■解説もしくは補修授業「其の伍の参」

 日本はモレスビー、ミッドウェーでの成功を受けて、機動部隊戦力が回復する九月に予定通り「米豪分断戦略」に従いFS作戦(フィジー、サモア攻略)を企図します。
 そして、MI作戦成功以後この動きが本格化するでしょうから、兵力の移動もそれに向けたものとなります。また、史実のような敗北による混乱もないので、動きは史実より加速します。史実では、ミッドウェーの敗北で実質的にFS作戦が中止されているため、尚更差は開いています。
 当然日本側の動きは史実よりも大規模になり、第八艦隊、第二機動部隊のトラック、ラバウル進出、基地航空隊、陸軍部隊の増強、航空基地整備の速度上昇ぐらいに落ち着くでしょうか。これぐらいしないと、10月に天国に一番近い島に行けません。
 また、北東オーストラリア方面では、ポートモレスビーを拠点にして日本軍主導による航空撃滅戦が進められます。戦力としては、ソロモンからのプレッシャーがない以上、史実で北東ニューギニアにいた戦力とラバウルの航空隊が大幅に移動してこれを行うことになるでしょう。そしてこれをしておかないと、モレスビーが維持できないからこその豪州空襲になります。高い山脈が連なるニューギニア島は、まさに「壁」ですからね。
 時折、市販の作品でも取り上げられていますね。
 そして、これによりアメリカ軍の特に陸軍の防空戦力を同方面に拘束する事に成功するでしょうから、日本にとってはより有利な状況となります。
 また、対する連合国(アメリカ軍)は、残存空母は《サラトガ》《レンジャー》(七月投入可能)のみとなり、巡洋艦も不足しがちです(ハワイ、ミッドウェーで消耗)。セイラーの人的損害も、既に1万5000人を越えています。基地航空隊も十分とは言えず、布哇前面から戦力を動かす事もできません。ついでに、布哇の動きはミッドウェーから日本軍に監視されがちで、動き辛くなっています。
 しかし、これ以上の日本軍の侵攻は、オーストラリアと分断されてしまう事となり看過できない為、史実通り「ウォッチ・タワー作戦」が発動されます。
 これをミッドウェーからの偵察情報である程度アメリカ軍の反撃を察知した日本軍も、さらに南方への兵力の移動を進める事となります。もっとも、日本軍としては連合国の動きはフィジー、サモア方面と思う事でしょう。

 さて、どちらが先に動き出すでしょうか。
 単純に作戦準備力の差を考えると、アメリカ軍が一ヶ月程度早く動き出す事になるでしょうか。物量の差ばかりは、女神様と言えどどうする事もできません。
 そして、一九四二年八月に史実通り連合国の「ウォッチタワー作戦」が発動されます。ただし、日本軍も「FS作戦」準備の為史実より戦力の集中が進められており、ミッドウェー作戦失敗の混乱もなく戦力移動は順調となるので、かなりの戦力がトラック、ラバウルを軸に集中される事となります。
 戦力としては、前哨拠点となるニューヘブリデス諸島攻略のための部隊となるので(FS作戦用部隊は内地で南雲艦隊と共に編成・再編中)、空母機動部隊、護衛艦隊、攻略部隊、実働五〇機程度の基地航空隊ぐらいとなるでしょう。多少具体的に上げれば、第二機動部隊(《飛鷹》《隼鷹》《龍驤》《瑞鳳》(《飛鷹》の機関トラブルは発生しなかったとします))と、史実と同程度の規模の第八艦隊というラインナップとなると思います。
 また三川艦隊については、燃料、弾薬の問題がありますが、次の作戦準備直前で武器弾薬が満載状態だったとします。
 対するアメリカ軍は、史実とは違い空母の数が一隻少なく、また布哇と北豪州に基地航空隊が拘束されるので、半数程度に低下しています。
 そして、この駒を使って、「史実通り」第一次ソロモン海戦を起こしてしまいましょう。
 当て馬フレッチャーの空母部隊は史実より少ない二隻、艦載機一五〇機程度です。日本側はラバウルの航空隊すら史実より充実しており、さらには闘将角田提督率いる第二機動部隊(《飛鷹》《隼鷹》《龍驤》《瑞鳳》、艦載機約一六〇機)があって、戦力差はずっと日本軍有利です。

 あとはこれに史実程度の幸運が加われば、万事オーケーです。史実のような展開となれば、三川第八艦隊の作戦成功は疑いありません。また空母部隊が日本側にいるのですから、その後船団を壊滅させるまで三川艦隊が暴れまくるのも問題はなく、ガダルカナルに押し寄せた輸送船団及び揚陸されたばかりの物資破壊は間違いなしです。
 しかも、闘将角田提督率いる第二機動部隊が、ガ島に大規模な空襲をしかければ、阻止する戦力はアメリカ軍にありません。海岸部でオロオロしているであろう米地上部隊に大損害を与えること請け合いです。
 当然、この間当て馬フレッチャーは、臆病風に吹かれて後方に下がっているので、貧弱な日本軍部隊を蹴散らした筈のアメリカ軍は、ロクな装備も物資も持たないままガ島で孤立する事となります。
 めでたし、めでたし。

■フェイズ六「G-Island」