■解説もしくは補修授業「其の拾五」

 サイパン島戦全体で一フェイズ、マリアナ沖海戦だけで一フェイズとってしまいました。ですが、登場人物と戦闘シーンの詳細を全部引っこ抜いてしまっても、まともな架空戦記として成立させるにはこれぐらいの分量が必要になってしまうという事ですね。
 つまり、全体としてこれだけ文章を増やしても他は手抜きだということの裏返しです(笑)

 ・・・などと言う裏話はさておき、ここでのマリアナ沖海戦では、日本側に架空戦記でお約束の兵器はほとんど登場させていません。「烈風」もありませんし、ハトハトを積んだ強力な戦車もありません。謎の巨大戦艦や巨大空母もなく、もちろんジェットやロケット兵器もありません。史実と同じ技術力と開発程度のまま、規模だけ大きなままの聯合艦隊です。
 少し「銀河」など一部の航空機の数を出し過ぎた気はしますし、攻撃力全般において日本軍に高めに設定しましたが、第一航空艦隊がほぼ編成通り揃っており本土での生産が多少マシでパイロットが訓練を積む時間があるのなら、大きな問題はないかと思います。
 また、史実より早い《雲龍》の投入も、史実のミッドウェー沖海戦と同時期から突貫工事を開始し、この間の既存艦艇の損傷修理が少なければ、このクラスなら十分完成、実戦投入は可能だと思います。もちろん艦橋を《大鳳》と同じにするなどという事はありません。史実まんまの《雲龍》です。
 それ以外は、日本がマリアナでの決戦だけを念頭において三ヶ月の時間と十分な迎撃戦力を揃え、対するアメリカ軍はこれまでの損害が祟って、戦艦、空母の数が史実より少ないままこの戦いに及んだという状況でしかありません。だから「烈風」どころか「紫電改」の艦載機型もありませんし、謎の新型機も出していません。それらを無理矢理にでも出すには、もう半年は必要でしょう。

 それと、決戦海域をパラオからグァム近辺ではなく、硫黄島からサイパンの中間海域に設定したのは、日本軍のエアカバーをなんとかするためです。しかし、ここにアメリカがノコノコやってくるかかなり疑問を感じるでしょう。
 ですが、アメリカ側としては作戦として非常に難しいとされる大規模な強襲上陸作戦で、戦闘のイニシアチブをとり続けることが必要です。そう考えれば、あえて攻撃的な行動に出るのもやむを得ないかと思います。
 何しろ、日本側の都合で、アメリカの都合の悪いときに攻撃されたりしたら目も当てられませんからね。

 あと、日本側が優勢に戦いを進められたのは、全ては制空権の有無が原因です。多数の戦闘機を投入できた事で、多数の攻撃機が敵艦隊を攻撃できるという条件さえあれば、それなりの結果は史実と同じ技術程度でも十分可能だと思います。もちろん、攻撃機のパイロットの質も関わってきますが、ここでは内地でそれなりに訓練の施されたパイロットが揃っているので、制空権の有無こそが重要かと思います。
 だから、日本軍はここで辛うじて敵を撃退して戦略的勝利を獲得しますが、以後戦力はかなり減少してしまいます。

■フェイズ十六「憂鬱と焦燥」