■解説もしくは補修授業「其の弐拾七」

 よくよく考えたら、海戦の名もつけなかった戦闘も多い事に気付いたので、ある程度全体を見渡す節を設けてみました。
 ここはそのための場所であり、ここまで全体としてぼやけたままだった双方の総決算を、コンテンツの主旨に従って海軍中心で多少書いてみたという程度のものになります。
 だから、この世界での数字や客観的事象ばかりが並んでいるだけの味気ないもので、退屈された方も多い事でしょう。
 また、下記の別ウィンドには、連合国側の大型艦艇損害の詳細を列挙しておきます。

連合国側の損害

 

 さて、日米の戦争の総決算ですが、艦艇の損害については最後に集計した結果そのものに、私自身が笑ってしまいました。
 小説的表現を用いるなら、ネジが切れたように笑ったと言ってもいいと思います。
 ここまでしても、ここまで日本に有利な「戦闘」を連発しても、「戦争」は作り上げられないのか、と。
 私自身としては、妄想の翼を広げて、出来る限り日本に有利な戦場での改竄を加えたつもりだったし、実際に現れた数字もその通りでした。しかし、戦術では戦略は完全にはひっくり返らないみたいです。
 ジオンと連邦じゃありませんが、やっぱり1対30の差があってはどうにもならないですね。ビクザム(大和)を量産しても戦争には勝てないみたいです(笑)

 あ、そうそう日米の戦いでイフを考える人は、必ずと言ってよいほど「日中戦争」をしていなければ様相が随分変わっていた、日本軍は有利に戦争ができたと言う意見がありますよね。
 ある程度は事実だと思います。
 ただし、戦場では初戦で日本軍の戦闘力が実戦経験の有無からいくらか下がり、全体の部隊数と熟練兵も減り、戦争準備が遅れて緒戦の有利を作ることが難しくなるでしょう。はたして、どちらが有利だったのでしょうか? 当時の日本の国力など、様々な点から考えた場合、数多くの疑問を感じてしまいます。
 確かに、初期の陸軍部隊の数が大幅に少なくなる代わりに、支那戦線での負担が計数的に軽減します。しかし、アメリカとの総力戦をしてしまえば、基礎体力が半年程度長く持続できるだろうと言う程度で、戦争の流れそのものに大きな変化ないでしょう。
 ある程度正確な数字すらはじき出していませんが、それが日米の基礎体力の違いです。アメリカの生産がフル回転し、破滅的な通商破壊戦を仕掛けられた時点で、多少頑張ったところで結果は同じです。
 いかに大和が頑張ろうとも、某アニメのようにすべてをひっくり返す事は不可能だったでしょう。

 もちろん、日中戦争をせずに、その間日本が総力戦体制の整備のために、工業生産力の底上げと工業統一規格の整備、効率的な二十四時間操業体制の整備、大規模公共事業による土建業の機械化、それらに伴う社会資本の整備、そして法律、社会制度そのものの改革などをソ連真っ青のレベルで行ったとして、さらに陸海軍の兵站面での統一化を図るなどすれば話しも多少は違ってくるでしょう。(この想定自体が、本末転倒でおかしいのですが)
 ですが、それらがすべて達成出来たとしても、そこに出現するものは総合的な視点で十分の一の能力を持ったアメリカ、もしくは数分の一の規模のソ連に過ぎません。そして、一九四四年に欧州での戦いの決着が見えてきて、アメリカの戦時生産がフル回転した時点ですべては史実と似た結末になると結論付けられます。
 ドイツの末路を見てください。
 ドイツは、日本の数倍(約4倍)の国力があり、日本よりはるかに先進国家だったのです。
 もちろん、効率的な大日本帝国が出現すれば、史実よりも戦争が長引く可能性はあるでしょう。
 ですが、史実と同じように初戦で幸運に恵まれた戦争展開だったとしても、一九四七年までに日本は降伏せざるを得ないでしょうね。
 そして、皆さんが忘れている、もしくは見なかったことにしている最も重要な点に、日本の国家財政そのものがあります。
 そう、日本は大東亞戦争開戦の時点で、すでに国庫が大きく傾いていたのです。
 つまり、どんな形であれ戦争が終わった時点で、日本はアメリカ資本の大量投入を行わなければ、輸血の止まった重症患者のように失血死するしかないです。うまくいっても、ノースコリア化です。
 そして、この点から見た場合の最も悲しい結論は、戦争をしてもしなくても、国家戦略的に日本の敗北は動かないという事です。
 だからといって、無軌道な戦争に賛同するわけではありませんが、進むも止まるも結果は同じという事を当時の為政者達が認識していたからこその戦争だったと思えてもきます。当時のアメリカの軍事力(=総合的国力)のすごさは、アメリカの一般公文書から簡単に分かるんですから、時の為政者が知らないわけありません。

 史実と同じ開戦に至ったレールの上では、日本に勝機ナシ。こればかりはどうにもならない、というのがやはり結論になるでしょう。

 やっぱり、アメリカってファンタジーが通用しないからキライです。

■フェイズ二八「極東講和会議」