Phase 03:開戦前 各国戦力概要

Phase 03-1:欧州列強

 1939年(昭和14)11月30日にソ連がフィンランドに侵攻し、1940年5月15日にドイツがポーランドに侵攻、共に侵略を成功させ欧州を混乱のどん底に追い込んだが、世界はいまだ比較的平穏に包まれていた。
 世界の秩序を維持する意志に溢れている筈の英国がいまだ具体的な行動に出ていないのが原因とされているが、ソ連が一時的に沈黙しドイツがポーランド侵攻を終えると、世界はしばらく表面的な鎮静状態に戻っていたからだ。
 もちろん、裏では各勢力が様々な画策を行っていたが、ここで本格的な幕開けを迎える前に少し各国の戦力を少し見ておこう。

 これから幕の開ける第二次世界大戦と呼ばれることになる二度目の大乱は、その戦場が東欧もしくは中東地域となり、ために陸戦が各所で展開される事になった。これは、この戦争を知るものなら誰でも知っている事であろうが、戦力紹介をバランスを重視しつつも陸軍に重点を当てていきたいと思うので、まずこの点を確認しておきたい。
 1940年夏の時点で巨大な軍事力を保持してい国は、イギリス連合王国、フランス共和国、ドイツ第三帝国、ソヴィエト連邦、イタリア王国、そして大平洋を挟んで15ラウンドの殴り合いを演じた日本帝国とアメリカ合衆国だ。これに、東欧のいくつかの小国(チェコスロヴァキア、ハンガリー、ルーマニア)、中東のトルコなどが数字としての戦力を僅かながら計上できるだろう。

 ドイツ第三帝国
 【陸軍】
 ドイツ軍は1934年の再軍備宣言以後、雨後の竹の子のような勢いで戦力を増大させており、ポーランドを下し、その後の軍の再編成を終えた時点で実に約120個もの現役師団、250万人もの兵員を抱えていた。これにさらに編成途上の部隊が1年以内に30個師団程度編成される事になっており、陸軍大国としての面目を十二分に施していた。
 しかも、装甲師団と呼ばれる戦車を中心とした機械化師団をポーランド戦時点で6個も編成しており、さらに4個存在した軽装甲師団もポーランド戦の後通常の装甲師団に改変されていた。さらに、自動車化された機械化歩兵師団も同じく10個を編成もしくは編成しつつあり、これらを中心にした機械化部隊の総数は、この時点では世界最強と言ってよかっただろう。ただし、紙の上でという事になる。なぜなら、この当時のドイツ陸軍の主力戦車は、「II号戦車」と呼ばれる、本来なら偵察用に使われるのがせいぜいの20mm機関砲しか搭載しないものであり、ドイツ軍自身が本来主力と定義づけていた「III号戦車」、「IV号戦車」は、40年夏の時点でも全体の半数にも達していなかったし、自動車化師団の移動手段もトラックが主力で数も足りていないという有様だったからだ。
 なお、ドイツ軍の装甲師団の戦車定数は、初期の頃は実に500両以上になるが、1940年の改編で各師団とも300両程度がせいぜいで、後の編成改編でさらに定数を減少しており、この頃のドイツ軍の戦車の総数も3,000両程度にすぎなかった。
 ただし、ドイツの優れた無線技術や用兵思想の先進性から、集団としての戦闘力は非常に高いと見られており、ポーランド戦はこれを如実に証明する例として、列強各国から判断されていた。

 【空軍】
 再軍備宣言から10年に満たないにも関わらず、その戦力は2,700機もの第一線機を有するほど巨大なものとなっていた。(訓練機を含めると5,000機体制とされている。)この数字はソ連を例外とすると列強屈指であり、5年もの長期戦を戦った日米に匹敵する規模であった。
 しかもその編成は、戦術空軍としては世界最良の布陣であり、強力な制空戦闘機、精密な爆撃を可能とする各種爆撃機は、この時点において欧州の全ての国を圧する戦闘力を保持していると見られていた。だが、戦術空軍もしくは対外侵略を前提に編成されている向きが強く、ために空軍全体に占める爆撃機の数が多く、相手が自らと同等の空軍力を持つ場合、かなりの苦戦をするのではないかと言う観測は、この当時から存在している。
 なおドイツ空軍は、「航空艦隊」と言う兵力単位を最大単位として、これを5つ保有しそれぞれが定数600機程度の勢力を誇る一大航空集団を形成している。

 【海軍】
 建設に多大な時間のかかる海軍にまでドイツの再軍備は果たされておらず、施設の増設が進められ建造期間も短いため今後増勢の見込める潜水艦戦力はともかく、この時点においては巡洋戦艦2隻、装甲艦3隻を中心とした水上戦力しか保有してなく、これはソ連を除いた列強際弱であった。ただし、主敵がソヴィエトである可能性が極めて高く、英国との関係も比較的良好な事からドイツ内部では当面あまり問題ないとされており、これだけの戦力があればバルト海の制海権確保は問題ないと判断されていたし、実際もその通りだった。
 なお、戦艦2隻、空母1隻を中心として建造・艤装が進められており1942年までには全てが就役予定で、さらに巨大な海軍の建設が始められようとしていたが、1940年の対ポーランド開戦で全て白紙撤回され、大型艦艇については艤装中の艦艇の完成だけを急ぐ姿勢がとられている。

ソヴィエト連邦
 【陸軍】
 欧州正面148個、北欧20個、極東25個、中央アジア・シベリア15個という途方もない常設師団数とそれを支える各種支援部隊を抱えている。
 もちろん世界一の大陸軍国である。
 だが、ソヴィエト軍の編成は他国に比べて小さな編成を取る傾向にあるので、人員数を見ると多少小さくなる。だが、その他支援兵力を含めた軍の総兵員数は450万人に達し、友好国を含めたドイツ軍を凌駕するとされていた。
 しかも、ソ連の重工業化政策の一部完成と、実権を掌握したトハチェフスキー元帥など軍首脳部の指導でドイツ軍同様機械化が進展しており、軍そのものが巨体であるだけに編成上の部隊数も非常に豊富なものとなっていた。これは、師団以外の編成の「戦車旅団」(完全な諸兵種連合部隊ではなく、戦車を中心とした欧米の増強連隊規模)が30個以上存在していた事からも見て取る事ができる。
 なお、約200個の師団のうち、戦車師団の数は12個で、機械化狙撃師団と呼ばれる自動車化歩兵師団の数は20個が編成上から確認できる。ただし、自動車産業が英米独ほど発展していない国の事であるので、自動車化師団のかなりは紙の上だけと当時は判断されていた。輸送に関してもその規模と鉄道部隊はともかく、かなり状態は悪く装備も旧式とさてもいる。
 だが、それでも20,000両に達すると見られていた膨大な数の戦車は、量産が進められつつあった新鋭戦車の存在をあえて無視したとしてもそれだけで十分な脅威であり、その過半が既に旧式とされるものであっても、全世界の半数以上に達する装甲車両の存在は、ソ連軍最大のアドバンテージと見られていた。
 そして、砲兵については、ロシア帝国時代からの伝統が引き継がれており、圧倒的な戦力で全軍の補強をしている。これは、装備の点では後に「カチューシャ」で知られる簡易ロケット砲に象徴されるように、その先進性において世界一と言っても過言ではない。
 なお、優先的に新装備を受領している精鋭部隊の一部には「赤色親衛」の文字が冠せられ、英国などではこれを「ミーシャの兵隊」や「レッド・ガーズ」と呼び恐れていた。

 【空軍】
 ソ連空軍のパワーの源は、なんと言っても第一線機12,000機とされる、その圧倒的なまでの数にある。この点は、陸軍と変わりない。さらに、共産主義国として女性パイロットを後方任務が主とは言え採用している点が、他国の空軍との大きな違いとなっている。
 だが、その内実は、一部機材の先進性はともかく、装備の旧式さ、パイロットの訓練度・技術と言う点で大きな問題がある事がフィンランドとの間の「冬戦争」で露呈し、この時点ではパイロットの能力改善に全力が投入されていると見られていた。
 だが、新型の液冷戦闘機などは、欧米列強の戦闘機と十分渡り合う事のできる性能を有しており、決して数だけ烏合の衆でない。この象徴として、この大戦でその名を轟かした「空飛ぶ戦車」と言われたシュツルモビク地上襲撃機が存在しており、空軍の質的改善の流れに従い多数が量産されつつあった。

 【海軍】
 帝政ロシア時代に一時期世界第三位に伸し上がる程拡大した時期も存在したが、この時代には見る陰もない程弱体な戦力しか保持していない。
 その戦力は、それが列強のものであると考えるなら、沿岸防衛海軍としてもはなはだ不十分なものでしかなく、しかもバルト海、黒海、バレンツ海、大平洋と4つの地域に分散配備されているので、実質的な戦力は計上するまでもないほどのものとなる。この好例として、一応の近隣国で最大の海軍を保有している日本帝国は、仮想的として最低の順位に置いている事がある。
 だが、当然と言うベきだが、近代化と戦力の増強が押し進められており、その象徴として6万トンの巨大戦艦3隻の建造が進められ、1950年には日英米に匹敵する大海軍が出現する予定になっていた。ただし、この大海軍建設にはソ連の有する造船能力の全てを投入しても不可能だと言う分析が当時から各国の間で知られていたので、それぞれの海洋国家は大きな脅威とは認識していなかった。

フランス共和国
 【陸軍】
欧州随一の陸軍国を自負するだけにその陣容も豊富で、この時点で対ドイツ戦備として独仏国境に配備されていた部隊数だけで約70個師団、100万人に達する。そしてこれを主力として、100個師団、150万の兵力を以て軍を構成していた。しかも、第一次世界大戦後からずっと予備役の動員制度も維持されていた事から、半年以内に国内防衛戦に限れば500万人もの兵員が出現する事になっている。さらに、近代戦に不可欠とすら言われる戦車についても、ドイツよりも若干多い約3500両が保有されていたし、新旧はともかく火砲の数量も第一線師団には十二分に配備されていた。つまり、額面上は世界第一級の陸軍という事になる。
 ただし、その編成や装備を見ると一部を除いて第一次世界大戦からさして進歩しておらず、フィンランドやポーランドの状況をみて慌てて機甲師団と軽機甲師団を4個師団ずつ編成しつつあるというのが実状だった。だがそれでも旧来の編成のままの騎兵部隊は維持されており、ここにフランス旧態依然たる陸軍の体質を見る事ができる。
 また、ベネルクス三国を実質的な同盟に引き込んでいるので、対ドイツ戦を想定すればこれに約40個の歩兵師団が戦力として計算できるが、この数字はもちろん動員された後の数字であり、この時点では数分の一の規模しか存在していないし、どの国も小国であるだけに機械化部隊などは全く保有しておらず、国内防衛戦以外ではドイツなど陸軍大国に対抗できる戦力はなかった。
 なお、装備の点では第一次世界大戦から保有されている旧式兵器が過半を占めていたが、見るべき点も多少はあり、特に「ソミュアS35」と呼ばれる中型戦車は、主砲塔が小さいという問題(旋回砲塔は1人用で主砲の発射速度が低い)はあったが、機動力・装甲などが高いレベルでバランスが取れこの当時第一級の中型戦車で、陸軍大国の面目を保つ存在として注目できる。

 【空軍】
 こちらも陸軍同様第一次世界大戦の頚城に足を引っ張られていると言ってよい。
 第一次世界大戦の頃は航空先進国とまで呼ばれ、優れた各種航空機で満ちあふれていたが、大戦後の航空機育成に失敗し(航空機会社を一元管理し、事実上の国営企業化していた)、さらに予算削減などの煽りを受け、次なる戦いを迎えようとしていたこの時においても、問題が山積していた。
 数こそドイツ空軍に匹敵する3000機規模の部隊を編成していたが、その半数はこの時代の戦闘にはとても耐えられないとすら言われ、実際のカタログデータ上でも、主力戦闘機である「モラン・ソニエルMS406」は列強の中にあっては欧州最弱の主力機とすら見て取る事ができる。
 なお、他の列強に対してフランス空軍が装備の点で遅れを取っている最大の理由は、航空機のエンジン開発に失敗している事が挙げられる。特に、英独とは致命的な差があり、太平洋戦争を戦い抜いて軍需に特化してしまった日米にも大きく後れをとっている。ただし、これは英独ソ以外全ての欧州諸国に言えており、この時期から航空機がどの国でも簡単に開発できるものではなくなった事を示している好例と言えよう。

 【海軍】
 大西洋では英国に、地中海ではイタリアに、北海ではドイツに対抗し、さらには多数の植民地を抱えるフランス海軍の任務は実に多様であり、規模に相応しくない程多数の艦種によって構成され、海軍全体の目的もハッキリしていないというのが一般的な評価になっている。
 だが、新鋭戦艦2隻、旧式戦艦6隻、空母1隻、各種巡洋艦19隻、駆逐艦約70隻、大型潜水艦40隻を中核に、列強4位の海軍力を保持している。
 装備の点でも新鋭の「ダンケルク級」戦艦や改装空母も保有しており、巡洋艦の設計にも見るべき点もあり、さらには4隻の大型戦艦、2隻の中型空母の建造が急ピッチで進められており、これらを有機的に運用すれば十二分にどの国とも渡り合える能力を保持していると見られている。
 練度も日英米などの海洋国家と比較しても合格点だと言われており、世界国家たる英国を除けば欧州随一の海軍を構成している。
 その活動圏は、主に北大西洋と地中海・アフリカ沿岸に限定されており、イザとなれば戦力の集中も容易で、仮想敵とされたイタリアやドイツが不穏な動きを見せても十分対応できるとされている。

イギリス連合王国
 【陸軍】
 英国は海洋帝國であり、それだけに平時の陸軍にはあまり力が入れられていなかった。
 また、あまりにも多くの植民地を保有している事からこれらの地域の警備の為に実に多くの兵力を展開しなければならず、欧州正面にある兵力は国家の規模を考えると非常に小さいものとなる。
 実際の数字で見てみると、機甲師団2個、歩兵師団15個と言う数字となる。これですら一部動員されたもので、編成中の師団を一部含めた数字になっている。
 だが、ソ連のフィンランド侵攻以来、またそれ以前から軍需生産の体制は少しずつ形作られ、1941年夏にはその成果が見られる事になっていた。これに合わせる形で陸軍の動員も進められており、1941年には1939年のおおよそ二倍の規模、機甲師団4個、歩兵師団25個(カナダ6、南ア2、豪州2、印度4を含む)にまで拡大される予定だった。また、最終的には英連邦全体で50個師団規模にまで拡大される予定で、この完成にはさらに2年が必要と見られていた。
 この点からも、英国はあくまで海洋帝國であり海軍国らしいと言えよう。
 なお戦車戦力についてだがだが、その装備において重装甲を持った歩兵(支援)戦車と騎兵用の高機動中型戦車(巡航戦車)の二本で開発が進められ、それなりの成果が出ているとされていたが、歩兵支援戦車を熱心に開発している時点でその運用思想は後進的と判断できよう。

 【空軍】
 列強の中では最もその準備が遅れていた。
 だが装備はその分高性能のものが多く、空軍の主力の「ハリケーン」戦闘機、配備が急ピッチで進められていた「スピットファイア」戦闘機、「ショート・スターリング」重爆撃機などが代表で、英本土防空軍約1000機を中核として、約2500機を全世界に展開していた。
 英国の動員が遅れている理由は太平洋戦争にあり、特に太平洋戦争の末期に日本が英国からなりふり構わずあらゆる航空機を輸入した事に起因している。英国の航空機工場は、特にエンジンの製造において日本向けの生産を優先したため本国配備が遅れたのだ。
 ただし、このため航空機工場の拡張や技術革新などは欧州のどの国よりも進んでおり、慌ててドイツが太平洋市場に参入した程だ。
 このため、戦備の方は急速に拡大されており、1941年夏には本土近辺だけで2000機体勢が作り上げられる筈だった。
 また、優れた先端技術を応用した新世代の防空システムの構築が実用段階に入っており、戦力倍増要素として英国では大きな期待をかけている。

 【海軍】
 トラファルガー沖海戦以来、約1世紀にわたり世界最大最強と言われる強大な海軍を保持している。
 この頃の英海軍力の全てを数え上げるとキリがない程だが、主力艦艇だけでも見てみると、戦艦14隻、巡洋戦艦10隻、大型空母4隻、重巡洋艦15隻という数字になる。
 この数字は日米が太平洋戦争で激しく消耗したことから、特に主力たる戦艦戦力において他国の追随を許しておらず、全欧州海軍を同時に相手取れるだけの陣容を誇っていた。
 しかも、日英同盟の存在がある事から、太平洋戦争で消耗したとは言え、依然世界第二位の戦力を誇る日本海軍が、アジア・太平洋方面の制海権確保を分担しており、これを含めれば海軍力という点では圧倒的な数字になる。
 また、大海軍だけにやや旧式化が懸念されているが、有力艦を中心に近代改装が急ピッチで進められ、さらには戦艦3隻、空母4隻を中心とした大拡張が進められ、これからも最大最強の座を渡す気が全くない事を世界に示している。

イタリア王国
 【陸軍】
 エチオピア戦争ぐらいから自ら総数100万人と言われる陸軍を保有しているとされ、編成上では約40個師団の大部隊を保有している。また、エチオピア戦争やスペイン内戦を経て実戦経験も豊富である。
 だが、軍の実体は国家そのものの総合的国力・工業力・技術力の限界から、他の列強に比べるとどうしても質が低くなり、またイタリアの勢力圏において石油・鉄鉱石・石炭と言う重要資源を産出しない事が、陸軍だけでなく全軍に強い影響を与えており、陸軍においては生産施設の貧弱さもあり備蓄砲弾の不足となって如実にあらわれている。
 また、機械化に関しては、緒についたのは列強の中でも早い方なのだが、こちらも工業力の貧弱さから装甲車、軽戦車の生産・整備が中心となっており、個々の装備においてはこの時点ではそれ程差はないとされていたが、後々に大きな問題となる可能性を十二分に持っていた。つまり、大型の対戦車火砲を装備できる車両が、現時点でも近い将来においても存在しないと言う事だ。
 また、その兵力運用は、フランスなどと同様に旧態依然とし、自動車産業の貧弱さから歩兵部隊の自動化も遅れている。
 さらに、全体主義国家の特長とも言える、特殊な軍組織(黒シャツ隊)が存在しているが、ドイツの武装親衛隊などと違い近代戦争を行う軍組織としてはほとんど戦力価値の存在しない、イデオロギー武装集団に過ぎない。
 だが、イタリア陸軍が他国に比べて後進的なのは、イタリアが基本的に海軍国でそちらに多くの努力を傾注しているからに他ならないので、全体的に見ればこの状態は国家として健全な状態と言える。

 【空軍】
 第一線機1000機という、列強としてはそれなりの戦力を有しており、少なくとも1930年代半ばまでは優れた機体をいくつも生み出していた。
 だが、1940年代にさしかかろうとしていた頃、やはりフランス同様エンジンの開発で行き詰まりを見せている。このため、イタリアではドイツからの技術援助を要請する事でハードルをクリアしようとしているが、当のドイツが大幅な軍備拡張時期であり、同盟国とは言え他国に貴重な航空機エンジンを供与するゆとりはなく、やむを得なくライセンス生産の線で調整が急がれている。

 【海軍】
 新鋭戦艦2隻、改装戦艦4隻、巡洋艦18隻、駆逐艦50隻を中核とした列強5指に入る戦力という、それなりにバランスのとれた艦隊勢力をもっているが、地理条件から地中海で行動することのみを前提とした艦隊を維持・整備している。
 過半の艦艇が地中海の穏やかな海面でいかに高速を発揮するかに重点が置かれており、また活動範囲が狭い事から航続距離が他国に比べて短いのもその特長である。そうして浮いたリソースを武装に振り向けているため、実現された重武装は日本海軍と並んで顕著なものとなっている。だが、他国からは損傷を受けた時に弱いと見られており、また折からの燃料不足から練度は十分でないとされ、英国などでは必要以上に警戒する必要はないと判断している。
 また、地中海での行動しか考えていない点から、海軍列強からは外洋侵攻海軍ではなく近海防衛海軍との烙印を押されてもいる。

 Phase 03:開戦前 各国戦力概要(2)