■産油国日本 5-2

■日本軍の軍備

□海軍

 専守防衛を旨とする艦隊(=沿岸海軍)から外征型艦隊(=外洋海軍)への正式な転換は、ワシントン海軍軍縮条約を破棄した1934年1月に海軍内で正式に定まった。これは油田を軸とした産業発展により、海外及び海上交通路からもたらされる資源の安全な輸送が政府により重視されたことと強く影響している。
 海軍内での海上護衛の重視は、天鴎島からの石油輸送とソ連の脅威増大と共に一般認識されるようになった。
 1936年1月にはロンドン海軍軍縮条約も破棄され、同月大和型戦艦と天城型巡洋戦艦、翔鶴型航空母艦が相次いで起工している。
 この時一般に公開された計画こそが、「新八八艦隊計画」だった。計画の概要は、建造八年以内の有力艦艇を八隻ずつ整備という内容が曖昧なものだった。
 これは、海上交通路の維持のため、イギリスに対するアドバンテージの確保と、アメリカへの牽制を狙ったものだった。
 1936年度予算で組まれた「第三次補充計画」は非常に雄大な規模で、また諸外国に先駆けた大規模な海軍拡張だったため非常に大きな注目を集め、諸外国の警戒を呼び起こす事になった。日本海軍も自らが与える影響を警戒して、多くの艦艇を秘密裏に計画・建造している。その際たる存在こそが、軍縮条約を完全に無視した巨大戦艦の《大和型》だった。
 なお、本来なら「第三次補充計画」は1936年度予算で通過予定だったので、その前の「第二次補充計画」も一年圧縮された形となっている。
 つまり日本は、1935年から実質的な軍拡に傾いたのと同じだった。それどころか、1934年から軍の海軍工廠を大幅に拡張、強化しているので、条約から離脱した時点で軍拡に走っていたと表現して間違いないだろう。

 第二次補充計画から既存戦艦、空母の大規模近代改装予算が盛り込まれ、1934年以後順次改装が開始される。旧式戦艦の中では唯一の16インチ砲搭載戦艦の《長門》の近代改装が常軌を逸するほど徹底しており、当時練習戦艦だった《比叡》ともども来るべき新型戦艦のテストベットとされたため、内容は新鋭戦艦並かそれ以上だった。
 《長門》の改装後の要目は、基準排水量が4万トンを越えるも、機関出力の大幅な向上により速力は日本海軍の基準で28ノットを記録した。これは欧州基準なら、海御状態さえよければ30ノットの速力が出る事を意味する。その他の旧式戦艦も可能な限りの近代化を施したが、1936年の計画では基本的には1944年に予備役編入を予定したものだった。
 一方新造艦計画だが、大きく以下のようになる。

・第二次補充計画(1934年度) ※軍縮条約枠内での海軍整備。しかし完成が条約離脱後となるため、艦の装備に対する制限は無視された。
艦艇予算:5億6000万円 航空隊予算:6000万円

利根型二等巡洋艦:《利根》《筑摩》
飛龍型航空母艦 :《飛龍》《雲龍》
千歳型水上機母艦:《千歳》《千代田》《日進》(※空母補助艦枠)
香取型練習巡洋艦:《香取》《鹿島》

駆逐艦:14隻 潜水艦:4隻 海防艦:12隻
香取級練習巡洋艦:《香取》《鹿島》

重工作艦:2隻
高速給油艦:4隻

※この世界では、水上機母艦以外で空母補助艦枠は設定されず。(瑞鳳などは計画されず。)

・第三次補充計画(1936年度) ※1940年夏までに全艦戦力化予定
艦艇予算:22億8000万円 航空隊予算:2億7000万円

大和型戦艦  :《大和》《武蔵》《信濃》《紀伊》
天城型巡洋戦艦:《天城》《葛城》《阿蘇》《生駒》

翔鶴型航空母艦:《翔鶴》《瑞鶴》《天鶴》《紅鶴》

雲仙型一等巡洋艦:《雲仙》《六甲》《白根》《鞍馬》

日進型水上機母艦:《瑞穂》《高千穂》《浪速》(※空母補助艦枠)
香取型練習巡洋艦:《香椎》《橿原》

駆逐艦:36隻(42隻) 潜水艦:18隻(21隻) 海防艦:12隻

高速補給艦:4隻
給兵艦:2隻 特殊給兵艦:1隻(《樫野》)
高速給油艦:4隻(※空母補助艦枠)

※この計画の段階で、大型客船を有事に空母に改装するという案は流れる。海軍予算の拡大、日本の発展が原因。
 以後有事に際しての改装空母には、高速母船系と高速タンカーの二本に絞られる。
※( )内の隻数は、
大和型、天城型の規模を秘匿するためのダミー予算。
※瑞鳳、祥鳳は、
《天鶴》《紅鶴》に変ったと考えるべし。ポジション的には、瑞鳳が《天鶴》、祥鳳が《紅鶴》
※高角砲は12.7cm砲に代わって97式10cm砲が導入始まる。

・第四次補充計画(1939年度) ※1942年中に全艦戦力化予定
艦艇予算:32億6000万円 航空隊予算:5億8000万円

改大和型戦艦:《陸奥》《土佐》《1003号艦》《1004号艦》
改天城型戦艦:《1201号艦》《1202号艦》《1203号艦》《1204号艦》

改翔鶴型航空母艦:《神鶴》《飛鶴》《千鶴》《吉鶴》

高速タンカー改造特設空母 :《飛鷹》《隼鷹》《大鷹》《雲鷹》《冲鷹》《神鷹》《海鷹》

伊吹型一等巡洋艦:《伊吹》《乗鞍》《剣》《黒姫》
大淀型二等巡洋艦:《大淀》《仁淀》《黒部》《石狩》
阿賀野型二等巡洋艦:《阿賀野》《能代》《矢矧》《酒匂》

秋月型直衛艦:12隻  島風型駆逐艦:24隻 
松型駆逐艦:36隻   海防艦:60隻
潜水艦:大型35隻 小型36隻

重工作艦:2隻 ・その他支援艦艇多数

改翔鶴型は史実の飛鷹、隼鷹、龍鳳が改翔鶴型になったと考えるるべし。改装空母は、むしろ給油艦の速吸などが空母になったようなもの。
 ポジション的には、飛鷹が《飛鶴》、隼鷹が《神鶴》、龍鳳が《千鶴》。《吉鶴》は低速改装空母を代表して大鷹あたりだろう。
※この世界では技術向上により、島風型でも容易に量産可能となっている。
※補助艦はハイ・ローミックス。軽巡洋艦はあまり作らず、既存軽巡洋艦の代替は重巡洋艦もしくは防空巡洋艦になる。

・1940年度戦時艦船及航空兵力拡充計画(○急計画)(1940年度)
40億円以上。
安土型特設空母:15隻以上
十勝型一等巡洋艦:《十勝》《吉野》《箱根》《岩木》

二等巡洋艦以下の消耗が予測される中小艦艇の大量追加建造に加えて、第四次補充計画の一年前倒し。
航空隊の大幅拡張。
本計画の艦艇名は、敵の混乱を誘うためと武勲を受け継ぐべく、戦没した艦艇の名前を引き継ぐ艦が相次ぐ。

・第五次補充計画(1942年度) ※対米戦時計画
大鳳型航空母艦:《大鳳》《瑞鳳》《祥鳳》《龍鳳》
※その他多数を計画。

※要目詳細についてはここ()を参照。

備考

 1930年代以後、日本は原油の入手に困らなくなった。高純度ガソリンについても同様だった。更に重工業化により鉄スクラップや綿花の入手の可否は、日本経済にとって致命的な問題ではなくなった。つまりアメリカを無視しても、取りあえずは何とかなる事を意味していた。そのため、重工業原料の主要輸入先である英連邦が、日本海軍にとっての最優先の仮想敵として認識されるようになった。
 イギリス海軍は世界の海に薄く広く展開しており、極東に集中可能な戦力は限られる。その代わり、どこまでも後退して体勢を立て直す余裕がある。必然的に、大規模な艦隊決戦ではなく、長期間にわたる交戦と補給を伴う長期戦になると予想された。そこで、対米艦隊戦略とは異なった戦略が要求された。
 建艦計画への影響としては、極端な重装甲を施した大艦ではなく、長距離の遠征が可能で高速な個艦性能が良しとされた。運送艦(タンカーや給糧艦)の整備が進められた。

 民間造船所は1920年代のタンカー建造競争を経て神戸川崎に10万トン級船渠が建設され、三菱広島、渡辺製鋼広島、浦賀四日市、日立神奈川、長府船渠、函館船渠室蘭などの造船所も2万tタンカー(船価1200万円)を量産していた。よって、2万t程度の中型空母ならばこれら比較的新しい民間造船所だけでも6隻が同時着工可能であった。
 浅野、横浜船渠、三菱長崎の600フィート級の船渠も、続行船が進水すればそれぞれ1隻ずつ中型空母建造に回せるように調整されていた。
 1000総トン以上の船舶が入渠可能な船渠は全国に85ヶ所を数え、更に15ヶ所が建設中だった。充分な圧延鋼材の供給があれば、大型艦艇を建造しながら年間300万トンの商船を供給することも可能とみられた。
 英連邦が敵になることが明確になったいま、想定戦域は地球全体に拡大すると思われる。ならば、大日本帝国の大きな造船能力は、いまや欠くべからざる能力と言えよう。

 艦艇、船舶の詳細についてはこちらを参照(

開戦時(1940年秋)の日本帝国海軍の艦艇

戦艦
大和型戦艦 : 《大和》《武蔵》《信濃》《甲斐》
長門型戦艦 : 《長門》
伊勢型戦艦 : 《伊勢》《日向》
扶桑型戦艦 : 《扶桑》《山城》

《大和型》戦艦が新たな主力となったが、《長門》は各国の新造戦艦と互角以上に戦えるほどの近代改装が施されていた。

天城型巡洋戦艦 : 《天城》《葛城》《阿蘇》《生駒》
金剛型巡洋戦艦 : 《金剛》《比叡》《榛名》《霧島》

※開戦時、世界最強の高速戦艦部隊を編成。敵国のイギリスではなく、特にアメリカが非常に恐れた。
※本来なら長門以外の旧式戦艦は1944年以後は予備役または退役予定だったが、1930年代後半にいずれも延命措置されている。

航空母艦
正規空母
翔鶴型 : 《翔鶴》《瑞鶴》《天鶴》《紅鶴》
飛龍型 : 《飛龍》
蒼龍型 : 《蒼龍》
加賀型 : 《加賀》
赤城型 : 《赤城》

小型空母
《龍驤》、《鳳翔》

特設空母(※全て海軍輸送隊に所属)
高速タンカー改造特設空母 : 《飛鷹》《隼鷹》《大鷹》《雲鷹》《冲鷹》《神鷹》《海鷹》

海軍標準の1万トン級高速タンカーから急速改装。改装試験、建造時間試験としても建造された。
最初から油圧式カタパルトを装備。有効な運用が可能だった。
その後、別の船舶からの改装型が大量に建造される。開戦時、ほとんどが改装工事もしくは建造工事中。

高速水上機母艦
《千歳》《千代田》《日進》《瑞穂》《高千穂》《浪速》

全て空母補助艦枠の艦艇だったが、時代の急変のため改装が間に合わず、そのままの状態で実戦参加。


巡洋艦以下

 一等巡洋艦22隻
古鷹型:《古鷹》《加古》 
青葉型:《青葉》《衣笠》
妙高型:《妙高》《那智》《羽黒》《足柄》
高雄型:《高雄》《愛宕》《鳥海》《摩耶》

最上型:《最上》《三隈》《鈴谷》《熊野》
利根型:《利根》《筑摩》

雲仙型:《雲仙》《六甲》《剣》《黒姫》(1939年に相次いで就役。)

 二等巡洋艦:17隻
 5500トン級:
球磨型 :《球磨》《多摩》《北上》《大井》《木曽》 ※最も旧式化しているため、船団護衛用に改装
長良型 :《長良》《五十鈴》《名取》《由良》《鬼怒》《阿武隈》 ※対潜・防空巡洋艦として改装。一部水雷戦隊旗艦任務。
川内型 :《川内》《神通》《那珂》 ※主に水雷戦隊旗艦任務。
 3000トン級:
夕張型 :《夕張》 ※船団護衛用に改装
天龍型 :《天龍》《竜田》 ※退役予定を延長。防空巡洋艦の実験艦として改装
 練習巡洋艦:4隻
香取型 :《香取》《鹿島》《香椎》《橿原》

※旧式艦ばかりのため、新造艦の就役が待たれていた。新鋭艦が揃えば二線級任務か高速補給艦への改装を予定していた。

 駆逐艦:142隻
特型24隻、初春型6隻、白露型10隻、朝潮型10隻、陽炎型36隻、島風型4隻、秋月型4隻、=94隻
旧艦隊型(睦月型、神風型):36隻
松型:12隻(※順次量産中)
※軍縮条約脱退以後、非常に多数の駆逐艦が建造されている。これからの数の主力は簡易構造を大幅に取り入れた《松型》の中型駆逐艦。
※旧式駆逐艦は、基本的に二線級任務に従事。一部は哨戒艇や高速輸送船に改装。

海防艦70隻(※大部分は海軍輸送隊に配属)
※軍縮時代から小型の旧式駆逐艦の代替名目で拡充されていた艦艇群。ソ連の軍拡進展と共に拡大。本来は日本海でのタンカー護衛用。
 600トンから800トン程度で、速力は18ノット〜20ノット。爆雷を多数搭載した対潜水艦専用艦艇。

潜水艦65隻(大型潜水艦主力)
伊号: 旧式:28隻 新型:25隻
呂号: 旧式:12隻 

※1930年代から電気溶接を多用した潜水艦を建造。
 1939年度計画からは、ドイツから技術を導入した潜水艦を建造。
※航続距離を伸ばした呂号潜水艦を多数量産中。

大型潜水母艦:《大鯨》《迅鯨》《長鯨》 特設水上機母艦:4隻
敷設艦:各種10隻(※機雷敷設が目的)

その他小艦艇140隻(このうち旧式の小型駆逐艦51隻は海軍輸送隊に配属)
特設艦艇1000隻(民間船(主に漁船)転用の哨戒艇など)
高速タンカー、高速補給船、重工作艦など多数。

・軍人員数

士官1万2500名
特務士官3800名
准士官9000名
下士官・兵30万名
総員32万5800名(うち現役26万6500名、召集5万9300名)

・海軍の航空機

戦闘機:719(=艦上戦闘機)
爆撃機:357(=艦上爆撃機)
攻撃機:1055(=陸上攻撃機と艦上攻撃機)
偵察機:339
輸送機:138
飛行艇:66

作戦機合計:2674機

 これ以外に練習機が各種合計で1128機存在する。

九七式艦戦(艦上戦闘機):
 引込脚式低翼単葉戦闘機。1940年の時点で、 九七式艦戦は比較的翼面荷重が小さく滑走距離が短いため、龍驤・鳳翔や特設空母、もしくは訓練用に用いられている。
 一部は中華民国に供与される。

九九式艦戦(艦上戦闘機):
 全幅11m、全長9.2m、翼面荷重130kg/m2、翼端折り畳み可能。エンジン出力1000HP。最大速度530km/h(11型)。航続距離1700km。全備重量3100kg。
 最高速度555km/h(22型)。最高速度590km/h(53型)。
 初期の主要な敵がフェアリーフルマー艦上戦闘機程度であったため、空母同士の航空戦ではなく、敵地上基地の上空制圧のような任務を想定していた。実際、想定通りになった。ハリケーンでも十分優位に立てた。
 連合軍の艦上戦闘機では、大戦初期の時点で
九九式艦戦に敵う機はいなかった。運動性、操縦性が高かったため練習型も多数生産された。開戦時には、既にエンジンを1250HPの改良型に換装した(22型)が生産開始されつつあった。さらに1942年には、金星エンジン(1560HP)を積んだ改良型(43型)が量産配備される。
 1941年中頃からは中華民国、タイ、インドなどアジア各国に供与。

二式艦戦(艦上戦闘機):
 固有名称”烈風”。
 対イギリス戦では空母同士の航空戦がほとんど一方的な日本の勝利であったことから、敵地上基地の上空制圧能力を向上させ、同時に長時間滞空可能(同時に敵陸上機には洋上の空母を攻撃不可能にせしめる遠距離戦闘可能)な航続距離性能を有する機体が求められた。そうした用兵側の期待に沿って設計されたのが、二式艦戦である。
 対地攻撃を重視したため、搭載機銃は20mm4門、13mm2門に強化された。爆弾も500kgまで搭載可能。爆装時は60kg爆弾4発+標準増槽が好まれ、後に小型のロケットランチャーを装着するようになる。防御力も、地上からの攻撃をある程度防ぐため、機体全体の防弾能力を高めた。
 航続距離は戦闘機状態の増槽(大型)装着時で3200kmにもなり、ほとんど双発陸上機のような性能を発揮した。防弾・速度性能ともに高水準であり、スピットファイアMk. IXにも充分に対抗できた。米軍機にも対応した能力も有した高性能機。
 また烈風が登場する頃には、ようやくイギリス空母にもまともに戦える艦戦シーファイアが配備され、九九式艦戦ではフェアリーフルマー艦戦ほど簡単に撃墜できなくなっていた。このため機種改変は急速に進んだ。

 全幅13m、全長11m、翼面荷重160kg/m2、翼端折り畳み可能。エンジン出力2000HP。最大速度630km/h(11型)。航続距離3500km。全備重量5300kg。調達価格24万円。
(※22型ではエンジンを2200HPの排気タービン過給器付に強化。機体も改修を行い、最大速度は660km/h。)

九七式艦攻(艦上攻撃機):
 武装:800kg魚雷1本および800kgまたは250kg爆弾1発搭載。開戦当時としては世界最高水準だった。
 栄エンジンを搭載し、出力1000HP。最大速度400km/h。航続距離1700km。
 戦争が始まってすぐに後の「一式艦上攻撃機”彗星”」が開発され、順次後方任務に下げられた。

九七式艦爆(艦上爆撃機):
 艦攻を中島に取られた三菱と新星が競争し、新星製の機体が制式採用となった。三菱は既に九九艦戦の生産で手一杯であり、新星に生産を割り振る、兵器行政的配慮が働いたとも言われる。
 武装:250kg爆弾1発搭載。
 九七式艦攻と同じ栄エンジンを搭載し、出力1000HP。最大速度390km/h。航続距離1700km。
 大戦中盤には、九七式艦攻があれば爆撃にも利用できるため艦爆不要論が台頭することになった。よって、艦爆という機種は本機を最後に機種整理で姿を消し、火星エンジン搭載の「一式艦上攻撃機”彗星”」が爆撃の任務も担うことになる。しかし対潜水艦用として水平爆撃より急降下爆撃が効果的とされたため、本機は護衛空母で長らく使用される事になる。
 一方では、急降下爆撃も可能な汎用水上機の「瑞雲」(愛知製)が、対潜水艦任務用に急降下爆撃も可能な機体として1941年に量産化される。
 
零式水上偵察機及び二式大型飛行艇:
 双方とも川西製。大型の火星エンジンを採用し、零式水上偵察機は丈夫な機体構造を持ち、補助ロケットと水メタノール噴射装置で緊急時には時速640km/hを発揮できた。しかし、実際には補助ロケットは浸水で機能不全のケースが多かった。
 二式は当初から電探装備が前提とされ、長大な航続距離と重武装、丈夫な機体構造を買われて戦略的な偵察に活躍した。

零式陸上攻撃機:
 大型機の経験に乏しい中島飛行機は早々に競争から離脱し、三菱と新参の新星重工業の対決となった。三菱の技術陣は、大馬力の火星エンジンなら2発で充分に海軍の要求性能をクリアできると判断し、現行の九五式同様の2発機を提案した。一方の新星は、とにかく4発機の方が様々な面で優れていると主張し(機体納入価格も高く儲かる)、安定性の高い金星エンジンを4発積んだ爆撃機を提案した。
 結果、将来の拡張性や生残性も勘案して新星案が通ることになる。とはいえ、エンジンの供給は三菱になるため、三菱にとって完全な敗北とはならなかった。その後、火星エンジンを搭載した強化型(23型)が主力を占めるようになる。
 対艦雷撃ができる4発機という非常に珍しい重攻撃機だったため、「ゼロ・ボマー」として連合軍に恐れられた。
 全幅32.5m、全長23m、エンジン出力1140HP×4基。最大速度460km/h(11型)。航続距離6500km。全備重量26300kg。爆弾積載量:最大4トン。
 ※800kg航空魚雷3本の同時投下が可能。

九八式輸送機:
 かねてから中島がダグラス社の輸送機のライセンス生産をしており、輸送機でのシェアの多くは中島のものであった。しかし、需要の急拡大のために中島だけでは対処できなくなり、三菱や昭和飛行機も生産に駆り出されている。