■解説もしくは補修授業「其の拾参」

 取りあえず、日本が降伏でなく講和を目指すには、ごく簡単に分けて2つの手が考えられます。
 ひとつは、日本軍が頑張っている間にアカの脅威が極東を覆い尽くし、全てを失いたくない英米が向こうから握手を求めてくるという形です。
 安直ですが、これが日本にとって一番お手軽でしょう。
 もうひとつは、連合国の損害が大きすぎて、主に英米国民の間で厭戦気分が蔓延するという形です。
 そして今回のコンテンツ全体の流れでは、両者をなるべくバランス良く、そして日本に都合良く採用してみました。
 ただし連合国に史実よりも多く出血していただくには、他力本願ですがドイツの奮闘を期待せねばどうにもなりません。欧州戦線こそが、第二次世界大戦の主戦線だからです。そしてこれを、大東亞戦争開戦後に最も実現できそうなの事件の一つが、ここで取り上げたクルスク戦車戦でのドイツ側の戦略的勝利ではないかと思います。
 また個々の兵器の生産では、あまり量産されなかった、もしくは計画が間違っていた一部の兵器の大量生産実現が戦局に与える影響は大きいでしょう。
 そしてクルスクでのドイツ軍勝利のために、この少し前に日本海軍の連戦連勝によるバタフライ効果を受けた北イタリアで、ロンメル将軍には頑張ってもらいます。おかげで連合国による西からの脅威を向けさせず、スターリングラード救出の政治的成功により史実より発言権の強くなっているであろう東部戦線の将軍達に、クルスク作戦早期発起を行わせるという流れを作りました。
 なお、クルスク戦をここでクローズアップしたのは、この戦いがドイツの勝利に終わっていれば、三ヶ月から一年と説によって色々ありますが、そのどれもが第二次世界大戦が長引いただろうという定説を利用しているからです。そして、私自身がもう一つの仮説、クルスク戦をせずにドニエプル川防衛に重点を置いていればソ連軍の攻撃を長い間押し止められただろうという定説を、都市伝説程度にしか信じていないからに他なりません。
 東部戦線の戦いでは、互いに相手の野戦軍を潰さないとどうにもならないでしょう。
 そして、太平洋戦線での日本の頑張りとそのバタフライ効果によってドイツ軍も頑張っているので、連合国の進撃スケジュールはおおむね史実の三ヶ月遅れであり、一部は半年以上の遅れとなっています。
 ですが、満ち潮と月齢の関係から一九四四年六月六日のノルマンディー上陸作戦のスケジュール変更はできないので(これを逃すと九月になる)、ここに連合国に少し無理が出てきます。
 そして少しずつの時間のズレが、枢軸側に史実より少しマシな展開をもたらすようにご都合主義的解釈がしてあるからこそ、このような展開になっているのです。
 いくら初戦で日本軍が連戦連勝したとしても、今まで書いてきた事の半分もうまくいっていれば御の字でしょう。
 ここでは、このまま続行しますけどね(笑)

■フェイズ十四「フォレンジャー作戦」