■解説もしくは補修授業「其の拾七」

 架空戦記において、何故かほとんど取り上げられていないパラオでの戦いと、日本側にかなり有利な状況にした台湾沖航空戦を取り上げてみました。
 この二つは、フィリピンでの決戦の前哨戦というか、アメリカ軍、いやマッカーサー将軍にとっては「アイ・シャル・リターン」のためのお膳立てのような戦いに過ぎません。そしてパラオでの戦いは現地日本軍将兵のねばり強い戦いにより二ヶ月以上手こずる事になりましたが、台湾沖では快勝と言って良い勝利を掴むという、実に好対照な結果を残しています。
 そしてこの二つは、当時の日本とアメリカの戦いの縮図であり、パラオでの戦い方以外日本軍に有効な抵抗の余地がないという実に悲しい結論が導き出されています。
 ですからここでは、日本軍の陣地固守戦法はこれ以上どうすることもできないので、史実よりは良好な航空戦力が維持されているという事を見せるためのシーンにもなります。
 ただし、少々幸運な戦争展開があったとしても、物量という戦場の覇王の前にはどうにもできず、日本側の抵抗準備が史実より多少良好だとするのが限界ですね。

 また、一方の「台湾沖航空戦」ですが、こちらもアメリカ軍の戦力が史実の7割程度で、日本側の態勢がある程度まともだったなら、という状況を可能な限り日本側に好意的に解釈しています。さらにここでの航空撃滅戦に失敗したため、次のレイテ戦においてもアメリカ軍が完全に制空権を握るという状況にさせないための布石にもなります。
 もちろん、台湾やフィリピンに三四三空が大挙してやってきて、有馬少将が米艦隊に一矢報いるのは、史実での戦いのオマージュですからご容赦ください。また、源田大佐の制空権三段論法がここでは立証されたというのももう一つのオマージュになります。
 もちろん台湾に多数の陸軍の新鋭戦闘機がたむろしていたのは「偶然」で、日本軍が待ちかまえていたわけじゃありませんよ(笑)
 けど、制空権あっての近代戦ですよね。

 なお、ニミッツ海軍元帥の逸話は史実と同じものです。パラオ住民の日本人に対する感情もまた事実です。皆さんも派手なだけの火葬戦記ばかり読まずに、たまにはこういった史実のあまり注目されないところを見てみるのも良いのではと思い、パラオの戦いをあえて取り上げてみました。

■フェイズ十八「オペレーション・V1」