■戦後世界ガイドライン

 ◆各年代の表題(基本的には史実と同じ)

 一九五〇年代
 一九六〇年代
 一九七〇年代
 一九八〇年代
 一九九〇年代
 二〇〇〇年代
 二〇一〇年代
 中華動乱・冷戦出現
 ベトナム戦争・キューバ危機・南北対立開始
 アメリカの停滞
 冷戦ピーク
 冷戦崩壊
 テロ・多極化の時代
 北東アジアの混乱?

 ◆日本国(史実の15%UP)
 ・領土
 約45万平方キロメートル
日本列島、南樺太、台湾、千島列島、南洋(北マリアナ諸島、カロリン群島、パラオ諸島)

 ・人口
 終戦時約七九〇〇万人からスタート。
 史実より戦死者が約二〇〇万人少なく、台湾住民の六五〇万人が増える。さらに、戦後の混乱、飢えと貧困で亡くなった人々、シベリヤ抑留などによる死者の数は五〇万人に達するが、これも多くが回避される。
 帰国の必要がない満州移民(約一五〇万人)は、史実のブラジル、アメリカ移民とシベリア強制労働での死者で半数程度は相殺される。在日朝鮮人の過半(約一二〇万人)は、生国に帰国後再入国させないようにする。これにより、史実で引き返してきた在日約五〇万人が減る。
 日本の外郭地からの引き上げは、満州、台湾、南洋諸島以外からはほぼ史実通りとなる。しかし一部は、日本社会が残る満州に流れる。
 日本領に残る外郭地の先住民族の人口数は、台湾以外では程度問題である。
 結果、史実よりプラス六〇〇万人の人口増となる。

 ・国富+一般資産
 史実(サンフランシスコ講和会議)で権利を失った一一〇〇億ドル分のほとんどの海外資産と、無差別攻撃などで失われた約一〇〇〇億円分の国内資産が存在する(満州、朝鮮利権は当時国の買い取り)。
 その他の国富として、船舶、軍用兵器のかなりも残存する。
 スタート時点(終戦時)で、日本人の貧困層比率が史実の9割から史実36年頃の6〜7割程度にかなり近づく。また、農地改革の変化(史実より多少マシな安価買い上げと企業化促進)により地方富裕層も変化する。この二つは、内需拡大の早期出現の一つの要因となる。
 また、空襲により焼き払われた都市がほとんどないので(東京の一部と北九州地区、台湾の一部のみ)、文化財の残余も豊富。逆に、都市の再開発は遅れ、都市の中心部は雑然とした佇まいが長く残る事になる。逆に、欧州諸都市のように、アメリカ的でない景観も残りやすくなる。

 ・現代日本の国力(80年代〜21世紀初頭)
 人口、GDP、国家予算共に、史実の15%増しとする。主な理由は、パーセンテージの分だけ国土が広く人口が多いため。史実でのバブル崩壊以後の低迷も、様々な要因によりかなり軽減される。
 また、高度経済成長時期後は、GDP2%枠の国防予算に国家予算が吸い取られ、その分公共事業予算がない。産業も軍需産業とそれを支える重工業・先端産業、航空産業が強くなる。産業構造の変化で、日本の省庁も建設省(国土交通省)の勢力が下がり、通産省(経済産業省)の勢力が拡大する。科学技術庁も国内の核兵器開発、宇宙開発などの増大で大規模になる。これらは、史実ほどの土建国家体制と不動産バブルが発生しにくい要因の一つとなる。しかしバブル経済自体が、低金利政策や国際為替レートの大きな要因だったため、程度の違いこそあれ似たような事象が発生する可能性の方が高い。
 なお、史実において主に朝鮮半島や大陸に吸い取られた賠償金、無償援助、有償援助のかなりが国内に向けられるので、インフラ整備は大きな遅れは生じない。

 ・現代日本の軍事力
・史実自衛隊の2割り増しの戦力
  +米第七艦隊+英仏レベルの核戦力
 70年代半ばより、国防費GDP2%枠(国家予算の約15%)が基準。国力増大も重なって、史実の230%の国防費(4・7兆円→11兆円)となる。
 戦後も「軍」が生き残り、GHQによる洗脳教育がなく、近隣に脅威が存在し続けるため、その後順当に拡大。1970年代から80年代のアメリカ低迷時と日本の発展が重なるので、その後の極東防衛が日本に委ねられるようになるのも軍備拡大の理由となる。
 逆に、大規模な在日米軍や第七艦隊、海兵隊、思いやり予算は存在せず。在アジア米軍の主力は、東亜連邦、中華民国、グァム島に駐留。ベトナム戦争以後の日本には、海空戦力の基地を間借りする程度。日本は前線に対する後方拠点としての役割を担う。
 また、日本国内の軍需産業が大きく軍も生き残るので、兵器輸出産業は健在。非核三原則や武器輸出禁止の考えはない。人気輸出兵器は、軍艦と航空機、軽装甲車。日本製なら何でも良いという国もあるので、商売は比較的堅調。ライバルはフランスで、航空機と装甲車のシェアを競う。ただし、火器全般の分野は弱い。
 なお、軍需産業が史実より拡大するので、それに伴い航空宇宙産業も拡大。その延長の企業利益のため、宇宙開発も史実より規模が大きくなる。

・備考/史実の戦後との大きな違い
 何よりもまず、連合国(GHQ)による日本本土の占領統治が存在しない。また国家として、完全独立を保持したままである。
 加えて史実において、日本を洗脳・改造したGHQは主に満州に展開するので、独善者マッカーサーとその一党は外地にかかりきりとなる。
 日本本土の民主化促進は、連合国側は主に米海軍が行う事もあり、史実と違い穏やかなものとなる。なぜなら、日本が「降伏」でなく独立を保ったまま「停戦」しているので、連合国も強くは干渉できない。
 連合国が行った内政干渉は、講和会議に則った各種民主化の促進と、憲法改定に伴う「天皇主権」から「国民主権」への変更、そして軍の権限の大幅な制限及び大幅な軍備削減、軍の組織改革になる。
 日本国民自身も、国内被害が少ない事もあり自虐史観は少なく、戦争被害者としての意識も低い。左翼的考えや「リベラル」な考え方も、日本政府の反共姿勢もあって小規模となる。ただし加害者意識の方は相応に存在している。
 結果として、第一次世界大戦後のワイマール・ドイツのような政治状態に近くなる。
 大日本帝国憲法は、日本国憲法として大幅改訂を余儀なくされるが、国家の魂の一つである「教育勅語」は、言葉が現代語訳に変えられ、天皇大権の表現が無くなっただけ。史実のような奇怪な事態にはない。また日本語自体の「現代語」化も、史実よりは弱くなる。
 ただしアメリカは、日本を恐れるが故に「同盟」と「駐留」により、日本を監視し続ける体制を1960年代に入るまで続ける。
 そして、産業の発展、情報の広範な伝達促進により、日本人の民意も徐々に史実の現代日本に近くなる。
 冷戦時代は共産主義が違法とされ続け、徴兵制が長らく残った事などから、左派傾向は史実よりもずっと弱い。市民運動として戦後すぐから存在するも、史実のような奇怪な状態にはなく、労働争議と個人権利の拡大に限られる傾向が強い。
 70年代以降は、社会主義・共産主義活動以外はほぼ史実と同じ。
 また、経済面では、本土空襲による荒廃がないため、簡単には首都圏一極集中にはならない。
 各都市には、昔からの景観が多く残され、「効率的」な開発が必然的に停滞するため、アメリカのような無機質で画一的な街が増えることも少なくなる。
 消費地にして政治、学術中心の首都圏、製造業の中心となる中京・東海圏、商業の中心京阪神圏という構図が作られ、国家の中枢の危険分散が図られる。また国家機能の分散は、核兵器保有国となるのならむしろ必然である。
 ただし、軍の実働部隊、生産拠点の中心は地方に移され、都市以外に設けられる。特に、大阪、広島のような「軍都」では顕著となる。

 ◆国際環境

 ・概況
 西高東低・西側やや荒れ模様。赤い嵐は、平年より穏やかでしょう(笑)

 ソビエト連邦は、大戦末期のドイツ・東欧での略奪・技術奪取ができず。スタートラインから、史実より遅れてスタート。また、勢力圏も小さくなる。このため、共産主義勢力の実質的な脅威は史実よりも低くなる。
 一方アングロ陣営は、東欧の一部や満州、中華地域の半分など多くの勢力圏が史実よりも増えている。
 しかし、史実よりも我が儘でパワーを持ったままの日本、ドイツを抱え込み、南北中国という不安定な地域を抱え込むため、アメリカ中心とならず団結が乱れる。

・各地域の状況
 ・東アジア

・中華民国とされた中華地域中央部は、中華自身の南北分裂と大国の思惑により周辺部も四五分裂となる。
・満州、内蒙古が「東亜細亜連邦共和国」として1951年に独立。東トルキスタン、チベットも、不安定な中華中央に対するバッファー・ゾーンとして各陣営に取り込まれる。
・朝鮮半島は、西側の統一国家「大韓民国」で固定。国内及び近隣の安定度は高くなるが、逆に近隣諸国との不用意な軋轢から国家としての低迷を続ける。正式独立後、かなりの期間反米・反日民族主義に傾倒。
・ベトナムは、国境南部を中華民国に抑えられ、北東亜細亜諸国の大規模な介入もあり、混乱が長引く。ベトナム戦争はドローとなり、南北分断で固定。その後21世紀初頭に統一を実現。
・ベトナムと共にインドシナ連邦を構成していた、ラオス、カンボジアは共に王国として存続を続けるも、政治的不安定さを抱えたままとなる。ラオスは辛うじて南北分裂は回避。西側に属する。

 ・欧州
・ドイツは、ほぼ第一次世界大戦後の領土を保全。ただし、ソ連により東プロイセンのかなりを失う。ケーニヒスベルグは孤立化して、冷戦の象徴の一つとなる。
・ハンガリー、チェコスロヴァキアは、大戦末期に連合国軍が入ったため西側に属する。
・連合国軍とソ連軍の握手の場となったポーランドは、首都ワルシャワを二つに割って東西分裂。冷戦崩壊後に統合を果たす。
・東西分割ラインは、東欧の真ん中当たりにまで大幅に東進。
・バルト三国は、ソ連の思惑で大戦後に独立復帰。東側陣営の独立国家として存続。冷戦崩壊後に、東欧諸国同様に民主化実現。

 ◆東西両陣営の軍事バランス

・ソ連
 ドイツから直接奪えた先端技術が少ないため、核開発が遅れるばかりか、核兵器、ロケット兵器、ジェット機、潜水艦など多岐に渡り史実よりも開発が遅れる。もちろん、航空機、戦車、通信、化学、工業全般など様々な分野で発展が遅れることにもなる。多くは、後にアメリカに対するスパイ活動で得られている。
 また、ドイツ・東欧・満州などからの略奪もあまりできず、強制労働させる捕虜の数も計数的に少ないので、国土の開発は遅れ国富も減る。
 勢力範囲に、チェコやハンガリー、東ドイツがないので、工業分野や贅沢品の供給源が少なく、民政レベルでも低迷を続ける。
 当然ながら国力の拡大も遅れ、国威もふるわない。概ね、東側陣営の力は中華地域を除外して、史実の8割程度に落ちる。

・欧州正面
 正面軍事力だけでも、東ドイツ、チェコスロヴァキア、ハンガリー、ポーランドの半分が西側に属するため、戦力及び縦深共に東側が不利になる。
 また、極東でも東亜連邦とオホーツクの半分を領有する日本の影響で、太平洋へ出ることが難しい。共産中華が小さく天敵がいるため自陣営に止まるが、それでも極東方面の不利は変わらない。
 結果としてソ連は、通常戦力と戦略的状況の劣勢を覆しうる核戦力整備に傾倒。ピーク時は史実とほぼ同じレベルになり、いずれ負担に耐えきれなくなって崩壊に至る。
 いっぽうドイツは、ソ連に次ぐ人口と国土を持つ大国として、欧州で大きな影響力を持つ。軍事力も、ソ連に対抗するためという大義名分により欧州随一となる。ただし贖罪意識は強く核戦力は保有せず。
 欧州の他の面は、史実と大きな違いはない。

・東アジア
 中華分裂により多極化。
 南北分断により中華地域中央部が東西最前線の一つとなり、華中地域では数百万の大軍同士が21世紀に入るも睨み合う。
 東亜連邦は旧満州地域にあるが、冷戦クライマックスの頃には先進国に含まれる人口1億人以上の国家となるので、ドイツに近い規模の陸軍を保有。ソ連、北中国を後背から圧迫。逆にソ連から圧迫を受けるため、かなりの軍事国家となる。
 北ベトナムは、南中国の存在もあるので、完全に孤立。東側は、支援が十分できない。
 中華中央がいがみ合い、旧清帝国辺境地域がそれぞれの陣営にとってのバッファーゾーンとなるため、インドなど周辺諸国が史実以上に勝手に動く。
 中華分裂と対立により、中華地域が停滞するため、新興工業国として東南アジアの重要性は強まり、さらにインドの隆盛が少しばかり早まる。

 取り上げた地域以外は、史実とほぼ同じ。
 中東は、だいたい史実と同じ。つまり、宗教対立と民族対立で分裂と戦争ばかりしている。
 中南米は、アメリカの影響を受け続け、慢性的財政赤字を抱えて冷戦間のほとんどは低迷。21世紀に入りブラジル、メキシコなどを中心にようやく起きあがり始める。また冷戦崩壊と共に、左派傾向が強まる流れも同じ。
 アフリカは、史実同様に60年代に独立するも、欧米企業に食いつぶされる構図に変化なし。当然民族間の凄惨な争いも同様に変化なし。
 第二次世界大戦で日本とドイツが辛うじて生き残ったところで、世界的に変化があるのは日本とドイツと二国を取り巻く周辺のみとなる。ファシズムが潰され、米ソが大きく隆盛すれば世界レベルで大きな変化はあり得ない。

 ・総括
 日本とドイツが土俵際で生き残っても、史実から大きな変化があるのは、欧州と東アジアの一部だけとなる。
 欧州では、ドイツが大きな勢力のまま残るが、単独では対抗不可能なソ連、時折独自の大国主義的な行動を取るフランスの存在があるため、史実同様西側(米英)に傾倒。
 東アジア随一の国家のまま存続する日本は、ソ連の脅威と中華地域の不安定さから、史実同様にアメリカと歩調を合わせる。
 このため、アメリカの見た目の覇権は、史実世界よりも強い。
 また、アメリカの圧倒的な経済力は、史実並かそれ以上なので、冷戦期間中のアメリカによる相対的世界支配に大きな変化はない。
 そして冷戦崩壊後は、日本、ドイツが地域覇権国家として勢力を持つ以外、史実との近似値はより近くなる。アメリカが隆盛してロシアを中心とする共産主義陣営と対立する以上、根本的な変化は訪れない。
 大きな変化を引き起こすには、ナチスが勝利するか、ソ連が崩壊するか、アメリカがうずくまったままでなくてはならないだろう。

■歴史(概略年表)