■解説もしくは補修授業「其の弐拾九」

 日本の状態と、旧日本領のその後、そして戦後日本軍の紹介がここでのテーマですね。

 国民投票による帰属決定は、第一次大戦後のドイツで行われているので、それなりに理屈も通りやすく、当時の状況をすべてをさらけ出すにはうってつけだと感じ、ここでさせてみました。もっとも、結果が想定中にあるような日本に一方的な結果に終わるかどうかは定かではありませんが、早い時期に行われれば日本有利に終わると思います。
 そしてこれに関係なく、朝鮮半島は「半島系日本人」から「三国人」、そして「朝鮮人」もしくは「韓国人」とジョブチェンジしつつ独立してもらうわけですが、・・・私達の世界を見る限り、こんなもんでしょう。
 満州が西側に保持される以上、赤化しなければ他のすべての国は自動的にスルーするでしょうしね。
 一方の満州は、アメリカが乗り込むと、結局日本の敷いたレールの延長を歩くと思います。アメリカは、もともとここが欲しかったワケですしね。
 そして、アメリカが日本が背負い込んでいたものに気付く時間として、日本との停戦から講和会議に至る時間が持たれています。日本列島よりも共産主義の風当たりが強い満州に勇躍乗り込んだマッカーサー元帥の存在が、これを肯定してくれる事でしょう。
 また、既に国家の基礎工事が終了しつつある満州を手に入れたアメリカは、喜々として新たに手に入ったフロンティアの開拓に力を注ぐことは間違いありません。そして満州が手にはいるのなら、日本列島に対して寛容になる可能性も高く、満州を狙うロシア人や支那人を親の敵のごとく疎ましく思うのも必然でしょう。
 そして新たなカーナンの使用人として、それまでの統治者だった日本人を使うというのは人間心理として何とも気持ちの良い状態であり、また実利にも適っているのではと思います。
 一説にはローマ皇帝やローマ貴族に自分を重ねていたと言われるマッカーサー元帥にとっては、自らの姿をガリアを征服し彼らに寛大な処置を施してローマの一部としたカエサルの姿が重なる事でしょう。まあ、この世界ではカエサルと違って、決定的な勝利を掴む事はできませんでしたけどね。
 一方日本としても、アメリカが今後矢面の多くの部分を肩代わりしてくれるのですから、長期的に見れば失うものよりも得るものの方が多い筈です。感情面で受け入れられない面は多分にありますが、最終的にはモノの見える政府首脳部が納得し、アメリカの資本により国民生活が改善すればアメリカとの二人三脚で東アジアをそれなりにうまく統治していけるでしょう。共通の利害関係ほど、両者を結びつけるものはない筈です。
 もちろん、かなり楽観的に捉えた場合、なんですけどね。

 いっぽう戦後ニッポンの軍隊ですが、「兵部省」というのは「大蔵省」みたいな懐古主義っぽく少しやりすぎかも知れませんが、明治の一時期存在した省庁ですし、何となくファンタジーっぽくて好きなので採用しました(笑)
 また、「軍縮」された日本軍ですが、新たな領土と勢力圏を思えば、密度的にはそれ程以前と変化ないと思います。
 陸軍は、大陸からすべて足を洗っているから平時に配備していた3個師団プラスαが必要ありませんし、大規模派兵を考えないならこれでも多いぐらいだと思います。海軍も一見激減していますが、二〇〜三〇年代半ばまでの軍縮時代の空母がまだ少ない頃を思えば、絶対数では極端な軍縮はさせていないつもりです。むしろ、一九三〇年代後半から敗戦までの軍備の方が異常な筈です。分不相応な軍備が何をもたらすかは、もはや言うまでもないでしょう。
 そしてこのまま現代に流れていく事を思えば、陸軍10〜13個師団、海軍4〜5個艦隊(史実の海自+海保+大型空母3隻程度+原子力潜水艦群)、空軍4個航空集団(16個スコードロン)という数字になるでしょう。これは、今の自衛隊の1・5〜2倍ぐらいの規模になり、これに核アレルギーが低い(この世界では軍事基地にしか核は使用されていない)事を思えば核戦力が加わるのですから、英仏を足したぐらいの規模の、かなり凶悪な日本軍が半世紀後も保持されていると思いますよ。
 と言うわけで、最後に現代世界の冒頭に触れて、この幕も最後にしたいと思います。


■フェイズ三〇「そして現代へ」