■解説もしくは補修授業「其の弐拾四」

 欧州での幕引きは、総統閣下の静かな退場によって発生するとさせていただきました。
 史実での死の間際のアドルフ・ヒトラーの病状を考えると、例えドイツの抗戦が史実より長く続いたとしても、彼の病状が史実通りならそう長くはもたないでしょう。自殺するとき、病状悪化で自殺のためのピストルすら持てなかったという説すら存在しますからね。
 ここでは、その辺りの説をネタとして使ってみました。

 ・・・え、聞きたいのはそんな事じゃない。
 なぜ、ドイツの秘密兵器が多数量産され前線に投入されているはずなのに、戦争がひっくり返っていないのか、ですか?
 そりゃ決まっているでしょう。この話の中ではドイツは脇役なんですから、大活躍しちゃ駄目だからですよ(笑)
 という冗談はさておき、実際ドイツ第三帝国末期に登場したもしくは開発されつつあった数々の兵器ですが、連合国軍の戦略爆撃によって一九四四年内にドイツ産業の生産力は大きく減殺しているので、戦争をひっくり返すほど生産する事は物理的に考えて不可能でしょう。また、新兵器によって連合国側の損害が上昇するような事があれば、連合国側がより一層躍起になってこれを生産する工場を破壊しようとするでしょう。
 欧州の戦場では、「Me262」vs「ミーティア」、「Ta152」vs「P51H」、「E75」vs「JS3型」などのバトルが各地で見られる事でしょう。ですが、史実よりドイツが少し頑張ったというレベルに落ち着き、大戦略レベルでの結果としては程度問題だと思いますね。
 基礎工業力そのものを見る限り、数ヶ月で連合国側(英米)が力技の対処方法を確立して、結局物量で押しつぶすのは史実を見る限り明らかですからね。

 もっともこの節で一番残念な点は、この話しでの命題である「聯合艦隊の活躍によるバタフライ」がほとんど存在しない事です。確かに「聯合艦隊の活躍」によって戦争自体が長引いてこそのこの状態の現出なのですが、戦争全体の流れを変えるにはやはり欧州での政治的激変が存在しなければ、日本が生き残る可能性は皆無に近いですからね。
 もっとも、日露戦争でもロシア(欧州)での政治的動きが講和への流れを作ったと言えますから、このぐらいはご愛敬と思いご勘弁ください。

 また、史実での「ヤルタ会談」にあたる「マルタ会談」が45年の2月ではなく4月そして6月になっているのは、ここでの戦争展開が史実から遅れていて、戦後を語るには史実と同じタイムスケジュールでは早いからです。ヤルタがマルタになったのも、ヤルタ地域が奪回されたばかりで相応しくないからに過ぎません。さらには、米英のソ連に対する態度の現れと言う事になるでしょうか。
 そして、史実のポツダム宣言のオマージュと、その後の冷戦構造の流れを作る呼び水として、グルジアの髭野郎単品によるヤルタ宣言を置いてみました。
 そして欧州情勢の激変により、日本が、日本軍が生き残る道も開けて来ます。

■フェイズ二五「ノーザン・フロント」