■解説もしくは補修授業「其の八」
一九四二年を圧倒的な戦術的優位で折り返した日本と、史実に倍するダメージを受けている太平洋方面の連合国ははたしてどう動くでしょうか。 ここではそれがテーマになっています。 連合国の大まかな作戦は、史実では一九四二年夏にミッドウェーでの勝利と日本側のアクティブな行動のおかげで、なし崩しに攻勢防御の段階に達しました。ですがここでは、開戦以後日本軍に肝心の「攻勢」に使用すべき戦力が叩きつぶされています。無理を押して行ったソロモンでの攻勢防御もその鼻面をへし折られたため、しばらくは守勢防御に徹するしかなくなります。この状況は、史実での連合国の戦力整備とドイツ重視の姿勢を考えると一九四三年夏までは、連合国は積極的に動かない(動けない)だろうと想定できます。 また、連戦連勝で軍艦マーチ付きの放送が毎月流れているような日本軍ですが、兵站面の貧弱さといっぱいいっぱいの前衛戦力のおかげで、ソロモン、ニューギニアに達した時点で攻勢限界に達しています。アキレス腱の燃料問題もあって、予防攻撃以上の作戦はとれなくなっています。 つまり、事実上の千日手の状況が一九四二年秋から半年ほどは継続される筈です。そしてその後は、徐々に連合国が物量によって戦況を好転させていくという史実と同じ経路が、少しタイムスケジュールが遅れながらも実現されていくという状況に大きな変化はないでしょう。 日本にとって、圧倒的物量を誇るようになった連合国は、機械仕掛けの万力みたいなもの、出口のない釣り天井の部屋に閉じこめられたようなものです。 この段階での米豪分断や豪州単独講和、もしくはハワイ攻略など、相手が致命的なミスでも犯さない限り確率的にはほぼ不可能と言えるでしょう。
ですが日本の手には、海軍の基地航空隊がいまだ健在です。圧倒的戦力を誇る聯合艦隊も、ほぼ無傷で残っています。これらの戦力を何とか維持しているのですから、戦線安定化のためにこれらの戦力を使わない手はないでしょう。そこで、日本軍にかなり有利な形での「い号作戦」を行わせてみました。 これが派手な架空戦記なら、地上部隊を伴った豪州本土侵攻になっている事でしょう(笑) もちろん、ヤマモト・フィフティーシックスは、ワンショット・ライターではなくヤマトに乗って攻め寄せてくるので、ここで暗殺するなど思いもよりません(笑)
なお、米艦隊が大ダメージを受けたのは、史実におけるワスプ撃沈が形を変えて現出するというお約束です(笑)。 また、豪州に対する攻撃で豪州政府が日本との停戦に傾いていないのは、短期決戦を求める日本を長期戦に引きずり込ませることこそが連合国側の戦略なのであり得ないと言う、私自身がごく普通に考え至った結論からきています。異論を持たれる方もあると思いますが、ご理解ください。 だからこの時点での豪州単独講和はあり得ず、架空戦記として安易に採用するにしても、少しご都合主義的すぎますからね(苦笑)
あと、日本側の戦艦にたびたび艦砲射撃させているのは、来るべき艦隊決戦に向けて、少しでも実弾射撃に馴れ、データを蓄積してもらうためです。これしとかないと、特に大和級戦艦の命中率が低そうですから。