潜水艦隊ですが、この当時はまだそれほど多数の潜水艦は整備されておらず、また潜水艦の主兵器たる魚雷の欠陥の改善も完全でない事などから、こちらの戦力価値も低いのが現状です。
 つまり、この事をある程度知っている日英としては、当面の脅威であるイタリア海軍に今後戦力が向かう事になります。
 そしてその矢面に立たされるイタリア海軍ですが、編成表で見る限りそれなりの戦力ですが、まさにそれなりでしかなく、日英の主力艦隊が徒党を組んで押し寄せてくれば、運が悪ければ一撃で消滅しかねない程危険な戦力でしかありません。
 また、もともと燃料問題を抱えている事から、その活動は特に大型艦において低調で、日英にとって決定的な脅威とはなっていません。
 以上、とにかく海洋では日英同盟軍が圧倒的です。他の勢力は大同団結しても、歯も立たない状態です。
 まあ、それらをふまえて次に進みたいと思います。
 もちろん、この編成表には枢軸側の海上航空戦力が計上されていませんし、総合的な軍事力、国力の評価もしていません。

■地中海戦線