■あとがきのようなもの?(いいわけ・其の2)

 はい、見ていただければ分かると思いますが、このルートは史実よりほんの少しだけマシな結末となりました。
 大日本帝国の興亡と言う点から見れば、見紛う事のない「バッド・エンド」です。

 ただ、結末が日本本土の焦土化と無条件降伏でないのは、アメリカが戦争をふっかけた側だという「政治」と、史実のソ連以上に強大なドイツ第三帝国の存在、アメリカの味方が史実よりも少ない事、アメリカの国力が史実より小さく、そして日本の国力が史実の3倍あり、日本との本格的戦争をする前に、英国を屈服させる戦いで消耗しており、純軍事的に完全屈服させる努力が並大抵ではないからです。
 そして、史実のドイツやイギリス並の戦争遂行能力を持つ日本との戦争により、日本本土近く進撃するまでに米軍の損害も目を覆うばかりとなっているからです。

 一方、日本側が本土決戦まで徹底抗戦しないのは、史実よりも文民統制の行き届いた政治形態を保っているからに他なりません。
 また、一部軍部の弊害とされた極端な精神主義などもなく、多少なりともまともな軍隊だと言う事も影響しています。
 そして、政府、軍部共に国際社会でまともに活動と交流を行っており、日本の国際的地位も高いので、ごく常識的な見識から抗戦が無意味な段階に至った時点での条件付き降伏という、ごくありきたりな結末が選択されます。
 また、新たな対立を見越した事により、違った形での生き残り策を企てた結果かもしれません。
 なお、日本の降伏における妥協点は、色々な意味での国体の保持、日本が国家として生存できるだけの勢力圏の維持というところになるでしょう。また、戦争の原因の国際市場は、一度アメリカに全部渡します。これだけは、仕方ないでしょう。まあ、どうせ大半はあとで返して貰えるのですから、一時的に維持管理をしてもらっていると思えば、あまり気を悪くすることもないでしょう。
 そして戦後日本が、史実のものと大きく違う点は、無条件降伏ではなく占領軍に国土が軍靴で踏みにじられていない事と、領土(+勢力圏)が史実のものよりも遥に大きく残っている事です。
 また、衛星国にそれなりに囲まれている事ももちろんですが、何よりも明治政府以来の本来の意味での「日本政府」と「日本軍」が戦前同様保持され、国家社会主義陣営が「敵」で、日本の政治が戦前同様敵対勢力に厳しい姿勢を維持しているので、社会主義、共産主義勢力がほぼ存在しない事です。(悪名ばかりが高い治安維持法も形を変えて存続しているでしょうから、思想家にとっては多少住みにくい国でしょう。)
 ああ、もちろん日本全土が旧来の日本政府により保持されているのですから、鉤十字の日本(黒い日本)が生まれる事もありません。
 なお社会的・経済的な面での改革は、史実のように占領軍でなくても日本政府によっていずれ行われる予定だったと言われていますので、この点はほぼ違いはないでしょう。

 まあ、論じだしたらキリがないので、この想定全般における最も大切な点を最後に見てみましょう。
 そうです、我らが『八八艦隊』、彼女達の顛末です。
 戦争後半は、史実とほぼ同じような経緯をたどっているので、バタバタと倒れている事は間違いありません。ですが、史実のように本土攻撃を徹底的にされていませんので、最後の戦闘に備えて軍港に逼塞してからは比較的健在と言う事になります。
 史実では、硫黄島の戦いの時点で12隻あった戦艦のうち5隻がいちおう健在でした。比率にして42%の生存率です。
 簡単な想定しかしていないので、最も適当な数字と想定して、この比率で考えてみましょう。
 『八八艦隊』世界では、1939年の時点で21隻の戦艦がありました。これに1941年頃に就役する「高千穂級」戦艦2隻、1944年頃から就役を開始する「大和級」戦艦が最低2隻、その後の計画も進んでいれば最大4隻就役していることになります。
 つまり、日本軍の戦艦の総数は最大27隻と言うことです。つまり史実の二倍強です。(さらに超甲巡が2隻程度ある。)
 そして残存艦はこの42%ですので、つまり11隻が残存している事になります。単純に比率から考えれば、「高千穂級」、「大和級」戦艦から2〜3隻、旧式戦艦から2隻、『八八艦隊』計画艦からは6〜7隻が残存しているわけです。
 まあ、「大和級」戦艦3番艦以降は、戦局がどうしようもない段階になるあたりで就役する可能性が高いので、残存しているだろうと考えると「高千穂級」、「大和級」戦艦から3隻、『八八艦隊』計画艦が6隻としてもよいでしょう。そして、様々な意味での生存性から考えると強力な艦ほど生き残りやすいので、「富士級」、「紀伊級」から2隻ずつ、それ以外が1隻ずつと言うところでしょうか。
 しかし、米軍とほぼ同程度の技術力(+修理能力)を持った日本軍ですので、米軍も相応の損害を出していると考えると、米軍の戦艦部隊も同様に壊滅しているのですから、彼女達にすれば本望と言える結果かもしれません。

 ともかく、生き残りの戦艦たちは11隻、これだけです。巨大な米軍の工業力を真っ正面から受けたとすれば、このぐらいの残存性が確かに精いっぱいでしょう。
 もちろん、空母群も同様に壊滅しているでしょう。史実通りなら、戦前からあった空母はほぼ全滅、戦争中に就役したものや戦時計画艦の残存艦も史実の二倍近い艦が建造されたとしても、あまり明るい数字ではないでしょう。
 ついでですので、戦艦と同様の仮定から考えてみましょう。
 史実では、日米開戦までに6隻、戦中に5隻の大中型空母が就役しています。そして、1945年2月時点での残存艦は、戦中に就役した2隻のみです。機動部隊用の改装空母を含めても数はしれています。
 つまり、絶対数をこの二倍として、残存正規空母はたったの4隻です。史実通り米軍が2ダース以上もエセックス級大型空母を建造していると考えると、残存数は確かにこんなものかもしれません。
 まあ、この世界では満載5万トンクラスの超大型の装甲空母が4隻程度就役しますので、1、2隻は残っているでしょうが、明るい材料はこれぐらいです。
 もっとも、運用する機材や技術的な点が全く違うので、同様に判断するのは難しいですが、多く見積もってもこの五割り増しの残存数が瀬一杯でしょう。
 もちろん、米軍も同様に消耗しているので、こちらも史実よりははるかに善戦していることは疑いないでしょう。 
 ただ、空母は生産力の差がダイレクトに影響しますので、この点で最終的に押しきられるのは仕方ないでしょう。

 また、満州や樺太の油田が停戦の時点でも、ほぼ間違いなく保持されているので燃料不足に陥る事はなく、戦艦も空母も、いや連合艦隊そのものが史実以上に酷使され、史実よりもひどい損耗率を示している可能性も十二分にあります。
 まあ、戦争終盤はフリート・イン・ビーイングに走るのが海軍の常とも言えそうですので、この点は差し引いて考え同程度の消耗としておいてください。

 かくして、海軍全体も四割の残存(補助艦は3割程度か)という形で停戦を迎え、戦後さらにその25%程度が軍縮にしたがい退役、そこからの再スタートとなります。
 再スタート時の海軍は、大型戦艦6〜8隻、正規空母4隻程度でしょうから、史実に比べればはるかにマシな状態ですが、やはりここでの結論は「バッド・エンド」です。
 アメリカ1国相手で、日本側の同盟者なしという状態に持ち込まれた時点で、日本に勝ち目はなかったと私なりの結論として少しでも受入れてくださればと思いつつ、ここでのルートを終えたいと思います。

 では、最後の言葉の代わり、鎮魂の言葉の代わりとして、この世界のレイテ沖海戦にあたる、硫黄島沖海戦時(最後の大規模海戦)の大型艦を中心とした艦隊編成表を記して最後にしたいと思います。

 ここまでおつきあいいただきありがとうございました。
 ではまた、別の平行世界で会いましょう。

■1946年10月現在・日本海軍・連合艦隊編成表

 第一遊撃隊・第一部隊(旧第一艦隊)
BB:<大和><武蔵><甲斐>
BB:<富士><阿蘇><浅間>
BB:<紀伊><尾張>
CG:4、CL:1、DD:12

 第一遊撃隊・第二部隊(旧第二艦隊)
BB:<葛城><赤城><高雄>
BB:<金剛><榛名>
CG:2、CL:1、DD:8

 第二遊撃隊(旧第五艦隊)
BB:<土佐><長門>
CG:1、CL:1、DD:5

 第一機動艦隊(艦載機:約280機)
BB:<穂高>
CV:<海鳳>
CV:<伊勢><日向>
CVL:2隻
CG:2、CL:1、DD:6

 第二機動艦隊(艦載機:約320機)
AC:<剣><黒姫>
CV:<瑞鶴><千鶴>
CV:改飛龍級:2隻
CVL:2隻
CL:3、DD:8

予想されうる米機動艦隊
BB:新型12〜17隻、旧式3〜5隻
CV:新型12〜16隻、旧式1〜2隻
CVL:5〜6隻
艦載機:約1300〜1800機

18隻の戦艦が作戦参加していますが、このうち本作戦から終戦までにさらに7隻が戦没する事になります。
(でも、何だかこの戦闘では、全滅するかもしれないけど勝てそうだな(苦笑))

End

■INDEXに戻る